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「好きラノ 2018年下期」投票

lightnovel.jp

七つの魔剣が支配する

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いでおろーぐ!

【18下期ラノベ投票/9784048935166】

継母の連れ子が元カノだった

【18下期ラノベ投票/9784041076842】

ジャナ研の憂鬱な事件簿

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫)

【18下期ラノベ投票/9784094517484】

無双航路

無双航路 1 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)

無双航路 1 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)

【18下期ラノベ投票/9784065132289】

ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記

ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記 1 (レジェンドノベルス)

ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記 1 (レジェンドノベルス)

【18下期ラノベ投票/9784065135907】

ファイフステル・サーガ

【18下期ラノベ投票/9784040727004】

ランダム・ウォーカーシリーズ

世界を愛するランダム・ウォーカー (電撃文庫)

世界を愛するランダム・ウォーカー (電撃文庫)

【18下期ラノベ投票/9784048939591】

「お前ごときが魔王に勝てると思うな」と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい

【18下期ラノベ投票/9784896378016】

魔術の流儀の血風録

魔術の流儀の血風録 (講談社ラノベ文庫)

魔術の流儀の血風録 (講談社ラノベ文庫)

【18下期ラノベ投票/9784065137864】

2018年ライトノベル個人的ベスト10

七つの魔剣が支配する

今年は、同作者の『天鏡のアルデラミン』完結もあったんですけど、新作への期待を込めてこちらをチョイス。端的に言ってハリポタなんですが、ただ魔法学校が舞台というだけでなく、奇怪に蠢く迷宮じみた校舎に危険な変人狂人たちが跋扈する、並の生徒では生きて卒業もできぬという「魔窟」としての描写が秀逸。そこに『アルデラミン』の人物関係にも似た「固い友情で結ばれた六人」を主役として登場させ、また剣豪小説めいた「魔剣」という設定を用意することで、独自の作品世界をつくりあげている。最後の一撃も強烈。今後が楽しみです。

ウォーター&ビスケットのテーマ

イムループする街を舞台にした異能&知能戦。第二巻では各勢力の全面戦争にスケールアップ。トッププレイヤーたちの利害は複雑に入り組んで、それぞれに策謀のかぎりをつくして勝利を狙う。しかし、主人公とそのライバルだけが、全く別のものを見て、全く別の次元で戦っているという、この「怪物」と「天才」によるギリギリの闘いが最っ高にエキサイティングなんですよね。頭脳戦・心理戦をこよなく愛する人に、あるいはそうでない人にも、あらためて全力でオススメしたい作品です。

いでおろーぐ!

祝・完結。大性欲賛会の矯正施設に幽閉され、おぞましいほどの洗脳を受けたことで、己の根底にあるリア充への憎悪を喪失しかかるものの、その危機的な状況からかろうじて脱し、仲間たちの待つ最前線へと舞い戻る反恋愛革命戦士・高砂の雄姿が描かれる最終巻でした。なんのこっちゃ。このシリーズは本当に巻を重ねるごとに面白くなっていく大傑作なので、完結したいまぜひ一気読みしていただきたいですね。なんなら6巻の短編集から入るのもありかも。

継母の連れ子が元カノだった

デビュー作とは雰囲気を変えてきているんですが、「なろう」で連載されている『最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ』が本作と似たタイプの作品で、まさにWebという場で才能が開花したという印象があります。とにかくツンデレカップルの描写が異常に上手いんですよ。キャラの設定だとかはファンタジーと言っていいんですが、台詞が妙に生っぽいというか、ナチュラルな感じでキャラが立っていて、それで気持ちよく砂糖を吐ける。この手のラブコメを書かせたら業界で右に出る者がいないのではないかとまで思ってしまう。これが天賦の才というやつなんでしょうかね。

無双航路

無双航路 1 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)

無双航路 1 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)

前出の紙城境介と同じく、こちらもプロ作家がWeb小説として投稿した作品を書籍化したかたち。宇宙戦艦のAIになった主人公が、大敗を喫した自軍の残存兵を取りまとめて本国への帰還を目指す、といったストーリーのスペオペ。なろう系のスペオペ『銀河戦記の実弾兵器』なんかも面白かったけど、本作では戦艦に人格が宿るという設定から、ひと捻りもふた捻りもしているのがピリッと効いている。『銀英伝』のリメイクもあったことだし、SFラノベのプチブームが起きて欲しいなあ(これ毎年言ってる)。
レジェンドノベルス|シリーズ別一覧|無双航路

エートスの窓から見上げる空

女子高生とおじいちゃん先生が半地下の廊下に並んで座って、外を歩く女子高生のスカートを窓から見上げている、という構図がまず面白すぎる日常系ミステリ。語り手であるところの女子高生は、めっちゃクレバーな探偵役だけど、可愛い女の子が大好きなのと裏返しで、自己評価がやたらと低くて、いろいろと問題を抱えていて、そんな彼女を、老人が深い知性を感じさせながらも、あくまで教師として導いていく。この二人のちょっと悪ガキじみた共犯関係が素晴らしく魅力的なんですよね。

ジャナ研の憂鬱な事件簿

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫)

こちらも「日常の謎」系の青春ミステリ。先日の記事でも紹介しましたが、学園にとどまらずさまざまな立場の人間の仄暗い心理を描いた作品として、非常に完成度が高いと思っています。さらに、最新刊はちょっと三角関係っぽい感じになったりしていて、もうたまんねーって叫びだしたくなる青春でございます。『エートスの窓〜』と併せて購入して、ぜひラノベミステリ漬けになってほしいなあと思いますね。

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士

敵は倒した。世界は救われた。だからといって立ちどころに全ての問題が解決するわけではない。いまだ悩み、苦しみ、恨みを募らせる人々の、その思惑が複雑に絡み合うなかで、伝説の英雄はあっちこっちの陣営に潜入して、何とか事態を把握し、解決を図ろうとする…いかにも苦労性な話ですよね。最新の第二巻では、邪教徒の残党との争いに決着がつき、とても美しい結末が導かれましたが、これで打ち切りなんてことにならず、是非とも続きが読みたいですね。

魔女軍師シズク

魔女軍師シズク (ヒーロー文庫)

魔女軍師シズク (ヒーロー文庫)

図書室の奥深く、密かに鬱憤を抱える少女と、孤高の美しき少女が密会する。という素晴らしき百合的な導入から、二人がそれぞれに異世界に転移し、主に前者の視点から物語は進んでいく。ちょっと『ふしぎ遊戯』を思い出したりします。異世界にたった一人で放り出された主人公は、もちろん頼れる人もおらず、言葉もわからず、泥水をすするような生活をしながら機会を窺い、やがて傭兵団に潜り込んで軍師として台頭していきます。わりと邪悪な二人の少女が「現実」という束縛から解き放たれて異世界で何を成すのか。これは面白いですよ。

スカートのなかのひみつ。

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

女装少年と破天荒デブとドロボウ女子高生たちが繰り広げるキレッキレの青春群像劇。破天荒デブ、もとい常人離れした発想と行動力を持ついわゆる「スーパー高校生」な八坂幸喜真がこの物語のエンジンなわけですが、個人的にはやはり、女装のために努力を惜しまず、女装姿を褒められると恥ずかしがりながらも喜んでしまう、生粋の女装男子である天野くんが大好きなんですよね。近年最高の女装ラノベのひとつだと思います。

2018年ライトノベル10大ニュース

電撃文庫25周年・新文芸に参戦

電撃文庫が創刊25周年にあわせてついに「新文芸」に挑戦。

先行してカクヨムに公式チャンネルを開設したことも話題になりました。
電撃文庫(@dengekibunko) - カクヨム

ちなみに「新文芸」というのはKADOKAWAが提唱する造語で、大雑把に言えば「(「なろう」だけでなくボカロ小説やフリゲ小説なども含め)Webから書籍化した小説」の総称です。電撃文庫は、川原礫佐島勤の二大作家を手中に収めて以降は、散発的にしかWeb小説のスカウトをしていなかったのですが、ここで大きく方向を転換したということになります。

