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ライトノベルの定義を「コミュニティ」に求めてみる説

ライトノベルの定義については、以前に大雑把にまとめたことがあるので、興味のある方はそちらもどうぞ。
ライトノベル定義論三大派閥 - WINDBIRD




まず思い浮かべたのはニコニコのコミュニティである。「ニコニコミュニティ」と書くと別の意味になってしまうので、長ったらしいが「ニコニコのコミュニティ」と書く。


動画の上を流れていくコメント、急に割り込んでくる時報、自由にアフィリエイトを貼り付けられる市場……ニコ動の特徴的な機能はいくつかある。しかし、実際にニコ動をニコ動たらしめているのは、2ch文化とMAD文化を掛けあわせてそこに若さをプラスしたような、あの独特な「ニコニコのコミュニティ」ではないだろうか。


それをライトノベルの定義に流用してみたい。すなわち、ライトノベルを定義付けるのは、内容でも外見でもなく、それを取り巻くコミュニティである、と。


ライトノベルの立ち位置は特殊である。あるときはミステリやSFと並ぶ小説のサブジャンルとして扱われ、あるときは漫画やアニメのようなオタクコンテンツの仲間として括られる。


というのは冗談であるが、こうしたコウモリ的なところが、定義論が紛糾する原因ではあるのだろう。


とりあえず、ここでは例として「ライトノベル」と「ミステリ」について考えてみる。


よく言われるように、「ミステリは謎解きを扱うひとつのジャンルであり、ライトノベルはミステリを含め様々なジャンルを含めた大きなカテゴリである、この二つは並べて語るようなものではない」というのも間違いではない。
参考:ハッシュタグ #ミステリ系おすすめラノベ - Togetterまとめ


一方で、2ちゃんねるでは「ライトノベル板」「ミステリー板」として、二つはしっかりと区切られているし、Twitterなどでも「ライトノベルクラスタ」「ミステリクラスタ」の区別で混乱は無いように思える。


これはつまり、作品グループとして見たときのライトノベルとミステリは比較できるようなものではないが、コミュニティとして見たときには確かに判別できる、ということではないか。


そのあたりのサンプルとなるのが西尾維新についての以下の記事である。
アジアミステリリーグ - 西尾維新のミステリとしての受容、ライトノベルとしての受容
最初はミステリのコミュニティの中で認知されていた作家が、次第にライトノベルのコミュニティに受容され、ミステリのコミュニティからは離れていく過程がよく分かる*1


考えてみれば、そもそも「ライトノベル」という語は、読者のコミュニティを分割するに際して名付けられたものである。ライトノベルの定義を「コミュニティ」に求めるのは、なかなかどうして自然なことではないだろうか。


「ライトノベル」という名称誕生にまつわる秘話をNHK歴史番組っぽく - Togetterまとめ


ただし、「コミュニティ」とは「読者のコミュニティ」だけではない。ニコニコのコミュニティだって「投稿者と視聴者と運営」によって作り上げられているわけで、ライトノベルのコミュニティも「作者と読者と出版社」によって作り上げられるものだと考えるべきだ。


ライトノベル作家が一般文芸へ活動の場を移すことを、俗に「越境」と呼んだりするが、その「境」とは、出版社の違いでも作風の違いでもなく、「コミュニティ」の違いによって生み出されるものなのだろう。

*1:ただ、いま確認してみたら西尾維新スレpart18が立っていた。ぜんぜん伸びてないけど。