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原始時代からその6000年後の現代までを描く大河ファンタジー『始まりの魔法使い』の打ち切り回避を祈る

『始まりの魔法使い』というライトノベルがあります。

異世界にドラゴンとして転生した男を主人公とするファンタジーです。

そう、ドラゴンです。ドラゴンなので長命です。ほとんど不老不死です。物語は数十年単位で進んでいきます。第一巻は主人公が生まれた年――竜歴0年から始まり、最新の第五巻では竜歴1350年まで来ています。もはや、とてつもない時間が経過しているように思えますが、シリーズ冒頭で示される「現代」は竜歴6050年の彼方にあるのです。なんとも驚くべきスケールではないですか。

主人公は、その長い長い歴史のなかで、さまざまなことを行います。人間たちと共に暮らします。学校を建てて教育を施します。世界の仕組みを研究し、新しい魔法を生み出します。人間以外の種族とも交流します。主人公の教え子たちはやがて主人公を超えるほどの能力を身に着けていきます。ときには恐ろしい敵を生み出してしまいます。戦います。結婚もします。そして愛する人間を失います。

石之宮カントは、そんな壮大な物語を、軽妙な筆致で描いていきます。

「面白そう」と少しでも思ってくれたなら、ぜひとも購入をよろしくお願いします。

始まりの魔法使い1 名前の時代 (ファンタジア文庫)

始まりの魔法使い1 名前の時代 (ファンタジア文庫)

さて、ところが、そんな『始まりの魔法使い』が打ち切られるらしいのです。

ちょっと、それはないんじゃないかと思うんですよ。

もちろん、ラノベ業界だって売上が厳しい昨今ですから、どんな作品がいつ打ち切りになってもおかしくはないと思います。これが他の作品だったら、どんなに面白くても、「またか」「しょうがないか」で済ませていたでしょう(いや済まさねえけど)。

しかし『始まりの魔法使い』ですよ。

あらかじめ定められた6000年分の物語ですよ。

それを途中でぶった切って終わらせちゃあいけないでしょう。

語弊を恐れずに言えば、これは「面白さ」の問題じゃないんですよ。この作品が「最後まで刊行してこそ意味のある物語」だということなんですよ。このコンセプトで途中下車は許されませんよ。というか、そんなの最初からわかってたはずじゃないですか。富士見ファンタジア文庫はその覚悟をもって書籍化したんじゃないんですか。ほんとがっかりだよ。

これで『ファイフステル・サーガ』まで打ち切ってたら絶対に許さなかったからな富士見

というわけで『始まりの魔法使い』、一冊でも多くの既刊が売れて、シリーズが再開されることを祈るものであります。


追記。

買いたくなるほどのアピールがまだ足りない。もっと推して - Fushiharaのコメント / はてなブックマーク

基本的にはコンセプトどおりの作品なんですよ。ただ主人公はけっこう間が抜けているので、人類を教え導くというよりは「一緒に成長していく」という印象が強いかなと思いますね。全体的にほのぼのとしているんですが、作中でほぼ唯一の「悪意を持った敵」は、『ガンバの冒険』のノロイを彷彿とさせてかなり怖いです。あとは、そうですね、推しになるか分かりませんが、この作品の章題はマジック:ザ・ギャザリングを意識したもので、フレーバーテキストまでついていて楽しいです。たとえばこんな感じです。

第12話 かくれんぼ / Hide and Seek
エルフに森で追われたとき、木の陰に隠れるっていうのはそんなに悪い手段じゃないよ。
全く意味のないその行為に何の意味があるのか、数秒くらいは考えてくれるさ。

第14話 度量衡 / Metrology
1メートルは、1秒の299792458分の1の時間に誘導呪物による通信魔術が伝わる行程の長さである。
――第22回国際度量衡総会決議1、竜歴5463年

第19話 穴 / Hole
良いことを教えてあげる。
あんたのその作戦とドーナツには、共通点があるわ。
――緑の魔女、ニーナ


面白さの問題じゃない、とか言われたら、さすがに読んでみようかなとは思わないな…。まあでもカクヨムで連載続くみたいですよ。 - yuatastのコメント / はてなブックマーク

語弊を恐れず書いたら語弊を招いたようですが、もちろん「そんなに面白くないよ」と言っているわけではなく、「面白いのは当然としてそれだけでなくこのコンセプトは最後まで刊行してこそじゃないか」と言っているのです。それと、作者に「続きを書いてくれ」とお願いしているのではなく、出版社に「続きを出してくれ」とワガママ(ワガママでしかないことは自覚しています…)を言っているのであって、Webで続きが読めるからいいという問題ではないんですよね…。