富士見ファンタジア文庫30周年・『スレイヤーズ』の復活


富士見ファンタジア文庫の30周年にあわせては『スレイヤーズ』が復活。
といっても短編シリーズの新作は2011年まで刊行されていましたし、2008年と2009年にはアニメ化までされているので、世間で言われていたような「18年ぶりの復活」というのはちょっと誇大広告のように思えますね。

あと、なぜか公式がぜんぜん主張してきませんが『セイバーマリオネットJ』や『リアルバウトハイスクール』といった懐かしい作品の復活もアナウンスされています。

スニーカー文庫30周年・『ザスニLEGEND』刊行

30周年特設サイト|スニーカー文庫(ザ・スニーカーWEB)

スニーカー文庫30周年としては、2011年に休刊となった雑誌『ザ・スニーカー』が、『ザ・スニーカーLEGEND』として一号かぎりの復活。『涼宮ハルヒ』シリーズの新作短編が掲載されて、こちらも話題になりました。

さらに、同じく30周年となる『ロードス島戦記』の再始動も決まっています。

『錆喰いビスコ』がこのラノで一位

今年は『りゅうおうのおしごと!』がアニメ化、作者の結婚(おめでとうございます)、将棋ライターとしても活躍と、一年を通して存在感を見せつけていましたが、その『りゅうおう』の三連覇を阻んで「このライトノベルがすごい!」で一位となったのが『錆喰いビスコ』でした。

今年デビューの新人で、独特の世界設定が特徴の痛快バディアクション。古い作品が復活するばかりではなく、新しい芽も出てきた一年だったと思います。

錆喰いビスコ (電撃文庫)

錆喰いビスコ (電撃文庫)

異世界テニス無双』パクリ論争

さて、こんなにたくさん燃えたことはこれまで無かった、というくらい多発した今年の炎上を振り返っていきましょう。

今年最初の炎上はこちら。
明白にテニプリのパロディとして作られた作品が「パクリ」だと糾弾されて打ち切りになるという不幸度の高い事件でした。作者の望公太がすぐさま『ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?』をヒットさせているのがせめてもの救いか。

如月真弘プロモツイート騒動

富士見ファンタジア文庫から『山本五十子の決断』でデビューした如月真弘が、そのプロモツイートを流そうとしたところ「性的である」と判断されて禁止された件。

どっちかというと作者のほうが炎上気質…なのはともかく、「Twitter社の詫び老人」の真偽で盛り上がったり、「乳首が浮いてる」「浮いてない」で論争があったりしました。いま思うと後の騒動の前哨戦みたいなものですね。

ちなみに『山本五十子の決断』は富士見ファンタジア文庫で打ち切りとなったあとMC☆あくしずBOOKSから続編が刊行されるそうです。

山本五十子の決断 (ファンタジア文庫)

山本五十子の決断 (ファンタジア文庫)

ブギーポップ炎生

アニメ『ブギーポップ』に絡んで、原作イラストレーターの緒方剛志が「キャラデザの確認が回ってきていない」とTwitterで告発したことで、炎上気味に話題となりました。

のちに問題は解決したようですが、昨年の『けものフレンズ』の件も引き合いに出されて、カドカワの「悪者」度が進行することになりました。

二度目の人生を異世界でヘイトスピーチ事件

アニメ化が発表された一週間後に、作者の過去のヘイトスピーチが発掘されてアニメ化は中止、作品は出荷停止となりました。

ただ、ヘイトスピーチよりもむしろ「主人公が中国人を虐殺した」といったデマ(と言っていいでしょう)が中国において流通したことで問題が大きくなったところがあり、作者に落ち度があったとは言え、こちらも不幸度が高い事件でした。

二度目の人生を異世界で (HJ NOVELS)

二度目の人生を異世界で (HJ NOVELS)

境界線上のホライゾン』ポリコレ問題

そして最後にして最大の炎上。
ラノベの表紙が気持ち悪い」という問題提起から、「Vtuberが」「児童文学が」「抱き枕が」「BLが」とひたすら論点が拡散して、もはやラノベがどうこうではなく日本のネット世論を二分する泥仕合になってしまいました。ぶっちゃけ関わりたくねーなーって感じですが。

そんな中で『境界線上のホライゾン』が無事に完結を迎えたことは素直に喜ばしいですね。

いまどきの炎上は、そもそもの常識が違うクラスタ同士が角突き合わせて「我々の常識に照らし合わせると明らかに悪い」「いや我々の常識では悪くない」ってやりあってるので、これまでの炎上に多かった「明らかにこいつは悪いけど叩きすぎだろ」とか「明らかに悪いと思って叩いていたら冤罪だった」みたいな問題とはまた違うキツさがあります。

ラノベVtuberが登場

最後に明るいニュースに戻りましょう。今年の流行といえば何と言ってもVtuber。ご多分に漏れずラノベ界隈でも多数のVtuberが出てきましたが、その中で特筆すべきはやはりラノベ好きVtuber「本山らの」でしょう。
5月にデビューしてからたちまち人気者となり、いまではプロ作家とのコラボを定期的に行うまでになっています。ここまでフォロワーが増えれば本当に打ち切り判定に影響があるんじゃないかな…と思ったりしつつ、さらなる活躍を祈念する次第であります。


というわけで2018年の10大ニュースでした。今年のラノベ業界をひとことで表すなら「炎上と復活」ということで、来年はフェニックスのように羽ばたいていただきたいですね。

昔のラノベが好きだったあなたに現在のラノベをオススメする Part2

「昔のラノベと今のラノベで何となく似た要素がある作品を比較して紹介しちゃおう」コーナーの第二弾です。第二弾ということは第一弾もあるということでそれはこちらです。
kazenotori.hatenablog.com
「十年前」じゃ収まらなくなってきたので「昔」にしました。あと「vs」とか書いてますけど「この話が好きならこっちの話も面白いと思うよ」くらいの感じです。気楽に受け取ってください。

キノの旅』vs『世界の果てのランダム・ウォーカー』

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

世界の果てのランダム・ウォーカー (電撃文庫)

世界の果てのランダム・ウォーカー (電撃文庫)

旅人がさまざまな街を巡る連作短編集――第24回電撃小説大賞金賞『ランダム・ウォーカー』シリーズが『キノの旅』の系譜に連なることは、その帯文を時雨沢恵一が担当したことからも瞭然です。

一話のラストでまずやられました。ああ、そう来るかと。

世界の果てのランダム・ウォーカー | 第24回電撃小説大賞 受賞作特集サイト

『ランダム・ウォーカー』の凄まじさは、一話ごとに時代も場所もまるきり変えてしまうところにあります。あるときは神権政治から脱しようとする森奥の王国、あるときはVR技術が発達した中華風の都市、あるときはHip-HopやEDMにノッて戦う剣豪たちの国、あるときは遺跡から現れたエイリアンに寄生されて全滅した村……それらが「天空に浮かぶ超文明都市とそこから派遣された調査官」という設定で串刺しにされることで、シリーズとして成り立っているというわけです。

見事なアイディアを惜しげもなくひとつの短編に注ぎ込む贅沢。寓話風の『キノの旅』とはまた違った、センス・オブ・ワンダーに満ち溢れたSF短編集です。

氷菓』vs『ジャナ研の憂鬱な事件簿』

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (ガガガ文庫)

この『ジャナ研』というシリーズは、実際のところ米澤穂信作品に多大なる影響を受けていて(と直接聞いたわけではないけどそうでないならびっくりする)、ものすごくざっくり言うなら「小市民シリーズ」の主人公・小鳩常悟朗と、「古典部シリーズ」のヒロイン・千反田えるを組みわせているような感じです。すなわち、名探偵気取りでいろいろな事件に首をつっこんでしっぺ返しを食らったことがある男子高校生と、好奇心旺盛な育ちの良いお嬢様のコンビが、さまざまな日常の謎を解決していくという作品なわけです。

