アガートラムは蒼穹を撃つ
アガートラムは蒼穹を撃つ 1.三日月学園機関甲冑部の軌跡 (オーバーラップ文庫)
- 作者:山口隼
- 出版社/メーカー: オーバーラップ
- 発売日: 2019/12/24
- メディア: 文庫
世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)
世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ) 2 (オーバーラップ文庫)
- 作者:黒留ハガネ
- 出版社/メーカー: オーバーラップ
- 発売日: 2019/08/22
- メディア: 文庫
アガートラムは蒼穹を撃つ 1.三日月学園機関甲冑部の軌跡 (オーバーラップ文庫)
世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ) 2 (オーバーラップ文庫)
・2019年内に投票者が「読了した」ライトノベルのなかで面白かった10作品に投票してください(発売日や購入日は関係なく「読了日」を基準とします)
・「重複なし」で「10作品」必須です
・「シリーズ名」で投票してください
・ただし「スピンオフ」は別シリーズとみなします(たとえばSAO本編に対する「プログレッシブ」や「オルタナティブ」など)
・「あなたがそうだと思うものがライトノベルであり、他人の同意は必要ありません」
・投票は「2020年1月3日(金) 24:00」までの予定です
今回の投票者は50人、すなわち全体では500票でした。
それでは投票結果です。
『夏へのトンネル、さよならの出口』
『吸血鬼に天国はない』
『筐底のエルピス』
『86-エイティシックス-』
『ヒトの時代は終わったけれど、それでもお腹は減りますか?』
『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』
『錆喰いビスコ』
『Unnamed Memory』
『プロペラオペラ』
『異世界誕生シリーズ』
『世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)』
『青春ブタ野郎シリーズ』
『つるぎのかなた』
『ハル遠カラジ』
『異世界迷宮の最深部を目指そう』
『賭博師は祈らない』
『これは学園ラブコメです。』
『スイレン・グラフティ』
『ぼくたちのリメイク』
『むしめづる姫宮さん』
『ようこそ実力至上主義の教室へ』
『りゅうおうのおしごと!』
『陰の実力者になりたくて!』
『学園者!』
『月とライカと吸血姫』
『五位鷺の姫君、うるはしき男どもに憂ひたまふ』
『子守り男子の日向くんは帰宅が早い。』
『弱キャラ友崎くん』
『千歳くんはラムネ瓶のなか』
『探偵はもう、死んでいる。』
『天才王子の赤字国家再生術』
『迷宮の王』
『薬屋のひとりごと』
『路地裏に怪物はもういない』
『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』『AGI -アギ-』『アサシンズプライド』『あの日、神様に願ったことは』『イリヤの空、UFOの夏』『
『15歳のテロリスト』『全肯定奴隷少女:1回10分1000リン』『29とJK』『2年B組は全滅しました』『Abyss 賞金2700億円のVRMMO』『BanG Dream! バンドリ』『神々のいない星で』『Fate/strange Fake』『GOSICK』『HELLO WORLD if』『NGな彼女。は推せますか?』『WORLD END ECONOMiCA』『アークエネミー・スクールライフ』『アオハル・ポイント』『アクセル・ワールド』『あなたのことを、嫌いになるから。』『アフターマン』『アルスラーン戦記』『いつかここにいた貴方のために/ずっとそこにいる貴方のために』『いつかのレクイエム』『いでおろーぐ!』『ヴァンパイア・サマータイム』『ウは宇宙ヤバイのウ!』『エスケヱプ・スピヰド』『オリンポスの郵便ポスト』『お狐様の異類婚姻譚』『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』『かくりよの宿飯』『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』『キキ・ホリック』『キノの旅』『キミとは致命的なズレがある』『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』『キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った』『キラプリおじさんと幼女先輩』『クズと天使の二周目生活』『クロハルメイカーズ』『ゴスロリ卓球』『ことのはロジック』『この世界がゲームだと俺だけが知っている』『さよならピアノソナタ』『ジャマしないでよ、大神くん!』『スーパーカブ』『スカイ・ワールド』『スキルが強すぎてヒロインになれません』『ストライプ・ザ・パンツァー』『ストレンジムーン』『スレイヤーズ』『ソシャゲダンジョン』『タイムリープ』『ただ、それだけでよかったんです』『ただの人間でも顔をエルフに整形したらモテモテになって大成功した話』『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん』『ティアムーン帝国物語』『デューン』『とある飛空士への追憶』『とある魔術の禁書目録』『とらドラ!』『とんでもスキルで異世界放浪メシ』『なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?』『なれる!SE』『にわか令嬢は王太子殿下の雇われ婚約者』『ノームの終わりなき洞穴』『はじらいサキュバスがドヤ顔かわいい。』『パノラマ島奇談』『バブみネーター』『ファイフステル・サーガ』『フォーチュン・クエスト』『ブギーポップシリーズ』『ふしぎ古書店』『フシノカミ』『フレームアームズ・ガール 可愛いってどういうこと?』『ヘヴィーオブジェクト』『ホーリーハーツ!!』『ぼくは異世界で付与魔法と召喚魔法を天秤にかける』『マッド・バレット・アンダーグラウンド』『ミニスカ宇宙海賊』『メイデーア転生物語』『メグとセロン』『メニューをどうぞ』『モンスター娘のお医者さん』『やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい』『リビルドワールド』『リベリオ・マキナ』『リベンジャーズ・ハイ』『レールアテンダントガール』『ロータス戦記』『ロード・エルメロイII世の事件簿』『ロードス島伝説』『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』『わが家は祇園の拝み屋さん』『わたしたち、何者にもなれなかった』『悪役令嬢は旦那様を痩せさせたい』『安達としまむら』『威風堂々惡女』『異セカイ迷子の半透明とやさしい死神』『異世界でロリに甘やかされるのは間違っているだろうか』『異世界の名探偵』『異世界転生アンチテーゼ』『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』『異世界洋菓子店フォックステイル』『淫らで緋色なノロイの女王』『噂の学園一美少女な先輩がモブの俺に惚れてるって、これなんのバグですか?』『塩の街』『横浜ダンジョン』『乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です』『俺の現実は恋愛ゲーム?? ~かと思ったら命がけのゲームだった~』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』『科学オタクと霊感女』『火の中の竜』『我が家のお稲荷さま。』