WINDBIRD::ライトノベルブログ

ライトノベルブログ

ラノベ定義論スペースのメモ

書き起こしというほどでもない。聴きながら他の参加者の発言をメモしていたものを元に、後から動画を聴き直して自分の発言を補完したもの。詳しくは動画をお聴きください。


www.youtube.com

自己紹介(00:03:30〜)

夏鎖
ラノベブログ7年。イキってるラノベ読み。

mizunotori
ラノベを本格的に読み始めたのは2003年くらい。最近のオススメは「魔王2099」。

リイエル
なろう系Vtuberラノベは2003年くらいから。ここ5年ほどはラノベから離れ気味だったが、Web小説を読み始めて、なろう作品を紹介するような活動をしている。

岡田
編集者。2012年から「このライトノベルがすごい!」を担当。ラノベは2002年くらいから読んでいる。

平和
編集者。ラノベを読み始めたのはスレイヤーズのアニメくらいからで、大学の時期は離れていたが、2003年ごろからはずっとラノベを読んでいる。そのあとラノベ編集者になった。現在はストレートエッジ所属。冴えカノおもしろい。

なろう系単行本はラノベか?(00:08:40〜)

mizunotori。ある程度は合意を得られるだろうという議題。「なろう系単行本」は回りくどく言ったが「新文芸」。まあラノベだよね。

リイエル。ラノベではあるがラノベではない。狭義のラノベは若者向けに価格を抑えた文庫本であってこそ。単行本は中高生をターゲットにしていない。しかし文章・内容が軽く、挿絵が多いのがラノベであり、それはなろう系単行本と合致する。なろうから書籍化されたものの中には一般寄りの作品もある。が、概ねラノベではないか。

夏鎖。文庫かどうかは気にしていない。イラストとコラボレーションしているのがラノベ

岡田。なろう系とは何か。「新文芸」はUGCの作品群。ボカロ小説も含まれる。ライトノベルに組み込まれたのかなと思う。このラノでも難儀している。部門を分けている。読者層が既存のレーベルと違う。本の作りはライトノベルだよね。電子で買っている人は文庫か単行本かわかない。

平和。ラノベに含む。スタンスとしては、ライトノベルレーベルから出ていればライトノベルである。レーベル派。パッケージ派。作り手(出版社)の意図を重視する。ラノベの単行本は文庫のライトノベルの方法論を踏襲している。値段が違って意図してかどうか読者層が変わっている。ただ概ねラノベに含むのではないか。

質疑応答。

mizunotori。「なろう系」とはWeb小説サイトに投稿されていた作品全般を漠然とイメージしている。なろうの流行も変わっているし内容面では判断しづらい。キミスイ横浜駅SFもラノベ

なろうに投稿されたなろう系っぽくない作品もあるし、なろうではないけどなろう系っぽいラノベもあるし…みたいな話。

読者層で判断しているリイエルさんと岡田さん。イラストなどのパッケージで判断している夏鎖さんと平和さん。という整理。

mizunotori。ライトノベルという言葉は読者主導で作られたものであって、出版社の意図とは関係がない。という点で平和さんと対立。

ラノベ売り場って漫画売り場と隣接してる?みたいな話。

少女向け作品はラノベか?(00:36:28〜)

平和。広い意味ではラノベ。少女向けレーベルは少年向けレーベルと同じ方法論。とはいえラノベ読者は「ライトノベル」と言ったときに「ただし少年向けに限る」のような意識がある。その理由のひとつに、少女向け作品がラノベ扱いされたがっていないことがあるかもしれない。「少女小説」として定義する流れ。

夏鎖。少女向け・女性向けの作品群は「少女小説」として呼ばれたがっている気がする。

岡田。平和さんと似てはいる。ラノベだと思う。昔からあるビーンズなどはフォーマットも内容もライトノベル。オレンジ・富士見Lなどはライト文芸なんだけどラノベ。扱いが困る。混乱している。「少女小説」と呼ばれたがっているかは疑問。

リイエル。広い意味ではラノベ。狭義ではターゲットが違う。2005年前後くらいに創刊したビーズログ・ルルルあたりは少女向けライトノベルと名乗っていた。BL小説はラノベなのか。アルファポリスのレジーナブックスなどをどう捉えるか。

mizunotori。もちろんラノベ。「少女小説ラノベ扱いするな」という勢力がいると同時に「なぜ少女向けをラノベ扱いしてくれないのか」という勢力もいる。漫画で言うと、少年漫画は男性読者も女性読者も読むが、少女漫画は男性読者はあまり読まない、という非対称性がある。それと同じで、読まれていないので言及が少なくなってしまう。とはいえ、ブログ界隈でやっていた人気投票などでは、いくつかの少女向けラノベが入っていたし、昔からラノベとして扱われていたとは思う。

質疑応答。

夏鎖。オーバーラップノベルスfやKラノベブックス​fなど、男性向けレーベルから女性向け作品を出している流れについてどう思うか?

そもそも「本好き」「薬屋」など女性人気の高い作品が、少女向けレーベル以外から出てきている。ラノベで女性主人公は売れないという謎の偏見をなろう系が破壊した。みたいな話。

漫画のノベライズはラノベか?(01:01:25〜)

mizunotori。もちろんラノベ。昔からノベライズは売れていて、ロードスもTRPGのノベライズと言えなくもないし、スニーカーのガンダムや、ファミ通文庫のゲームノベライズなど、レーベルの主力ともなっていたが、しかしラノベ読みのあいだではあまり話題にならない。そのあたりについて意見を聞きたい。また最近話題のYouTube漫画系のラノベをノベライズと捉えたときにどう考えられるか。

リイエル。そもそもノベライズの数が少ない。ラノベ読みは(売上的に重要度が高いはずの)ジャンプのノベライズを読んでない。YouTube漫画は異質。これまでのノベライズはゲームや漫画の内容をそのままなぞっていたが、YouTube漫画は新しく話をつくっている。ファンアイテム的でもある。メディアミックス的な売り出し方をしている。

岡田。ノベライズは狭義のライトノベルに含まれる。昔からあるが、最近は「何をもってノベライズなのか」が分からなくなっている。メディアミックスの一部になっている。リイエルさんに同意。

