WINDBIRD::ライトノベルブログ

ライトノベルブログ

2018年ライトノベル個人的ベスト10

七つの魔剣が支配する

今年は、同作者の『天鏡のアルデラミン』完結もあったんですけど、新作への期待を込めてこちらをチョイス。端的に言ってハリポタなんですが、ただ魔法学校が舞台というだけでなく、奇怪に蠢く迷宮じみた校舎に危険な変人狂人たちが跋扈する、並の生徒では生きて卒業もできぬという「魔窟」としての描写が秀逸。そこに『アルデラミン』の人物関係にも似た「固い友情で結ばれた六人」を主役として登場させ、また剣豪小説めいた「魔剣」という設定を用意することで、独自の作品世界をつくりあげている。最後の一撃も強烈。今後が楽しみです。

ウォーター&ビスケットのテーマ

イムループする街を舞台にした異能&知能戦。第二巻では各勢力の全面戦争にスケールアップ。トッププレイヤーたちの利害は複雑に入り組んで、それぞれに策謀のかぎりをつくして勝利を狙う。しかし、主人公とそのライバルだけが、全く別のものを見て、全く別の次元で戦っているという、この「怪物」と「天才」によるギリギリの闘いが最っ高にエキサイティングなんですよね。頭脳戦・心理戦をこよなく愛する人に、あるいはそうでない人にも、あらためて全力でオススメしたい作品です。

いでおろーぐ!

祝・完結。大性欲賛会の矯正施設に幽閉され、おぞましいほどの洗脳を受けたことで、己の根底にあるリア充への憎悪を喪失しかかるものの、その危機的な状況からかろうじて脱し、仲間たちの待つ最前線へと舞い戻る反恋愛革命戦士・高砂の雄姿が描かれる最終巻でした。なんのこっちゃ。このシリーズは本当に巻を重ねるごとに面白くなっていく大傑作なので、完結したいまぜひ一気読みしていただきたいですね。なんなら6巻の短編集から入るのもありかも。

継母の連れ子が元カノだった

デビュー作とは雰囲気を変えてきているんですが、「なろう」で連載されている『最強カップルのイチャイチャVRMMOライフ』が本作と似たタイプの作品で、まさにWebという場で才能が開花したという印象があります。とにかくツンデレカップルの描写が異常に上手いんですよ。キャラの設定だとかはファンタジーと言っていいんですが、台詞が妙に生っぽいというか、ナチュラルな感じでキャラが立っていて、それで気持ちよく砂糖を吐ける。この手のラブコメを書かせたら業界で右に出る者がいないのではないかとまで思ってしまう。これが天賦の才というやつなんでしょうかね。

無双航路

無双航路 1 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)

無双航路 1 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)

前出の紙城境介と同じく、こちらもプロ作家がWeb小説として投稿した作品を書籍化したかたち。宇宙戦艦のAIになった主人公が、大敗を喫した自軍の残存兵を取りまとめて本国への帰還を目指す、といったストーリーのスペオペ。なろう系のスペオペ『銀河戦記の実弾兵器』なんかも面白かったけど、本作では戦艦に人格が宿るという設定から、ひと捻りもふた捻りもしているのがピリッと効いている。『銀英伝』のリメイクもあったことだし、SFラノベのプチブームが起きて欲しいなあ(これ毎年言ってる)。
レジェンドノベルス|シリーズ別一覧|無双航路

エートスの窓から見上げる空

女子高生とおじいちゃん先生が半地下の廊下に並んで座って、外を歩く女子高生のスカートを窓から見上げている、という構図がまず面白すぎる日常系ミステリ。語り手であるところの女子高生は、めっちゃクレバーな探偵役だけど、可愛い女の子が大好きなのと裏返しで、自己評価がやたらと低くて、いろいろと問題を抱えていて、そんな彼女を、老人が深い知性を感じさせながらも、あくまで教師として導いていく。この二人のちょっと悪ガキじみた共犯関係が素晴らしく魅力的なんですよね。

ジャナ研の憂鬱な事件簿

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫)

ジャナ研の憂鬱な事件簿 (4) (ガガガ文庫)

こちらも「日常の謎」系の青春ミステリ。先日の記事でも紹介しましたが、学園にとどまらずさまざまな立場の人間の仄暗い心理を描いた作品として、非常に完成度が高いと思っています。さらに、最新刊はちょっと三角関係っぽい感じになったりしていて、もうたまんねーって叫びだしたくなる青春でございます。『エートスの窓〜』と併せて購入して、ぜひラノベミステリ漬けになってほしいなあと思いますね。

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士

敵は倒した。世界は救われた。だからといって立ちどころに全ての問題が解決するわけではない。いまだ悩み、苦しみ、恨みを募らせる人々の、その思惑が複雑に絡み合うなかで、伝説の英雄はあっちこっちの陣営に潜入して、何とか事態を把握し、解決を図ろうとする…いかにも苦労性な話ですよね。最新の第二巻では、邪教徒の残党との争いに決着がつき、とても美しい結末が導かれましたが、これで打ち切りなんてことにならず、是非とも続きが読みたいですね。

魔女軍師シズク

魔女軍師シズク (ヒーロー文庫)

魔女軍師シズク (ヒーロー文庫)

図書室の奥深く、密かに鬱憤を抱える少女と、孤高の美しき少女が密会する。という素晴らしき百合的な導入から、二人がそれぞれに異世界に転移し、主に前者の視点から物語は進んでいく。ちょっと『ふしぎ遊戯』を思い出したりします。異世界にたった一人で放り出された主人公は、もちろん頼れる人もおらず、言葉もわからず、泥水をすするような生活をしながら機会を窺い、やがて傭兵団に潜り込んで軍師として台頭していきます。わりと邪悪な二人の少女が「現実」という束縛から解き放たれて異世界で何を成すのか。これは面白いですよ。

スカートのなかのひみつ。

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

スカートのなかのひみつ。 (電撃文庫)

女装少年と破天荒デブとドロボウ女子高生たちが繰り広げるキレッキレの青春群像劇。破天荒デブ、もとい常人離れした発想と行動力を持ついわゆる「スーパー高校生」な八坂幸喜真がこの物語のエンジンなわけですが、個人的にはやはり、女装のために努力を惜しまず、女装姿を褒められると恥ずかしがりながらも喜んでしまう、生粋の女装男子である天野くんが大好きなんですよね。近年最高の女装ラノベのひとつだと思います。