『GODZILLA -怪獣黙示録-』『海のカナリア』『灰と幻想のグリムガル』『灰都ロヅメイグの夜』『学園王国の没落王と12人の生徒会長』『完璧美少女な天才ショタがダダ甘お姉ちゃんと業界仰天のゲームを創りながらゲーム作りの怖いお話を聞かされています!』『艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!』『気ままに東京サバイブ。』『義妹が勇者になりました。』『境界線上のホライゾン』『響け! ユーフォニアム』『金属バットの女』『銀河英雄伝説』『空の中』『熊本くんの本棚』『君がいた美しい世界と、君のいない美しい世界のこと』『君が僕を』『君は世界災厄の魔女、あるいはひとりぼっちの救世主』『君死にたもう流星群』『撃ち抜かれた戦場は、そこで消えていろ』『元勇者は静かに暮らしたい』『後宮妃の管理人』『紅蓮館の殺人』『行き倒れもできないこんな異世界じゃ』『黒猫のおうて!』『今日から俺はロリのヒモ!』『婚約破棄から始まる悪役令嬢の監獄スローライフ』『婚約破棄のために淑女になる方法。』『佐伯さんと、ひとつ屋根の下』『冴えない彼女の育てかた』『三日月邸花図鑑』『指輪の選んだ婚約者』『死者の奢り』『死体埋め部の悔恨と青春』『紫色のクオリア』『自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。』『七姫物語』『失恋文庫』『社会的には死んでも君を!』『秋山野要は愛されている。』『十三歳の誕生日、皇后になりました』『巡ル結魂者』『処刑少女の生きる道』『海賊と女王の航宙記シリーズ』『少女禁区』『昭和少女探偵團』『侵略性外来種『勇者』』『心造少女』『森のほとりでジャムを煮る』『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』『人類は衰退しました』『図書館の魔女』『世界の終わりの世界録』『世界は愛を救わない』『世界最強の復讐神官』『生ポアニキ』『生徒会探偵キリカ』『精霊の守り人』『精霊幻想記』『聖女二人の異世界ぶらり旅』『西野』『青春敗者ぼっち野郎、金髪尻軽ギャルのお気に入りになる』『昔勇者で今は骨』『絶対ナル孤独者』『絶対城先輩の妖怪学講座』『戦国小町苦労譚』『戦地調停士シリーズ』『浅草鬼嫁日記』『草食系サキュバスだけど、えっちなレッスンしてくれますか?』『即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。』『奪う者 奪われる者』『探偵AIシリーズ』『断章のグリム』『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』『泥の銃弾』『天才少女Aと告白するノベルゲーム』『天穹のカムイ』『転生したらスライムだった件』『転生者の私に挑んでくる無謀で有望な少女の話』『転生令嬢は冒険者を志す』『電波的な彼女』『東京×異世界戦争』『董白伝』『同棲から始まるオタク彼女の作りかた』『猫の地球儀』『破滅の刑死者』『彼女は死んでも治らない』『緋弾のアリア』『飛べない蝶と空の鯱』『美少年シリーズ』『百神百年大戦』『百竜殺しと武器屋の幼女』『漂流英雄』『封殺鬼』『編集長殺し』『辺境の老騎士』『宝石吐きのおんなのこ』『放課後アポカリプス』『放課後は、異世界喫茶でコーヒーを』『僕は何度も生まれ変わる』『堀川さんはがんばらない』『本屋の店員がダンジョンになんて入るもんじゃない!』『本山らのと、先生と』『魔界帰りの劣等能力者』『魔女と少女の愛した世界』『魔弾の王と凍漣の雪姫』『魔法科高校の劣等生』『魔法学校の落ちこぼれ』『魔法少女サマーキャンプ』『魔法少女育成計画』『魔法世界の受付嬢になりたいです』『未完結ラブコメと運命的な運命論』『夢に現れる君は、理想と幻想とぼくの過去』『無双系女騎士、なのでくっころは無い』『明るい夜に出かけて』『明日の世界で星は煌めく』『迷宮キングダム』『迷宮クソたわけ』『ノラ猫マリィ』『勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした』『友人キャラの俺がモテまくるわけないだろ?』『由比ガ浜機械修理相談所』『傭兵と小説家』『幼なじみが絶対に負けないラブコメ 』『妖姫ノ夜』『落第騎士の英雄譚』『裏世界ピクニック』『裏方キャラの青木くんがラブコメを制すまで。』『流れよわが涙、と孔明は言った』『竜騎士のお気に入り』『狼と香辛料』『茉莉花官吏伝』『軋む楽園の葬花少女』
世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ) 1 (オーバーラップ文庫)
はい、というわけで2010年代のライトノベルを振り返る記事です。
とりあえず
・後知恵で整理された歴史ですよ
・個人の「史観」が入ってますよ
というエクスキューズをしておくのでご了承ください。
では一年ずつ見ていきましょう。
ちなみに「*1」みたいなやつは、だいたい作品の発売年が注記として入っていて、PCならマウスカーソルをあわせるだけで表示されます。スマホは知らん。
2010年代のライトノベルを語るならば、まず間違いなく「Web小説」と「ライト文芸」がキーワードとなるだろう。奇しくも2000年代最後の年に起きた「ソードアート・オンラインの発売」と「メディアワークス文庫の創刊」という二つのトピックスは予言的だったと言える。
まず、Web小説については『まおゆう魔王勇者』*1から始めるべきか。
2009年9月に始まった2chのスレッド『魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」』が、2010年3月ごろからバズりはじめ、2010年5月にはゲームクリエイターの桝田省治が音頭を取るかたちで書籍化が決定した。
この『まおゆう』の出版が、同作者の『ログ・ホライズン』*2と、その掲載サイトである「小説家になろう」、そして当時の「なろう」累計ランキング一位である『魔法科高校の劣等生』*3に注目が集まるきっかけとなった。
「エヴァSS」から「小説家になろう」までのWeb小説年表 - WINDBIRD::ライトノベルブログ
先行してWeb小説の書籍化を手掛けていた「イースト・プレス」や「アルファポリス」も忘れてはいけないだろう。特にアルファポリスは、それ以前からWeb小説の書籍化を行っていた出版社ではあったが、2010年11月発売の『リセット』から「小説家になろう」作品の刊行を本格化させている。
また、もうひとつのWeb発ムーブメントとして「ボカロ小説」がある。その元祖である『悪ノ娘』は2010年8月に発売されており、そこから『カゲロウデイズ』*4や『告白実行委員会』*5『厨病激発ボーイ』*6などのヒット作が生み出されていくのである。
2011年、『ログ・ホライズン』*7『魔法科高校の劣等生』*8が発売され、「なろう」への注目度がますます高まっていたときに現れたのが「フェザー文庫」であった。
フェザー文庫は2011年11月に創刊されたレーベルで、「ライトよりも軽いからフェザー」というありがちな発想から名付けられている。発売元は沖縄の観光ガイドなどを出している出版社だったが、そこの編集者がいち早く「なろう」に目をつけてめぼしい作家に声をかけてレーベルを立ち上げたのである。
と聞くと先見の明がある気もするが、その実は自費出版に毛が生えた程度の待遇で、ラノベのノウハウなどもなく作家や絵師とトラブルを起こしまくり、早々に「地雷レーベル」と認定されてしまった。ただ初期の売上はなかなか良好だったらしく、翌年以降に大手出版社が「なろう書籍化」に参入していくきっかけの一つになったのではないかと思う。
