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サマー/ライト/ノベラー

とある魔術の禁書目録』『灼眼のシャナ』『空ノ鐘の響く惑星で』あたりまでは、まだよかった。ライトノベル(と呼ばれている)レーベルにまるっきり無関係というわけじゃなかったからだ。新城カズマの『サマー/タイム/トラベラー』が挙がってきたあたりから、参考資料に関するぼくらの議論はどんどん脱線していった。
桜庭一樹。『少女には向かない職業』」
「いったい全体それのどこがライトノベルなのよ、涼?」
あなたがそうだと思うものがライトノベルです。ただし……」
「却下!」涼以外の全員。
「じゃあ『砂糖菓子の弾丸は撃てない』でいいよ。これだけは譲れないからね」
「『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』だ」コージンの警告がとぶ。


「『犬はどこだ』、米澤穂信」今度はコージンの番だった。「もしくは『さよなら妖精』」
ミステリ・フロンティアは駄目なんじゃないのかよ? そうだよね、卓人?」
涼はぼくにすがりつく。正確には、すがるような目で見たにすぎないのだけれど、争いにまきこまれた身からすれば、あまり違いはない。
「一冊くらい米澤は必要だ」とコージン。
「だったら桜庭なんか十冊は入れるべきだよ、すごい読みきりがたくさんあるんだから。なあ卓人?」
「米澤のどこが悪いんだよ、おい」
「卓人? 卓人? ぜったい桜庭だよね?」
ぼくは何も答えずにいる。そのうち今度は悠有と饗子が、
「ねえねえ、これってどうなのかな。『神様家族』と『ゼロの使い魔』」
「悠有ったら、こっちのは電撃文庫じゃないでしょう?」
「アニメ化も決定したから、ついでにと思って。ブックオフにあったし」
「MFJは除外よ!」
「え、なんで?」
「角川系列外はSDでじゅうぶんだわ。出版社の都合なんかで、勝手に増やされてたまるものですか」
「そういうもんなの?」
「そういうものなのよ。とにかく、『ゼロ』を出すんなら私が全力で反対討論しますからね。さ、次は誰のどれが出場?」


片山憲太郎。『電波的な彼女』」ぼくは本をテーブルに置く。「映画をもじった表題だけど、中身は上出来」
「まあいいでしょう」と饗子。「浅井ラボってほどじゃないけれど。どっちかっていうと西尾維新か、乙一に近いのかしら。せーの……賛成! はい、多数」
「次、竹宮ゆゆこ、『わたしたちの田村くん』。電撃のやつ」
悠有が両手で口をおさえて笑い出す。たぶん作者名がおかしかったんだろう。ぼくはかまわずスコアブックを読み上げる。
「せーの……はい、賛成多数と。次だ、十文字青の『薔薇のマリア』」
「駄目よ。駄目に決まってるわ」
「なんで? 泣かせるし、いい話だし」
「先に読むべき短編が長編の後に刊行されるような本は、小説として失格よ。決まってるでしょう?」
「そんなの本の責任じゃないだろ。ていうか、作者の責任ですらないじゃん」
「連帯責任って言葉、御存知? 卓人」饗子の目線はひどく冷たい。こういう時のあいつはほんとうに容赦なしだ。「それじゃ次は私のね。奈須きのこ、『空の境界』。新装版の講談社ノベルスで」
意外なことに、これには誰からも異論がなかった。ぼくらは何もいわずにお互いの顔を見合った。悠有よりも涼の方が顔を赤くしてて、思わずぼくは吹き出しかけた。
「初めての全員賛成、と」
ぼくはスコアブックに書き込む。
――そしてほんの一瞬だけ、ひどく悲しい気分になる。



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ここまでやっちゃうと危険な気がしないでもない。


『闘争欲』寄りの作品というのは、現実と戦う話。逃走欲でもいい。厳しい現実に対して、戦いを挑むか、あるいは逃避するか、もしくは現実よりも身近なセカイを選ぶか。とはいえ、「セカイ系」というわけではない。


個人的には「セカイ」の対立概念に「ユートピア」があると思うんだけど、『憧憬欲』はそれ。つまり、心地よい理想の世界を描いた話。


『越境』はまあそのまんま。ライトノベル外へ越境できるか否か。といっても、具体的な基準なんかないので、「超常的な要素が出てこない」「ライトノベルレーベル外から出ている」といったあたりを「越境可」として選んでいる。


今回はネタに走ったので、分類表中のサンプルは俺の好みの作品で占められている。本当は、『サマー/タイム/トラベラー』のように、数人であーだこーだいいながら選出していくのがいいんだろうけど、そんな時間も人脈もないのでこうした。正確さとか考えてないので、本当にネタとして見てください。


もうちょっと真面目な分類表も作ってみるつもり。




名作です。↓

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)