平和。異論の余地なくラノベ。一定のパッケージに落とし込んでいるのでラノベ

夏鎖。ノベライズはラノベではない。ノベライズというジャンルがあると認識している。アニメなどは既にイラストとコラボレーションしている作品で、それを小説化してもラノベとは言えない。

質疑応答。

夏鎖さんの「イラストとコラボレーションしたものがラノベ」理論を掘り下げる。

で、ボカロ小説はどういう立ち位置になるのか?みたいな話。

mizunotori。ライトノベルの文体は「読みやすい」か。別に一般文芸でもわざわざ読みづらくはしないのでは。たとえば、漫画でも絵柄はリアルだったりデフォルメが強かったりいろいろあるが、西洋画と漫画の白黒のコマを並べると「漫画っぽい絵柄」というのは分かる。それと同じくらい、一般文芸とラノベの文体に違いがあるかというと、無いのではないか。

YouTube漫画のノベライズは今後どうなるか?みたいな話。

ライト文芸ラノベか?(1:36:00〜)

平和。はっきり答えられない。どちらとも言える。文庫のいわゆるライトノベルの方法論は使っている。そのわりにレーベルは分けている。出版社が分けているのだからライトノベルにしにくい。

岡田。中間のジャンルが生まれたからなんとか名前をつけてみようというもの。小説とライトノベルのあいだにできた新しい国。

リイエル。狭義のライトノベルから追い出されたものたち。メディアワークス文庫。「ミミズクと夜の王」などのようにラノベとして売り出せなかったものを隔離。ラノベとも一般文芸ともどちらともつかない。ただしライト文芸として成立したあとに出てきたものもある。

mizunotori。ライト文芸とは「キャラ文芸」や「キャラノベ」と同じもの。場合によっては「なろう系単行本」を指して新文芸と言うこともある。が、この場では一般に「ライトノベルと一般文芸の中間」と言われるような作品群を指す。ライト文芸の始まりはメディアワークス文庫。書店でライトノベルの棚が一杯になったから一般文芸の棚に置いてもらうために『ライトノベルではありません』と名乗ったのがライト文芸。なので建前では別モノと言ってるけど実質的にはラノベ。とはいえライト文芸として成立してからかなり変わっている。ライトノベルにそれまでなかったようなジャンルも新しく生えてきている。売れなかったものを隔離したという感じではない。そもそも「ミミズク」なんかはラノベとして出せているし売れている。ビブリア古書堂が売れたのを見て周りからぎゅっと寄ってきて新しい文化を形成した。

夏鎖。イラストとコラボレーションしているかが重要なので、ライト文芸ライトノベルではない。イラストが表紙にしかない。

質疑応答。

10代の意見も聞きたい。YouTube世代とかラノベの定義についてどう考えているのか気になる。

mizunotori。ラノベが10代向けの小説だというのは古いのではないか。

平和。「オタク向けの小説」としたほうがしっくりくる。そして「オタク」の範囲が広がっているから境界が曖昧になる。

このラノライト文芸は扱わないのか?みたいな話。

mizunotori。中高生にもライト文芸は人気(ライト文芸のなかに中高生に人気のジャンルと大人に人気のジャンルがある)。読者年齢的にラノベライト文芸→一般文芸という段階を踏む、というのは違う。

では「ラノベと一般文芸の中間」というのはどういう性質が中間なのか?

非商業作品はラノベか?(2:11:25〜)

書籍化されていないWeb小説はライトノベルなのか?

平和。著者の意図としてライトノベルを志向していればラノベ

mizunotori。この議題の何が難しいかというと、ライトノベルにとって「非商業作品」は眼中になかった。「非商業作品はラノベじゃないよ」と言っていたわけではなく、売られているものをライトノベルと呼ぶのが当たり前で、そんなものを考慮してなかった。そして、「非商業作品もラノベだよ」ということになるとパッケージ派は苦しくなってくる。

電子書籍オンリーレーベルの扱い。

翻訳小説の扱い。

「いいな」と思った最近のライトノベル表紙

ふと思いついたので好きな表紙をだらっと挙げていきます。本当に素人目で見たときの「いいな」なのでデザインの専門的な解説などはありません。作品内容の良し悪しとも関係ありません。

前回似たようなことをやったときのはこちら。
https://kazenotori.hatenablog.com/entry/2017/06/17/211132

主人公じゃない!

主人公じゃない!02
こういうのってデザイン的にはなんて言うんでしょう。レトロポップ? 原色が映えて、タイトルのフォントとも合っていて、演劇のポスターみたいで綺麗ですよね。

春夏秋冬代行者


春夏秋冬代行者 春の舞 上 (電撃文庫)春夏秋冬代行者 春の舞 下 (電撃文庫)
ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の作者・暁佳奈の新作なんですが、ただただ純粋に美麗ですよね。強い。上下巻で表紙が繋がってるやつ、みんな大好き。

オーバーライト

オーバーライト――ブリストルのゴースト (電撃文庫)
これもラノベ読みのあいだでは話題になった表紙ですね。「グラフィティ」を題材にした作品だということで、殴り書きしたような文字と、カラースプレーの跡に、蛍光グリーンの特色を使っているというやつです。かっこいい。ちなみに2巻は蛍光ピンクで、そちらもとても良かったです。

スーパーカブ

スーパーカブ 3【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)
アニメ放送中の人気作品を取り上げるのもいまさらですけど、いまさら考えてみるとラノベ表紙でモノクロイラストを使ってるのって珍しいですよね。この3巻のイラストがいちばん好き。題材がスーパーカブということでレトロっぽい感じを狙っているのか分かりませんが、イラストの「博」が漫画家でちゃんと白黒を描ける人だっていうのが活きてますよね。

鋼鉄城アイアン・キャッスル

鋼鉄城アイアン・キャッスル (ガガガ文庫)
原案が別にある作品なので(まあそれが関係あるかどうか分かりませんが)、いわゆる「ラノベでよくあるデザイン」とは違う文法で作られている感じ。端正ですね。

