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2014年ライトノベル個人的ベスト10

王手桂香取り!

王手桂香取り!  (電撃文庫)

王手桂香取り! (電撃文庫)


誤解を恐れずに言えば『ヒカルの碁』の将棋版です。『ヒカルの碁』と同じ面白さを、この作品も持っている。憧れの先輩に告白するため、将棋の駒たちから教えを受けて、ぐんぐん成長していく主人公。3巻かけて将棋も恋も大きく前進して、さてこれからもっと面白くなるぞ、というところで残念ながら「第一部完」となっております。ええ、古来どれほどの作品が「第一部完」のまま終わっていったでしょう。第二部開始のためにも、皆様には是非とも、是非とも買っていただければと思います。

四人制姉妹百合物帳

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

多くの出版社から刊行を断られ、当初は同人誌で出していたという、いわくつきの作品。なぜ出版されなかったのかと言えば、ひとえにこの作品のキーワードが「剃毛」だったからだと思われます。お嬢様学校に通う美しい少女たちが「下の毛」を剃るだの剃らないだので大騒ぎ…それなのに何故か切ない百合恋愛小説として仕上がっているという、まさに奇才・石川博品の面目躍如といった趣きの傑作であります。

サディスティックムーン

こちらもまた奇才と言うに相応しい出口きぬごしの最新作。あらすじとしては、感情の希薄な主人公が頭のおかしいヒロインに振り回されて二人であちこちの復讐に協力していくという、一種の謎部活的なコメディではあるのですが。何が狂ってるってヒロインの頭が本当におかしいんですよね。「気に入らない女を拉致監禁して尿道カテーテルを使って主人公の尿を注入する」とかやるわけです。しかも、そのあたりの描写が実に自然で、「頑張って過激なヒロインを書いてみました」という感じではないわけです。ドン引きするくらい面白い作品でした。

男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。

まさにタイトルのとおり。主人公はラノベ作家。ヒロインはアニメ声優。自作品がアニメ化されることになった主人公と、それに出演することになったヒロインが、東京に向かう電車の中で乗り合わせてラノベ作家にまつわるQ&Aを繰り広げるという作品。そのQ&Aコーナーはひたすら淡々としていて正直面白みはありません(興味深くはありますが)。しかし2巻のラスト、「主人公が首を絞められている理由」が描かれることによって、一気に強烈な「物語」に変貌を遂げる。それがすごく面白い。ジャンル的には『俺の教室にハルヒはいない』と併せて読みたい作品ですね。

夏の終わりとリセット彼女

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

自堕落で不真面目な主人公。記憶喪失になった生真面目なヒロイン。記憶喪失になる前のヒロインは、実は主人公と恋人同士だったのだが…という話。ヒロインとしては主人公のような屑と恋人だったとは到底信じられない。主人公もまた、恋人らしいことをしないまま彼女が記憶喪失になってしまったので、ヒロインが本気だったのかさえ分からない。そんな二人が再び距離を縮めていく過程が描かれる。実に良い青春ラブストーリーです。

ルガルギガム

古代メソポタミアのような異世界に流されてきた現代日本の少年。その世界には街があり、多くの人が住み、実在の女神が崇められていて、そして主人公と同じくいろんな国いろんな時代の人々が流されてきていた。女神である少女に気に入られ、付き纏われつつ、少年は冒険者となって現代に帰る方法を探す。上下巻で非常によくまとまっている冒険ファンタジー、そしてボーイ・ミーツ・ガールなのです。

魔女は月出づるところに眠る

こちらは上中下巻。表紙から想像されるような仲良し三人組のワクワクドキドキの魔女っ子ライフなんてものではもちろん無くて、魔女となって数奇な運命に巻き込まれた少女たちが、不幸と絶望にまみれて底なし沼に沈んでいくような、それでも最後には希望が残るような、壮大な暗黒ファンタジーなのです。

最終戦争は二学期をもって終了しました

異能バトルと日常系を組み合わせた系の作品。主人公と仲間たちが悪の組織を倒したあと、遅れてやってきた戦闘ヒロイン。悪の組織が倒れたことを説明する主人公たち。それを信じないヒロイン。街を見て回ると、戦いの傷跡が色濃く残っていて、まだ何かが起こりそうではあるけれど、でもやっぱり何も起こらない。コミカルではあるがギャグではない、祭りのあとのような切なさのある作品です。

レターズ/ヴァニシング

世界の法則を規定する文字「世界言語」が発見された世界が舞台。その世界言語を操る少女が老教授を殺して逃げ出したところから物語は始まる。教授の孫である少年、少年の友人、教授を殺した少女、少女に指令を与える謎の男、それらを追う刑事たち。複数の視点から描かれるSFサスペンス。作り込まれた設定とは裏腹に、ストーリーはすっきりしていて分かりやすい。今年の電撃文庫のSF作品としてはこの『レターズ/ヴァニシング』と海羽超史郎の『バベロニカ・トライアル』が双璧でしたね。できれば併せてどうぞ。

銀河戦記の実弾兵器

冷凍睡眠装置から目覚めた主人公。そこは現代から何千年経ったか分からない遠い未来の、宇宙船の中だった。そこで出会った毒舌AIのロボットと、そのあと出会った美少女メカニックと共に、主人公は宇宙船を揃え、会社をおこし、伝説上の存在となった地球を探すために宇宙を駆け巡る。どストレートなスペース・オペラ。…まだ2巻を読んでないんですよね。読まねば。


というわけで、ギリギリ年越しまでに間に合った?
来年もよろしくお願いします!