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『乃木坂春香の秘密』の秘密

というタイトルだと、なんか昔あった漫画の考察本を思い出すなぁ。『るろうに剣心の秘密』みたいなの。


乃木坂春香の秘密〈4〉 (電撃文庫)

乃木坂春香の秘密〈4〉 (電撃文庫)


この『乃木坂春香の秘密』は、ごく平凡な主人公が学園のアイドルである美少女の秘密を知ってしまったことで彼女と仲良くなっていくという、いかにも萌え系なラブコメです。作者は司法試験合格を目指すナイスガイ。しかし赤面もののシーンを平然と書いてみせる、そこにシビれる、憧れるゥ。そんな感じの、エロゲに親しんでいるような方なら思わず「うわぁ、ありがちだなぁ」と言ってしまう作品なのですが、実はこのシリーズかなり売れているのです。


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ワオ、アニメ化もされた『半分の月がのぼる空』よりも売れてるよ、ジョニー!


なぜこんな「ありがち」な作品が売れているのでしょうか?
簡単に言えば、「ありがち」ではないからです。


現在のラノベ業界は「超常要素を入れなきゃ死んじゃう病」に侵されています。ミステリだろうがラブコメだろうがファンタジーだろうが、とにかく魔法使いや超能力者や宇宙人や未来人といった要素を入れないと気が済まないのです。某作家のブログによれば、編集者は「主人公を異能力者にしろ」と何度も何度も何度も何度も作家に言うそうです。末期症状ですね。


で、『乃木坂春香の秘密』です。この作品は確かにラブコメ的なデフォルメがされているものの、異能とか魔法とか超能力とかは全く出てきません。ただひたすらにラブコメディの王道を行っている作品です。こういった作品は、実は現在のラノベ界隈では非常に少ないのですね。つまり、漫画やエロゲでは「ありがち」な設定でも、ライトノベルでは「ありがち」ではなくなるのです。


こういった現象の原因には、「超常要素のないラブコメなんてありがちだから売れるはずない」といったような先入観があるんじゃないかと思います。作家というよりは、やはり編集者の方に。それで「ありがち(=超常要素のない作品)」を排除した結果、別の「ありがち(=超常要素てんこもり)」を量産してるんだから面白い。ラノベって制限がないようでかなり制限のあるジャンルなのかな。自分で自分を縛ってちゃ、どんどんつまらなくなる気がしますよ。マゾか?


ともあれ、そうやってぽっかり空いた隙間を、『乃木坂春香の秘密』は見事に埋めてみせたのでしょう。お世辞にも「重厚」とは言えない作品ですが、むしろそういうところがライトノベルらしいと思います。これからも頑張ってほしいですね。あと司法試験に受かるといいですね。