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ライトノベル『この恋と、その未来。』の打ち切りについて

(2016/9/16追記)

この恋と、その未来。

最終巻となる6冊目、11月に発売します。四郎と未来、ふたりの結末はファミ通文庫からしっかりお届けしますので、こちらも楽しみにお待ちください。

10月は嬉野秋彦最新作『魔術師たちの就職戦線』登場! そして11月にはあの作品の完結巻が……! | FBにゅーぶろ|話題のラノベ情報が見つかる!

打ち切り回避! ファミ通文庫は神!
(追記終わり)


この恋と、その未来。』が打ち切られた、というニュースが飛び交っています。どうやら最新刊のあとがきでそのようなことが書かれていたそうなのですが、電子書籍待ちの私はまだそれを読めていません。しかし、事実であるとすれば本当に残念で、本当に理解しがたい話です。



私はこれまでにも何度か「この作品がオススメだ! みんなも買ってくれ!」という趣旨の記事を書いてきました。それらは単純に自分が好きな作品を応援するものでしたが、今回の記事については、作品を好きなのはもちろんとしても、それ以上に、これほどの作品を打ち切るべきではないという思いから書いています。


きちんと完結していれば、まず間違いなくオールタイム・ベストのひとつとして、ラノベ史に刻まれる作品になったと思います。『半分の月がのぼる空』や『とらドラ!』のように、五年後、十年後にも「青春ラノベの傑作」として語り継がれていたことでしょう。



この恋と、その未来。』は、広島を舞台にした青春小説です。横暴な姉たちから逃げ出して広島の高校に入学した松永四郎と、性同一性障害ということで男として入学してきた織田未来。二人は学生寮で同室となり、親友となりますが、やがて四郎は未来に対して恋愛感情を持つようになります。「俺は未来の心に恋をしているのか、体に恋をしているのか」。四郎は悩みながらも、その気持ちを隠して、慣れない土地での高校生活を送ることになります。


「重すぎる」とか「ラノベらしくない」とか評されることが多いですが、実際のところはしっかりとエンターテインメントした作品だと思います。もっといくらでも重くできる設定なのに、あくまで読者を楽しませることを目標とした作りになっている。そういう意味ではむしろ「ラノベでこそ」という作品ですし、アニメ化すればもしかしたらハマるかも、京アニでワンチャン、とか思っていました。


この作品はさまざまな意味合いを持っています。


ずっとブレイクしないまま燻っていた森橋ビンゴという作家がようやく日の目を見たということ。作家の生存率がどうだと話題になるラノベ業界ですが、それでも良い作品を書けば評価されるのだと、いちファンとして私も嬉しく思っていました。


性同一性障害」という難しい題材に挑戦していること。そして、そうした題材を軽やかに扱ってみせていること。それこそがラノベの醍醐味だ、という思いも個人的にはあります。


このライトノベルがすごい!」などで多くの票を獲得していること。決してラノベ読みたちがこの作品を評価していなかったわけではありません。


ファミ通文庫」には青春小説が多いこと。特に野村美月森橋ビンゴは、古くからその路線の代表として、ファミ通文庫に貢献してきた作家でした。


そしてなにより単純に作品のクオリティが非常に高いこと。


この恋と、その未来。』を打ち切るということは、単なる打ち切りというだけでなく、上に挙げたことを否定するメッセージを放つことになるのではないかと思うのです。「作品のクオリティは評価しない」「こういう作品は投稿してくるな」「こういう企画を提出するな」「ファンの評価なんか関係ない」「こういう作品を好きな読者は出ていけ」と宣言したに等しいのではないかと。


ファミ通文庫も台所事情が苦しいのだと思います。「売れない作品を打ち切って何が悪い」「おまえが損失を補填してくれるのか」と言われれば返す言葉もありません。それでも僭越を承知で言わせていただくなら、『この恋と、その未来。』だけは、何としてでも完結させるべき作品だと思います。それほどの価値がある作品です。どうかラノベ史に『この恋と、その未来。』という傑作を残してあげてください。


いまからでも、この作品が売れることを祈り、そして打ち切りが撤回されることを願っています。皆さんもどうか購入してください。よろしくお願いします。


この恋と、その未来。シリーズ 作品一覧│電子書籍ストア BOOK☆WALKER



関連記事
http://taisukedesu.hatenablog.com/entry/2016/05/28/221843

将棋ラノベ『りゅうおうのおしごと!』が人気のいまこそ『王手桂香取り!』をオススメする

『りゅうおうのおしごと!』が評判ですね。

作者は『のうりん』の白鳥士郎。タイトルはドラクエの「りゅうおう」を想起させますが、実は将棋の「竜王」のことです。史上最年少の竜王である主人公と、そこに押しかけてきた少女との師弟関係、および彼らを取り巻く将棋界を描いた作品で、この作者らしく綿密な取材に裏打ちされたパロディとシリアスが持ち味です。

先日の「好きなライトノベルを投票しよう!」や「ライトノベルツイッター杯」でもダントツの支持を獲得。さらに、シリーズ最新刊となる第3巻が「大傑作の誕生」「面白すぎて死ぬ」などとラノベクラスタから絶賛を受けており、上半期も終わらぬ時点で、すでに2016年を代表するラノベになることが約束されていると言っていいでしょう。

GA文庫|「りゅうおうのおしごと!」特設ページ

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 2 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 2 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 3 (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! 3 (GA文庫)


さて、そんな『りゅうおうのおしごと!』に先立つこと一年。ある将棋ラノベ電撃文庫の新人賞を獲得していたことをご存じでしょうか。

それが今回ご紹介する『王手桂香取り!』です。

王手桂香取り! (電撃文庫)

王手桂香取り! (電撃文庫)


主人公の上条あゆむは将棋部に所属する中学生。大好きな将棋に真面目に取り組みつつ、同じ将棋部の大橋桂香先輩に想いを寄せている。そんな彼のまえに、ある日「将棋の駒」たちが美少女の姿をとって現れる。彼女らに指導されながら、あゆむはその才能を伸ばしていく…というあらすじで、言ってしまえばラノベ版『ヒカルの碁』。爽やかな青春物語です。

とはいえ、ツカミから派手なネタをぶちかます『りゅうおうのおしごと!』と比べれば、『王手桂香取り!』はいかにも地味な作品です。特に一巻では、いきなり三人も登場する「駒娘」たちを扱いきれず、せっかくの設定を活かせていない印象がありました。一巻きりで離れてしまった読者も多いと思います。


しかし待ってほしいのです。この作品の真骨頂は第二巻、王将の化身である「女王」が登場してからなのです。彼女こそが真のヒロイン。もう一人の主役なのです。

『王手桂香取り!』の登場人物は、そのほとんどが真面目で、礼儀正しくて、優しい良い子たちで、裏を返せば「癖がない」キャラばかりです。このあたり、癖のある奴らしか登場しない『りゅうおうのおしごと!』とは好対照なのですが。

とにかく、あゆむくんと桂香先輩だけでは優等生的な恋物語に終わりそうなところに、「女王」というスパイスが投入されることで、めちゃくちゃ面白くなっていくわけなんですね。


ところで、将棋用語で「王手飛車取り」と言うと、王と飛車の両方が取れる状態のことを意味しています。
王手 - Wikipedia

それを踏まえると『王手桂香取り!』というタイトル、第一巻だけなら桂香先輩との関係をもじっているだけに見えますが、第三巻まで読むと「あゆむくんと桂香先輩と女王」の三角関係を意味しているのではと思えてくるんですよね。あゆむくんが「女王」と「桂香」を天秤にかけるような状態になる…ということを示唆しているのではないかと。おお、なんと胸躍る展開。


まあ、そこまでいかずに刊行が止まっちゃったんですけどね。

『王手桂香取り!』は、気持ち良いほどの急成長をとげたあゆむくんが、さまざまな出会いを経てプロ入りを決意する…というところで第一部完。いまのところ第二部開始はなさそうです。せっかくこれからあゆむくんの世界が大きく広がっていくところなのに。桂香先輩と良い感じになって、さらに「女王」も可愛らしさを見せてきて、どうなっちゃうのかとワクワクしていたのに。

ちくしょう、俺は第二部が読みたい! 奨励会編が読みたいんだよ!


というわけで、『りゅうおうのおしごと!』がヒットして、将棋ラノベが盛り上がって、そこで『王手桂香取り!』がジワジワとでも売れていけば、第二部開始もワンチャンあるんじゃないかと思って書いたのが、この記事なわけです。

『りゅうおうのおしごと!』で将棋ラノベの面白さに目覚めた皆さん。これを機会に『王手桂香取り!』も読んでみませんか。

いろいろ書いたけど、『王手桂香取り!』は本当に傑作だよ!