思うに、小鳩くんと小佐内さんは罪を背負った者同士だからそばにいられるし、折木くんは単なるスカシだから大天使・千反田さんの隣に平気で立つことができるのですが、もし小鳩くんが千反田さんと一緒にいたら、千反田さんが発する太陽のごときオーラにやられて、小鳩くんは地獄のような罪悪感を味わうことになるのではないか。つまり『ジャナ研』とはそういう話なんですよね。

内容としては、推理そのものよりも、事件のバックグラウンドに魅力を感じます。穏やかな日常に表出する、微かだけれどもゾッとするような悪意。しかも、その描写は巻を重ねるごとに磨きがかかっていくんですよ。ぜひ読んでみてください。

空ノ鐘の響く惑星で』vs『リオランド』

空ノ鐘の響く惑星で (電撃文庫)

空ノ鐘の響く惑星で (電撃文庫)

ファンタジーとSFが対決する話といえば? 『ゲート』? 『禁書目録』? いいや、『空鐘』と『リオランド』だろ!

というわけで、あの『ムシウタ』の岩井恭平の手になる最新作『リオランド』の紹介です。ある日、平和だったリオランド王国の近辺に、空から巨大な塔――実は遠未来の地球から転移してきた軌道エレベーター――が降ってくるという話で、そこから「儀法」と呼ばれる魔法じみた力を用いるリオランド王国と、超科学の兵装を操る地球の軍人たちの戦いが始まります。

『リオランド』の特徴はなんと言ってもその「不穏さ」。とにかくあちこちに不穏の種がバラ撒かれている。『空鐘』の主人公・フェリオは曲がりなりにも王子であり、支えてくれる人材にも恵まれていましたが、『リオランド』の主人公・ミカドは生真面目で優秀な貴族でありつつ、養子という出自から他の貴族からは見下され、いいように使われているだけ。慕ってくれる部下はいるものの、彼らはいずれも社会のはみ出し者でしかない。

宮廷で孤立しながら、ミカドくんは王国にひたすら忠誠を尽くします。すべては亡くなった王妃との約束のために。己の命も身体も部下たちも犠牲にして、王国のために強大な力を持つ地球人と戦う。しかし、……どこまで行っても報われなさそうなんですよねえ。不憫萌え。

もちろん『空鐘』と同じく三角関係も見どころです。未来の地球の天才プリンセス・エチカと、リオランド王国の希望を一身に集めるリューリリリィ姫。ただし重婚エンドは許されなさそうですね。

おと×まほ』vs『魔法少女さんだいめっ☆』

おと×まほ (GA文庫)

おと×まほ (GA文庫)

魔法少女さんだいめっ☆ (ガガガ文庫)

魔法少女さんだいめっ☆ (ガガガ文庫)

まどか☆マギカ』がヒットする以前からも、ラノベでは魔法少女ものの人気が高いんですが、その中でも女装・TS系の魔法少女は特に多いんですよね。『おと×まほ』を筆頭に『ぼくと魔女式アポカリプス』『桜ish』『これはゾンビですか?』『アンチ・マジカル』『俺、ツインテールになります!』『魔法少女育成計画』などなど。本当に何故なんでしょうね。

その系譜に連なる最新作が『魔法少女さんだいめっ☆』です。アラフォーの初代魔法少女が引退するということで、主人公(男)が無理やり二代目にされたんですが、主人公は魔法少女になんてなりたくないので、魔法少女ファンのヒロインに「三代目」になってもらう、といったストーリー。さらに強敵は既に倒してしまったあとだったり、マスコットの性格が悪かったり、ここ最近の魔法少女パロディをすべて投入したかのような、コテコテに捻った設定になっております。

しかし『さんだいめ』の美点は、これだけ捻った設定を用いつつも、ストーリーとしては正統派のご町内コメディになっているところなんですよね。アラフォーでステージに立つ魔法少女とそのファンクラブ。魔法少女で町おこしをする人たち。才能はないけど魔法少女への愛だけは人一倍なスポ根ヒロイン。ライバルとなる高飛車な美少女。敵役もドロンボーめいていて憎めない。とっても明るくて楽しく読める作品です。

NHKにようこそ!』vs『パンツあたためますか?』

NHKにようこそ! (角川文庫)

NHKにようこそ! (角川文庫)

パンツあたためますか? (角川スニーカー文庫)

パンツあたためますか? (角川スニーカー文庫)

痛すぎる青春を描かせたら右に出るものはいない、2000年代を代表する電波作家・滝本竜彦。その衣鉢を継いだとも言うべき作家が『パンツあたためますか?』の石山雄規なんですよ。なんてったって滝本竜彦本人が「過去の滝本作品が丁寧にリミックスされている」と評するくらいですから。

『パンツあたためますか?』なんて、かなりふざけたタイトルですが、その内容は『NHK』を彷彿とさせる痛々しい青春ストーリーです。クズ大学生とストーカー美少女の、二人で傷を舐め合うような怠惰な日々。ただ、滝本に比べると根が素直というか、登場人物の大半は頭のおかしい女なんですが、同時にほとんどが善良でもあるんですよね。ちょっと読みやすい滝本竜彦、みたいな感じで、あなたもパンツいかがですか?