2011年3月には『ビブリア古書堂の事件手帖』が刊行を開始している。
いわゆる「ライトミステリ」としては『心霊探偵八雲』*9『万能鑑定士Q』*10『謎解きはディナーのあとで』*11などの先行作が挙げられるが、「ライト文芸」というムーブメントを生み出したのは間違いなくメディアワークス文庫と『ビブリア』の大ヒットだったろう。
「大人向けラノベ」の誕生 - WINDBIRD::ライトノベルブログ
「ライト文芸」「キャラ文芸」「キャラノベ」などの違いについてはこちらの記事を参照のこと。
「ライト文芸/キャラ文芸/キャラノベ」等の定義と呼称の歴史 - WINDBIRD::ライトノベルブログ
さて、2010年代のメインストリームが「Web小説」と「ライト文芸」だったとするなら、フリンジストリーム、隠れたブームは「青春」と「戦記」だったと思う。
この二つのジャンルは、アニメ化を連発するような派手な盛り上がりこそなかったが、2000年代よりも着実に増加してラノベ業界の一角を占めるようになった。それぞれの代表格として『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』*12と『魔弾の王と戦姫』*13を挙げておきたい。
『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』は、2010年代の青春ラノベの代表格であり,このラノで三連覇を果たしたように、かなり特異な人気を得た作品である。ガガガ文庫内においては今でも『弱キャラ友崎くん』*14『千歳くんはラムネ瓶のなか』*15といった青春ものの系譜が続いている。
電撃文庫もまた、鴨志田一の『さくら荘のペットな彼女』*16『青春ブタ野郎』シリーズ*17や、入間人間の『電波女と青春男』*18『安達としまむら』*19などのアニメ化作品を輩出しており印象が強い。
とはいえ青春ラノベの本流といえばファミ通文庫だ。2000年代の桜庭一樹や野村美月の活躍から引き続き、『ココロコネクト』*20『ヒカルが地球にいたころ……』*21『ヴァンパイア・サマータイム』*22『この恋と、この未来。』*23『近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係』*24など、ラノベ史に残る傑作を次々に送り出している。
あるいはライト文芸でも青春ものは大きな勢力を持っている。特に『古典部』シリーズ*25をはじめとして『ハルチカ』シリーズ*26や『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』*27などが出てきている青春ミステリは、ライト文芸の拡大とともにますます人気を獲得しているように思える。
一方「戦記ファンタジー」も、「いわゆる異世界転生以外でファンタジーをやるなら戦記ものが手堅い」というような扱いで、じわじわと増えていった印象がある。
『魔弾の王と戦姫』あたりから勢いが出始めて『天鏡のアルデラミン』*28『覇剣の皇姫アルティーナ』*29『グランクレスト戦記』*30『我が驍勇にふるえよ天地』*31『天才王子の赤字国家再生術』*32など連綿と人気作が出てきている。
ファンタジーではもう一つ、「魔王勇者もの」の代表格である『はたらく魔王さま!』*33もこの年に発売されている。このジャンルについては「ドラクエ的な勇者と魔王の構図を借りたファンタジーパロディ」と説明できるだろうか。他に『いちばんうしろの大魔王』*34『はぐれ勇者の鬼畜美学』*35『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』*36などが挙げられる。
2010年代に入ってファンタジーが復興していったなかで、「魔王勇者もの」ブームはその先駆けだったと言えるかもしれない。もちろん、Web小説にも「勇者召喚もの」や「魔王に転生した系」などは多くある。ただ、現在の「なろう系」ではドラクエよりもTRPGやネトゲの影響が強く感じられるし、実のところどれがどのように影響し合ったのかはよくわからない。
2ch発の魔王勇者系SSの隆盛と魔王勇者系ライトノベルの増加は関連しているのか? - WINDBIRD::ライトノベルブログ
ともあれ、2010年代のファンタジーといえば「なろう系」が真っ先に出てくるが、それとは別系統の「戦記もの」や「魔王勇者もの」といったジャンルもきっちり人気があったのだということは述べておきたい。
その他のトピックスとして、KADOKAWAがメディアファクトリーを買収したのがこの年である。ラノベ業界的には「非KADOKAWA系の最右翼」とみなされていたMF文庫JがKADOKAWAの軍門に降ったわけで、なんか私も「ジャンプとマガジンとチャンピオンを持ってる会社がサンデーを買収したようなもんだよ!」とか言って騒いでいた記憶がある。
角川系出版社の統廃合の年表(ラノベ中心) - WINDBIRD::ライトノベルブログ
この時期のヒット作としては『ノーゲーム・ノーライフ』*37と『冴えない彼女の育てかた』*38が挙げられる。前者は漫画家・イラストレーター、後者は著名エロゲライターが作者ということで、どちらも新人賞出身ではないのが興味深い。このあたりから数年間は「新人賞はオワコン」「新人はWeb小説サイトで探せばいい」とか言われていた時期だった気がする。
『まおゆう魔王勇者』『ログ・ホライズン』をヒットさせたエンターブレインが、Web小説の書籍化に力を入れて『オーバーロード』*39や『ニンジャスレイヤー』*40などを刊行しはじめた時期でもある。
エンターブレインはラノベレーベルの「ファミ通文庫」を保有しているが、Web小説についてはあえて単行本として刊行している。編集者へのインタビューなどを見ると「コレクションアイテムとしての見栄えの良さ」にこだわったということらしい。この頃はまだ「Webで無料公開されているのに書籍が売れるのか?」とか「書籍化したならWeb版は取り下げるべきでは?」とか言われていた時期だったので、装丁にこだわることで付加価値をつけようとしたのだろう。現在では多くの作品が書籍化後もWeb版を取り下げていない。
ちなみに、アルファポリスは「書籍化するときにWeb版を非公開にする(あるいはダイジェスト版に差し替える)」という戦略をとっており、それが後に「なろう」との対立を生むことになったりした。詳しくは以下参照。
小説家になろう - Wikipedia
2012年9月には「ヒーロー文庫」が創刊されている。
この時点では、『SAO』『魔法科』の電撃文庫にしろ、『ログホラ』『オバロ』のエンターブレインにしろ、既にラノベを取り扱っていた出版社がその範疇で出したものであったので、「ラノベを扱っていなかった出版社」による「Web小説専門のラノベレーベル(以下「Web文芸レーベル」と書く)」であるところのヒーロー文庫(とフェザー文庫)の創刊は非常にインパクトがあった。個人的にはこのヒーロー文庫創刊を「なろう(の書籍化)ブーム」の起点とすることが多い。
『珈琲店タレーランの事件簿』*41にも触れておきたい。前年の『ビブリア』に続いて「お店ミステリ」のヒットが続いたことで、そのブームが「点」から「線」になった感がある。こうした動きにより「あやかしカフェのほっこり事件簿」と呼ばれるようなライト文芸の方向性が徐々に定まっていった。
ちなみに2012年は『ソードアート・オンライン』のアニメ第一期が放送された年でもある。2009年の第一巻発売から数えると三年のタイムラグである。
Web小説が原作のライトノベルのWeb版・ラノベ版・アニメ版の開始時期 - WINDBIRD::ライトノベルブログ