王手桂香取り! - 第20回電撃小説大賞受賞作特設サイト

王手桂香取り! (電撃文庫)

王手桂香取り! (電撃文庫)

王手桂香取り! (2) (電撃文庫)

王手桂香取り! (2) (電撃文庫)

王手桂香取り! (3) (電撃文庫)

王手桂香取り! (3) (電撃文庫)


電子書籍版もあるよ!


こちらも置いとくよ!

MA棋してる!(1) (富士見ファンタジア文庫)

MA棋してる!(1) (富士見ファンタジア文庫)

「最近のラノベはタイトルで内容を全て説明している」は本当か?

このツイートをRTして「ラノベの長文タイトルも同じだよね」とか言っている人たちを見かけた。

そういえば「最近のラノベはタイトルで内容を全て説明している」「最近のラノベはタイトルを読めばオチが分かる」などと豪語する人も散見される昨今である。

はてさて、ラノベの長文タイトルは、本当に作品の内容を詳しく説明しているのだろうか。

いくつかの有名作品を例に挙げてみよう。

関連記事:
ライトノベルのタイトルの「長文」化について - WINDBIRD
いまだにラノベの長文タイトルを叩いている情弱に最新のトレンドを解説する - WINDBIRD

俺の妹がこんなに可愛いわけがない

俺妹を読んだことがない人「とりあえず妹が出てくることは間違いない。察するに、妹が幼児退行して昔の可愛かった頃に戻ったとか、多重人格な妹に新しくお兄ちゃん大好きな人格が生まれたといったような話に違いない」

さて、皆さんもご存じだろうが、いちおう『俺妹』のあらすじを説明すると、ギャル系で小生意気な妹が、実は隠れオタクエロゲー好きで、その秘密を打ち明けられた主人公は、嫌々ながらも妹にあれこれと協力していく、という話である。分かるかよ。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

俺ガイルを読んだことがない人「青春ラブコメね。主人公が何かしらラブコメ的なイベントに巻き込まれつつ、しかし登場するヒロインたちがラブコメらしからぬ奇人変人だらけで振り回されてばかり、こんな青春は間違ってるよ〜!みたいなスラップスティック・ラブコメとみた」

さて、こちらも説明しておくと、『俺ガイル』はわりとシリアスな青春恋愛もので、性格に問題のある主人公が、生徒会の手伝いでイベントの運営に駆り出されては、恋愛関係やスクールカースト的なトラブルを解決するのに奔走することになる、という話である。分かるかよ。

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)

ダンまちを読んだことがない人「ダンジョンという用語からするとRPG的なファンタジーなのだろうか。主人公はナンパでスケベな冒険者。美しい女冒険者とのロマンスを求めてあちこちのダンジョンを巡っているが、そのたびに酷い目にあって美女には逃げられる…ってな感じだろうな」

さて、読んだ人は知っているだろうが、『ダンまち』における最大の「出会い」は開始1ページで終わる。あとはひたすらヒロインを追いかけて強くなっていく主人公を描いた冒険ファンタジーである。ちなみにダンジョンにまったく入らない巻も多い。分かるかよ。

問題児たちが異世界から来るそうですよ?

問題児を読んだことがない人「現代のこの世界に、異世界からファンタジー的な騎士や魔法使いがやってくるのだろうか。”問題児たち”ということは、そういう異世界の子供たちを集めて、学校みたいなのを運営する話かもしれないな…」

と思ったら大間違いで、やはり異世界「に」召喚された少年少女が、チームを組んで戦っていくバトル・ファンタジーである。もちろん、異世界側から見れば、主人公たちが元いた世界こそ「異世界」なので、タイトルに偽りがあるわけではないが…やっぱり分からんだろ。

男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。

くっそ長いタイトルだけど、このタイトルを読んだだけで「首を絞められている」理由が分かるだろうか。わかんねえだろ。

下ネタという概念が存在しない退屈な世界
勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。
俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件

下ネタという概念が存在しない退屈な世界 (ガガガ文庫)

下ネタという概念が存在しない退屈な世界 (ガガガ文庫)

このあたりは読んでいないので端折るけれども、「下セカ」はディストピアを作る話ではないし、「勇しぶ」は就職活動の話ではないし、「庶民サンプル」は(わりと分かりやすいが)それでも拉致られて終わりという話ではない。

これらはいずれも作品の土台となる設定を説明しているだけで、作品内容のすべてを説明しているわけではないのだ。

まとめ

長文タイトルには三種類があるのだと思う。

1. 雰囲気重視なタイトル

作中の印象的なフレーズをそのままタイトルにしてみたり、突飛なキーワードを並べてみたりしたもの。インパクトはあるけれども、作品内容をそのまま表しているわけではない。役割的にはキャッチコピーに近いかもしれない。

2. 物語の前提を説明したタイトル

先述したとおり、これは「いったいどんな話になるんだ?」と興味を煽る効果を狙っているのであって、「どんな話か分かっていないと安心して買えない」とはむしろ正反対だと思う。あえて言うなら映画の予告編に近い。

3. オチまで説明したタイトル

これの代表格が『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』なわけだけど。

いやさあ、このタイトルを見て「へえ、受験を題材にした映画なのね…私、最後にはちゃんと合格する話じゃないと観たくないんだけど…あ、合格するの? じゃあ観る!」なんて人がいるのだろうか。

普通は「ええっ、どうやって合格したの!?」と思うんじゃないのか。

要するに「オチは決まっているんだから過程で興味を引こう」という話でしかない。ダイエット広告みたいなものである。


というわけで、「最近のラノベはタイトルで内容を全て説明している」とかいうのは、「最近のラノベは主人公がピンチに陥るのがダメらしい」と同じような「『無知で繊細な若者』幻想」に過ぎないと思われる! 以上、解散!

ほんと人によって違うよなって思う「読書スタイル」

文章から映像を想像する? しない?

文章から映像を想像するかどうかって、本当に人によって違うんですよね。細部にいたるまで想像してそれを映画みたいに動かしながら読んでいるという人もいますし、動きはしないけどキャラの容姿や背景を想像しながら読んでいるという人も、逆にほとんど映像なんか思い浮かべないという人もいます。先日も、読書中に台詞を脳内再生するかどうか、とかで話題になっていましたね。あれは、心の中で文章を音読しているかどうかも関わってそうですが。

何度か書いていることですが、私は「ほとんど想像しない」派です。断片的かつ漠然としたイメージを思い浮かべたりはしますが、少なくとも「作品の記述どおりに映像を構築していく」ような読み方はしていません。心の中でも黙読派ですし。想像する暇もなく次へ次へと読み進めている気がします。というか、読書中はちょっと無意識に片足を突っ込んでいる感じで、自分が何を考えて読んでいるかって分からないですね。

読者の想像か? 作者の意図か?

「小説は想像の余地があるから面白い」という意見があります。「アニメや映画みたいに全てが映像化されているとつまらない」と。ラノベの挿絵なんかも「想像の幅を狭めるから」ということで否定的な方がいますよね。

一方、私は「自分の想像力よりも作家の想像力のほうが優れているんだからそれを見せてほしい」派です。もしも「理想の小説」というものが存在するなら、それは「完璧に作者の意図通りに読者の心理が操られる小説」なんじゃないかなあと思います。

「結末をあえて描かずに読者の解釈に委ねる」みたいな手法も、個人的にはわりと否定的です。そこは責任を持ってちゃんと結末を決めてくれ、と思います。あなたが最高のクリエイターであるなら、あなたが決める結末が最高のはずなんだよ。というのは、まあ「べき」論であって、現実に押し付けるつもりはありませんけどね。

主人公に自分を重ねる? 重ねない?

エンタメ分析では「読者と主人公を同一視する」ような論調をよく見かけます。異世界が舞台の作品が流行れば「現実から逃避して異世界へ行きたいんだろう」と言い、現実が舞台の作品が流行れば「未知の世界で冒険するのが嫌で現実に安住したいんだろう」と言うような。これは、言ってしまえば「小説とは読者が別人になりきるためのシミュレーターである」という視点なんだと思います。

でも、たとえば自分が阪神タイガースを応援しているとします。阪神が勝てば嬉しいし、負ければ気落ちします。それは一種の「感情移入」ではあるんでしょうけど、じゃあ「プロ野球選手になりたいか」「阪神に入団したいか」と言えば、ぜんぜんそんなことはないわけです。自分と出身地が同じ選手がいれば「共感」して応援することもあるでしょうが、それは「その選手になりたい」という意味では全くありません。もちろん、阪神入団を目指す阪神ファンの野球少年もたくさんいるでしょうけど。

読書に話を戻すなら、「自分と主人公を同一視して読む人」もいるけど、「観客として楽しむ人」もいるんですよ、ということでしょうか。

最高がいい? 毎日がいい?

