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ケータイ的文章とライトノベル的文章は違う

いま電車に揺られて移動中なのだが、暇なので何か書いてみようと思う。


電車の中では、私はたいてい、ケータイからはてブにアクセスして注目エントリを眺めたりしている。はてブ中毒。そうしてケータイをいじっていると気付くことがある。ケータイの幅狭い画面では、ダラダラした長文が読みやすいのだ。PCの画面で見れば一瞬でウィンドウを閉じてしまうような文章でも、ケータイならスラスラと読めてしまう。なぜだろう。


まず一つに、ケータイだと大量の文字がいきなり目に飛び込んでくることがない、というのがある。最初から何十行も見えていると、「まだこんなに残っているのか」とうんざりしてしまうものだ。料理でも、いきなり巨大な丼が出てくるよりは、同じ量でも小さな皿に何回かに分けて出てくるほうが、気分的には楽だろう。


また、文章は一文が短く区切られたほうが読みやすい、というのもある。ライトノベルで改行が多用されているのと同じだ。ケータイの場合、画面が狭いせいで頻繁に文章が折り返されるのが、図らずもライトノベルにおける「改行の多用」と同じ効果を生み出しているのではないか。


ただしケータイで改行すると読みにくい。つまり、ケータイの狭い画面で、さらに改行が多用されると、相乗効果で文章が細切れになってしまうのだ。あまりに短すぎても逆に読みにくい、というわけだ。ケータイ向けの文章で大切なのは、改行よりも段落である。ざーっと改行なしで書いてあって、適当なところで一段落つける、というような文章が読みやすい。段落のあいだは空白行で区切られているとなお良い。


というようなことは、ケータイ向け文章業界(?)ではおそらく既に分析されているだろう。ただ一つ気になるのは、ライトノベルとケータイ小説の互換性についてだ。ライトノベル系の出版各社は、最近になってケータイ向け小説配信に力を入れているようだが、「ちょく読み」などを見るかぎりでは、その文章はケータイ向けに最適化されていない。原作からそっくりそのままコピペしているようだ。すごく読みにくい。


id:kanoseさんの記事によれば、ケータイ小説の文章作法は日々進化しているようだ。改行の一字下げはしないとか、主人公のセリフだけ『』を使うとか。私はケータイ小説はあまり読んだことがないのだが、絵文字が使われてたりもするんだろうなぁ。


しかし、このままケータイ小説の文章作法と、ライトノベルの文章作法が乖離していけば、その二つの互換性が無くなってしまうんじゃないか。ディスプレイと紙、という媒体の違い以上に、ケータイでは書籍の文体を再現できないし、書籍ではケータイの文体を再現できなくなる。


もしそうなれば、ケータイ向けライトノベルビジネスを展開しようとしてる人は困るんじゃないだろうか? ラノベ語からケータイ語へ“翻訳”しなきゃいけないから、手間も時間もかかってしまう。いやそれで「これからはケータイベースでいきまーす☆」となったら、今度は読者が困るよね。「従来の紙媒体愛好家は切り捨てまーす。ケータイの狭い画面と独自の文体を許容できる人だけついてきてね☆」みたいな。「ヒット作だけなら“翻訳”してあげるからそれで勘弁してちょ」みたいな。うげー。


と、いろいろ想像を羽ばたかせてきたけれど、もうそろそろ電車を下りなきゃいけないんで、ここらへんで終わっとくね。