この年には『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』*42『幼女戦記』*43『この素晴らしい世界に祝福を!』*44といったWeb発のヒット作が発売されている。
『ダンまち』がGA文庫、『幼女戦記』がエンターブレインの単行本、『このすば』がスニーカー文庫から書籍化されていることからも分かるように、この時点ではまだ既存のラノベレーベルの力が強い。Web文芸レーベルが猛威を振るうのは翌年以降となる。
また『アクセル・ワールド』『オバロ』『ダンまち』『幼女戦記』あたりは「なろう」ではなく「Arcadia」で連載されていた作品である。この時点での出版社の意識は「Web小説の名作を書籍化していこう!」といった感じであって、後年のような「なろうのランキング上位争奪戦!」みたいなノリではなかったと思われる。
この年に発売された『エロマンガ先生』*45は、のちの『妹さえいればいい。』*46とあわせて「ラノベ作家もの」ひいては「クリエイターもの」の人気を高めた感がある。
そういえば、前年発売の『冴えカノ』は、著者らしく「ゲーム制作」をテーマとしている。ゲーム制作を題材にした作品は他にもいくつか発売されているが、「個性的なメンバーが集まったチーム」としての側面が強調されるので、「作家もの」とは異なる読み味になる印象がある。が、いずれにしても「クリエイターもの」ひいては「お仕事もの」の範疇だろう。
2013年8月「MFブックス」が創刊。創刊ラインナップには『盾の勇者の成り上がり』があり、また当時の「なろう」総合ランキング1位だった『無職転生』*47を年明けすぐに刊行していることも見逃せない。
MFブックスはターゲットを「30代~40代男性」と設定しており、またアルファポリスなどに学んで単価の高い四六判を選択している。文庫とは売り場が変わることで、従来とは異なる読者を開拓することができたものと思われ、ライト文芸とあわせてラノベ市場の拡大に貢献したと言える。
「小説家になろう」の読者層は「10代20代が過半数」! - WINDBIRD::ライトノベルブログ
メディアファクトリーとフロンティアワークスが共同で立ち上げたレーベルだが、企画の提案はフロンティアワークスからだったらしい。同社は「アリアンローズ」「ノクスノベルス」といったWeb文芸レーベルを続けざまに立ち上げたり、「なろう」の公式WEB雑誌「N-Star」の運営を任されたりと、Web小説ブームにおいて精力的に立ち回っている印象だ。
「GCノベルズ」*48「モンスター文庫」*49「HJノベルス」*50「アース・スターノベル」*51といったWeb文芸レーベルの創刊ラッシュが起きた。すなわち「なろう」ブームの本格化である。
ヒーロー文庫やMFブックスの成功を見た出版社がこぞって参入したかたちだが、いずれも一定の成功を収めたと言っていいだろう。特にGCノベルズは創刊ラインナップの『転生したらスライムだった件』*52がいきなりヒットを飛ばしている。
Web文芸レーベルの特長は、このように「作品を集めやすい」ということだと思われる。従来は、実績ある編集者が過去の担当作家を引っ張ってきたり、「傭兵作家」と呼ばれるようなあちこちのレーベルで書いている作家を集めてくるしかなく、いずれにしても作家とのコネがなければ立ち上げることすら困難で、しかも新人賞が軌道に乗るまでは似たような顔ぶれになりがちだった。
しかしWeb小説であれば、既にまとまった分量があり、一定の読者がついている作品に対して、なんのコネがなくても出版を打診することができる。つまり創刊当初からオリジナル作品を取り揃えたうえで、ハイペースで続編を刊行して、さらには宣伝力不足を補うことまでできるのである。こうした点が、ラノベ出版のノウハウを持っていなかった中小出版社に恩恵を与えたのではないだろうか。
その他、2014年1月に『Re:ゼロから始める異世界生活』が発売されている。メディアファクトリーは前年にMFブックスを立ち上げているのに、『Reゼロ』だけはちゃっかり自レーベルで抱えているのだから面白い。
ライト文芸では、メディアワークス文庫の後追いで「富士見L文庫」が2014年6月に、「新潮文庫nex」が2014年8月に創刊している。富士見L文庫は富士見ファンタジア文庫の姉妹レーベルであり、新潮文庫nexは新潮文庫のサブレーベルであるため、ラノベと一般文芸の双方が歩み寄ったような形である。
これまでのライト文芸は、ラノベと一般文芸の「境界線」だったのが、次第に周辺領域を巻き込んで「緩衝地帯」となり、拡大および多様化していった、といったところか。
ミリオンセラーとなった『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』*53の発売もこの年である。作者の七月隆文は、2002年に電撃文庫からデビューしたベテランだったが、『ぼく明日』のロングヒット、さらに『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』*54のアニメ化と、この年から翌年にかけて一気に飛躍している。
タイムスリップ/タイムループ系の青春ものとしては、アニメがヒットした記憶も新しい『青春ブタ野郎』シリーズ』*55や、なぜか実写映画化された『二度めの夏、二度と会えない君』*56などもこの時期に出ており、根強い人気をうかがわせる。
アニメでは『星刻の竜騎士』*57『精霊使いの剣舞』*58が放送されて「石鹸枠」なる蔑称が誕生した。2000年代の異能バトルは「異能者が人目を忍んでこっそり戦う話」が多かったが、2010年代には「異能が当たり前となった世界の学園ファンタジー」がトレンドとなった。「石鹸枠」もそのあたりの流れに含まれるものだろう。
「石鹸枠」とはなんだったのか - WINDBIRD::ライトノベルブログ
その源流としては、「巨大な異能学園」を描いた大ヒット作品『とある魔術の禁書目録』*59、「なろう系」の異世界転生ものにも大きな影響を及ぼした「学園ファンタジー」の記念碑的作品『ゼロの使い魔』*60、「俺TUEEE」「無双」というジャンルが認識されはじめた頃*61の代表的な作品で学園都市を舞台としたバトルファンタジー『鋼殻のレギオス』*62、学園+バトル+萌えラブコメの代表格『IS<インフィニット・ストラトス>』*63、といったあたりが思いつく。
「なろう系」でも学園ファンタジーは人気ジャンルなので、このあたりは相互に影響しあっているのかもしれない。
この年のヒット作としては『ようこそ実力至上主義の教室へ』*64と『りゅうおうのおしごと!』*65を挙げておきたい。
『よう実』は、テレビアニメはさほど話題にならなかったものの、若い読者から絶大な支持を受けている。また、先行する『ノゲノラ』やその後の『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?』*66などとあわせて、MF文庫J内で「頭脳バトル」系の流れを形成しているようだ。
一方で『りゅうおう』は、ライト層とマニア層のどちらからも根強い人気を得て「このラノ」を連覇したあたり、『俺ガイル』と似た支持のされかたという印象がある。題材としては前作の『のうりん!』*67とあわせて「お仕事もの」「業界もの」の側面があるように思う。
Web小説レーベルとしては「カドカワBOOKS」が2015年10月に創刊され、2015年12月に『蜘蛛ですが、なにか?』が刊行されている。モンスター転生ものとしては『転生したらスライムだった件』*68と並ぶ有名作であり、アニメでもヒットが期待される。