これはあんまり上手く言語化できないんですが。なんて言えばいいんですかね。

たとえば、一口に「ラーメン好き」と言っても、「最高のラーメンを食べたい人」と「毎日ラーメンを食べたい人」の二種類があると思うんですよ。

後者の人にとっては、あくまでラーメンを食べ続けることが目的なので、美味しさは一定以上あるだけでいい。それよりも一日三食きちんと欠かさないことが重要だ。それじゃあ何を食べよう。最近はあの店にハマって一週間くらい通い詰めてるんだよね。でもそろそろ飽きてきたから今日は別の店にしようか。みたいな。何の話か分からなくなってきたなこれ。

「小説家になろう」の作品群が、いくつかのテンプレートをもとに量産されているということは、(「それ以外の作品もたくさんある」というエクスキューズ付きで)事実だと思うんですが、そこで「どうして似たような作品を読むんだ」「アマチュアなんて下手くそばかりだろ」「こっちの有名作家の最高傑作を読んでみろよ」と言う人がいるんですね。

そこの食い違いっていうのは、「最高の作品を読みたい人」と「毎日読み続けたい人」の差に起因するんじゃないかなあと思うのです。

アメコミヒーローをモチーフにした最近のライトノベル選

バットマンvsスーパーマン観たいけどなんかズルズルとタイミングを逸していて観れそうにないよー」という気持ちを込めて書いた記事です。

夜明けのヴィラン

夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進 (ダッシュエックス文庫)

夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進 (ダッシュエックス文庫)

超能力者たちが、ある器質的な特徴によって、絶対的な善である「ヒーロー」と、絶対的な悪である「ヴィラン」とに振り分けられる、一種のディストピア的な近未来世界が舞台。
死んだ父から能力を受け継いだ少年と、新米ヒーローである少女が出会い、凶悪なヴィランと戦いながら、その裏にある巨大な陰謀へと立ち向かっていくというダークヒーローアクション。
ヒーローたちの能力がいちいちコミカルで面白いんだけど、そんな彼らが容赦なく虐殺されていくギャップが魅力。
また学園ものでもあり、幼馴染との楽しい三角関係も描かれております。

特区インスタントヒーローズ

特区インスタントヒーローズ (ノベライドル)

特区インスタントヒーローズ (ノベライドル)

バーチャルアイドルが小説を執筆しているという体裁のレーベル「ノベライドル」から刊行された作品。「プロデューサー」はノベルアプリを制作している「超水道」というクリエーター集団の人。
退屈に倦んだ学生がヴィラン気取りで悪事を働き、ヒーローのコスプレをした学生がそれを取り締まっているという学生街を舞台にした、暗黒青春ヒーローノベル。
主人公は、昼は眼鏡をかけた根暗な学生、夜は女装して過剰な暴力を振るう美少女ヒーロー。心に問題を抱え、常に余裕がなく、何かに駆り立てられるように悪を倒している。わりと内省的で鬱屈した描写も多いのですが、しかし熱い友情の物語であるわけです。

スチームヘヴン・フリークス

スチームヘヴン・フリークス (ガガガ文庫)

スチームヘヴン・フリークス (ガガガ文庫)

「ミアズマ」と呼ばれる特殊な蒸気によって文明が発展した、スチームパンク世界の1960年代アメリカが舞台。
ミアズマによって不思議な機械「クラフト」が作り出され、ミアズマによって変異した人間「ミスティック」が超能力を振るい、ミアズマから生まれた怪物「クリーチャー」が街を徘徊し、ミアズマから現れた書物「オラクル」が世界にオーバーテクノロジーをもたらす。
クラフトを悪用して事件を起こす怪人、その裏で陰謀を企む悪の狂科学者に、警察、探偵、マフィア、そしてヒーローたちが絡んで、ドタバタ騒ぎを繰り広げる群像劇。美味しい要素が詰め込まれた賑やかな一品です。

我がヒーローのための絶対悪

アメコミモチーフかというと日本の特撮ヒーローっぽさが強いような気がするけどこの際だから入れてしまおう。
最強のヒーロー「ガイムーン」となった幼馴染を救うため、主人公はパワードスーツを着込んで悪の総帥「ヘルヴェノム卿」となり、悲しい死闘を繰り広げる、という話。
社会から排斥された怪人たちを組織して「悪の秘密結社」を再興するあたりは『コードギアス』も思い起こさせる。主人公自身は「怪人」ではない、というあたりが余計に。

魔法少女禁止法

魔法少女禁止法1

魔法少女禁止法1

魔法少女もので『ウォッチメン』パロディ、というコンセプトの作品。
魔法少女」が禁止された世界で、元・魔法少女たちが次々に殺されていく…というストーリーはウォッチメンそのままですが、その調査の過程で、『魔法使いサリー』からはじまる実際の魔法少女(魔女っ子)の歴史をなぞっていくので、「このキャラはどの魔法少女がモチーフだろう」と考えながら読むと楽しいです。

ニンジャスレイヤー

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上 (1)

原作はアメリカの小説なので「モチーフ」というよりは「そのもの」という感じですが。ですよ。ですよね。
いまさら説明も不要でしょうが、家族を殺されて復讐のニンジャと化した主人公が、総会屋を潰したり、財閥を倒したり、天下りと戦ったり、野球をやったり、寿司を握ったりする、サイバーパンクなニンジャ群像劇です。こう書いてみると意外に「アメコミっぽいストーリーライン」ではないような気も。

取り急ぎ以上!

異世界チートでも異能バトルでもない「最近のラノベ」30選

Twitterを見ていると、「最近のラノベは異世界でチートするような作品しかない」みたいなツイートがよく流れてきてイライラするので、おうそれやったらファンタジーとか異能バトルとか以外でオススメのラノベを紹介したろうやないか、と思って書いたのがこの記事です。

最初は「異」で韻を踏もうと思って「異性ハーレム」という新語を爆誕させたんだけど流石にちょっと無理やりだったので外しました。でもなるべくハーレムラブコメも避けてるよ。

あといわゆる「ライト文芸」系は、私があんまり読んでないので入ってないよ。

という感じでいきます。


この恋と、その未来。

まずは鉄板の作品からいきましょう。作者は森橋ビンゴ。過去にも『三月、七日。』『東雲侑子』シリーズなど、恋愛ものの名作を送り出し、一方で漫画原作やゲームシナリオなども手がけているマルチな作家さんである。『この恋と、その未来。』は、性同一性障害FtM)の少年(少女)と、彼に恋をしてしまった主人公の苦悩を描いた作品。広島のご当地ネタがたっぷり。主人公周りの男子校ノリも楽しいです。

青春ブタ野郎シリーズ

アニメ化もされた『さくら荘のペットな彼女』の作者による青春ストーリー。「思春期症候群」と呼ばれる少し不思議な病にかかったヒロインたちを主人公が救っていくという構成。その主人公がめちゃくちゃかっこいいんですよね。ふざけた感じに見せておいて気が利くし察しも良いタイプの有能イケメン。ちなみに、ヒロインは巻ごとに代わるけど、主人公は恋人一筋ですよ。

りゅうおうのおしごと!

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

りゅうおうのおしごと! (GA文庫)

中学生でプロ棋士となり、史上最年少で「竜王」のタイトルを獲得した主人公が、あるとき自宅まで押しかけてきた女子小学生を弟子にすることになる…という話です。作者は『のうりん』の白鳥士郎。豊富な取材に裏打ちされた馬鹿馬鹿しいギャグとシリアスの共演。ラノベ読みによる人気投票でもトップを独走しており、現在最も注目されているライトノベルと言っても過言ではありません。

王手桂香取り!

