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ライトノベルネタブログ

ライトノベルレーベルごとのWeb小説書籍化方針

「最近のライトノベルはWeb小説の書籍化ばかりだ」「『小説家になろう』が青田買いの場になっている」といったことがよく言われる昨今、実際のところはどうなのかを、「新人賞経由」「スカウト」「別レーベル」「コンテスト」の四つの分類から見ていきたいと思います。

新人賞経由方式

Web小説の書籍化はあるもののあくまで「新人賞を受賞した作品がたまたまWeb小説だった」というパターン。

電撃文庫アスキー・メディアワークス

ソードアート・オンライン/アクセル・ワールド」「魔法科高校の劣等生」の二大タイトルを擁する電撃文庫ですが、Web小説を直接スカウトするようなことはなく、あくまで新人賞経由で採用するという態度を崩していません。「魔法科高校」の場合はかなりややこしいですが、作者が別作品を新人賞に送って落選したものの、その作品がきっかけで「魔法科高校」が出版されたという話。

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)


GA文庫(SBクリエイティブ)

新人賞受賞作の「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」がスマッシュヒット。「少年給魔師と恋する獣(乙女)」という作品も新人賞を受賞した模様(書籍化予定)。

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)


集英社スーパーダッシュ文庫

受賞作として「暗号少女が解読できない」を刊行。Twitter小説の書籍化などもあり。

暗号少女が解読できない (集英社スーパーダッシュ文庫)

暗号少女が解読できない (集英社スーパーダッシュ文庫)


スカウト方式

Web小説の作家に直接声をかけて引っ張ってくるパターン。

富士見ファンタジア文庫富士見書房

富士見書房 | WEB小説特集
今年三月に突如として参戦。電撃のように「新人賞経由」ということはなく全てスカウト。富士見書房は、前後して富士見新時代小説文庫(時代小説のレーベル)や富士見L文庫(大人向けライトノベルのレーベル)などを創刊、またプロ作家による無料Web小説サイトファンタジアBeyondを開設するなど、なんだか派手に動いております。


角川スニーカー文庫KADOKAWA

「この素晴らしい世界に祝福を!」をスカウトして大々的に売り出していますが、それ以外だと「神様ライフ」(別レーベルでデビューしたなろう出身作家の書き下ろし作品)くらいでしょうか。


HJ文庫ホビージャパン

「姉ちゃんは中二病」シリーズは新人賞経由。「VRMMOを金の力で無双する」はスカウト。ハイブリッドですな。
あとHJ文庫大賞 読者グランプリというサイトを作って、「なろう」から引っ張ってきた作家を蠱毒に放り込んでいる模様(この中では「ハイスクール・シークレット・サービス!」が好きですね)。

姉ちゃんは中二病 地上最強の弟!? (HJ文庫)

姉ちゃんは中二病 地上最強の弟!? (HJ文庫)

VRMMOをカネの力で無双する (HJ文庫)

VRMMOをカネの力で無双する (HJ文庫)


別レーベル方式

同じ出版社の中でWeb小説専門の別レーベルがあるので自レーベルでの書籍化がほとんど無いパターン。

MF文庫Jメディアファクトリー

メディアファクトリーは「MFブックス」という別レーベルを立ち上げて、Web小説の書籍化は主にそちらでやっています。
ただし一作品だけ、MF文庫Jでは「Re:ゼロから始める異世界生活」をスカウトしてきて、めちゃくちゃプッシュしていますね。

Re:ゼロから始める異世界生活1 (MF文庫J)

Re:ゼロから始める異世界生活1 (MF文庫J)

ファミ通文庫エンターブレイン

エンターブレインもWeb小説を積極的に出版しているんですが、ファミ通文庫から刊行するのではなく、「ログ・ホライズン」「ニンジャスレイヤー」などのように単行本サイズでの刊行が基本となっています。
ファミ通文庫のなかでは「天啓的異世界転生譚」だけで、それも作者のウスバーが「この世界がゲームだと俺だけが知っている」を単行本で出したあとの話なので、わりと特殊な感じ。

天啓的異世界転生譚 1 (ファミ通文庫)

天啓的異世界転生譚 1 (ファミ通文庫)


コンテンスト方式

「小説家になろう」と共同でコンテストを行ってその優秀作品を書籍化しているパターン。

このライトノベルがすごい!文庫(宝島社)

エリュシオンライトノベルコンテストに協賛しており、応募作品の中から「まのわ」を書籍化。投稿プラットフォームの中で別企業がコンテストを行うのはPixivなんかでも見られる方式ですね。

まのわ 魔物倒す・能力奪う・私強くなる (このライトノベルがすごい! 文庫)

まのわ 魔物倒す・能力奪う・私強くなる (このライトノベルがすごい! 文庫)


オーバーラップ文庫(オーバーラップ)

オーバーラップ文庫も、小説家になろうと組んで「オーバーラップ文庫WEB小説大賞」を開催しており、そこからの書籍化を進めています。
オーバーラップ文庫|オーバーラップ文庫×小説家になろう
ちなみに「大英雄が無職で何が悪い」だけは、ライトノベル作家が自作品(「灰と幻想のグリムガル」)の外伝を「なろう」に掲載していたものの書籍化なので、これも特殊な感じ。


その他、「小説家になろう」からの書籍化作品の一覧はこちら。→書報

という感じで見ると

「Web小説の書籍化」が意外に少ないことが分かるかと思います。積極的に乗り出しているのは富士見とオーバーラップくらいでしょうか。

「いやいやそれはおかしい、もっとたくさん書籍化されているはずだ」と思われるかもしれません。そのとおり。つまり昨今急増しているのは、既存のラノベレーベルとは異なる「Web小説専門の新レーベル」なのですね。アルファポリス(は老舗ですが)、ヒーロー文庫、MFブックス、モンスター文庫などなど。

というわけで「最近のライトノベルはWeb小説の書籍化ばかりだ」というのは少し違って、「最近のライトノベルの中にはWeb小説の書籍化ばかりのレーベルがある」と捉えておくべきでしょう。

で今後はどうなるの

ラノベ新人賞は「作家」を募集しているので、デビュー作ですら容易に打ち切られる一方で、やる気があるかぎりは、あるいは企画が通るかぎりは、次回作を出してもらえます(たぶん)。

それとは逆に、Web小説からのスカウトは「作品」を出版するというところに重きが置かれ、その作家をどう扱うかは未知数であるように思われます。「Webで大人気の小説の書籍化」が完結したあとはどうなるのか?

もちろん、それは「ほとんどの書籍化作品がまだ完結していない」という、単純に時間的な問題でもあります。書籍化作品が完結したあとは書き下ろしの新作を発表していく…という流れが定着すれば、「新人賞受賞作家」と「Web小説スカウト作家」はいずれ緩やかに合流していくのかもしれません。

あとは、そうですね、以前にも書きましたが、やっぱり今のWeb小説書籍化のポジションは「アニメやゲームのノベライズ」に近いような気がします。まとまった分量。異なるファン層。高め安定の売上。新しくライトノベルレーベルを起ち上げる際には「速筆の傭兵作家」「アニメやゲームのノベライズ」に加えて「Web小説の書籍化」が三種の神器となるのではないでしょうか。