魔女と猟犬

魔女と猟犬 (ガガガ文庫)
単純なインバクトではグッドデザイン・オブ・ザ・イヤーを個人的に与えたい表紙。真っ赤な背景色、真っ赤な瞳、真っ赤な舌。うーん、かっこいい。

ガンナー・ガールズ・イグニッション

ガンナー・ガールズ・イグニッション Case1.フェイタル・インシデント (オーバーラップ文庫)
はい。単色背景、好きなんですよ。

5分で読める驚愕のラストの物語

5分で読める驚愕のラストの物語 (JUMP j BOOKS)
イラストは漫画『チェンソーマン』の藤本タツキ。こういう「5分で読める」みたいなのって最近流行ってる形式で、学校の「朝読」の時間とかに読まれるのを想定しているんですが、朝から読むにしてはめちゃくちゃ乾いた感じ。もちろんそれがかっこいいんですけど。

バケモノたちが嘯く頃に

バケモノたちが嘯く頃に ~バケモノ姫の家庭教師~ (電撃文庫)
前回紹介した『キリングメンバー』とかもそうでしたが、横向きの構図がべらぼうにかっこいいですよね。

銀剣のステラナイツ

銀剣のステラナイツ
これめちゃんこいいですよね。星明かりに照らされて見つめ合う二人。もう百合を体現してますよ。

錆喰いビスコ

錆喰いビスコ6 奇跡のファイナルカット (電撃文庫)
ビスコ』の表紙はどれもいいんですが、この巻のやつは「主人公が写ってる映画を見る悪役」っていうシチュエーションが好きです。

竜馬がくる

竜馬がくる (ダッシュエックス文庫DIGITAL)
このタイトルロゴくっそ好きなんですよね。

灰と幻想のグリムガル

灰と幻想のグリムガル level.15 強くて儚きニューゲーム (オーバーラップ文庫)
『グリムガル』は15巻から表紙デザインが変わったらしいです。めっちゃカッコよくなってますね。

1LDK、そして2JK

1LDK、そして2JK。III ~夏が始まる。二人はきっと、少し大人になる。~ (富士見ファンタジア文庫)
わかりやすく『ひげひろ』を意識してるタイトルはご愛嬌。こういうストーリーを感じさせる一枚絵っていいですよね。

声を聞かせて

声を聞かせて(1)精霊使いサリの消失 (ウィングス・ノヴェル)
こういう雰囲気の表紙ってサブカルっぽい女性向け漫画でたまにある気がする。好き。

オニキス

オニキス―公爵令嬢刑事 西有栖宮綾子―(新潮文庫)
まあ清原紘のイラストが強すぎるんですが。新潮文庫nexの表紙はだいたい良いです。

楽園殺し

楽園殺し: 鏡のなかの少女 (1)
まだ発売されてないけど登録されてたので。単色背景にモノクロっぽい人物というパッキリした配色が目を惹きますね。

終わるレジェンドノベルスの救い方

レジェンドノベルスとは?

2018年10月に講談社が立ち上げたライトノベルレーベルが「レジェンドノベルス」です。いきなり「全部傑作!ハズレなし!」と豪語したり、「ネクストファンタジー」という謎のジャンル名をアピールしたり、講談社本体が「NOVEL DAYS」という小説投稿サイトを立ち上げている横で「セルバンテス」という独自の小説投稿サイトを運営したりと、熱意があるのか空回っているのかよくわからないレーベルでしたが、セルバンテスは2020年5月に閉鎖、レジェンドノベルスの新刊は2020年11月以来音沙汰なし、先日になってようやく来月「電子書籍のみ」で新刊が出るとアナウンスされたという状況です。つまり崖っぷちです。

レーベルカラーとしては良くも悪くも「意識が高い」という感じでしょうか。いわゆる「なろう系」作品を取り扱うWeb文芸レーベルではあるのですが、ラインナップがわりと個性的と言いますか、流行りには迎合しない姿勢を打ち出しています。独自に「発掘部隊」を用意して、あまり注目されていないWeb小説でも積極的に拾い上げる愚直さがある一方で、先述したような宣伝文句が大言壮語に感じられるところもありました。

つまるところ、とても個性的で、愛すべきレーベルだったのです。なんだかんだ言いながら私にとっても好きな作品が多いのです。もはや風前の灯のようにも見える現状ですが、ほんの少しでも延命してくれればと願って、いくつかのオススメ作品を挙げさせていただきます。

ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記

強大な力を持つヴァンパイアとエルフの戦いのあいだで、あまりにも弱く、虫けらのように扱われていた「ヒト」が、主人公たる少女のもとに集い、逆襲を開始するという話。と同時に、それは「ゲーム」の中の物語であり、「現実」のプレイヤー視点での軽妙なゲーム実況を交えつつも、徐々にそのゲームと現実の境界は曖昧になっていく……という趣向です。独特の語り口と熱い展開により、濃厚なチーズピザのようにカロリーの高い本格ファンタジーとなっています。

無双航路

壊滅的な敗北を喫した帝国軍の宇宙戦艦(のAI)に転生した主人公が、自分に乗艦している帝国のお姫様と協力して、追手を振り払いながら本国を目指す…という序盤の展開からは想像もできないほど物語は二転三転、ジェットコースターのごとき勢いでスケールアップしていくスペースオペラです。これはもう2010年代のラノベを代表するスペオペの傑作だと言い切ってしまいます。おすすめです。

滴水古書堂の名状しがたき事件簿

クトゥルフ神話をベースとした伝奇ホラー連作短編集。謎めいた古書店の謎めいた店長と、そこで働くことになった女性が、次々に不可思議な出来事に遭遇していくわけですが、この語り手の女性がかっこいいんですよね。とにかく暴力が強い。夜道で襲ってきた暴漢をボコボコにして殺しかける。出会いがしらの怪物に飛び膝蹴りをかましてぶっ殺す。ただ「怖ろしい」だけでは終わらないのがこの作品のいいところだと思いますね。

異世界の名探偵

異世界で巻き起こるさまざまな事件を解決していくファンタジーミステリです。特殊設定ミステリって言うんでしたっけこういうの。異世界に転生した主人公は、友人たちと共に学園生活を送るなかで、異世界の旧態依然とした捜査手法にロジカルな推理を持ち込むことを志します。幼少期から描かれるタイプの異世界転生の面白みを十二分に含みながらも、本筋は「読者への挑戦状」まで織り込んだ本格推理となっていて、ファンタジー好きもミステリ好きも楽しめる作品になっていますよ。