王手桂香取り!  (電撃文庫)

王手桂香取り! (電撃文庫)

将棋ラノベと言えばこちらも忘れちゃいけません。高校の将棋部に所属している主人公が、将棋の駒たち(の擬人化キャラ)に指導されて強くなっていく、いわばラノベ版将棋版の『ヒカルの碁』のような話。最初は「将棋で強くなって憧れの先輩に近付く」みたいな動機もあったりするんですが、もともと生真面目な主人公のこと、根底にあるのは純粋な成長物語です。

ヴァンパイア・サマータイム

一巻で完結。ラノベ読みからカルト的な人気を誇る作家・石川博品が贈る恋愛ストーリー。人間の主人公と吸血鬼のヒロインの話なんですが、種族の違いはあっても、二人ともごく普通のお馬鹿な高校生。同性の友達とは明け透けな話をしているくせに、二人きりになればかっこつけたり、相手を美化したり、そういう思春期的な描写が非常に上手いんですよね。

俺の教室にハルヒはいない

四巻で完結。何故だか次々にアニメ業界人とコネができていく普通の高校生(普通の感性をしているとは言いがたいけど)の捉えどころのない恋愛模様が描かれる青春ラノベ。作者である新井輝自身が、最近はアニメの脚本もこなしているということで、リアルなのかどうなのか分からないようなエピソードがてんこもりです。ちなみに『ハルヒ』は作中でキーアイテムとして使われるだけでパロディとかではないです。

男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。

作者は『キノの旅』の時雨沢恵一で、なるほどこのクソ長いタイトルも喜々として付けそうだなという感じ。東京へ行くための電車の中で主人公のラノベ作家がクラスメイトの声優にラノベについてあれこれと語るという話。それ自体は、興味深くはあっても面白いものではないのですが、「なぜ首を絞められているのか?」という謎を引っ張って引っ張って、最後にはちゃんと「物語」をぶつけてきてくれるので安心してください。

SとSの不埒な同盟

二巻で完結。窓越しに想い人を眺めて嗜虐的な妄想を語りあう、サディスティックな二人を主役にした学園恋愛もの。二人は協力しあい、本性を隠して相手に近付くが…という話。作者の野村美月は、確かな実力はもちろんのこと、最近は単巻もしくは上下巻の作品を連続で出しており、「長いシリーズものは買いづらい」という人におすすめですよ。

アルジャン・カレール

一作者一作品のつもりだったんですが野村美月作品からもう一つ。王都に店をかまえる凄腕の菓子職人――実はかつての戦争で活躍した軍人である、その彼を主人公とした連作短編集。要するに、アントナン・カレームをイケメンの元軍人にして、女王陛下とのラブロマンスをプラスしたような歴史ファンタジーです。こちらも上下巻できっちり完結しています。

路地裏バトルプリンセス

路地裏バトルプリンセス (GA文庫)

路地裏バトルプリンセス (GA文庫)

四巻で完結。女装してコスプレして廃ビルで自撮りしていたら、いつのまにか路上格闘の頂点に君臨する「魔王少女」と呼ばれていた――そんな主人公が、「魔王少女」に憧れる少女を弟子にするところから始まる、格闘と師弟と、そして恋の物語。読んでのとおり変態な主人公ですが、ラブもバトルもビシっと決める格好良い奴ですよ。

ひとつ海のパラスアテナ

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

全ての陸地が海に沈んだ遠未来を舞台に、遭難したり海賊に襲われたりしながらも、逞しく生きる少女たちを描いた海洋冒険SF百合ラノベ。そう、百合です。百合ハーレムです。壮絶なサバイバルが描かれつつも、根っこのところはけっこうコミカルな話だったりもします。「現代」の言葉や慣習が、彼女たちの時代に間違った意味で伝わっているのが面白かったり。

いでおろーぐ!

恋愛至上主義の撲滅を掲げ、学生運動ばりに過激に活動するヒロインと、その彼女を補佐する主人公のコンビを描いた青春ラブコメ。打倒リア充を掲げてはいるけれど、こいつら自身がバカップルじゃん、だめじゃん、とツッコミつつも、不器用すぎる二人の関係が微笑ましい。二巻からぐんと面白くなるタイプの作品なので是非とも既刊一気買いを。

きんいろカルテット!

きんいろカルテット! 1 (オーバーラップ文庫)

きんいろカルテット! 1 (オーバーラップ文庫)

三巻で完結。日本的な「吹奏楽」に溶け込めないものの、才能に溢れた四人の女子中学生に、やはり実力はあるが日本の音楽界に馴染めない主人公がコーチを引き受ける…という話。作者はプロのユーフォニアム奏者で、その名も「遊歩新夢(ゆうほにうむ)」。ユーフォニアムと言えば『響け!ユーフォニアム』を思い出される方も多いと思いますが、発行時期はほとんど同時なので本当にただのシンクロニシティです。

ゲーマーズ

生徒会の一存』の葵せきな最新作。誤解と偶然を積み重ね、ひたすら擦れ違いと勘違いを繰り返す、これぞラブコメという感じの王道ラブコメ。ギャグかコントかというくらい、思い通りにはいかない登場人物たちの行動に、「なんでそうなるんだよ!!!」と叫んでしまうこと請け合いです。サブタイトルも素晴らしいんですよね。

彼女が捕手になった理由

彼女が捕手になった理由 (一迅社文庫)

彼女が捕手になった理由 (一迅社文庫)

ラノベでは少ない少ないと言われながらも、意外に定期的に刊行されている「野球ラノベ」です。尖ったメンバーたちが上手く噛み合っていなかった中学野球チームが、一人の女子の加入によりチームとしてまとまり快進撃を開始する、という話。主人公とヒロインの中学生らしい甘酸っぱい関係も素敵。

たま高社交ダンス部へようこそ

たま高社交ダンス部へようこそ (角川スニーカー文庫)

たま高社交ダンス部へようこそ (角川スニーカー文庫)

週刊少年ジャンプで連載されているのは『鹿高競技ダンス部へようこそ』、こちらは『たま高社交ダンス部へようこそ』。競技ではなく社交ダンスだというところに力点が置かれている感じです(でも競技はするんですけど)。初心者がダンスを始めるときのドキドキを丁寧に描いた良作です。

されど僕らの幕は上がる。

二巻で完結。「若者たちがシェアハウスで暮らす」というリアリティ番組を舞台にした、ちょっと痛めな青春もの。番組の台本によって実際とは異なる「キャラ」を演じる主人公たち。やがて無理やりに番組を卒業させられるメンバーが出てきて…という話です。登場人物たちの言動にはけっこうイライラさせられることもあるのですが、それも青春という感じ。

放課後のゲームフレンド、君のいた季節

一巻で完結。MMORPGを通して始まる廃ゲーマー同士の恋。甘々な展開にニヤニヤしていると、やがて不穏な雲行きに…ラストは賛否が分かれるかもしれません。ちなみに作中で登場するゲームは、同作者の別作品の舞台だったりします。

黒崎麻由の瞳に映る美しい世界

黒崎麻由の瞳に映る美しい世界 (ファミ通文庫)

黒崎麻由の瞳に映る美しい世界 (ファミ通文庫)

二巻で完結。超然としていて、クラスの中で浮いている少女と、地道に仲良くなっていく主人公たち。しかし、彼女には秘密があって…という、ちょっとオカルティックな恋愛もの。刺激的な展開はありませんが丁寧な良作です。

二度めの夏、二度と会えない君

二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫)

二度めの夏、二度と会えない君 (ガガガ文庫)

夏といえばタイムリープだ!…というわけで、難病+ロックバンド+やり直しという青春恋愛もの。一巻で完結。ヒロインと出会った日に戻って、彼女との思い出を追体験していくという、ベタと言えばものすごいベタな話なんですが、何が驚きかってこれを書いたのが『下ネタが存在しない退屈な世界』の作者だということなんですよね。この落差よ。

あの夏、最後に見た打ち上げ花火は

あの夏、最後に見た打ち上げ花火は (ガガガ文庫)

あの夏、最後に見た打ち上げ花火は (ガガガ文庫)

夏といえばUFOだ!…というわけで、田舎町を舞台にしたボーイミーツガール。謎の少女の正体を探っていくうちに、昔の小説と現在の状況がリンクしていきます。はたして過去に何があったのか。良くも悪くも新人らしい荒削りな作品で、スマートな『二度めの夏〜』と好対照な感じです。この作家は「小説家になろう」で投稿もしていた人で、『シュガー・シュガー・シュガー(!)』も北海道の大学を舞台にボカロPを主人公にした話で面白かったです。

夏の終わりとリセット彼女

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

夏といえば記憶喪失だ!…というわけで、ダメ人間の主人公とクソ真面目なヒロインが付き合うことになった…と思ったら、彼女が記憶喪失になってしまうという話。一巻で完結。記憶を失う前の彼女はどうして自分に告白してきたのだろうか、彼女は本当に自分のことが好きだったのだろうかと、主人公が悩みながらも関係を再構築していく。第1回ライトノベル・フロイントライン大賞にも選ばれていましたね。

