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ライトノベルが電子書籍になることのメリット

電子書籍をよく買うようになって感じる最大の変化は「新刊にこだわらなくなった」ということだ。と言っても「古い作品ばかり買っている」ということではない。以下のような事情がある。


ラノベの場合、月に100冊以上の新刊が出ているが、書店ではあまり棚を割いてもらえない。漫画、あるいは一般文芸がフロアの大部分を占めていて、ラノベには棚がひとつかふたつがせいぜい、ということも少なくない。これには「電撃組」などの特約店制度も関係しているのだろうが、ともかくラノベ棚は非常に狭いのである。


そのため、ラノベの新刊台は「直近一週間に発売された新刊しか並ばない」というようなことになってしまう。あるレーベルの新刊発売日が来ると、その新刊だけが平積み台に並べられ、その他のレーベルの新刊は撤去されてしまうのだ。そして撤去されたその新刊が、そのまま書店の棚に残っている保証はない。


ラノベ読者としては、発売日から一週間以内に買わないと、それ以降まったく買えなくなる危険があるので、「すぐには読まなくてもとにかく発売日に買っとけ」ということになる。出版社の側も「ラノベは発売後一週間が勝負」と言って、そういう売り方になっていく。


かくして「一週間で売れなきゃ終わり」みたいな状況になってしまうのだった。


このあたりのことは漫画のほうの話も含めて以下のまとめに詳しい。


で、まあ単純に、電子書籍ではそのような心配はないのである。


一週間経ったからといって電子書籍ストアから削除されることはない。売り切れもない。だから新刊を発売日に買うことにこだわる必要はない。好きなときに買えばいい。リアル書店には悪いけども、電子書籍が広まって「初動がー」という売り方が変わっていけば、いろいろと捗ると思う。


ただ、これに関連して心配な点、不満な点をいくつか。


電子書籍ストアではしばしば値下げセールがあるので、読者は「セールがあるまで新刊を買い控える」という行動をとりがちである。それこそ「いま買わなきゃ売り切れてなくなってしまうかも」ということがないので余計にそうなる。
長期的にみて、その過剰な値引き合戦が出版社のためになるのか、作家のためになるのか、というのが分からない。読者にとっては嬉しいことだが、それで出版社が潰れました、作家さんは食い詰めました、というのでは意味がない。そろそろ沈静化してほしいところ。
…ふと思ったが、「値下げセールのときに購入が偏る」のであれば、「初動重視」から「値下げセール時の売上重視」とかになったりするのだろうか。値下げセールのときに売れない作品はなにをやっても駄目。みたいな。


電子書籍ストア(というかBOOK☆WALKER)を「リリース順」で並び替えると、「新刊」だけではなく「新しく電子化された過去の作品」とかも引っかかってくる。つまり「電子版のリリース日」でソートできても「紙の書籍の発売日」ではできない。これは使いづらい。
名作が掘り起こされるのは喜ばしいが、過去の人気作品ばかり購入されると、新人作家にはつらいだろうし、それで新作が出てこなくなれば読者としても困るので、新刊は新刊としてアピールして欲しい。というワガママ。


そして電撃文庫である。電撃文庫電子書籍で新刊を配信しない。いまや書店=電撃文庫の新刊を買う場所になっている。ちょうめんどくさいんだけど。なんとかなりませんかね。
(注・現在は1ヶ月遅れながら配信されるようになっています)


「一週間で売れなきゃ打ち切り」というのは、ある意味、機械的にできる判断であるし、期間を短く区切ることによってそこにリソースを集中できるということもある。だが、もし電子書籍が普及して「初動に集中しない売れ方」が普通になれば、打ち切りを判断するタイミングは難しくなるし、一週間以降もあれこれと手を尽くさねばならなくなる。あるいは電子書籍ストアのページレイアウトなどがダイレクトに売上に響いてきたりするのでは。なかなか大変そうである。まあ昔はそれが普通だったと言えばそれまでだが。


…なんか「メリット」と題しておきながら「デメリット」ばっかり並べ立てている気がするぞ。


えー、私はBOOK☆WALKERを応援しています!