JK無双

人々がゾンビと化し、文明が半ば崩壊した世界で、事も無げに日本刀を振り回し、ゾンビをぶっ殺していく女子高生を描いたバイオレンスな作品です。なろう系のなかでも「現代ハクスラもの」とでも呼ぶべきサブジャンルで、ゾンビものに「ステータス」「レベルアップ」「スキル」的な要素を混ぜ合わせているわけですね。ゾンビパンデミック後にも生き残った人々を描く群像劇でもあって、案外と一本調子ではない面白さがあります。

ダイブ・イントゥ・ゲームズ

やたらシビアな海洋生物シミュレータ、カスタマイズ自在のロボット操縦アクション、ロールプレイ推奨の格ゲー、モンハンめいたMMORPG……さまざまな架空のVRゲームのプレイ日記的なノリの作品ですね。と同時に、重度のコミュ障である主人公がゲームを通して友人をつくっていくまでを描いた青春グラフィティでもあります。


というわけで。

レジェンドノベルス(新文芸)の作品一覧|電子書籍無料試し読みならBOOK☆WALKER

なんたって「全部傑作!ハズレなし!」ですから、あなたが気に入る作品は他にもあるはずです。

読もう、レジェンドノベルス!

「エタる」の語源

はじめに

ラノベってエタっても許されるコンテンツでいいな

増田のこの記事をきっかけに、「エタる」というスラング自体の発祥とかの話が盛り上がっていたので、ちょっと当時の5chを発掘してみた。最初は増田に投稿するつもりだったが、思ったよりURLが多くなったのでブログに書くことにする(増田では記事に多くのURLが含まれると投稿が弾かれてしまうのだ)。

「エタる」とは?

「エタる」は「作品が未完のまま終わること」を意味する。「エターる」「エターなる」「エターナる」「エターナル」などの表記揺れがある。

最初は「エターナル」だったのが、「エターナる」と動詞化され、のちに「エターなる」と変換されることが多くなり、それが「エターになる」と解釈されて「エター」と略され、再び動詞化して「エターる」、さらに「エタる」まで短縮されたと思われる。

現在ではWeb小説界隈で使われることが多いが、元はRPGツクール界隈で生まれた言葉であった。

なぜ「エタる」と言うのかについては「永遠(エターナル)に完成しないから」と説明されることが多く、そこに「未完に終わったエターナルファンタジーというツクール作品があったから」という説明が加わることもある。この点に関しては、ググっていちばん最初に出てくる以下の記事がかなり詳しいが、残念ながら「エターナる」の初出の時期に誤りがある。

エタる発祥の地へ行ってきた ~エタるの語源を探る~

というわけで、補足的に説明したいと思う。

ツクール界隈

2000年8月、「ディアス」という人物が20人以上のメンバーを集めて「エターナルファンタジア」というツクール作品を製作しようとした(「エターナルファンタジー」は誤りである)。しかし一年かけてもほとんど進展がなく、何人ものメンバーに逃げられた末に、2001年8月にディアスのサイトは閉鎖された。

以上の経緯はこちらのWebアーカイブに残っている。
https://web.archive.org/web/20050420130406/http://studiodias.port5.com/

この「ディアス」は当時16〜17歳だった。要するに「高校生が妄想を膨らませて壮大なゲームを作ろうとして全く何も出来なかった」というツクールあるあるが、いろんな人を巻き込んで発動したような形である。今から考えると「そりゃ高校生じゃ無理だろ」「こんな怪しい企画に参加するなよ」という印象を受けるが、おそらく当時のツクール界隈は平均年齢からして高校生〜大学生くらいだったのだろう。

ディアスについては、当時の2ちゃんねるでも話題になっており、ディアスは「痛いツクラー」の代名詞として、また「エターナル」という単語が「駄目な作品のタイトルにありがちなワード」とされて、さんざんネタにされていた。ただし、ディアスがウェブサイトを閉鎖した直後は、まだ「エタる」「エターナる」に類する言葉は生まれていなかった。

PCゲーム板のツクールスレの過去ログを遡ってみると、「作品が未完に終わること」という意味での「エターナる」という言葉が登場するのは2003年頃からである。当時はまだ「ディアス」「エターナルファンタジア」ネタが健在であり、この「エターナる」は明らかに「ディアス」「エターナルファンタジア」を念頭に置いて使われている。

ツクール総合 69
179 :金良八゜千 Ⅱ:03/05/05 12:05 ID: qP6gUvLL
サイトのブックマークなくしましたが何か?
で、ぐぐったら…
∑(゜Д゜;移転してもまだ完成しとらんのか!!
…まぁ、予想済みだけどナー( ´_ゝ`)


180 :名無しさんの野望:03/05/05 12:53 ID: noes707V
また一人、エターナる。

この5月の書き込みはやや先行しすぎていてイレギュラー的である。

【゜Д゜】RPGツクール2000&2003【゜Д゜】
495 :名無しさんの野望:03/07/14 15:18 ID: VrT3CrkD
ツクールは自分のやる気の持続度と
作るゲームの規模のバランスが重要である
むやみに規模の大きなゲームを作ろうとすれば未完に終わる。

何度挑戦してもゲームを完成させられないツクールプレイヤーの事をエターナルと言う。
逆に短編を多数完成させるツクールプレイヤーの事をすぐに次が揚がる事から海老フライと言う。
     ──海老大全上巻第二章より引用

【ナカーマ】RPGツクール20002003【ネカーマ】
274 :255:03/07/28 19:14 id:RNQOLzXv
夏休みの課題
「ブンターエレイのRPGを作ってみる。」
エターナルになるかもしれんが。


275 :名無しさんの野望:03/07/28 19:18 ID: J3g8CsFu
改めて聞くが、このスレで言うエターナルとは
作品が完成しないことだよな?

