↓あたりのコメント欄など、
http://d.hatena.ne.jp/kazenotori/20060426/1146034740#c1146585174
各所の意見などを読むに、やはり電撃の売上げの一因には"目立つ装丁"というのがあるんだろうと思わざるを得ないのですが。
電撃文庫の特徴を簡単にまとめるとこんな感じです。
- 多様なラインナップ
- 新人は最初のうちにバーっと出す(いわゆる加速装置)
- シリーズ打ち切りの見極めと、新シリーズへの切り替えの上手さ
- 電撃組による効率的な販売網
- 目立つ装丁
しかし、もう一つ思うことが。
電撃文庫って厚くないですか?
川上稔の例を出すまでもなく、ほとんどの作品は300P越えで、400P越えだって結構な数あるわけです。一方、他レーベルは……MFJやSD、ファミ通、富士ミスあたりは250前後が相場で、厚いものでも300Pを越えたあたりじゃないでしょうか。富士見Fとスニーカーには300P台も結構ありますが、200P台も少なくありません。
↑は俺の持ってる本をいくつか適当に確認しただけなんですけど、しかし綿密に計ってやっても、おそらく平均では電撃が一番だと思います。計りませんけどね。
参考→long novels
問題は、最も売れている電撃文庫が最も厚いのは何故かという点です。だって、ライトノベルの一番のネックは「文字媒体」ということで、「あんな長い文章、かったるくて読んでられっかよー」って理由でライトノベルを読まない連中が山程いるんですから。*1
ここから推測されるのは、電撃がヘビーな読者を狙っているのではないかということです。各所で議論されていたとおり、ライトノベルの読者層は二つあるのだと思います。まずは「1冊を買う100人」、そして「100冊を買う1人」です。前者がライト読者、後者がヘビー読者ですね。そして「厚い」作品を好むのは、どう考えたってヘビー読者です。
ここでちょっと話の方向を変えます。
これまでのオタク業界は、10のヒット作に1000人のオタクがぶらさがっているような構造をしていました。消費者の方も、その10の作品を買っていればよかった。
ところが現在では、属性やジャンルの細分化が進み、1000の作品のそれぞれに10人ずつのオタクがぶらさがっているような構造になってしまった。この10人のオタクたちというのは、1000の作品で溢れかえるようになった市場に対抗して、100の作品を買うようになった人たちです。
そういった10人のオタクたち、いわゆるロングテールを拾うことができた企業が、この多様化した現代オタク文化の覇者になるのではないかと思うのです。
参考→Internet Archive Wayback Machine(二年前の記事ですが)
電撃文庫の戦略は、ここにピタリと照準を合わせていると思います。多様なラインナップで10人のオタクたちを拾い集め、分厚い作品で読書家を喜ばせ、海賊本や通販などでオタクの収集欲を煽り、作者の人格を知らせる*2ことでマニア心をくすぐる。モロにマニア向けの戦略です。
電撃組というシステムだって、要するにオタク以外が利用する中小書店を切って、オタクが利用する大型書店を優先するってことでしょう。オタク以外は大型書店をあんまり利用しないと思うんですよ。たとえば俺は片道一時間かけて電車で京都の大型書店に行くんですけど、そんなことするのはオタク以外にないですよね。俺がそうするのは大型書店なら新刊が揃ってるからなんですが、ふだん書店を利用しないような人は新刊が揃ってるかどうかなんて気にしません。そういった人たちは、近くの本屋を回って目当ての1冊を見つけるのです。
ああ、それともう一つ、これも電撃組に絡んでくるんですけど。電撃ってたしか早売りしてもいいんですよね。そして電撃組に加入してる書店には、いちはやく新刊が回ってくる。早売りゲットに執念を燃やすのはオタクなわけで、このあたりもオタク向けの戦略なのかも。
追記。
突っ込み来ました。
http://d.hatena.ne.jp/r-motomura/20060505/p2
基本的には「発売日厳守」だそうです。
結局のところ、電撃はマニア向けの戦略に切り替えたから勝ってるのかな……と。そういうことです。お粗末様でした。