ライト文芸では、「集英社オレンジ文庫」が2015年1月に、「講談社タイガ」が2015年10月に創刊されており、このあたりで主要なプレイヤーが出揃った感がある。オレンジ文庫は少女向けラノベの嚆矢である「コバルト文庫」の姉妹レーベルであり、講談社タイガは日本の推理文壇において存在感を発揮してきた「講談社ノベルス」の兄弟レーベルであるが、それぞれ兄姉が活動を弱めているので実質的な後継レーベルになりつつある。
『紅霞後宮物語』*69は「なろう」発の中華ファンタジーだが、富士見L文庫でヒットしたことで、同じく「なろう」発の『薬屋のひとりごと』*70とあわせて、女性向けライト文芸における中華ファンタジー人気を引き上げた感がある(もともと少女向けラノベでは『十二国記』*71『彩雲国物語』*72など中華ファンタジーが人気ではあったが)。
そういえば、女性人気の高さで共通する『本好きの下剋上』*73の発売も、悪役令嬢もので初めてアニメ化される『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』*74の発売もこの年である。
さらには、ライト文芸において『ぼく明日』とならぶ大ヒット作である『君の膵臓をたべたい』*75も発売されている。こちらも「なろう」発である。『キミスイ』によって「なろうはファンタジーだけではない」といった気運が生まれ、青春恋愛ものの書籍化が増加していった。「なろう」の女性向け作品にとっては2015年がターニングポイントになるのかもしれない。
アニメでは『冴えカノ』『ダンまち』『オバロ』などが放送されて人気を博した。これで2012年〜2013年ごろの「既存のラノベレーベルがいちはやく人気のWeb小説を確保した」時期の作品がアニメにまで伝播したことになる。
2010年代後半の傾向はずばり「ラブコメの復活」である。
前年の『ゲーマーズ!』*76『妹さえいればいい。』*77に引き続き、この2016年には『俺を好きなのはお前だけかよ』*78『弱キャラ友崎くん』*79『29とJK』*80『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』*81『友人キャラは大変ですか?』*82などが好評を博し、ラブコメ復活の前兆として捉えられたりした。
特に『俺を好きなのはお前だけかよ』や『弱キャラ友崎くん』は、なろう作品に押され気味だった新人賞出身の作品としても期待を集めた感がある。とはいえ本格的にラブコメが勢いを取り戻すのは2018年ごろということになるだろう。
アニメでは『この素晴らしい世界に祝福を!』*83と『Re:ゼロから始める異世界生活』*84が相次いでヒットを飛ばした。実はいわゆる「転生チート*85」を扱ったアニメは『このすば』が初めてなので、わりと重要なマイルストーンでもある。
前年放送の『オバロ』『ダンまち』とあわせて、Web発の作品が連続でヒットしたことで、「アニメでもいけるやん!」という空気になった(んじゃないかな)。
その他のトピックスとしては、2016年2月にKADOKAWAの小説投稿サイト「カクヨム」がオープンしたことが挙げられる。前述のアルファポリス・ダイジェスト騒動も2016年である。この頃から各出版社が自前の小説投稿サイトを抱えて積極的に作品発掘にいそしむようになっていった。
「出版社は『なろう』のランキングを上から順に書籍化しているだけ」なんて揶揄されることもあるが、現在の小説投稿サイトは「常設の新人賞」とでもみなすべきで、出版社はそこでさまざまなコンテストを開催したり、作品発掘用の人員を配置したりすることで、次にヒットしそうな作品を掬い上げることに注力しているように感じられる。
たとえばカクヨムは、当初から『横浜駅SF』*86や『ひとりぼっちのソユーズ』*87のようなSF、あるいは『おにぎりスタッバー』*88『佐伯さんと、ひとつ屋根の下』*89『スーパーカブ』*90などの青春もの・青春ラブコメを積極的に書籍化しており、小説投稿サイトとして「なろう」との差別化を図ると同時に、出版社の意識としても「流行っているものを書籍化する」から「自分たちが求めているものを探し出して書籍化する」に変わってきたように思う。
もちろん、この間に「なろう」のほうも随分と様変わりしている。特に2016年のジャンル変更で「異世界転生/転移」が区別された影響が大きいと言われているが、「転生/転移」を伴わない「現地主人公」および「パーティ追放もの」が流行ったり、現代世界にダンジョンが出現する「現代ダンジョンもの」が増えたりしている。
みんないろいろ頑張ってるんだなあ、ということである。
これ以降は、どの作品もまだ評価が定まっていないこともあり、さらに胡乱な話が多くなるのでよろしく。
『86-エイティシックス-』*91のスマッシュヒットは、新人賞に漂っていた閉塞感を吹き飛ばしたように思う。電撃小説大賞からは翌年も『錆食いビスコ』*92のような話題作が出ており絶好調といった感じだ。
このあたりから「なろう」ブームが落ち着いて、と言っても衰退したというよりは「定着した」「滑空に入った」という感じだが、「次のトレンドは何だろう?」と囁かれるようになった気がする。ラブコメもそうした流れから出てきたものだろう。
「コミカライズ」の増加が取り沙汰されるようになったのもこの頃か。「なろう系の作品が第一巻発売と同時にコミカライズ開始」といった形式も増えた。いわば「Web小説」を原作として「ノベライズ」と「コミカライズ」を同時にこなしているような感覚だろうか。
これはおそらくWeb漫画サイトおよびアプリの増加が関係していて、紙の雑誌なら連載枠に限りがあるところ、Web漫画ならその制限がかなり薄く、むしろ日刊ペースで更新を求められるので弾数が必要とされている、ということがあり、刊行点数が飽和するなかで少しでも新作を目立たせたいラノベレーベルと利害が一致したのだろう。
アニメでは『ナイツ&マジック』*93『異世界食堂』*94『異世界はスマートフォンとともに。』*95などが放送された。これらはいずれもヒーロー文庫やHJノベルスといった「Web文芸レーベル」の作品である。すなわち、ついに「なろう」ブームの波がアニメにまで到達したのである。ばんざーい。
『高2にタイムリープした俺が、当時好きだった先生に告った結果』*96『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』*97『ちょっぴり年上でも彼女にしてくれますか?』*98などの年の差ラブコメが急増したのが印象的である。
2000年代のラブコメの特徴が「ハーレム」「萌え属性」「部活」だったとすれば、現在のラブコメは「固定カップル」「年の差」「お仕事」といったあたりが特徴になるだろうか。「萌え属性」重視で特徴の強いヒロインたちを次々に増やしていくようなラブコメから、ある状況下における主人公とヒロインの関係性を掘り下げていくようなものへと変化したようなイメージである。
これについては漫画のほうで『からかい上手の高木さん』や『宇崎ちゃんは遊びたい!』のような「○○さん」系ラブコメが流行っていることの影響があるのかもしれない。
2000年代に「年の差ラブコメ」と言えば「ヒロインが小学生」のロリコンものが大半だったが、いま流行っているのは、主人公が高校生/ヒロインが社会人だったり、主人公が社会人/ヒロインが高校生だったりするものである。
これは以前なら「ラノベの主人公は若くないとダメだから」とか「年上ヒロインは売れないから」とか言われていたのが、「なろう系」のおっさん主人公や、ライト文芸の社会人主人公などを経由したことによって、作り手が「慣れた」ことが大きいと思われる。