「作品が未完に終わること」を指す「エターナル」用法が本格的に使われはじめたのは7月に入ってからだろう。この時点では「エターナる」ではなく「エターナル」と表記されている。

【総裁選】RPGツクール2000&2003【流浪当選】
688 :名無しさんの野望:03/11/21 15:43 ID: YQ30q3Q1
>>685
http://www.tkool.net/
こことか行けば?
でもそのぐらい自分で作れって感じする。
大抵そういうこと言うやつはエターナるし。
あと、お手伝いを募集すると負の遺産が付いてくることがよくあることを忘れるな。

そして11・12月頃から「エターナる」「エターナった」などの表記が増えていく。

2004年に入ると「作品が未完に終わること」ことを「エターナル」もしくは「エターナる」「エターなる」と呼ぶ用法はすっかり定着するが、逆に「ディアス」「エターナルファンタジア」ネタが減少していく。この頃から元ネタと切り離されて広まっていったのだと思われる。

エターナルになる人が「エターナラー」と呼ばれることもあった。2005年1月にエターナラーを題材とした「エターナルの逆襲」というツクール作品が投下され、これが高評価を得たことで「エターナル」という語の知名度がさらに上がった、との話もある。

Arcadia界隈

Arcadia(二次創作SS投稿サイトの当時の最大手)系の2chスレでは2009年の用例が見つかる。

アルカディアを語るパート16
737 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2009/08/22(土) 00:27:07 ID: cLlpyqVh0
天災異邦人、最初がきつすぎるw
主人公のテンションがひどすぎるが、ナレーターは普通だから何か仕込んでるとは思ってたが、
面白くなるまでの苦行が……。
なにより、エタってるからなぁ。

この時点で既に「エターナる」ではなく「エタる」と略されているのが興味深い。ちなみに同時期のツクール界隈ではまだ「エターナる」or「エターなる」表記が中心だったようだ。

アルカディアをヲチる パート30
305 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2009/12/03(木) 00:59:32 ID: bkbcjAca0
【習作】 リリカルなのは 正義の指針 アンチ 性格・設定改変 ※お詫び より

[10]( ゚д゚)◆7e40ce53 ID: f5db8c6e
某所で噂んなってるんで来てみました。

>>8
残念ながらこの作品は自分のものではありません。
このトリップのパスは大分前に漏れてるし、
以前の騒ぎのときに某所でバラしてあるから、
成りすましは誰にでも出来ます。
投稿者が意図してやってるのかたまたまかまではわかりませんが。
自分は金輪際ここに作品投稿するつもりはないです。はい。

逆スバモノはブログに転載していますが現状ほぼエタってます。

 こいつって逆スバなのか?

こちらの書き込みはArcadia本サイトからの引用であり、本サイトでも当時から「エタる」が使われていたことを示唆している。

東方界隈

東方系の2chスレだとやや古く2008年まで遡れる。

【ニコニコ動画】幻想入り動画について【東方】part2
947 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 03:00:25 ID: nf7PAX0U0
>>946
そんな事いってお気に入りの作者さんがエターナって帰ってこなかったらどうすんだよw
新しいアイデアは自由な発想から生まれるもんであって誰かがこうしてみたらといって
気安くできるんなら週刊漫画の売り上げが低迷なんかしてねーよw

【雑談・マンセーは】幻想入りアンチ・議論スレ【本スレで】part3
741 :740:2008/06/10(火) 23:26:13 id:xgEvTwaOO
いい忘れてた
ちなみに動画最終投稿日は08/03/14、要するにエターナっている可能性大

こちらは「エターナる」が多い。界隈ごとに方言のように表記揺れが定着していったようだ。

ちなみに「幻想入り」とは、「東方Projectの舞台である幻想郷に主人公が迷いこむ二次創作ストーリーを動画形式で描くもの」のことで、東方Project本体のコミュニティからはやや外れたところにいると思われる。

幻想入りとは (ゲンソウイリとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

また、この「幻想入り」シリーズはRPGツクールによって製作されることもあるようで(「東方陰陽鉄」など)、そちらのルートから「エターナる」が広まった可能性が考えられる。

やる夫スレ界隈

やる夫スレについては、2008年3月に投下された「やる夫がドット絵師でツクール作品に参加するようです」が一つのターニングポイントになっている。実はこのやる夫スレは、前述の「エターナルファンタジア」の開発に参加していた人物が書いたもので、その体験がモチーフとなっているのである。

やる夫がドット絵師でツクール作品に参加するようです
やる夫がドット絵師でツクール作品に参加しているようです

本文中に「エターなれ」「エターなった」などの語句が登場し、

エターなるって何?

RPGツクールでのゲーム製作を途中で中止すること
語源はこのスレの>>1が関わってたゲームのタイトル

といったやりとりも見られる。やる夫スレ界隈で「エタる」が広まったのはこの「やる夫ドット絵師」スレによるという証言もあるが、その真偽は判然としない。多くやる夫スレが立てられていたVIP板にツクール系のスレもあったので、そちらを経由して広まったとも考えられる。

また、この「やる夫ドット絵師」スレが東方界隈やArcadia界隈にまで影響を与えたかというと…どうだろう、広まるスピードに対してちょっとコミュニティの距離が遠い気もするが、ありえないとまでは言い切れないか。

AAスレ界隈

調べている途中で気付いたが、AA系のスレで2008年以前の用例が見つかるようだ。

花を −急性骨髄性白血病と闘った6ヶ月−
189 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/05/28(日) 20:58:17 ID: dtPSJpul
このままエターナることを心から願います

【AA】コテハン職人フクロスレ1651【駄作】
253 :名無し戦隊ナノレンジャー!:2007/02/09(金) 20:59:21
エターナったストーリーには意味があるのかないのか

ジサクジエンのラーメン屋 3店舗
225 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/09/30(日) 00:32:51 ID: g3m7idJT0
こっ…これは……!
かつて全ギャラリをwktkさせておきながらエターナった
モナギコラーメンの風雲ラーメン後継者ストーリーを回収するのか!?