俺より強いあの娘を殴りに行く

俺より強いあの娘を殴りに行く (ファミ通文庫)

俺より強いあの娘を殴りに行く (ファミ通文庫)

「小説家になろう」発の作品は異世界転生だけじゃないんだぜということで、こちらはゲーセンを舞台にした青春小説。タイトルから分かるとおり某格ゲーが題材になっています。昔からゲーセンやゲーマーを題材にしたラノベは名作揃いで知られていますが、その系譜に連なる作品と言えるでしょう。

あじさいの季節に僕らは感応する

一巻で完結。どこの誰ともわからぬ少女の五感を「共有」してしまうという、不思議な能力を持った少年が、その少女と出会うところからはじまるボーイミーツガールもの。伝奇っぽさオカルトっぽさを多分に含んでいる超能力ジュブナイル。わりと懐かしい感じではないでしょうか。

未来/珈琲 彼女の恋。

未来/珈琲 彼女の恋。 (GA文庫)

未来/珈琲 彼女の恋。 (GA文庫)

未来から自分の娘がやってきて様々な騒動を巻き起こす…という感じのファミリーコメディ。ファザコンな双子姉妹が可愛らしいのはもちろん、主人公とヒロインの愛の強さが良いんですよね。文字通りの意味での正妻力…いや、母親の力か…。

愚者のジャンクション

前後編で完結。同じ部活の仲間が殺された事件の謎を追うサイコサスペンス。登場人物は主人公も含めて異常者ばかり。誰も彼もが黒幕に見えてくるような狂った状況。主人公は追い詰められ、やがて暴走していきます。後編では、同じ事件が別の視点から描かれるという仕掛けになっております。

サディスティックムーン

感情の希薄な主人公を行動力に溢れるヒロインが振り回すラブコメ…というとありがちな設定に聞こえるかもしれませんが、この作品は恐ろしくおぞましい何かですよ。他人の復讐に勝手に首を突っ込んでは、あまりにも、あまりにも凄惨な仕打ちを行うという、本当に狂っているとしか言いようがない傑作。大好きです。

ようこそ実力至上主義の教室へ

就職率100%と評判のその学校は、充実した施設に10万円のお小遣いが支給され、ガリ勉を強要されることもない夢のような環境だ…と思ったらやっぱり罠でした、という話。いや罠と言っても、「校内で殺し合いじゃー」みたいな怖い展開ではありませんが。クラスメイト同士で協力しあって這い上がろう、という話になります。

パラダイスレジデンス

パラダイスレジデンス1 (講談社ラノベ文庫)

パラダイスレジデンス1 (講談社ラノベ文庫)

月刊アフタヌーンで連載されている藤島康介の漫画作品のノベライズ。作者はあの野梨原花南ですよ奥さん。原作漫画も読んだことがあるんですが、女子校のおとぼけ日常系といった感じの原作と比べると、こちらは少女たちの様々な心の機微をより深く描いている感じ。漫画と小説という媒体の違いを感じさせます。

こうして魔女は生きることにした。

こうして魔女は生きることにした。 (ノベライドル)

こうして魔女は生きることにした。 (ノベライドル)

竹達彩奈ボイスのバーチャルアイドルが小説を書いている」という面白コンセプトのラノベレーベル「ノベライドル」からこちらの作品。天才作家に振り回される見栄っ張りな少女を描いた切ない青春ストーリー。ちなみに自分が読んだもう一つはアメコミ風のダークヒーロー学園アクションでした。これほど作風が違う小説を書き分けるなんて、ふみのんはやっぱりすげえぜ。




かなり疲れましたが、これで30作品です。

改めて強調しておきますが、これらは、この数年のあいだに私が実際に読んで、その中でオススメのものだけを、しかも30作品に絞って紹介しているに過ぎません。

「非ファンタジー」「非異能バトル」なライトノベルはいくらでもあるのです、と声を大にして主張したいところです。

もちろんファンタジーや異能バトルだって元気ですけどね。

今は十年前と比べても、ラノベ全体の刊行数は増えており、また続々と隣接領域へと進出していったこともあって、より幅広いジャンルがカバーされていると感じます。

「どれも同じように見える」と諦めたりせず、是非ともお好みのラノベを探してみてください。よろしくお願いします。


追記。
紹介するのを忘れてた。ラノベ読者による人気投票イベントが半年ごとに行われています。作品選びの際にはそちらも参考にしてください。そして次回には投票も!

Twitter上で投票をする「ラノツイ」。

ブログから投票をする「好きラノ」。

「小説家になろう」のWeb小説における異世界ファンタジー類型まとめ

maezimas.hatenablog.com
このあたりの話題から、「小説家になろう」(以下「なろう」)における異世界召喚や転生などの類型の話が出てきていたので、思いつくかぎり挙げていってみる。

ただ、私もここ一年くらいは紙のラノベに専念していて、Web小説の方はほとんど追いかけられていない。そもそも一番読んでいたときだって、ランキングを毎日チェックするようなことはなかったし、2chとかも見ていなかったので流行にも疎かった。そのことは、これからの文章中に「だろうか」「気がする」を連発していることからも察していただけると思う。

そんなわけで、もっと詳しい人が、もっと詳しい解説を書いてくれればいいな、と思います。

異世界転生(そのまま)

トラックに轢かれて死亡後、神様的な存在と出会い、特殊能力を貰って異世界に送られる、というのが「トラック転生」「転生チート」などと呼ばれるものである。現在アニメ放送中の『この素晴らしい世界に祝福を!』がこのパターン(のパロディ)だ。

このタイプの異世界転生は、主人公の姿形は変わらず、アイデンティティを保ったまま転生するので、実質的には「召喚」とほとんど変わらない。神様的な存在から目的を提示されているので、序盤から行動に迷うこともなく、スムーズに異世界に馴染んでいくことが多い気がする。

導入部分がテンプレ化しているのは、そういった「前置き」をプロローグで済ませてしまって、さっさと「本編」である異世界に入りたいからだろう。古くからのファンタジー読者の中には「オリジナリティ溢れる異世界をゼロから構築することこそファンタジーの醍醐味」とお思いの方も多いと思うが、「なろう」では「どうでもいいところは積極的に共通化して自分の書きたいところに注力する」というスタイルの作品が多いように感じる。どちらが悪いというわけでもない。スタイルの違いである。と思う。

異世界転生(生まれ変わり)

その一方で、「死んだと思ったら異世界に転生して赤ん坊になっていた」という設定の作品も多い。というか、こっちが本来の「転生」である。現在の累計一位である『無職転生』がその代表格だ。

このパターンでは、生前とは別の人間として生まれることになる。主人公の誕生直後から始まり、こっそり本を読んで*1魔法などを覚えたりしつつ、幼児から少年へ、少年から青年へと成長し、それに伴い物語の舞台も変遷していく、といったような筋書きになる。同じ転生ものでも上記の「アイデンティティを保ったまま転生」とは全くストーリーが変わってくるのだ。

さらに捻ったパターンとしては「多重転生」と呼ばれるものもある。主人公が何度も転生を繰り返し、様々な世界を渡って、いろんな世界の能力を獲得している、みたいなやつである。

と、ここまで書いてきて何だが、このあたりの話は漫画家の後藤寿庵氏のブログの記事が素晴らしくよくまとまっているので、そちらを読んだほうがいいと思う。

「モンスター転生」も紹介しておこう。これは文字通り「転生したと思ったらモンスターになっていた」という話で、ゴブリンだのスライムだのといった雑魚モンスターとなり、別のモンスターを倒してレベルアップしたり、その能力を吸収したりして徐々に強くなっていく、といったものが定番である。代表作は『Re:Monster』や『転生したらスライムだった件』あたりだろうか(どっちも未読)。

Re:Monster(リ・モンスター)

Re:Monster(リ・モンスター)

転生したらスライムだった件1 (GCノベルズ)

転生したらスライムだった件1 (GCノベルズ)

  • 作者:伏瀬
  • 発売日: 2014/05/30
  • メディア: 単行本

他にも、モンスターに生まれて魔王軍で出世を目指すとか、魔王の子供として生まれて魔界で「内政」するといったパターンもある。テンプレが確立されると「それを逆手に取ってやろう」という意識が働くわけだが、「悪の側から描く」というのもその一形態なのだろう。

