異世界転生とは「現実世界で死んで異世界に生まれ変わる物語類型」、異世界転移とは「現実世界から異世界に移動する物語類型」のこととする。
「勇者として異世界に召喚されるもの」や「現実世界と異世界が接続されて行ったり来たりするもの」などもそこに含めることとする。
また「VRゲームが実体化するもの*1」や「転生した先が戦国時代であるもの*2」なども含めることとする。
…と長々と説明してみたが、この「現実世界から異世界へ移動する物語類型」のしっくりくる呼び方が無い。
「転生もの」「転移もの」だともう片方が含まれないし、いちいち「転生・転移もの」と書くのも面倒だ。
しょうがないから適切な呼称を考えてみよう、というのが、この記事の企図するところである。
異世界ファンタジー
「ちょっと待って、それって異世界ものとか異世界ファンタジーって言うんじゃないの?」と思った方もいるかもしれない。
しかし「異世界ファンタジー」というのは本来「異世界を舞台としたファンタジー」という意味でしかなく、転生や転移は必須要素ではないのだ。
『ロードス島戦記』は異世界ファンタジーではない……のかもしれない。 - 前島賢のラノベ以外
むしろ、この誤用が広まりつつあってややこしいので(文脈を考慮しても区別をつけづらい)、その意味でも早急に新しい呼称が必要なのである。
ちなみに「誤用を採用しろ」という意見には与しません。
なろう系
「じゃあ、なろう系でいいんじゃない?」という人もいるかもしれない。
しかし、最近の「なろう」では異世界転生の人気が下火となり、代わって最初から異世界の住人を主人公とした、いわゆる「現地主人公」の人気が高まっている。
また、転生ものでも「偉大なる魔法使いが転生の秘法を完成させて数百年後の世界に生まれ変わった」といったような「異世界→異世界」の転生が増えており、これだと最初に提示した定義から外れてしまう。
「なろう系」という言葉は、概ね「なろうに掲載されている作品」あるいは「なろうで流行しているジャンル」といった意味であろうし、その「なろう」の流行はものすごいスピードで移り変わっていくので、特定のジャンルのみを指して「なろう系」と呼ぶのは不適切だろうと思うのである。
異世界トリップ
古くからある呼称だが、どちらかというと女性向けの作品で使われることが多い印象がある。
そして、ひとことで「転移」も「転生」も含められそうな感じがする。
ただ、「trip」とは「旅行」という意味なので、深く考えると「行って戻ってくる」タイプの転移しか指していないのではないか?と思ってしまう。
候補としては残しつつも、別案を模索することとする。
ナルニア型
『ナルニア国物語』のようなファンタジーを「ナルニア型」と呼ぶ。
基本的には「異世界トリップ」と同義であると思われるのだが、「異世界に行く」「異世界に迷い込む」「現実世界と異世界を往復する」あたりで人によって微妙に異なる用法がある気もする。
つまりこちらも「転生」が含まれるか分からないので保留にしておこう。
ちなみに転生や転移はハイファンタジー(=異世界ファンタジー)に含まれないと言う人もいるが、『ナルニア国物語』はたいていハイファンタジー扱いされるので、別にハイファンタジーでいいと思います*3。
ISEKAI
海外でも「異世界転生・転移もの」は大人気で「ISEKAI」だけで通じてしまうらしい。
つまり、普通の異世界ファンタジーと区別して、転生・転移系だけを「ISEKAI」と呼んで区別することもできそうに思える。
ちなみにVRMMORPGもの「LitRPG(=LiteraryRPG)」と呼ばれているらしいぞ。
ただ、二次創作小説界隈ではアルファベット表記が蔑称的な意味合いを持つらしく、たとえば衛宮士郎がコテコテの最強主人公になったものを「EMIYA」、比企谷八幡が最強になったものを「HACHIMAN」、めちゃくちゃな内政チートのことを「NAISEI」などと書いたりする。
よって「ISEKAI」も蔑称と勘違いされそうだという最大の弱点がある。
転世
「異世界転生・転移」略して「転世」とかどう?っていう、これは私がいま考えたやつ。
ググったらグラブルとかで使われているらしいので、まったく突拍子もない言葉ではなさそう。
これは字面で「ああ、転生とかのことを指してんのね」ってわかるのがメリット。
デメリットは「上手いこと言ったつもりかもしれんがダサいぞ」って思われそうなところ。
というわけで
1. トリップ
2. ISEKAI
3. 転世
あたりを候補として、周囲の反応をうかがいつつ、普及を図っていきたいと思う。