すんませんこのラーメンシリーズに粘着しつづけてるギャラリですなんにしろwktk

「AA」という共通点から考えて、のちのやる夫スレ界隈に影響を与えた可能性がある。

さらに遡ると「モナーRPG」スレに辿り着く。

モナーRPGを作ろう! Part27
280 :( ´∀`)さん:04/03/27 22:44 ID:+Wbm0q3/
>>279
そだね。収集つかなくなる可能性は高い。
そいでもって他スレのツクスレで言うところのエターナル。

モナーRPGスレとは「AAキャラを使ったRPG」の完成を目指すスレであり、その製作にはRPGツクールが使われている。すなわち、モナーRPGこそツクール界隈とやる夫スレ界隈をつなぐミッシングリンクなのではないか? …と思ったが、辻褄が合いすぎていて逆に違う気がする。2ch各板に立てられたツクールスレを通して並行的に広まっていった、と考えるべきかもしれない。

まとめ

2000年 元ネタの「エターナルファンタジア」が生まれる
2003年 ツクール界隈で「エターナる」という語が生まれる
2004年 モナーRPGスレ経由でAA系の板に広まる?
2008年 やる夫スレ「やる夫がドット絵師でツクール作品に参加するようです」投下
2008年? 東方界隈に「エターナる」が広まる
2009年? 二次創作SS界隈に「エタる」が広まる
それ以降? 小説家になろうで「エタる」が広まる

みたいな感じなのかな。どうなのかな。みんなも調べてみてね。

ライトノベルの世代分けを考える

世代分けって楽しいですよね。

無意味に「第3世代の特徴はこうだ!」などとレッテルを貼ったり、「第1世代の素晴らしさと比べて最近の世代は」「第7世代の面白さを理解できない老害は消えろ」なんてワイキャイと言い争いたいものです。

というわけでライトノベル作品の世代分けを考えてみましょう。

第1世代 ソノラマ・コバルト世代

1977年 高千穂遙クラッシャージョウ
1979年 栗本薫グイン・サーガ
1980年 新井素子星へ行く船
1982年 田中芳樹銀河英雄伝説
1983年 菊地秀行吸血鬼ハンターD
1984氷室冴子なんて素敵にジャパネスク

ラノベ史のスタンスは「ソノラマ・コバルトから始める」か「スニーカー・ファンタジアから始める」かで大きく分かれる気がしますが、ここではとりあえず「スニーカー・ファンタジア以前」をひと括りに「第1世代」として位置づけようと思います。

ソノラマ文庫の創刊は1975年、コバルト文庫の創刊は1976年です。

第2世代 スレイヤーズ世代

1988年 水野良ロードス島戦記
1989年 深沢美潮フォーチュン・クエスト
1990年 神坂一スレイヤーズ
1991年 中村うさぎゴクドーくん漫遊記
1992年 小野不由美十二国記
1994年 秋田禎信魔術士オーフェン

「スニーカー・ファンタジアの創刊」から「電撃文庫の台頭」くらいまでの世代です。ファンタジースペオペが多かったでしょうか。

アニメ化によって多くの新しい読者を獲得した時代でもあり、『スレイヤーズ』や「あかほりアニメ」などが90年代後半の夕方アニメを彩りました。

ちなみに「ライトノベル」という呼称が誕生したのもこの頃でしたね(一般に広まるのはもっと後ですが)。

スニーカー文庫富士見ファンタジア文庫の創刊は共に1988年、電撃文庫の創刊は1993年です。

第3世代 ブギポ世代

1998年 上遠野浩平ブギーポップは笑わない
1998年 今野緒雪マリア様がみてる
1998年 賀東招二フルメタル・パニック!
2000年 時雨沢恵一キノの旅
2000年 喬林知『まるマ』シリーズ
2001年 秋山瑞人イリヤの空、UFOの夏

電撃文庫の台頭」から「深夜アニメの増加」くらいまでの世代です。

大雑把には「ファンタジーから学園ものへ流行が移った」と語られ、その象徴として『ブギーポップは笑わない』が挙げられることが多いです。

アニメ化時期は主に2000年代前半ですが、ちょうど夕方アニメから深夜アニメへの移行期で、衛星放送のWOWOWでの放送が多かったこともあり、第2世代や第4世代ほど「アニメ化されて大ヒット!」という印象は無い気がします。

この頃に創刊されたレーベルはファミ通文庫(1998年)・富士見ミステリー文庫(2000年)・角川ビーンズ文庫(2001年)といったあたりです。

第4世代 ハルヒ世代

2002年 高橋弥七郎灼眼のシャナ
2002年 西尾維新『戯言』シリーズ
2003年 雪乃紗衣彩雲国物語
2003年 谷川流涼宮ハルヒの憂鬱
2004年 ヤマグチノボルゼロの使い魔
2004年 鎌池和馬とある魔術の禁書目録

「深夜アニメの増加」から「アニメ『ハルヒ』のヒット」くらいまでの世代です。ただし『禁書目録』はアニメ化の時期的に4.5世代くらいのイメージですかね。

深夜アニメの増加によってラノベ原作アニメも増加し、さらに2006年にアニメ『ハルヒ』が大ヒットしたことで、ラノベ業界を取り巻く環境が大きく変化しました。

人気ジャンルとしては異能バトルが存在感を見せていましたが、2002年に創刊されたMF文庫Jが次第にラブコメに注力しはじめ、その勢力を拡大しつつありました。

第5世代 俺妹世代

2006年 竹宮ゆゆことらドラ!
2006年 有川浩図書館戦争
2007年 井上堅二バカとテストと召喚獣
2008年 葵せきな生徒会の一存
2008年 伏見つかさ俺の妹がこんなに可愛いわけがない
2009年 弓弦イズル『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』
2009年 平坂読僕は友達が少ない

「アニメ『ハルヒ』のヒット」から「Web小説の書籍化ブーム」くらいまでの世代です。

勢いのあったジャンルはラブコメですが、単一の流行だけでは語りきれないほどラノベ業界は大きくなりました。

ハルヒブームとなろうブームの谷間の世代、という印象も無いではないですが、積極的なプロモーションで話題性を高めた『俺妹』、「萌え四コマ」的な作風を取り入れた『生存』『はがない』、異能学園もの(いわゆる「石鹸枠」)の先駆けとも言える『IS』など、後続への影響が地味に大きい作品が揃っているのではないでしょうか。

第4世代による躍進を受けてGA文庫(2006年)・HJ文庫(2006年)・ビーズログ文庫(2006年)・ガガガ文庫(2007年)といったあたりが創刊されました。また電撃のハードカバー路線を代表する『図書館戦争』のヒットから、2009年のメディアワークス文庫創刊、そして「ライト文芸」へと繋がっていく流れも無視できませんね。

第6世代 SAO世代

2009年 川原礫ソードアート・オンライン
2010年 橙乃ままれまおゆう魔王勇者
2011年 佐島勤魔法科高校の劣等生
2011年 三上延ビブリア古書堂の事件手帖
2011年 渡航やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
2012年 丸戸史明冴えない彼女の育てかた
2012年 長月達平Re:ゼロから始める異世界生活
2012年 丸山くがねオーバーロード
2013年 大森藤ノダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
2013年 暁なつめこの素晴らしい世界に祝福を!