「エヴァSS」から「小説家になろう」までのWeb小説年表

出来事 備考
1990 小説『紺碧の艦隊』発売 90年代を通じて架空戦記*1ブームが起きる。のちの二次創作SSへの影響が指摘される。
1995 アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』放送
1996 SS投稿サイトとエヴァSSの増加 投稿サイトと言ってもテキストを預かって公開するだけのかたち。後に(1999年ごろ?)『楽園』のようなWeb小説検索サイトも整備されていく。
1997 映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』公開 納得のいかない結末を補完するかたちでSSがさらに増加する。
MMORPGウルティマオンライン』開始 ソードアート・オンライン』などへと影響を与える。
1998 ドリーム小説*2が流行 この頃にJavaScriptを使った名前変換スクリプトが配布された。2002年頃に「DreamMaker」というCGIが広まりさらに流行。
1999 掲示板サイト「2ちゃんねる」開設
ゲーム『Kanon』発売 二次創作SSで人気。U-1。
2000 このあたりまでエヴァSSの第一次ブーム 「逆行*3」「断罪*4」「スパシン*5」などが流行。
小説投稿サイト「Arcadia」開設 二次創作SSの総本山のようになっていく。一次創作もあり、『ゲート』『幼女戦記』『オーバーロード』『ダンまち』など2010年代初頭に書籍化された作品はArcadia発が多い。
個人サイトにて『Deep Love』連載開始 2002年にスターツ出版から書籍化されて第一次ケータイ小説ブームが起きる。
2001 2ch葉鍵板にて『葉鍵ロワイヤル』連載開始 小説『バトル・ロワイアル』のパロディで、様々な作品のキャラが殺し合いをするというもの。野球・特撮・漫画・ラノベなど、多くの板で同様のものが作られた。大抵はリレー小説形式。
個人サイトにて『雨の日に生まれたレイン』連載開始 2005年にアルファポリスから『レイン』というタイトルで書籍化される。当時の人気Web小説。
2002 個人サイトにて『ソードアート・オンライン』連載開始 2009年に電撃文庫から書籍化されて大ヒットとなる。
2chエヴァ板にてSSが流行する エヴァSSの第二次ブーム。「憑依*6」「転生*7」などが流行。
2ch軍事板にて『自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた』スレ開始 『ゲート 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり』などへと影響を与える。
2ch漫画サロン板にて『たまにはヤムチャが活躍する物語を考えようぜ』『俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ』スレ開始 ヤムスレ・バキスレ。特にバキスレは漫画総合SSスレとして発展していく。
2004 小説投稿サイト「小説家になろう」開設
2ちゃんねるVIP板が作られる 2000年代後半に2chで最大の人口を誇り、さまざまな文化を生み出した。
2ch独身男性板にて『電車男』の書き込みが始まる 2004年に新潮社から書籍化、2005年に映画化・ドラマ化。2chにおける創作実話*8スレの流れを作る。
魔法のiらんどにて『天使がくれたもの』連載開始 2005年にスターツ出版から書籍化されて第二次ケータイ小説ブームが起きる。
2005 ふたばちゃんねるにて「素直クール*9が生まれる VIP板で「新ジャンル」スレ*10が流行する。
魔法のiらんどにて『恋空』連載開始 2006年にスターツ出版から書籍化される。
2006 アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』放送 VIP板ハルヒらきすたけいおんあたりを中心に会話形式の二次創作SSが増加する。
アニメ『ゼロの使い魔』放送 二次創作SSで人気。「(異世界への)召喚」「内政*11」などが流行。現在の異世界転生ブームに直接的な影響を与える。
2chVIP板にて『ライアンですが、場車内の空気が最悪です』スレが立つ 『ライアン』が元祖かは分からないが、VIP板ドラクエSS*12が流行する。
リーフ出版「ZIGZAG NOVELS」創刊 公式サイトに小説を掲載して、人気のあった作品だけを書籍化する、という形態のレーベル。2007年にリーフ出版が倒産。
2007 2chVIP板にて『刺身の上にタンポポのせる仕事の採用試験に受かったお!!!!!』『やる夫が小説家になるようです』スレが立つ VIP板でやる夫スレ*13が流行する。
2ch漫画サロン板にて『あの作品のキャラがルイズに召喚されました』スレ開始
ニコニコ動画にて『東方俺が幻想入り』シリーズが投稿 東方Project二次創作の「幻想入り」シリーズの先駆けとなる。「幻想入り」シリーズとは東方Projectの舞台である「幻想郷」に迷い込んだ人間を主人公とした物語を動画形式で描いたもの。
イースト・プレスがWeb小説の書籍化に乗り出す*14 アルファポリスと並んで「書籍化ブーム」以前からWeb小説の書籍化を手がけている出版社。
2008 VIP板ドラクエSSがドラクエに限定されない魔王勇者SSへと発展していく 2008年『魔王はなかまをよんだ!しかしだれもあらわれなかった!!』など。
Arcadiaにて『腕白関白』連載開始 歴史もの・憑依もの・内政ものの流行に大きな影響を与える。
2ch漫画サロン板にて『もしもヘタリアの世界に2chがあったら』スレ開始 「もし○○に2chがあったら」系ネタスレと二次創作SSが融合。「ミサカネットワーク」などと合わせて「2ch風SS」を開拓する。
2009 小説『アクセル・ワールド』『ソードアート・オンライン』発売 2009『AW』『SAO』→2010『まおゆう』→2011『ログホラ』『魔法科』という流れで、出版業界の注目が小説家になろうに集まっていく。
2chVIP板にて『まおゆう魔王勇者』連載開始 魔王勇者SS。2010年にエンターブレインから書籍化。
エブリスタにて『王様ゲーム』連載開始 同年に双葉社から書籍化。エブリスタでサスペンス系*15が流行する。
小説家になろうでいわゆる「異世界トリップ」がランキング上位を占めはじめる 当時人気のあった作者として「ヘロー天気」が挙げられることが多い。
2010 小説家になろう」から派生して二次創作専用サイト「にじファン」が開設 小説家になろうに投稿された二次創作をまとめて隔離するサイト。これ以前は一次創作と二次創作が混在していた。
小説『悪ノ娘』発売 いわゆる「ボカロ小説*16」の嚆矢。ニコニコ動画で人気のあったボカロ曲が小説化されたもの。
アルファポリスが「小説家になろう」からの書籍化を本格化する この年に小説家になろうから『リセット』を書籍化したあたりがターニングポイントか。同社の看板作品『ゲート』の出版年でもある。
2011 林檎プロモーション「フェザー文庫」創刊 小説家になろうからの書籍化を行うレーベルの草分けだが、あまりの評判の悪さに黒歴史となっている。
小説『ログ・ホライズン』発売 エンターブレインがWeb小説の書籍化に本格参入する*17アルファポリスなどに倣って大判サイズでの刊行となり「Web小説の書籍化=大判サイズ」の流れを作る。
アニメ『TIGER&BUNNY』放送 Pixivにて、2ch風SSである「シュテルンちゃんねる」が流行する。さまざまな作品で「○○ちゃんねる」が作られていく。
2012 「にじファン」閉鎖 小説家になろうでは二次創作が完全に禁止となる。「ハーメルン」「暁」などの受け皿が作られる。
主婦の友社ヒーロー文庫」創刊 小説家になろうからの書籍化ブームが本格化する。2013年「MFブックス」を経て、2014年に「GCノベルズ」「モンスター文庫」「HJノベルス」「アース・スターノベル」などWeb小説専門レーベルの創刊ラッシュを迎える。

断っておくと、私は二次創作SSだとか「なろう」だとかに、もともと親しんでいた人間ではない。二次創作SSは漫画サロン系にちょっとだけ、「なろう」は2010年くらいから数年ほど出入りしていた、という程度なので、この年表は自分が体感したことではなくて、「後からググってまとめたもの」にすぎない。そういう意味では正確性に欠けていると思うが、今後の議論の叩き台にでもなれば幸いである。

二次創作SSで人気だった作品

たぶん挙げればキリがないんだろうけど、

あたりが語られているのをよく見かける。
(女性向けがごっそり抜けてるけど…)

*1:太平洋戦争や戦国時代を舞台に歴史のifを描くジャンル。特に現代の人物が太平洋戦争前にタイムスリップして歴史改変をするものが多い。

*2:夢小説。主人公の名前を自分の名前に変更してキャラクターとの疑似恋愛を楽しめる小説のこと。女性向けの文化。

*3:主人公が最終回の記憶を持ったまま物語の冒頭にまで「逆行」してストーリーをやり直すというもの。

*4:原作で気に入らないキャラを「断罪」するように不幸にしたりするもの。アンチ。ヘイト。

*5:スーパーシンジの略。原作主人公がチート能力を得たりして超人化するもの。U-1・HACHIMANなど亜種あり。

*6:現実世界にいた主人公が、原作内のキャラに「憑依」して精神的に乗っ取る、あるいは共存するというもの。

*7:憑依と似ているが、現実世界の主人公がいちど死んで、原作内に「転生」するという形を取る。必ずしも原作キャラを必要としない。

*8:実話風の創作のこと。他に『ゲーセンで出会った不思議な子の話』などが有名。また「げんふうけい」名義で2chVIP板にSSを投稿していた三秋縋が2013年にメディアワークス文庫からデビュー。

*9:ツンデレの対義語として考案された萌え属性。常にクールに照れを見せずにデレる。クーデレと同義(最近は別物とされることも多い)。

*10:2005年からのツンデレブームから派生して、新しい萌え属性を作ろうという機運が高まり、SS形式で様々な萌え属性が開拓されていった。

*11:貴族などに転生したりして、現代知識を駆使して異世界を改革するもの。

*12:他に2006年『勇者の代わりにバラモス倒しに行くことになった』2009年『片乳首出したおっさんの後つけたら天空の剣見つけたwwww』など。

*13:「やる夫」を始めとした様々なAAを使った台詞劇。初期は学習漫画のような内容が多かったが、歴史上の人物を描くもの、既存のゲームのストーリーをなぞるもの、2012年『ゴブリンスレイヤー』のような一次創作など、独自に発展していく。ただし、VIPは規制がきついためにやる夫スレに向かず、やがて外部の専用BBSなどへ移住していくことになる。

*14:2007年『華鬼』2008年『wonder wonderful』など

*15:2012年『奴隷区』2013年『復讐教室』など。

*16:2012年『カゲロウデイズ』2013年『小説 千本桜』『ミカグラ学園組曲』2014年『告白予行練習』など。

*17:2012年『オーバーロード』『ニンジャスレイヤー』2013年『幼女戦記』など。

「ギャップ萌え」の功罪

「萌え」という言葉が一般に普及したのはいつ頃からだっただろうか。
Wikipediaによると『電車男』がヒットした2005年前後のようだ。
私の体感としてもそのくらいだったと思う。

さて、一般人に対して「萌え」を説明するとき、あなたはどうするだろうか?
2005年ごろ、ちょうどブームになっていた概念がある。

それが「ツンデレ」!