「お仕事もの」についても同じことが言えると思うが、前述したとおり「お仕事もの」には「クリエイターもの」なども含まれてくるわけで、いわゆる「学園ラブコメ」にとどまらない幅広い物語背景が描かれるようになった結果と言えるだろう。
「なろう」のほうでも、2018年12月に投稿された『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の人気のおかげで、微妙に現代ラブコメが増加していたりするらしい。今後に期待である。
この年はとにかくラノベ絡みの炎上が多かった。『異世界テニス無双』パクリ問題、『山本五十子の決断』プロモツイート問題、『ブギーポップ』キャラデザ問題、『二度目の人生を異世界で』ヘイトスピーチ問題、『境界線上のホライゾン』イラスト問題……いわゆるポリコレ的な問題についてはオタク業界全体に影響を及ぼしそうだ。
今年のことなのでどうにも語りづらいが。
『友達の妹が俺にだけウザい』*99『幼馴染が絶対に負けないラブコメ』*100『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』*101『娘じゃなくて私が好きなの!?』*102と、引き続きラブコメが話題となることが多かったように思う。
それと「スレ発ラノベ」として、いわゆる「やる夫スレ」を翻案した作品が立て続けに刊行されたことが挙げられるか。やる夫スレのラノベ化といえば『ゴブリンスレイヤー』*103という前例があるが、これが新しい潮流になるかは分からない。やる夫スレも、まだ投稿が途絶えているわけではないとは言え、往時の勢いは失われていると思うので、一過性の企画にしかならない気もする。
あとは先日の10大ニュースでも読んでいただければ。
2019年ライトノベル10大ニュース - WINDBIRD::ライトノベルブログ
というわけで、この十年間を振り返ってまいりました。だ・である調は解除します。
私は、あくまで少年向けラノベを主戦場としているので、触れられていないところも多いと思います。あらためて、「私はこういうふうに見てきたよ」以上のものではない、ということでよろしくお願いします。
で、こうして振り返って思うのは「十年前のラノベになかった部分をWeb小説が補完してくれた」ということですね。
2000年代には低調だったファンタジーの復活はもちろんのこと、青春ものやラブコメの増加にも影響を与えてくれていますし、「グルメ」とか「歴史」とか「おっさん主人公」とか「女性主人公」とか、これまで「ラノベでは売れない」というレッテルを貼られてきた様々な要素が、小説投稿サイトのなかでその人気を証明して書籍化されているわけです。
文庫のラノベ市場が頭打ちになったことで、一般文芸の売り場なり(=ライト文芸)、単行本の売り場なり(=Web小説)に打って出て、そこでこれまでとは違った作品が生み出されていった、ということで非常にラノベが多様化した十年間だったと思います。
そうして範囲が拡大したぶん、いよいよもってラノベの全体像を把握している人間などいなくなった…という感じもあります。はたして十年後、「2020年代のライトノベルを振り返る」なんて記事は書けるんでしょうか。
*1:2010年12月発売
*2:2011年3月発売
*3:2011年7月発売
*4:2012年5月発売
*5:2014年2月発売
*6:2016年1月発売
*7:2011年3月発売
*8:2011年7月発売
*9:2004年10月発売・2008年に角川へ移籍
*10:2010年4月発売
*11:2010年9月発売
*12:2011年3月発売
*13:2011年4月発売
*14:2016年5月発売
*15:2019年6月発売
*16:2010年1月発売
*17:2014年4月発売
*18:2009年1月発売
*19:2013年3月発売
*20:2010年1月発売
*21:2011年発売
*22:2013年7月発売
*23:2014年発売
*24:2016年4月発売
*25:2001年10月発売
*26:2008年10月発売
*27:2013年2月発売
*28:2012年6月発売
*29:2012年11月発売
*30:2013年8月発売
*31:2016年7月発売
*32:2018年5月発売
*33:2011年2月発売
*34:2008年2月発売
*35:2010年5月発売
*36:2012年1月発売
*37:2012年4月発売
*38:2012年7月発売
*39:2012年7月発売
*40:2012年9月発売
*41:2012年8月発売
*42:2013年1月発売
*43:2013年10月発売
*44:2013年10月発売
*45:2013年12月発売
*46:2015年3月発売
*47:2014年1月発売
*48:2014年5月創刊
*49:2014年7月創刊
*50:2014年11月創刊
*51:2014年12月創刊
*52:2014年5月発売
*53:2014年8月発売
*54:2011年12月発売
*55:2014年4月発売
*56:2015年1月発売
*57:2010年6月発売
*58:2010年12月発売
*59:2004年4月発売
*60:2004年6月発売
*61:俺TUEEEという言葉にまつわる取り留めもない話 - WINDBIRD::ライトノベルブログ
*62:2006年3月発売
*63:2009年5月発売
*64:2015年5月発売
*65:2015年9月発売
*66:2017年4月発売
*67:2011年8月
*68:2014年5月発売
*69:2015年5月発売
*71:1991年9月発売
*72:2003年10月発売
*73:2015年1月発売
*74:2015年8月発売
*75:2015年6月発売
*76:2015年3月発売
*77:2015年3月発売
*78:2016年2月発売
*79:2016年6月発売
*80:2016年6月発売
*81:2016年8月発売
*82:2016年12月発売
*83:2013年10月発売
*84:2014年1月発売
*85:主人公が死んだあと女神などの存在によって異世界に転生させられるテンプレ
*86:2016年12月発売
*87:2017年12月発売
*88:2016年12月発売
*89:2017年2月発売
*90:2017年5月発売
*91:2017年2月発売
*92:2018年3月発売
*93:2013年2月発売
*94:2015年3月発売
*95:2015年5月発売
*96:2018年1月発売
*97:2018年2月発売
*98:2018年5月発売
*99:2019年4月発売
*100:2019年6月発売
*101:2019年6月発売
*102:2019年12月発売
*103:2016年2月発売
『フルメタル・パニック!』『涼宮ハルヒの憂鬱』『氷菓』などラノベ原作のアニメを多くヒットさせ、また自社でもラノベレーベルを立ち上げて出版からアニメ化までを行うというビジネスモデルを成功させていた「京都アニメーション」が、2019年7月18日に放火され、多くの人命が失われました。被害者の方々の回復と冥福をお祈りします。
電撃文庫のWeb小説系単行本レーベル。ということで編集長が意気込みを語ったりしていました。
【特集】「電撃の新文芸」誕生特別企画 湯浅編集長&清瀬副編集長インタビュー「最後発組の我々はチャレンジャーである」 – ライトノベル総合情報サイト ラノベニュースオンライン
ラインナップのなかでは『Unnamed Memory』の評判が良いですね。このラノの単行本部門でも1位でした。
とりあえず「BOOK WALKERにレーベルとして『電撃の新文芸』を登録しろ」とは何度でも申し上げます。レーベルで検索&通知登録ができないんですよ。ほんとこれどこに言えばいいんですかね。