単純に発売年で見ると『SAO』は第5世代なんですけど、やはりWeb小説世代を代表させたいところです。

この段階では、個人サイト(SAO)、2ch(まおゆう)、Twitter(忍殺)、Arcadia(AW・ダンまち・オバロ・幼女戦記)など、なろう以外から書籍化されてヒットした作品が多かった印象です。ヒーロー文庫(2012年)・MFブックス(2013年)などのWeb小説専門レーベルが創刊され、「なろう」からの書籍化が急増しつつも、まだ「なろう一強」になる前段階とみなせるのではないかと思います。

第7世代 なろう世代

2014年 理不尽な孫の手無職転生
2014年 伏瀬『転生したらスライムだった件
2014年 住野よる『君の膵臓をたべたい』
2014年 日向夏薬屋のひとりごと
2015年 衣笠彰梧ようこそ実力至上主義の教室へ
2015年 白鳥士郎りゅうおうのおしごと!
2016年 屋久ユウキ弱キャラ友崎くん
2017年 安里アサト『86 -エイティシックス-』

2014年に、GCノベルズ・モンスター文庫HJノベルス・アース・スターノベルといった、Web小説系のレーベルが創刊ラッシュを迎えました。

2016年にアニメ『このすば』『Reゼロ』がヒット、2017年にヒーロー文庫の2作品がアニメ化(以降、既存ラノベレーベルではなくWeb小説系レーベルからのアニメ化が増加する)したあたりがトピックスで、ここから現在までが「なろう」ブームの全盛期ということになると思います。

とりあえず「お笑い第7世代」になぞらえてここで終わりにしておきますが、もし第8世代を考えるとすれば2018年あたりからのラブコメブームで区切ることになるかもしれません(まだ評価が定まっていないので語りづらい)。

まとめ

「ソノラマ・コバルト世代」
スレイヤーズ世代」
「ブギポ世代」
ハルヒ世代」
「俺妹世代」
「SAO世代」
「なろう世代」

なかなか良い感じじゃないでしょうか。

ラノベは「出版時」と「アニメ化時」の二段階で注目度が変わる(しかもたいていアニメ化時のほうが変化が大きい)ので、その両側面から考えなければいけないのが大変だと思います。

特に、ハルヒ世代と俺妹世代の区切り方と、SAO世代となろう世代の区切り方で、わりと個性が出るような気がしますね。

あるいはそのあたりをひとまとめにしてしまっても面白いかもしれません。

さあ、君も自分だけの世代表を作ってみよう!

「ライト文芸」周辺の用語整理

文学

小説や詩や随筆や戯曲などの総称。もちろんライトノベルも文学の一種である。

業界的には何故か「純文学」の略称にもなっている。

純文学

芸術性に重きを置いた文学のこと。対義語は、娯楽性に重きを置いた「大衆文学」。

芥川賞は純文学の賞。直木賞は大衆文学の賞。

何故か「文学」と略されてしまう。

文芸

辞書的には「文学」とほぼ同義。すなわち小説や詩や随筆や戯曲などの総称である。

業界的には何故か「一般文芸」の略称にもなっている。

また書店の「文芸書コーナー」から、そこに置かれることが多い作品=大判の小説単行本のことを「文芸(書)」と呼ぶ風潮もある気がする。

一般文芸

小説や詩などの「文芸全体」のような意味であることもあるし、「同人誌」と「一般文芸誌」が対置されることもあるし、「純文学」に対する「大衆文学」のような意味で使われることもある、極めて曖昧な呼称。

ラノベ業界においては「ラノベ以外の小説」を意味する。

何故か「文芸」と略されてしまう。

ライトノベル

1990年に神北恵太氏によって作られた造語。長くなるので詳細な説明は避ける。

ライト文芸」や「キャラ文芸」といった言葉は出版社が打ち出したのに対し、「ライトノベル」は読者が作り出したという点で異なる。

ライト文芸ライトノベルに含まれるかについては議論があるが(個人的にはもちろん「含まれる」と思っている)、そもそも「出版社から見た分類」と「読者から見た分類」ということで次元が違うようにも思える。

キャラクター小説

ライトノベル」と同義。

大塚英志の影響もあり「非現実的な誇張されたキャラクターを描いた小説」や「キャラクターありきで作られた物語」といったニュアンスを持つことが多い。

個人的には「キャラクター性」がライトノベルの特徴であるかは疑問に思うが、少なくともKADOKAWAはそう信じているようだ。

ライト文芸

ライトノベルの「ライト」と一般文芸の「文芸」をあわせてライト文芸

呼称としては、集英社オレンジ文庫の創刊(2015年)のときに使われたのが最初であると思われる。

「表紙にイラストを用いた青年向けの書き下ろし文庫小説」を指すことが多い。

ライト文芸的な領域」は以前から脈々とあったものの、やはりメディアワークス文庫の登場(2009年)と『ビブリア古書堂の事件手帖』のヒット(2011年)によって領土が確定した感がある。

刊行点数が増えすぎて書店の棚がいっぱいいっぱいになった電撃文庫が「これはライトノベルではありません」と自称して一般文芸の棚に置いてもらうように画策したのがライト文芸のはじまりである。