女性向けでは「ドラゴンなどに転生して将軍や騎士と仲良くなる」といった話をたまに見かける。異類婚姻譚みたいなものだろうか。

異世界転移

死んだり生まれ変わったりするわけではなく着の身着のまま異世界にやってくるパターン。かの『不思議の国のアリス』や『オズの魔法使い』でも使われた伝統の手法だ。

「転生」と違って何の説明もなく異世界に放り出されることになるので、手探りで冒険していく話が多い気がする。「なろう」での代表格はなんだろう。個人的に印象に残っているのは『異世界迷宮の最深部を目指そう』だけど。

女性向けでは、王宮の庭あたりにいきなり現れて、居合わせた王子様に一目惚れされ、「彼女は伝説の聖女だ…」といった感じでラブロマンスになることが多いような気がする。

異世界召喚

異世界転移の下位カテゴリになるのだろうか。勇者や聖女として異世界に召喚されるパターン。勇者として召喚されることで「勇者」に相応しい能力が備わったりする。

転生トラックの省略されっぷりと比べれば、「どうして異世界に召喚されたのか?」「誰が主人公を召喚したのか?」ということが問題になりがちで、それが物語全体の謎とされることもある。先ほど挙げた『最深部』も実はそんな感じだし、あとアニメ化決定の『Re:ゼロから始める異世界生活』もそうだ。

Re:ゼロから始める異世界生活 1 (MF文庫J)

Re:ゼロから始める異世界生活 1 (MF文庫J)

「召喚する側が実は悪役でした」ということも多く、召喚された異世界人が奴隷のように扱われるのを察知して主人公が逃げ出したり、主人公が魔王を倒したところで仲間に裏切られたり*2…といったバリエーションがある。たとえば『ウォルテニア戦記』は自分を召喚した魔術師を殺すところから始まったりする。

ウォルテニア戦記 (HJ NOVELS)

ウォルテニア戦記 (HJ NOVELS)

  • 作者:保利亮太
  • 発売日: 2015/09/19
  • メディア: 単行本

あるいは、友人と一緒に召喚されたけど、友人だけが勇者認定される、みたいな話とか。「なろう」テンプレはわりと「脇役」志向である。こちらのパターンは『異世界魔法は遅れてる!』とか。

集団転移

異世界召喚からの派生で、「大勢の勇者が召喚された」とか、「クラス全員で異世界に転移した」といったパターン。その際に全員がスキルを身に付けるが、主人公は一人だけ役に立たないスキルで、他の仲間たちから切り捨てられてしまい…といったパターンをよく見かける。『十五少年漂流記』の系譜なのかもしれない。

灰と幻想のグリムガル』(外伝が「なろう」で連載)のように、転移者がぽつぽつとやってきている設定も、一種の「集団転移」に含まれるだろうか。

異世界接続

こちらの世界と異世界が接続されていて行き来ができる、というパターン。「なろう」掲載ではないが『ゲート 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり』が代表格だろう。とは言え「なろう」においては、現代と異世界を往来するような作品は少ないように感じる。

「店が異世界と繋がっていてファンタジーの住人たちがやってくる」という『異世界食堂』『異世界居酒屋「のぶ」』のような作品もある。が、個人的にどっちも未読だし、他に同種の作品があるかも知らないので、何とも言えない*3。どんな店を異世界に繋げるかでバリエーションがありそうだが…。

異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

異世界食堂 1 (ヒーロー文庫)

異世界居酒屋「のぶ」

異世界居酒屋「のぶ」

VRMMORPG

ヴァーチャルリアリティなMMORPGを舞台にしたパターン。要するに『ソードアート・オンライン』である*4。ゲーム内では完全にファンタジーな世界が再現されているので、実質的に異世界と変わらない。たった一人で異世界にやってくる転生ものと違って、一緒にプレイしているゲーマーたちがたくさんいるという点では、「集団転移」に近いかもしれない。また、MMORPGではなくFPSRTSを題材としていることもある。

「不人気ジョブを極めたら強かった」とか「使えないスキルも工夫すれば強かった」といった展開が定番である。とはいえ、そのスキルを何に使うわけでもなく、わりと淡々とレベルアップして、新たなスキルを習得して、珍しいアイテムを錬成して、新しいマップに行って…といった起伏の少ない話になることが多い気がする。「なろう」の異世界ファンタジーはよく「ゲーム実況」に喩えられたりするが、このタイプの作品はまさにゲーム実況そのものと言える。

また、ゲーム世界の中で鍛冶や料理、回復薬などの「生産職」を極めんとする作品も多い。そのあたりのクラフトマンシップ感は、「異世界で料理人になる」系の話に繋がるし、「現代知識で内政」系と通じるところもある気がする。

一時期は、SAOの影響を受けて「ログアウト不能」「ゲームオーバーは現実での死」というデスゲーム系も勢いがあったが、最近は下火になっていると思う。

チートやデスゲームといった特別な設定のない、VRMMORPGを普通のゲームとして普通にプレイする作品*5も「なろう」には存在しているが、そういうのは「異世界」っぽさが薄いのでここでは省く。

ゲーム実体化

VRMMORPGものをさらに押し進めて、ゲームが実体化して完全に異世界になっているパターンである。

というか、特に「ゲームが実体化した」と断らなくても魔法でステータスっぽいものが見えたりする作品も多いので、「異世界がゲーム的になっている」と言うべきかもしれない。

この世界がゲームだと俺だけが知っている 1

この世界がゲームだと俺だけが知っている 1

  • 作者:ウスバー
  • 発売日: 2013/04/27
  • メディア: 単行本

ゲーム寄りの異世界にすると何が良いのかと言えば、「ステータス」という形で情報を整理できる点である。たとえば初登場のキャラだってステータスを出せば名前から種族まで一発で説明できる。主人公についても「ジョブ」や「スキル」を持ちだして説明することで、これからどんなキャラを目指すのか、これまでにどのくらい成長したのか、新しく習得した能力がどのようなものなのか、といったことを分かりやすく説明できるのである。

ログ・ホライズン』はゲーム実体化+集団転移の作品だが、『オーバーロード』のように「一人だけゲーム世界に取り残された」といった作品も多い。

ログ・ホライズン (1) 異世界のはじまり

ログ・ホライズン (1) 異世界のはじまり

モンスター系の話とも相性が良いようで、主人公がゲームで作り上げていたモンスター軍団が実体化して…という作品も、いくつか見かけたことがある。他ならぬ『オーバーロード』がその一つだが、このパターンは『オーバーロード』が元祖なのだろうか。そのあたりの歴史はよく分からない。

オーバーロード1 不死者の王

オーバーロード1 不死者の王

  • 作者:丸山くがね
  • 発売日: 2012/07/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

モンスター系で言えば、「ダンジョンマスターとなってモンスター蠢く迷宮を運営する」というのも一つのジャンルになっている。ダンジョンを大きくして、モンスターを配置して、やってくる冒険者たちを罠にかけて…という筋書き。これもどこから出てきた発想なんだろう。

Web小説の偉い人は「このジャンルはこの作品が元祖!」「このジャンルはあの作品の影響を受けている!」「このジャンルとこのジャンルを初めて組み合わせたのがこの人!」みたいなことをもっと積極的に書き残して欲しいと思う。

ゲーム転生

「転生してみたら何だか見覚えのある世界が…これは俺がハマっていたMMORPGじゃないか!?」というパターン。実質的には「ゲーム実体化」と変わらない。

女性向けにおいては、「乙女ゲーの中の世界に生まれ変わる」ものと、その派生として「乙女ゲーの悪役ヒロインに生まれ変わったけどこのままだとバッドエンドを迎えるのでなんとかしなきゃ」系が猛威を振るっている。いわゆる「悪役令嬢もの」である。悪役令嬢もので最大のヒットは、ファンタジーではないが『謙虚、堅実をモットーに生きております!』*6。ただ、全体としてはファンタジーを舞台にした作品の方が多いと思われる。
http://ncode.syosetu.com/n4029bs/

また悪役令嬢ものの場合は「普通に暮らしていた主人公があるとき突然に前世の記憶を思い出す」という導入が多い。まあ乙女ゲーで乳幼児期の話をしても仕方ないしね。

異世界内転生

異世界の人物が死んで同じ世界に生まれ変わるパターン。というか、こっちが本来の「転生」である(二回目)。

老いた大賢者が「もっと道を極めたい」という一念で生まれ変わったりとか、世界を救った英雄が誰かに殺されて生まれ変わるとか。作品としては『火刑戦記を掲げよ!』『エルフでやり直す武者修行』あたりが思い浮かぶ。