ストレートエッジと手を組んでWeb小説アプリをリリースするとともに、新レーベル「LINE文庫」「LINE文庫エッジ」も創刊されました。実はLINEが「LINEノベル」という名前のサービスを立ち上げるのは2013年・2016年に続いて三回目なんですよね。今回こそはという並々ならぬ意欲を感じますが、さてどうなるでしょうか。
その他、Web小説サービスとしては「ノベルアップ+」や「ノベマ!」などが新たに始まりました。読者としてはどれかに統一してほしい、投稿者としては多重投稿の手間がかかるだけ、出版社は自社で囲い込みたい、ということで需要と供給が一致してない感はありますね。
Web小説まわりではこういう話題もありました。広告収入が投稿者に還元されてお小遣い稼ぎができるというやつですね。広告収入還元では「アルファポリス」が先行していたり、前述の「ノベルアップ+」が投げ銭システムを取り入れていたりしますが、大手出版社のKADOKAWAが踏み切ったという点はなかなかインパクトがあったのではないでしょうか。
しかし、出版社はWeb小説を書籍化して儲けるのがメインなので広告収入を還元できますが、「小説家になろう」は広告収入=売上なので同じことをやるのは難しいんでしょうね。
中国なんかでは既に紙の出版よりWeb上の課金が作家の主な収入源になっているらしいですが、日本もそれに近づいていくのかどうかが注目ポイントですね。
『転スラ』については、原作の人気はもちろんですが、それ以上にコミカライズの売上のすさまじさをよく耳にしました。単月では『進撃の巨人』を超えたらしいです。
講談社社屋の垂れ幕がアピールするコミックの「近年にない大ヒット」作品とは(篠田博之) - 個人 - Yahoo!ニュース
オリコンの年間売上ランキングでもジャンプコミックスが大勢を占めるなかで10位にランクインしていましたね。次にくるマンガ大賞で1位を取ってプッシュされまくりの『薬屋のひとりごと』もありますし、ラノベ・コミック・アニメの連携がこれまで以上に重要になっている感じがします。
これに関しては「コバルト文庫が終了しそう」という記事が話題になったりもしました。まあ書いたのは私なんですが。
集英社「コバルト文庫」新刊が電子書籍のみになりレーベル終了の臆測広がる 集英社は否定 - ねとらぼ
ある意味「電子書籍オンリーでどのくらいやれるか」という試金石にもなっているんでしょうか。漫画のほうでは「最終巻は電子書籍のみ」みたいな措置が増えているようですし。ただ、これから電子書籍の売上の割合が増えていけば「電子のみに移行=終了間近?」なんて論調にはならなくなるかもしれませんね。
いくつか制限はあるものの月760円でKADOKAWAの小説が読み放題という画期的なサービス。
ちなみにBOOK☆WALKERでは「まる読み10分」という、KADOKAWAの作品なら一日10分だけ何ページでも読み放題、というサービスも開始していました。どちらも野心的なサービスですが、はたしてどのくらい売上増につながるのか、今後を注視したいところです。
同じくKADOKAWAのWebサービスとしては「キミラノ」も始まっていました。これは「ラノベ関連のポータルサイト」といったコンセプトでしょうか。読書管理+リコメンド機能を搭載しつつ、さまざまな企画を開催しています。
そのキミラノの企画らしいですが、来年開催される謎のイベントです。KADOKAWAのラノベレーベルが全員集合するようです。いまでも各レーベルは「ファンタジア文庫大感謝祭」だとか「MF文庫 夏の学園祭」だとかリアルイベントを開催していますが、それらをあわせたような特大のイベントになるんでしょうか。なんだか編集長のコメントも気合が入っていますし、期待以上に盛り上がってくれるといいですね。
まあ個人的にはこういうリアルのイベントには参加しないので遠巻きに眺めるだけなのですが。
やる夫スレ、ぶっちゃけ旬は過ぎている気もしますが、面白い作品が日の目を見るのは単純に良いことであります。これまでもライトノベルは外部のコンテンツを吸収して成長してきたプラットフォームですしね。
(たぶん多くの人は全く興味がないと思いますが)おなじみラノベ天狗ことsrpglove氏と、カルト的な人気を誇るWeb小説「幻想再帰のアリュージョニスト」の作者homiya氏の世紀の一戦について、自分なりに論点を整理してみたいと思います。
経緯についてはこちら(srpgloveさん自身が書いているので細かい記述を鵜呑みにしないように)。
とりあえずの発端であるsrpgloveさんの発言について。
アリュージョニスト、気に食わない人間を無断で作中に登場させて揶揄するような作品なので、もともと「倫理」からは外れてますよ(これは擁護ではなく批判です)
— 佐藤葵@みんなをディフレクト (@srpglove) October 27, 2019
「アリュージョニストは気に食わない人間を無断で作中に登場させて揶揄するような作品である」という命題を分割すると
(1) homiyaさんにとってsrpgloveさんは気に食わない人間である
(2) 作中に登場した『天狗』とはsrpgloveさんのことである
(3) homiyaさんは『天狗』を揶揄的に描いている
の三点になります。
とりあえず(2)について、
といった点はほぼ確実だと思っています。
それに対してアリュージョニスト読者が「srpgloveの自意識過剰だ」的な見当違いな批判をしてしまったことで、論点として(2)だけが先走ってしまったわけですけど、本来的には他二つの論点が重要なはずです。
(1)について、homiyaさんは最初に「srpgloveさんを中傷する意図はない」と明言しています。これはそうだろうと思います。homiyaさんはむしろsrpgloveさんに好意的な立場だろうという印象が個人的にもあります。こちらに関しては、なぜsrpgloveさんが「自分は気に食わない人間だと思われている」と思っているのかを聞いてみたいところであります。
(3)についても、
といったhomiyaさんの抗弁に嘘はないと思いますが、ただその箇所を書いているときにsrpgloveさんのことを意識はしていたでしょうし、「パロディ」という行為自体に揶揄や風刺のニュアンスが混じるものではあるので、「○○天狗のパロディ」に「○○天狗の代表格たるラノベ天狗」が不快感を抱くことは決して不当ではないと思います(この「不当ではない」は「まあ不快に思うこともあるだろう」「不快だという主張も理解はできる」というニュアンスです)。
以上からして、srpgloveさんが提起した(1)(2)(3)の論点については、イチャモンくさいけど一理はある、といったくらいのものであると思います。
あとはhomiyaさんの落ち度がどの程度のものかを見定めて、問題の解決を「要求」するというのが筋でしょう。
ところでsrpgloveさんは何の「要求」もしていません。
天狗さん、単に怒りを表明して、それに反論してくるアのファンを殴り返してるだけであって、別に和解だとか修正だとかを望んでないキリングマシーンなので、和解だとか修正だとかの話に持っていくほうが話が拗れると思うんですよ。だから単純に引き下がったほうが良い。
— mizunotori (@mizunotori) October 30, 2019
その凶暴性のわりに、srpgloveさんの殴り方はアウトボクシング的というか、レトリックを駆使して自身の正当性をアピールしつつ、ネチネチと迂遠な皮肉を連ねていくというものとなっています。
(1)(3)をあまり論点にせずにひたすら(2)の真偽に問題を絞っているのもそうですし、homiyaさんが「srpgloveさんに限定した記述ではない」と言ったのを「srpgloveさんをまったく意識していない」にすりかえているあたりも厄介ですね。