人々はこの「ツンデレ」を例に挙げて「萌え」を説明した。
「ツンツンしていた子がデレデレしはじめたらギャップがあって可愛いだろ? その気持ちが萌えだよ!」
みたいな。

このような例示とともに「萌え」文化は普及していった。
「ギャップ萌え」の分かりやすさがオタクの地位向上に貢献したと言っても過言ではないだろう。

しかし!

「ギャップ萌え」があまりにも分かりやすかったために、すっかり「萌え=ギャップ萌え」と勘違いされていないだろうか!?

姉は何故かぐーたら!
妹は何故かしっかり!

かっこいいヒロインは実は可愛いもの好き!
かわいいヒロインは実は腹黒!

ぶっきらぼうな女性は意外に優しく!
頼りない女性ほど意外にしたたか!

あまりにも定番すぎてすっかりお約束と化してしまったギャップ萌え。
もはやどこに「ギャップ」が残っているというのか。

特にかっこいいヒロイン=可愛いもの好きとか100%くらいの確率じゃないですか?
もっとかっこよさを貫きとおしたヒロインを見たくないですか?

正統派があってこそ、たまのギャップがまた映える!

というわけで、私はギャップに囚われないヒロインを待っています。
よろしくお願いします。

ライトノベルは月に200冊発売されています

ということでアンケートを取りました。

所詮はTwitterアンケートなのですが、やはりライトノベルの規模を小さく見積もっている人はそこそこいるのでは?と思ったので、そのあたりについての解説をさせていただきます。

まず最初に断っておきますが、これは「200冊も出ているのだからせめて100冊くらいは読め」といったような話ではありません。

いまから書くのは「規模感を把握してくれ」という話です。

たとえば2018年6月に国内で発売されたゲームは98本。
https://www.famitsu.com/schedule/calendar/all/2018/06/-/

2018年7月期に新しく始まるテレビドラマは44本。
https://thetv.jp/program/selection/251/

2018年6月に公開された映画は95本。
https://www.cinematoday.jp/movie/release/201806?format=text

2018年夏アニメは64本。
https://anime.eiga.com/program/

2017年に発売されたコミックスは1万2461点だから月あたりで約1000冊。
https://twitter.com/ryou_takano/status/968710298663378945

大昔ならいざしらず、さすがに現在では『ONE PIECE』や『進撃の巨人』あたりしか読まずに「最近の漫画は暴力的な作品ばかりだ」などと語り出す人もいない…めったには…そこそこいるかも…まあ、いないということにしておきましょう。

一方で、週刊少年ジャンプの現行連載は21作品。まあ半分の10作品くらい読んでいれば、「最近のジャンプは」などと語っても、よほど的外れでなければ許されるのではないでしょうか。

このように多くの人は「自分が知っている作品数」と「全体の作品数」を感覚的に照らし合わせて、適切な「話題の大きさ」を選択します。

ところがライトノベルの場合は、まだ多くの人にとって馴染みが薄いために「全体の作品数」を誤認したままで語り出すので、決定的に「話題の大きさ」を間違えてしまうのではないかと思うわけです。

というわけで、2018年6月に発売されたライトノベルは222点です。

ソースはラノベ読み御用達の「ラノベの杜」です。いつもありがとうございます。
http://ranobe-mori.net/db/release/2018

もちろんライトノベルの定義は明確に定まっていませんからこの数字は上下します。

細かい数字を見ていきましょう。

「男性向け文庫(86点)」はそのまんまですね。「電撃文庫」や「富士見ファンタジア文庫」などの男性向け文庫レーベルを指します。右側にレーベル別の刊行点数も出ていますね。電撃文庫なんて一時期は月20点近く出していたんですが、近年は月10点程度に落ち着いています。そのぶん同じ編集部でメディアワークス文庫もやってるんですけどね。

同じく「女性向け文庫(21点)」も「コバルト文庫」や「角川ビーンズ文庫」などの女性向け文庫レーベルを指します。コバルト文庫がいまや月1・2点しか出ていないのが悲しいところですね。こちらも姉妹レーベルのオレンジ文庫に重心を移している感じです。

「男性向け単行本(71点)」は、MFブックスカドカワBOOKSのような、主に「なろう系」の書籍化レーベルです。文庫ではなく四六判サイズで出ているやつですね。もちろん文庫で出ている「なろう系」もありますが、大半はこういった単行本レーベルから刊行されているのが現状です。

「女性向け単行本(10点)」も、概ね「なろう系」のレーベルです。

「一般文庫(34点)」は、「メディアワークス文庫」や「富士見L文庫」などの、「ライト文芸」「キャラ文芸」「キャラノベ」と呼ばれるあたりですね。

さらに、この222点以外にも「ライトノベル的」な作品は出ていますし、
http://ranobe-mori.net/label/else/

美少女文庫二次元ドリーム文庫のような「ジュヴナイルポルノ」と呼ばれる作品や、
http://jp.ranobe-mori.net

BL小説もあります。
http://bl.ranobe-mori.net

ライト文芸ライトノベルに含まれるのか、ジュヴナイルポルノはライトノベルなのか、といった定義論はさておき、「だいたいそのくらいの規模なんだな」と感じていただければそれで結構です。

かつてのライトノベルは、「ファンタジーノベル」などと呼ばれていたこともあるようにミステリやSFのような「ジャンル小説」の一種、あるいは児童文学やヤングアダルトのような「読者年齢の区分」のひとつにすぎなかったかもしれませんが、現在では多様なジャンルと幅広い年齢層を抱える「漫画」のようなプラットフォームに近づいているように思います。

漫画の刊行点数の1/5ですから、まだまだ偏りは大きいですが、それでも、たかだか数作品から全体を説明できるものでもなければ、「昔と違って同じような作品ばっかり」になるようなものでもないのです。

そこのところ何卒ご理解よろしくお願いいたします。以上です。



「そんなに多いんじゃ何を読めばいいかわからない」という方へ。

当ブログではさまざまにオススメを紹介していますので参考にしてください。
kazenotori.hatenablog.com

「おまえのオススメなんて当てにならん」という方には、ラノベ読者の人気投票である「好きラノ」だとか、
lightnovel.jp

毎月開催の「ラノベニュースオンラインアワード」なんてのもあります。
ln-news.com

おそらくラノベ関係では最も知名度が高いであろうムック「このライトノベルがすごい!」も現在Webアンケートを受付中でして、11月に発売されるはずですので楽しみにお待ちください。
questant.jp

もっとSFが読みたい! 俺もSFライトノベル10作品をオススメする!