火刑戦旗を掲げよ!  1 (MFブックス)

火刑戦旗を掲げよ! 1 (MFブックス)

タイムスリップ

異世界で現代知識チートする作品と言えば、まずは『アーサー王宮廷のコネチカットヤンキー』や『戦国自衛隊』が出てくるわけで、つまりタイムスリップだって広い意味で言えば異世界転移のようなものである。

死んだと思ったら戦国時代に生まれ変わっていた、気が付いたら第二次世界大戦の戦場だった、といった作品は「なろう」においても多く書かれている。いわゆる「架空戦記」の系譜でもあるのだろうし、歴史系やる夫スレや、ニコニコ架空戦記なんかともつながっているのだろう。

異世界憑依

「転生」が「異世界の人物として新しく生まれる」ものだとしたら、「憑依」は「異世界に存在している第三者の意識を乗っ取る」というものである。どうしてこういう分類があるかと言えば、「なろう」のWeb小説は二次創作文化からの影響を強く受けているからで、そして二次創作においては「原作キャラクターの意識をオリジナル主人公が乗っ取る」という作品が多かったからである。と思われる。

オリジナルが中心の「なろう」において、わざわざ「既に存在している第三者の意識を乗っ取る」必要があるジャンルといえば、そう、歴史ものである。歴史ものはいわば「史実の二次創作」。主人公が歴史上の偉人になりかわるときに「憑依」という表記が使われることがある。代表格は、元はArcadia掲載だが『腕白関白』あたりか。
http://ncode.syosetu.com/n2046bc/

というか、「なろう」における二次創作界隈の影響というのもあまり明文化されていないと思うので、二次創作SSの偉い人は死ぬ前に是非ともそのあたりを書き残しておいて欲しいと思う。

異世界

いくら「なろう」に異世界転生・召喚が多いと言ったって、異世界だけで完結している作品も、もちろん存在しているのである。『死神を食べた少女』とか『リーングラードの学び舎より』とか。

死神を食べた少女 (上)

死神を食べた少女 (上)

  • 作者:七沢またり
  • 発売日: 2012/12/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
死神を食べた少女 (下)

死神を食べた少女 (下)

  • 作者:七沢またり
  • 発売日: 2012/12/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

女性向けだと中華ファンタジーもかなりある。そう言えば「中華ファンタジー」の定義って「中国っぽい架空の世界」を舞台にしているだけじゃなくて仙人とか妖怪とか出てこないと駄目なんだろうか。『薬屋のひとりごと』や『紅霞後宮物語』は中華風ではあるけどファンタジーではないよなあ。

薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)

薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)

  • 作者:日向 夏
  • 発売日: 2014/08/29
  • メディア: 文庫
紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

紅霞後宮物語 (富士見L文庫)

  • 作者:雪村花菜
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: 文庫

まあ、それを言ったら西洋ファンタジーだって、魔法とか出てこなくても思わず「ファンタジー」と言ってしまうことがあるし、「文明が滅んだあと科学技術を魔法として使っている」みたいなのだとSFになるし…いや深く考えるのはやめよう。

最後に

テンプレートというのは、面倒な部分を省略して自分が書きたい部分に集中するための補助器具であると同時に、「俺ならこの設定はこうするぜ」「俺はこのお約束を逆手にとってやる」といった形で多様性を生み出すジェネレーターでもある。

この記事を読んでいるあなたも、「現代の弁護士が異世界召喚されてファンタジー裁判する話なんて面白そうだ」とか、「MMORPGの代わりに格ゲーを題材にするのはどうだろう」とか、そんなふうに発想が広がっていかなかっただろうか*7

何かのテンプレートをもとに膨大なバリエーションが恐ろしいスピードで生まれていくのは、小説サイトのみならず、SNS掲示板、イラストサイト、動画サイト、その他さまざまなネットコミュニティの常であり、決して珍しい現象ではない。

問題は、そういった流行を外から眺めたときに、そのスピードについていけず、ひとつひとつの作品の違いを見極められないことである。そうなったときに「最近の若者のなんたらかんたらな願望充足がどうたらこうたらで同じ話ばかり読んでいるなど嘆かわしい」などと切り捨ててしまってはもったいない。是非ともこの記事を参考に「なろう」をスコップ(=面白い作品を新しく探すこと)していただければと思う。

*1:ちなみに「本は高価だからなかなか手に入らない」とか「貴族の家に生まれたので高価な本がたくさんある」といった描写も定番である。そのあたりをテーマに据えた作品に『本好きの下克上』がある。

*2:物語的には、その裏切られたところから始まる。あるいは裏切られて死んで転生したところから始まったりする。

*3:料理ネタ自体は、現代知識チートの一種として定着しており、異世界でレストランを営んだり、宮廷料理人になったりする作品が多い。

*4:ちなみにSAOは「小説家になろう」の作品ではない。

*5:ゲーム世界だけでなく現実世界の出来事も描かれるタイプ。

*6:ツッコミが入ったので補足。『謙虚』の世界は乙女ゲームではなく少女漫画なのでこの項に入れるべきではなかった。自分の中で『ログホラ』が「VR」ではないのと同じくらい忘れがちな設定…。

*7:ちなみに検索してみたらどっちも普通にありました。

「好きなライトノベルを投票しよう!! 2015年下期」投票

決断的に投票だ。
好きなライトノベルを投票しよう!! - 2015年下期

たま高社交ダンス部へようこそ (角川スニーカー文庫)

たま高社交ダンス部へようこそ (角川スニーカー文庫)

【15下期ラノベ投票/9784041034149】

【15下期ラノベ投票/9784041032916】

【15下期ラノベ投票/9784041025697】

【15下期ラノベ投票/9784041037447】

グラウスタンディア皇国物語6 (HJ文庫)

グラウスタンディア皇国物語6 (HJ文庫)

【15下期ラノベ投票/9784798610450】

クロニクル・レギオン  3 (ダッシュエックス文庫)

クロニクル・レギオン 3 (ダッシュエックス文庫)

【15下期ラノベ投票/9784086310574】

路地裏バトルプリンセス 3 (GA文庫)

路地裏バトルプリンセス 3 (GA文庫)

【15下期ラノベ投票/9784797384314】

【15下期ラノベ投票/9784048655002】

【15下期ラノベ投票/9784094515800】

【15下期ラノベ投票/9784040707532】

今期はスニーカーが多いなあ。最近のスニーカーは調子が良い印象。あと「読んでいれば投票したと思うけどまだ積んでる」という作品が増えた…そのあたりは電子書籍でいつでも買えるようになって「新刊はすぐに買ってすぐに読む」というルーチンを気にしなくなったのと、あとは如実に読書ペースが落ちていることの影響が…。

ライトノベルブログ初心者ガイド 〜ネタと感想のブログリムガル〜


こんな記事があったので便乗して書いてみたいと思います。

ライトノベルブログを更新し続ける必要はない

確かに、ラノベの感想ブログでアクセスを稼ごうと思えば、人気作や話題作を真っ先に購入して、真っ先に読み、真っ先に感想を書き上げて欠かさずブログにアップすることを、毎日続けなければならないでしょう。

しかし、そんなふうに新刊に追われるような読書生活で、本当にいいのでしょうか。

自分の好きな作品を、好きなときに購入し、好きなときに読んで、好きなように書いた記事を、好きなだけブログにアップする生活こそ、ラノベ読みが真に目指すべきものではないでしょうか。

実は「感想ブログ」を目指す必要もない

いえ、感想は好きに書けばいいのですが、感想でアクセスを稼ごうとする必要はないのです。ラノベの感想はごく少数のラノベ読みしか読みません。しかし「ラノベについて解説する記事」なら、ラノベをあまり読まない人でも読んでくれるでしょう。

たとえば「ラノベ作家は本当に三年で辞めるのか?」と題して新人賞作家の生存率を調べてみたり。「最近は大人向けのライトノベルが増えていて…」などとトレンドを解説してみたり。「2015年のオススメラノベ」ということで好きな作品を紹介してみたり。「ゲームをテーマにしたラノベ」に絞ってピックアップしてみたり。「ラノベブログをやりたいならこんな記事を書け!」と初心者にアドバイスしてみたり。

そう、「ライトノベル感想ブログ」ではなく、ライトノベルネタブログ」をやればいいのです!

ブログサービスは「はてなブログ」一択

ラノベブロガーが妙に多くて馴れ合ってる感じの雰囲気。サービス全体に溢れるオタクっぽさと理屈っぽさ。そして何より「はてなブックマーク」の存在。「はてなブログ」は癖が強いけど良いサービスですヨ。君もはてな村の一員になろう!

