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ラノベ業界人の!?愚痴

なんか銀盤カレイドスコープの最新刊のあとがきがすごいとの話を聞いたので、あとがきだけ先に見てしまいました。


以下、引用。

 昨年の12月24日。クリスマス・イブ。
 フィギュアスケートの全日本選手権が、五輪代表権を懸けての大熱戦が行われていた同じ日の深夜、とあるスケートアニメの最終回がオンエアされました。といっても当方、途中までしか見ていないのでラストがどうなったのかは知りませんが。
 ただあの日、日本中で織田信成さんの次に不幸だったのは私かもしれないと本気で思いました。
 以上――


先日もおとボク関連で原作者がキレてましたが、今回のこれはある意味さらに凄まじい。というのも、この文章はネットに公開されたものではなく、小説のあとがきとして載っているものだからです。つまり、この文章は編集部のチェックを通っているはずなのです。アニメのDVDが7月26日に発売される*1というのに、アラン・スミシーさんに対して少々配慮が欠けているのではないでしょうか。どういうことでしょう。


考えられる可能性としては、

  1. 編集部もあのアニメに関しては激怒していた。
  2. これでも修正されている。元はもっと毒があった。
  3. アニメ制作側に許可をもらっている。
  4. 編集部のチェックがザルだった。

…どれでしょうね?


っていうかアニメ化が決まったあたりのあとがきと比べると、なんだかもう、ねぇ?


関連:
"銀盤カレイドスコープ""Alan Smi Thee" - Google 検索

*1:まだ出てなかったんだな…

『乃木坂春香の秘密』の秘密

というタイトルだと、なんか昔あった漫画の考察本を思い出すなぁ。『るろうに剣心の秘密』みたいなの。


乃木坂春香の秘密〈4〉 (電撃文庫)

乃木坂春香の秘密〈4〉 (電撃文庫)


この『乃木坂春香の秘密』は、ごく平凡な主人公が学園のアイドルである美少女の秘密を知ってしまったことで彼女と仲良くなっていくという、いかにも萌え系なラブコメです。作者は司法試験合格を目指すナイスガイ。しかし赤面もののシーンを平然と書いてみせる、そこにシビれる、憧れるゥ。そんな感じの、エロゲに親しんでいるような方なら思わず「うわぁ、ありがちだなぁ」と言ってしまう作品なのですが、実はこのシリーズかなり売れているのです。


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ワオ、アニメ化もされた『半分の月がのぼる空』よりも売れてるよ、ジョニー!


なぜこんな「ありがち」な作品が売れているのでしょうか?
簡単に言えば、「ありがち」ではないからです。


現在のラノベ業界は「超常要素を入れなきゃ死んじゃう病」に侵されています。ミステリだろうがラブコメだろうがファンタジーだろうが、とにかく魔法使いや超能力者や宇宙人や未来人といった要素を入れないと気が済まないのです。某作家のブログによれば、編集者は「主人公を異能力者にしろ」と何度も何度も何度も何度も作家に言うそうです。末期症状ですね。


で、『乃木坂春香の秘密』です。この作品は確かにラブコメ的なデフォルメがされているものの、異能とか魔法とか超能力とかは全く出てきません。ただひたすらにラブコメディの王道を行っている作品です。こういった作品は、実は現在のラノベ界隈では非常に少ないのですね。つまり、漫画やエロゲでは「ありがち」な設定でも、ライトノベルでは「ありがち」ではなくなるのです。


こういった現象の原因には、「超常要素のないラブコメなんてありがちだから売れるはずない」といったような先入観があるんじゃないかと思います。作家というよりは、やはり編集者の方に。それで「ありがち(=超常要素のない作品)」を排除した結果、別の「ありがち(=超常要素てんこもり)」を量産してるんだから面白い。ラノベって制限がないようでかなり制限のあるジャンルなのかな。自分で自分を縛ってちゃ、どんどんつまらなくなる気がしますよ。マゾか?


ともあれ、そうやってぽっかり空いた隙間を、『乃木坂春香の秘密』は見事に埋めてみせたのでしょう。お世辞にも「重厚」とは言えない作品ですが、むしろそういうところがライトノベルらしいと思います。これからも頑張ってほしいですね。あと司法試験に受かるといいですね。

急募:今のライトノベル界をどうにかしてくれる方

という話題。


http://d.hatena.ne.jp/kurosakiion/20060621

電撃なんか「ライトノベルを突破しろ!」というアオリまで作ったけど、一番ライトノベルらしい゛軽薄さ"が漂うのは電撃である。電撃からライトノベルを突破した人間なんていたか? ライトノベルを突破した作家って、桜庭や乙一とか村山由佳とかだよなぁ。

ライトノベルを突破しろ!」の意図しているものは、別に「ライトノベルの一般文芸化計画」ではなく、「一般文芸のライトノベル化計画」なのだと思います。桜庭一樹乙一などは単に「越境」しただけです。電撃がやったのは「ライトノベルには挿絵が付いている」「ライトノベルは文庫で発売する」といったような枠を破壊することでしょう。元のアオリは「ライトノベルをぶっ壊せ!」でしたし。ハードカバー戦略なんかは、それなりに成功したと言ってもいいと思いますよ。


http://d.hatena.ne.jp/r-motomura/20060622/p1

ただ「総じて」「全体的に」見ると、やはり「ラノベの質は悪い」という印象を拭い去ることはできそうにありません。
まずその最大の理由として「あからさまな『劣化コピー』が横行している」点でしょうか。
ホント。清々しいまでに「それなんてエロゲ?」的な作品が飽きもせずに乱発されているし、その中身も「小学生の方が、まだマシな文章・作品書くよ」というようなもので溢れかえっている。
加えて、相変わらず「イラスト頼み」の作品が後を絶たず、書き手は「表現」というものを半ば放棄してしまっている。

「あからさまな『劣化コピー』が横行している」と「イラスト頼み」という2つの点に関しては、あまり同意できません。
前者に関しては「あらゆる小説はパクリである」とかいう話もありますし、それ以上に、コピーに寛容なラノベ読みが私は好きなのです。ライトノベルはあらゆるジャンルを無秩序に取り込んでいる、つまりコピーしているわけで、そのコピーを禁止してしまえばラノベというジャンル自体がなくなってしまうとさえ思います。「劣化」してるかどうかはわかりませんが、「コピー」を批判するのには賛同できません。
後者に関しては、それが批判される理由が分かりません。イラストがあるんだからイラストを利用すればいいんじゃないでしょうか。極論すれば、ライトノベルは小説じゃないんですよ。だから別に「文字で全てを表現しなければならない」という決まりはないはずです。


と、なんかいちゃもんつけてるみたいになってしまいましたが、「今のライトノベル界をなんとかしてくれ」という主張には素直に賛同します。id:r-motomuraさんの提唱されている「ライトノベル業界が抱えている問題」の中でも、
 1.「売上げ」の問題。
 4.「育成」に関する問題。
 5.「出版社」「編集者」の問題。
 7.「書店サイド」に関する問題。
あたりは本当にやばいんではないかと思っていますし。


業界が完全に閉塞しているというわけでもないと思うので、なんとか上手く乗り切ってほしいのですが。


追記。
http://d.hatena.ne.jp/trivial/20060624/1151129686

「劣化」という事実はないと主張するのでなければ、反論にはならないのではないか。

じゃあ思い切って言っちゃいます。


現在、ライトノベルの「質の低下」は確認されておりません。「劣化」というような事実もございません。コピーによる劣化の恐れはありません。ライトノベル界で行われているのは極めて健全なコピーです。ご安心ください。