今回の記事はこちらにインスパイアされております。
blog.livedoor.jp

ストライクフォール

円環少女』『BEATLESS』の長谷敏司の新作。
人型ロボットに搭乗し、宇宙空間を超高速で飛び回りながら戦う架空のスポーツ「ストライクフォール」、速度と慣性に支配されたこのスポーツに「慣性制御」という新技術が持ち込まれたら…? 野球でもサッカーでもバスケでも、既存の戦術を革新的な新戦術が打ち破る瞬間というのは何にも代えがたい興奮があると思いますが、それを架空のスポーツの架空の戦術で完璧にやりとげている、という点にこの作品の凄みがあるんですよね。

86 -エイティシックス-

86―エイティシックス― (電撃文庫)

86―エイティシックス― (電撃文庫)

「帝国」が開発した無人兵器が暴走し、人類を四分五裂に追い詰めている世界。サンマグノリア共和国は自国で開発した無人兵器によってそれに対抗していたが、実のところそれは「無人兵器」に「人でないもの」――エイティシックスと呼ばれる被差別人種の少年少女たちを搭乗させていたのだった。凄惨な戦争SFであると同時に、ニヤニヤが止まらないボーイ・ミーツ・ガールでもあります。

月とライカと吸血姫

現実の宇宙開発競争を下敷きにした清々しいボーイ・ミーツ・ガール。人類初の有人宇宙飛行を前に、ロケットに人間を乗せて安全性を確かめたい、そうだ「人でないもの」を乗せればいいじゃないか、というわけで「吸血鬼」の少女が連れてこられる。何故か『86』とネタが被っているという偶然の一致が面白いですが、ぜんぜん違う話なので読んでみてください。コミックDAYSに掲載されている漫画版もめちゃくちゃ出来が良い。

世界の果てのランダム・ウォーカー

世界の果てのランダム・ウォーカー (電撃文庫)

世界の果てのランダム・ウォーカー (電撃文庫)

超科学を誇る空中都市から、文明の未熟な地上へ派遣される「調査官」のコンビを描いた、『キノの旅』的な連作短編集。地上の都市の文明度はバラバラで、古代の宗教国家的なものもあれば、VRが発達した近未来的な都市もあり、それぞれのお話にゾクッとするようなアイディアがあります。破天荒な上司とそれをフォローする生真面目な部下、という主役コンビの掛け合いも面白い。

偽る神のスナイパー

偽る神のスナイパー (ガガガ文庫)

偽る神のスナイパー (ガガガ文庫)

蘇った死者「レヴナント」によって地上を追われ、海上に造られた都市でかろうじて暮らしている人類。主人公・吹芽は、少女のカタチをした超兵器と出会ってそのマスターとなり、レヴナントと戦う「埋葬官」と呼ばれる部隊の一員となる。極めて絶望的な状況で、少年少女たちがカッコいい兵器を振るって戦う、近未来バトルアクションです。

ハル遠カラジ

ハル遠カラジ (ガガガ文庫)

ハル遠カラジ (ガガガ文庫)

ほとんどの人類が消え去った世界で、生き残りの少女・ハルと、その保護者である軍用ロボ・テスタの旅路が描かれる。ちょっと流行ってる気がしますよねポスト・アポカリプス。人間と機械のあいだで結ばれる家族の絆。「精神病」に蝕まれる人工知能。遠くない将来に示唆される別れ。そして明かされる過去。心が熱く、切なくなる物語です。

ひとりぼっちのソユーズ

幼い少年は、隣の家に引っ越してきた少女と仲良くなり、「付随するもの」――スプートニクと呼ばれるようになる。人工衛星のようにいつも彼女と一緒にいて、わがままな彼女に振り回され、ときには喧嘩をして、遠く離れて、それでも自分にとって特別な少女のために、やがて少年は宇宙飛行士を目指すことになる。美しい物語です。これ絶対に新海誠監督でアニメ化してほしいんですよね。

暗殺拳はチートに含まれますか?

暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~ (ファンタジア文庫)

暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~ (ファンタジア文庫)

VRゲームものはSFでしょ? そうだSFだ。SFに間違いない。というわけで、VR格闘ゲームの有力プレイヤーである主人公が、「暗殺拳」を習得した少女と出会い、その恋人となってVR格ゲーの世界へと導いていくというアクション&ラブコメ。まあ恋人にしては奥手で初々しい二人なんですが、そのゲームにかける情熱、対戦相手との一瞬の駆け引きに費やされる熱量は本物です。

青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中

青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)

青春デバッガーと恋する妄想 #拡散中 (電撃文庫)

AR(拡張現実)が普及した秋葉原。周囲にいるオタクたちの深層心理が、その拡張現実に干渉してバグを発生させることを知った主人公は、彼女らの悩みを解決するために奔走することになる。というわけで「青春デバッガー」なんですね。シュタゲを思わせるような賑やかで楽しくてちょっと切ない青春ストーリー。旭蓑雄といえばデビュー作からSFスメル溢れる奇作を連発している鬼才。他の作品もおすすめですよ。

ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア

ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア (電撃文庫)

ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア (電撃文庫)

インプラント・デバイスによる電脳技術が普及した近未来。地の文では威勢のいいこと言いながらリア充にパシリにされてるクズ主人公が、イジメの復讐のために電脳をクラックしようとするという話。しかしこれは決してスカッと終わる復讐譚ではないのです。出てくるキャラはサイコばかり。エゲツない展開に読者はドン引き。電撃が生んだもうひとりの鬼才・出口きぬごし。この恐ろしさはもっと知られるべきだと思います。そして続編を!

以上、10作品でした。
みんなでどんどん買ってSFラノベを増やしていきましょう!

ライトノベルとエロ、そして表紙イラストについて。

前置き

ライトノベルで想定される読者年齢は中学・高校生である。漫画雑誌で言えば「少年ジャンプ」(小・中学生向け)と「ヤングジャンプ」(高校・大学生向け)の中間くらいのポジション。ジャンプのエロい作品、ヤンジャンにおけるエロい作品、それらと同等の割合で、ラノベにエロい作品が含まれていてもおかしくはない、という感覚だ。

そういう意味で、私はライトノベルの中に「エロい作品」があることを否定はしない。

私がこれから何かの反論めいた文章を書くのは、「ラノベはエロい作品ばかりだ」「ラノベにはエロい作品しかない」といった極端な言説を訂正するためである。*1

また、前提として、ここでは主に「少年向けラノベ」についての話をする。少女向けラノベライト文芸(青年向けラノベ)までは対象を広げない。

そんなんどうでもいいからエロくないラノベのオススメ教えろや、って人は『ストライクフォール』と『ウォーター&ビスケットのテーマ』と『ジャナ研の憂鬱な事件簿』と『錆喰いビスコ』と『七つの魔剣が支配する』を買っていってください。

エロの段階について

まず、「内容のエロレベル」と「表紙のエロレベル」を切り分けて考えてみる。

内容エロレベル0 エロくない。
内容エロレベル1 下着・入浴・ラッキースケベなどのお色気シーンが存在する。
内容エロレベル2 エロを売りとする作品。
ハイスクールDxD』や『魔装学園HxH』あたりを想定。
内容エロレベル3 明確にポルノとして作られている。いわゆる「ジュヴナイルポルノ」。

実際のところ、内容エロレベル0と内容エロレベル1は大差がないと思う。シリアスな作品だってシャワーシーンの一つくらいはあるものだ。ただしラブコメ的な作風で、内容エロレベル1のイベントが多用されたりすると、印象としては内容エロレベル2に近づいていくのだろう。

ジュヴナイルポルノは「広義のライトノベル」には含まれるが「狭義のライトノベル」には含まれないくらいの微妙なポジションにある。しかし文字通り「ポルノ」であるという点で、少年向けライトノベルと一線を画しているのは間違いない。仮にジュヴナイルポルノを指して「最近のラノベはエロい」と言われたら「いやそれはエロ本だし」となる。

表紙エロレベル0 エロくない。
表紙エロレベル1 露出度は低いが、身体のラインがはっきりと出ていたり、ふとももが露わになっていたりする。
表紙エロレベル2 きわめて露出度の高い衣装であったり、服が大きくはだけていたりする。
表紙エロレベル3 全裸。

表紙エロレベル1は、オタクならあまりエロいとは思わないだろうが(画風や構図にもよるけど)、非オタは拒否反応を示すことが多い。このあたりの認識の食い違いは摩擦の原因になっていそうだ。

自分としては、「萌え萌えしたイラストを好むオタクってキモい!」と「このイラストはエロすぎる!」は別の感情なのだが、この二つの感情が同一である人もいるんだろうなあ、と思ったりしている。

表紙エロレベル3については、以下のようなギャグ的なものも存在する。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09451352
https://sneakerbunko.jp/product/misumaruka/321205000224.html

ジュヴナイルポルノとは?