はてなブックマーク」はなかなか説明しづらいですが、ブログの記事などのURLをネット上に保存して、後から読み返しやすくしたり、皆でURLを共有しあったりするようなサービスです。Twitterと連携すれば、ブックマークすると同時にそのURLをTwitterの方に流すこともできて便利です。是非とも利用してみてください。

そして次が肝心です。

記事を書いたら[ライトノベル]というタグを付けてブックマークする

そうすると私がやってきます。

私はタグ「ライトノベル」の新着記事を監視して、面白そうな記事があればそれを読み、だいたいはブックマークしています。するとTwitterに記事のURLが放流され、私をフォローしているラノベ読みの目に触れ、他のブックマーカーもやってきて、さらに上手くいけばはてなブックマークの「注目エントリ」になり、がっぽがっぽとアクセスが増えるというわけです。面白い記事が読めて私は嬉しい、アクセスが増えて貴方も嬉しい。Win-Winですね!

えー、逆に言いますと、ラノベに関するニュースとかブログ記事とかをチェックしたい方は@mizunotori のフォローをよろしくお願いします(宣伝)。

人気投票イベントに参加する

いまの時期なら、そう、「好きなライトノベルを投票しよう!!」という企画なんかいいんじゃないでしょうか(宣伝)。どのブログがどの作品に投票したのか分かるので、趣味の合うブログを見つけたり、そこから交流を深めたりすることができます。

困ったことに1/10(日)が投票の締め切り。急がねばなりません。今すぐブログを作って、すぐさま投票エントリを書き、そのまま投票してやりましょう。「お、知らないブログがあるな…新人ブロガーか…ううむ、何という絶妙なチョイス! 期待のニューカマーだ!」となること間違いなしです。たぶん。

もう一つ注意すべき点として、はてなブログにはトラックバック機能が無いので、投票フォームを使って記事のURLを送らなければいけません(とはいえ今時は「トラックバック」の方が馴染みが薄いのだろうか…)。

そもそもどうしてラノベブログを書くのか?

アクセスを増やしたいのか? アフィで稼ぎたいのか? 単なる読書メモか? 自分の好きなラノベをもっと多くの人に読んでもらいたいのか? ラノベについて自分が考えたことを他人に知ってもらいたいのか? ラノベに関する謂れ無き批判に反論したいのか? ラノベ業界を少しでも盛り上げたいのか? もっとラノベの読者を増やして、もっとラノベの売上を増やして、もっと作品の打ち切りとか、作家さんの断筆とかを減らして、もっと面白いラノベがこの世にたくさん産み落とされて欲しいのか?

そういった指針があれば、自ずとブログの方向性も決まってくるのではないでしょうか。ネタを書くにしろ、感想を書くにしろ、まずは職業を決めて、それに合わせたスキルを磨くのが大事だということですね(無理やりグリムガルと結びつける)。『灰と幻想のグリムガル』、テレビアニメも楽しみです(宣伝)。

2015年ライトノベル個人的ベスト10

1. 『グリモアコートの乙女たち』雨木シュウスケ

男子禁制の名門魔法学校に女装して入学した主人公。その容姿と実力により、あっという間に同級生も憧れる存在となった彼は、しかし夜になれば正体を隠して黒衣を身にまとい、学園に忍びこむ敵を倒してまわる謎の魔女となるのだ……というわけで、魔法+女子校+女装+ダークヒーローと、もう素敵すぎる要素が詰まっていて、まさに「こういうのが読みたかった!」という感じです。最高です。

2. 『ひとつ海のパラスアテナ』鳩見すた

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

ひとつ海のパラスアテナ (電撃文庫)

今年の電撃小説大賞の「大賞」受賞作。陸地が海に沈んでしまったウォーターワールドで、メッセンジャーとして生きる少女を描く。泥水を啜るようなサバイバルあり、しっかり者の美少女との百合あり、へんてこな遠未来SFネタあり、ツンデレ少女と遭難生活な百合あり、海賊たちとの殺し合いあり、百合あり、百合あり、百合ありの、海洋冒険活劇です。

3. 『俺の教室にハルヒはいない新井輝

祝・完結。わざわざ言うのもなんだかなーと思いつつ、勘違いしている人が多いのであらためて言っておくとですね、この作品を「ハルヒありきのパロディみたいなもんだろ」と思って避けている人は、もう本当に損をしてると思いますよ。声優をやっている幼馴染、同じくトップ声優の同級生、その他アニメ業界の楽屋話を絡めた、最高の青春恋愛ストーリーなのです。
http://sneakerbunko.jp/series/oreharu/

4. 『路地裏バトルプリンセス』空上タツ

こちらも最新四巻で完結したようなのですが、まだ最終巻は読めていない……タイトルどおり路地裏で戦うストリートファイターたちを描いた物語。可愛いヒロイン、個性的なファイターたち、ハッタリの効いた格闘シーンも素敵ですが、なにより女装コスプレで自撮りするのが趣味という変態主人公が、この作品の最大のチャームポイントです。

5. 『東京侵域:クローズドエデン岩井恭平

愛する人を取り戻すため、“人類の敵”によって封鎖された東京に、危険を犯して侵入する主人公たち。怪物が徘徊する廃墟をくぐり抜け、貴重な強化アイテムと回復アイテムを駆使して、パートナーと共にスカイツリーを目指す。超高難易度のステルスアクションゲームのような極限の緊張感。今度も岩井恭平の作品は最高だったのです。

6. 『ゲーマーズ!葵せきな

ゲームを愛する平凡な主人公が、学園一の美少女から「ゲーム部」に誘われ、個性的な面々に引き合わされて、夢のような環境にドキドキしながら……入部を断ってしまう、というところから始まるゲーマーラブコメ。偶然が偶然を呼びまくり、誤解が誤解を生みまくる、おっそろしくベタな展開の連続なんですけど、だからこそめちゃくちゃ面白い。ラブコメ好きに是非ともオススメしたい作品です。

7. 『クロニクル・レギオン丈月城

クロニクル・レギオン 3 (ダッシュエックス文庫)

クロニクル・レギオン 3 (ダッシュエックス文庫)

世界各地に神獣が降臨し、歴史上の英雄たちが蘇った、現実とは異なる20世紀末が舞台。日本の内戦に巻き込まれた主人公――正体不明の「復活者」は、野心溢れる皇女と共に起ち上がる。偉人集合ネタで現代ファンタジー戦記。「エドワード黒太子」や「衛青」といったメジャーともマイナーとも言いづらい絶妙なチョイスも最高。三巻までは、主人公の正体を推理する楽しみもあります。

8. 『いでおろーぐ!椎田十三

恋愛至上主義の打倒を標榜し、過激な演説やビラ撒きを繰り返す少女と、その活動を支える主人公を描いた青春ラブコメ。反恋愛運動を展開する中で、主人公とヒロインは明らかに惹かれ合っていくのですが、もちろん素直に告白して両想い……なんてわけにはいかない。でも周囲の仲間たちが、「裏切りモノ!」なんて無粋なことは言わず、温かく見守ってくれているあたり、実はとても優しい物語だと思います。

9. 『CtG -ゼロから育てる電脳少女-』玩具堂

いわゆるVRMMORPGモノなんですが、そこから生身の幼女が飛び出して現実世界にやってくるという一捻りがミソ。主人公とヒロインは彼女の「両親」として、現実とネットを行き来しながら、さまざまな陰謀や育児や幼馴染と戦っていくことになります。意外にSF要素も濃いのですが、とにかく幼女・ハルハの元気さ、健気さ、可愛さが、軽妙な文体で描かれていて、とても楽しいです。三巻で(残念ながら)完結してしまったので買いやすいと思いますよ。
http://sneakerbunko.jp/series/CtG/sneakerbunko.jp

10. 『保育の騎士とモンスター娘』神秋昌史

今年は豊作すぎて20作品くらい同率で並んでる感じなんですが、読みやすさと楽しさでこの作品を選んでみました。『CtG』と同じく子育て系ですね。人間と魔族の和平が成ったことで「人間が魔族を育てる保育園」が作られ、そこに生真面目な騎士が派遣されてくるというファンタジーコメディ。「平和な学校に馴染めない兵士」と「人間の常識が通じない魔族の学校」で二重に常識がねじれているわけです。個人的には、かつての強敵、いまは同僚のシルヴェイラ将軍が大好きです。
http://sneakerbunko.jp/series/hoikunokishi/