ともあれ、落としどころが用意されていないのですから、問答を重ねてもいたずらに問題が大きくなっていくだけです(というか大きくなってしまいました)。問題が大きくなってから、homiyaさんは落としどころを探っていたようですが、落としどころなんて無いので、単純に引き下がったほうが良かったと思います。とりあえずついさっき問題となった記述が修正されたようなのでなんとなく解決したように見えますが、srpgloveさんは納得していないようなので折に触れて蒸し返されていくのでしょう。
というわけで今回の件でいちばん悪かったのは「ラノベ天狗なんて知らねえよ!」という程度の認識しかないくせに迂闊に突っ込んでいって天狗の怒りに火をつけたアリュージョニスト読者だと思います。
追記。後日談です。
大前提として、homiyaさんはラノベ天狗を昔から知っているし、魔王14歳さんあたりとのつながりから距離的にも近いというのがあって、だから「ラノベ天狗なんて知らねえよ!」という人とはまったく立場が違うんですよ。
srpgloveさんと「ラノベ天狗を知らないアリュージョニスト読者」のあいだでは「作中の描写は本当にラノベ天狗と関係があるのか?」が論点になっている(これについては明確に「関係がある」が答えで「srpgloveさんの自意識過剰」というのは間違いです)。
対して、srpgloveさんとhomiyaさんとのあいだでは「作中の描写はsrpgloveさん個人を揶揄しているのか?」が論点になっているんです。だからhomiyaさんは「特定個人を攻撃しているのではなくsrpgloveさんを含む全体の状況をネタにしたんです」と答えている。
ここでsrpgloveさんは、ア読者とhomiyaさんをひと括りにして、homiyaさんの回答を「関係があるか?」問題のほうにズラした。つまり「homiyaさんが『自作とラノベ天狗は関係ない』って主張してる」というふうに捉えてしまった。だから拗れているのだと私は考えています。
いまのところこういう整理です。
なんだかんだ言って宇宙を舞台にしたラノベって少ないんですよねってことで直近五年くらいのオススメを五作品ほど挙げることで今後益々の発展を祈念していこうという記事です。
無双航路 1 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)
「小説家になろう」読者にはオッサンが多い――という噂は、その意外性もあってかよく広まっているのですが(ググってみると「なろう系ラノベの読者層は30代~40代」や「異世界転生ものの読者層は40代の中年男性が殆ど」といったページが引っかかります)、反面、「なろう」運営が実際の利用者データを発表していることはあまり知られていません。
というわけで、こちらが2019年の数字です。
──ユーザーの年齢層や性別の割合はいかがでしょうか。
平井 ユーザー登録されている方々のデータしかないので、実際に利用されている層とは少々異なるかもしれませんが、割合としては男性が6割くらい。女性は確実なのが3割で性別を入力していない方が1割くらいです(※1)。
年齢層は20代が44パーセントで半分近く、10代が14パーセント、30代が24パーセントと、これでほぼ8割を占める計算になります。あとは40代が12パーセント、50代以上が6パーセントくらいでしょうか。
※1「小説家になろう」はユーザー登録とログインを行わなくても、アップされた作品を閲覧することができる。
「40代がほとんど」どころか20代が半数近く、10代と合わせると過半数を占めています。もちろん彼らがわざわざ人気作品を避けるとも考えづらいですから、いわゆる「異世界転生もの」は20代を中心に幅広い年齢層に人気があると言っていいでしょう。
「なろうは男性中心」なんてことを言う人もいますが、女性読者もかなり多いですね。「悪役令嬢もの」の人気を体感していれば言わずもがなというところですけど。
でも、実態にそぐわない噂がなぜ広まっているのでしょうか。
そもそも「なろうユーザー」と「書籍化されたなろう作品を買う人」と「なろう原作アニメのファン」はかなり傾向が違います。
たとえば中高生なら、無料で観られるアニメから入って、無料で読める原作のWeb小説を読んで、特に気に入った書籍だけを小遣いの範囲内で購入する、といった行動が自然だと思います。つまり若い読者は人気作品に集中するわけです。
逆に、アニメ化されてもいない新作を率先して購入するような層は、懐に余裕のある大学生以上が中心になるので、平均年齢は高めに出るでしょう。特にWeb小説は大判の単行本で出版されることが多く、それらは一冊1000円〜1500円くらいします。中学生や高校生が気軽に購入できる値段ではありません。
このような「新刊書籍を買っているのは大人が中心」という話が独り歩きして「なろう読者は実はオッサン」と面白おかしく語られているのだと思います。
こちらの記事に対して、
ここまで典型的な「褒めてるつもりの雑語り」を久々に読んだ。
とコメントしたところ、某王女様らしき人に、
と言われたのでぐだぐだと書きます。先に言い訳しておくとそんな明快に解答しているわけではありませんのでご了承ください。
まず「雑語り」というのはちょっと捉えどころのない言葉ですよね。「嘘」でも「偽」でも「誤」でもなく「雑」という形容ですから。まあ「当てはまる部分もあるが多くの補足が必要でそのまま採用するには問題がある言説」といったところでしょうか。
そのうえで当該記事について簡単にまとめてみましょう。
この「ラノベらしくない」「もはや一般文芸だ」みたいな微妙な褒め方、ラノベ以外でもけっこう見かけますよね。「エロゲーとは思えないくらい面白い」とか「大人の鑑賞に堪えるアニメだ」とか。
そのジャンルに通暁している人が他作品との差異を細かく分析していくのならいいですが、往々にしてリンク先の記事のように「そのジャンルを知らないから細かい認識ができていないだけ」だったりするわけです。
「ラノベとはこういうものだがこの作品は違う」。
本当に「ラノベとはそういうもの」なんですか?
本当に「その作品」だけが違うんですか?
もちろん「主人公が異様にモテる」とか「強力な敵が出てきて魔法を使う」といったイメージは全くの誤りではないですよ。とはいえ、そのイメージに当てはまらないからラノベではない、というのは明らかに言い過ぎですよね。
主人公がモテないラノベだって、魔法や異能が出てこないラノベだって、異世界転生しないラノベだって、タイトルが長くないラノベだって、いまでもたくさん出ていますし、それらが「ラノベと見なされない」なんてこともありません。
つまり「当てはまる部分もあるが多くの補足が必要でそのまま採用するには問題がある言説」だと思うわけです。
なんでしょうね。「ラノベじゃなかった!」ではなく「こんなラノベもあるんだ!」でいいと思うんですけど。
いっそ「そもそもハヤカワ文庫はラノベでしょ」みたいなところから始めたほうが面白くなったりして。
とりあえず去年書いたSFラノベのオススメ記事を貼っとくね!
無双航路 2 転生して宇宙戦艦のAIになりました (レジェンドノベルス)
アサシンズプライド9 暗殺教師と真陽戴冠 (ファンタジア文庫)
世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ) 1 (オーバーラップ文庫)
絶対ナル孤独者5 ―液化者 The Liquidizer― (電撃文庫)
前略、殺し屋カフェで働くことになりました。 (2) (ガガガ文庫)
スイレン・グラフティ わたしとあの娘のナイショの同居 (電撃文庫)