大雑把に言えば「漫画・アニメ的なイラストを用いた官能小説」のことである。つまりライトノベルのポルノ版であり、「エロライトノベル」だとか「ライトアダルトノベル」だとか呼ばれることもある。ジュヴナイルポルノ自体は80年代から今に至るまで存在するもので、最近になって生まれたカテゴリではない。

小説に18禁はない。つまりジュヴナイルポルノは18禁ではない。イラストが過激な場合は18禁扱いになるが、文章だけでは18禁にはならない。なので、書店ではせいぜい違う棚に置かれるくらいで、場合によっては一般向けのライトノベルのすぐ隣に並べてあったりする。猥褻物頒布等罪との兼ね合いについては知らない。

「イラストが過激な場合」の実例としては、たとえば二次元ドリームノベルズがある。同じ出版社の二次元ドリーム文庫(こちらは非18禁)と比べると、表紙イラストで乳首が描かれていたりするが、そのあたりが一つの境界になっているのだろう。逆に言うと、二次元ドリーム文庫美少女文庫は、意図的に「過激でない表紙」にしているわけで、「最近のラノベは表紙だけ見たらジュヴナイルポルノと区別がつかない」と言われるのも、さして不思議ではないのかなと思う。とは言っても、ライトノベルのなかでエロめのイラストが、ジュヴナイルポルノでは標準的なエロさ、くらいの違いはあると思うが。

もう一つ。

小説投稿サイト「小説家になろう」では規約でエロが禁止されていて、エロ描写が含まれる作品は「ノクターンノベルズ」「ミッドナイトノベルズ」「ムーンライトノベルズ」に隔離されている。ノクターンは男性向けエロ、ミッドナイトは「エロが主目的ではないがエロ描写のある作品」、ムーンライトは女性向け、といった分類である。よって、「なろう」から書籍化された作品は基本的にエロ要素が薄く、表紙イラストも単行本サイズの大きさを活かして、背景が描き込まれた落ち着いたものが多くなっている。以下に主だったレーベルの新刊紹介ページを並べる。
http://mfbooks.jp/all/
https://kadokawabooks.jp/product/series/
http://hobbyjapan.co.jp/hjnovels/lineup/2018.html

一方で、先に述べた「ノクターンノベルズ」から書籍化するレーベルも最近は目立つ。こちらは分類としてはジュヴナイルポルノに近く、エロありバイオレンスありの大人向けレーベルといった趣きである。以下に主だったレーベルの新刊紹介ページを並べる。
http://ktcom.jp/bn/
http://www.takeshobo.co.jp/sp/tvn/
http://diverse-novel.media-soft.jp/?mode=cate&csid=0&cbid=2334468

繰り返すが、ジュヴナイルポルノは「18禁」ではない。つまり、たとえば電撃文庫美少女文庫や、MFブックスとビギニングノベルズが、隣同士の棚に並んでいることがあるということだ。そのため実際以上に「ラノベはエロい」「なろう作品はエロい」と勘違いされている可能性もある。

今月の新刊を確認しよう

百聞は一見にしかずということで実物をチェックしていこう。

電撃文庫の9月刊。
https://dengekibunko.jp/product/2018/09/
アクセル・ワールド』は全裸に近いので表紙エロレベル3(色気はないが…)。『境界線上のホライゾン』『賢者タイムが終わらない。』『異世界に間違った人材を〜〜』は表紙エロレベル2。『ゴスロリ卓球』も巨乳が強調されていて、場合によっては表紙エロレベル2相当と思われるかもしれない。

ただし内容でいえば『アクセルワールド』や『境ホラ』『ゴスロリ卓球』はレベル1相当だろう。『賢者タイムが終わらない』は未読だが、あらすじからすると下ネタっぽいので、内容エロレベル2相当の可能性はある。

スニーカー文庫の9月刊。
https://sneakerbunko.jp/product/2018/09/
『回復術士のやり直し』が表紙エロレベル2、『JK堕としの名を持つ男、柏木の王道』が表紙エロレベル1かな。

『回復術士』はエログロありの復讐ものらしいので、内容エロレベル2相当だろう。

MF文庫Jの9月刊。
https://mfbunkoj.jp/product/2018/09/
ブコメの多いレーベルなので表紙もそれらしいものが多い。『おまえ本当に俺のカノジョなの?』で胸の谷間、『サブヒロインだって攻略されたい!』『精霊使いの剣舞』でパンチラがある。露出度で言えばそれほどでもないにもかかわらず、非オタから「いかにもオタクっぽくてキモい」と思われそうな感じである。

全体的に内容エロレベル2は無さそうだが、「内容エロレベル1が多用されるラブコメ」はいくつかありそうだ。

富士見ファンタジア文庫の9月刊。
http://www.fujimishobo.co.jp/novel/fantasia.php
「2018年9月」を指定できないので、来月には内容が変わっているだろうが、とりあえず2018年9月の新刊を前提とする。『ハイスクールDxD』が貫禄の表紙エロレベル2、『非オタの彼女が〜〜』もレベル2、『いづれ神話の放課後戦争』『始まりの魔法使い』もレベル1はあるだろうか。

内容では『ハイスクールDxD』『いづれ神話の放課後戦争』がレベル2か。『非オタの彼女が〜〜』はわからん。

というわけで、私としては「ほら、エロばっかりということはないでしょ?」と言いたいところなのだが、これを見て「やっぱりどれもエロいね」とか「思った以上にエロいじゃん」ってなる人はいると思う。それはしょうがない。私としては「思ったよりエロくないな」となる人がいることを祈るのみである。

ここでは、内容のエロレベルと表紙のエロレベルに齟齬があることは多いのだ、ということだけは強調しておきたい。

昔のラノベは今より健全だったのか?

大して変わらんでしょ。
健全度も不健全度も。
http://ranobe-mori.net/label/dengeki-bunko/?page=28

ライト文芸と差別化を図るためにラノベはエロ特化している?

ライト文芸で多いイメージの青春もの・純愛ものなどは、むしろラノベでも増加しているところである。
なろう系の影響もあって、なろう発でなくともファンタジーが多く出てきているし、特に戦記ファンタジーはちょっとしたブームが長らく続いている。
全体として、ライト文芸やなろう系は、ラノベに負の影響を与えるというよりも、それぞれに影響を与えあって多様性を生んでいるし、単純な刊行点数の増加もあって、たとえば10年前と比べても、ラノベ全体のバリエーションは増えていると言っていいと思う。

終わりに

なんだか取り留めがなくなってきたが。

私だってラノベの表紙デザインが無謬であるとは思っていない。

ラノベ売り場のオタオタしい雰囲気」みたいなものの存在は否定できないし、それによる集客効果よりも、それによってラノベ売り場から遠ざかる読者のほうが多いだろうという印象は持っている。*2

「表紙では男主人公よりもヒロインを優先する」なども非合理な慣習だと思っているし、「エロくない作品にエロいイラストをつける」といったやり方には憤りさえ覚える。

それは「倫理的に問題がある」だとか「子供の教育に悪い」といった理由からではない。「エロくない作品にエロいイラストをつける」というのは、エロを期待した読者は期待を裏切られ、エロが嫌いな読者は(実際に読めば好きになるとしても)買おうとしないということで、誰も幸せにならないからだ。

イラストによって学校図書館に入れてもらえない、親に買ってもらえない、朝の読書などでも敬遠される、といったことがあるのは、さらに問題だ。未来のラノベ読者の育成をも阻害していることになる。

なぜ、そういった「内容のエロレベル」と「表紙のエロレベル」に齟齬が生まれるのかと言えば、これは完全に憶測で、失礼な物言いになるのだが、可愛くてエロい女の子を描きたいイラストレーターが多いからだと思っている。多くの(オタク系)イラストレーターはそういうイラストを描くのを好み、画風もそういう方向へ特化している。

また、作家や編集も可愛くてエロい女の子が大好きだから、可愛くてエロいイラストを良しとする。「読者サービス」的な意識はあるのだろうが、それも「自分たちが嬉しいのだから読者も嬉しいだろう」という発想なのではなかろうか。

念押しをするが、エロいラノベにエロいイラストを付けるのは別に良いのだ。

しかし、エロくないラノベにエロいイラストを付けるのを、本当に「読者サービス」程度の気持ちでやっているなら、それは止めてほしいと思うのである。

補足

*1:念のため言っておくが、「ばかり」や「しかない」といった表現は「すべてがそうだ」という意味であって、ごく少数の例外は除いたとしても8割9割はエロい作品で占められていなければ不適当であろう。

*2:それへの対策が、ガワだけ変えて一般向けの売り場にラノベを並べる、すなわちライト文芸であろう、とか。

絵本・児童書(児童文学)・YAを原作とした日本のテレビアニメ一覧

なんか立て続けに「昔は児童文学原作のアニメが多かったけど最近は無くなったね」みたいなツイートを見かけたので並べてみた。

アニメ開始 タイトル 原作開始 原作
1969年10月 ムーミン 1945年 ●海外
1972年1月 樫の木モック 1883年 ●海外
1972年1月 ムーミン 1945年 ●海外
1973年1月 山ねずみロッキーチャック 1920年 ●海外
1974年1月 アルプスの少女ハイジ 1880年 ●海外
1974年4月 小さなバイキング ビッケ 1963年 ●海外
1975年1月 フランダースの犬 1872年 ●海外
1975年4月 ガンバの冒険 1972年 □国内
1975年4月 みつばちマーヤの冒険 1912年 ●海外
1976年1月 ハックルベリィの冒険 1885年 ●海外
1976年1月 母をたずねて三千里 1886年 ●海外
1976年4月 ピコリーノの冒険 1883年 ●海外
1977年1月 あらいぐまラスカル 1963年 ●海外
1977年10月 家なき子 1878年 ●海外
1978年1月 ペリーヌ物語 1893年 ●海外
1979年1月 赤毛のアン 1908年 ●海外
1980年1月 ニルスのふしぎな旅 1906年 ●海外
1980年1月 トム・ソーヤーの冒険 1876年 ●海外
1981年1月 家族ロビンソン漂流記 ふしぎな島のフローネ 1812年 ●海外
1981年4月 愛の学校クオレ物語 1886年 ●海外
1981年4月 若草の四姉妹 1868年 ●海外
1982年1月 南の虹のルーシー 1982年 ●海外
1982年10月 みつばちマーヤの冒険 1912年 ●海外
1983年1月 アルプス物語 わたしのアンネット 1950年 ●海外
1983年7月 ピュア島の仲間たち 1976年 ●海外
1984年1月 牧場の少女カトリ 1936年 ●海外
1985年1月 小公女セーラ 1888年 ●海外
1985年4月 おねがい!サミアどん 1902年 ●海外
1986年1月 愛少女ポリアンナ物語 1913年 ●海外
1986年10月 ボスコアドベンチャー 1984 ●海外
1987年1月 愛の若草物語 1868年 ●海外
1988年1月 小公子セディ 1886年 ●海外
1988年4月 いきなりダゴン 1983年 ●海外
1988年10月 それいけ!アンパンマン 1973年 □国内
1989年1月 ピーターパンの冒険 1911年 ●海外
1990年1月 私のあしながおじさん 1912年 ●海外
1990年4月 楽しいムーミン一家 1945年 ●海外
1991年1月 トラップ一家物語 1949年 ●海外
1991年1月 おちゃめなふたご クレア学院物語 1941年 ●海外
1991年1月 ルドルフとイッパイアッテナ 1987年 □国内
1991年1月 おばけのホーリー 1978年 □国内
1991年11月 わたしとわたし ふたりのロッテ 1949年 ●海外
1992年1月 大草原の小さな天使 ブッシュベイビー 1965年 ●海外
1992年9月 おやゆび姫物語 1835年 ●海外
1992年10月 ノンタンといっしょ 1976年 □国内
1992年10月 フランダースの犬 ぼくのパトラッシュ 1872年 ●海外
1993年1月 若草物語 ナンとジョー先生 1871年 ●海外
1993年10月 楽しいウイロータウン 1908年 ●海外
1994年8月 学校のコワイうわさ 花子さんがきた!! 1994年 □国内
1995年1月 ロミオの青い空 1941年 ●海外
1996年1月 名犬ラッシー 1940年 ●海外
1996年9月 家なき子レミ 1878年 ●海外
1997年7月 はれときどきぶた 1980年 □国内
1997年9月 夢のクレヨン王国 1980年 □国内
1997年12月 ドリトル先生物語 1920年 ●海外
1998年4月 たこやきマントマン 1990年 □国内
1999年7月 バーバパパ 世界をまわる 1970年 ●海外
2002年11月 げんき げんき ノンタン 1976年 □国内
2004年2月 かいけつゾロリ 1987年 □国内
2004年4月 それいけ!ズッコケ三人組 1978年 □国内
2005年2月 まじめにふまじめ かいけつゾロリ 1987年 □国内
2005年4月 おでんくん 2001年 □国内
2005年5月 雪の女王 1844年 ●海外
2007年1月 レ・ミゼラブル 少女コゼット 1862年 ●海外
2007年4月 精霊の守り人 1996年 □国内
2008年1月 ポルフィの長い旅 1955年 ●海外
2008年6月 テレパシー少女 蘭 1999年 □国内
2009年1月 獣の奏者エリン 2006年 □国内
2009年4月 こんにちはアン 〜Before Green Gables 2008年 ●海外
2009年10月 怪談レストラン 1996年 □国内
2010年3月 はなかっぱ 2006年 □国内
2010年8月 学校のコワイうわさ 新・花子さんがきた!! 1994年 □国内
2011年7月 NO.6 2003年 □国内
2012年4月 黒魔女さんが通る!! 2005年 □国内
2013年4月 ぼくは王さま 1959年 □国内
2013年4月 RDG レッドデータガール 2008年 □国内
2014年10月 山賊のむすめローニャ 1981年 ●海外
2015年10月 探偵チームKZ事件ノート 2011年 □国内
2016年7月 バッテリー 1996年 □国内
2017年7月 DIVE!! 2000年 □国内
2017年7月 妖怪アパートの幽雅な日常 2003年 □国内
2018年1月 うちのウッチョパス 2018年 □国内
2018年4月 若おかみは小学生! 2003年 □国内
2018年5月 おしりたんてい 2012年 □国内

ついでに年毎の作品数。

1969年 1
1970年 0
1971年 0
1972年 2
1973年 1
1974年 2
1975年 3
1976年 3
1977年 2
1978年 1
1979年 1
1980年 2
1981年 3
1982年 2
1983年 2
1984 1
1985年 2
1986年 2
1987年 1
1988年 3
1989年 1
1990年 2
1991年 5
1992年 4
1993年 2
1994年 1
1995年 1
1996年 2
1997年 3
1998年 1
1999年 1
2000年 0
2001年 0
2002年 1
2003年 0
2004年 2
2005年 3
2006年 0
2007年 2
2008年 2
2009年 3
2010年 2
2011年 1
2012年 1
2013年 2
2014年 1
2015年 1
2016年 1
2017年 2
2018年 3
  • 91年・92年だけ多いけど、概ね1〜3作品くらいで推移している。
  • 「昔は多かった」というより「世界名作劇場のおかげで常に1作は確保できてた」くらいの話で良さそう。