いったん少年向けレーベルから切り離されると「お仕事」「青春」「オカルト」「ライトミステリ」「後宮ファンタジー」などを特徴とする独自の文化が花開き、そこに少女向けラノベや一般文芸側のレーベルも相乗りしてきて、現在の「ライト文芸」というものが出来上がった。

キャラ立ち小説

ライト文芸」と同義。

KADOKAWAの「ダ・ヴィンチ」から出てきた言葉で、「メディアワークス文庫的な小説群」の最初期の命名である。

とはいえメディアワークス文庫だけを見ていたわけではなく、当時からすでに『図書館戦争』『トッカン』『万能鑑定士Qの事件簿』なども射程におさめていた。

もはや誰も使わない呼称。

キャラノベ

ライト文芸」と同義。

これもKADOKAWAの「ダ・ヴィンチ」あたりから出てきた言葉。

ライト文芸やキャラ文芸と比べるとわりと廃れぎみな呼称。

キャラクター文芸

ライト文芸」と同義。

「キャラ文芸」と略されることが多い。

キャラ文芸を「オカルトものやミステリもの」、ライト文芸を「青春ものや感動もの」として区別する出版社もあるが、後出し独自定義なので無視してよい。

2013年にKADOKAWAが自称したのが始まりである。
kadobun.jp

やはりKADOKAWAは「キャラ」推し。ライトノベルの特徴は「キャラクター性」であり、そのキャラクター性を取り入れた一般文芸が「キャラ文芸」なのである、というKADOKAWAの強い信念がうかがえる。

新文芸

KADOKAWAによる造語。

「ネット上で発表された作品を書籍化したもの」という定義で、本来はボカロ小説なども含まれるが、現在ではほぼ「Web小説系の単行本レーベル」を指すようになっている。

何年経っても「新」文芸なのか?とか、これじゃ字面から意味が推測できないだろ?とか、いろいろツッコミどころの多い呼称であるが、徐々に広まってはいるらしい。

ただし一時期(現在も?)、出版社と書店のあいだで新文芸のことを「ライト文芸」と呼んでいたことがあり、いまでも混同されることが多い。この用法での「文芸」は、先述した「文芸=大判の小説単行本」の発想からだろうか。

ラノベ文芸

2011年に富士見書房が「富士見ラノベ文芸大賞」を立ち上げ、ライト文芸的な作品を募集しはじめたのが最初だが、近年はそれとは別に「新文芸」を指していることが多い。

単純に「ライト文芸」の覚え間違い・書き間違いだと思うが、書店側がライト文芸と区別するために字面を変えた可能性もある。

「好きラノ 2020年下期」投票

『声優ラジオのウラオモテ』二月公

一巻・二巻が「プライベートで問題が発生して声優の仕事が阻害される」という「仕事を取り巻く環境」の話だったのに対して、今回は「声優の仕事でぶつかった壁をどう乗り越えるか」という「内側」の話になっていて、「お仕事小説」として飛躍的に面白くなったように感じる。
展開的に由美子が落ち込む状況が多くて、周りが敵に見えがちなんだけど、めくるちゃんが歌種やすみのこと大好きなのが一つのクッションになってる。めくる周りのエピソードはほのぼのしていて好き。厳しくも優しい先輩方の描かれ方も良い。声優・歌種やすみのサクセスストーリーとして読んでいきたいな。

【20下ラノベ投票/9784049134919】

『ネクラとヒリアが出会う時』村田天

これは面白かったな。女の子に囲まれて怯えている非モテマインドの残念イケメンと、クールなお嬢様だと遠巻きにされて「もっとくだらない話をしたいのに…」と思い悩むぽやぽや美少女が、互いの顔を知らないまま棚越しにお喋りするようになって惹かれ合うというラブコメ
少女漫画を彷彿とさせる可愛らしい設定がハマっていて、恋愛経験皆無な二人がのろりのろりと距離を縮めていくのが微笑ましい一方で、ちょっとした言い回しにもギャグセンスが迸る、勢いのある会話がとても楽しい。比嘉智康を好きな人にオススメしたいなあ。

【20下ラノベ投票/9784040737331】

『やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい』芝村裕吏

2巻で敗れたリエメンがいよいよ立ち行かなくなり座して死ぬか否かという断末魔のような一大攻勢に打って出て、それを主人公であるお人好しのガーディが残酷なまでに一方的に打ち砕く話。今回はわりとシンプルな構成だけど、毎度の「後世から歴史家が振り返るような」書き方や、ガーディを取り巻くドタバタな人間模様の描写が巧みで、とにかく面白く読める。ますますガーディ視点が減ってその周囲の人物たちが彼を讃えあるいは畏れる様を描くのに力点が移った感もある。そうなるとこの歴史書のような書き方がさらにマッチしてくるなあと思ったり。是非とも続きを読みたいな。

【20下ラノベ投票/9784040647326】

涼宮ハルヒの直観』谷川流

涼宮ハルヒの直観 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの直観 (角川スニーカー文庫)

  • 作者:谷川 流
  • 発売日: 2020/11/25
  • メディア: 文庫

「あてずっぽナンバーズ」。短編。ひたすらニヤニヤ度の高い話。ウェットなラブコメだ。「七不思議オーバータイム」。中編。ハルヒが七不思議を探そうと言い出すまえに七不思議を考える話。キョンと古泉の会話劇でほとんど漫才のようだ。部分的にミステリ的な話もある。最後の話の原型のような趣向。
鶴屋さんの挑戦」。書き下ろしの長編。初っ端から後期クイーン問題について結構な紙幅が割かれる、作者のミステリ趣味を最大限に詰め込んだ話。鶴屋さんから送られてくる幾つかのエピソードに隠された謎を解き明かす。違和感を持つべきところで違和感を持てるような丁度いい謎解き。面白かった。

【20下ラノベ投票/9784041107928】

『亡びの国の征服者』不手折家

この作品の面白さを説明するのはなかなか難しい気がする。何か特徴的な設定があるわけでもないオーソドックスな転生ものだ。幼児から少年、青年へと成長していくなかで、学園編が始まったり、王女さまと仲良くなったり、現代知識をもとに商売を成功させたりするのは、それこそテンプレと言っていい。
特に今巻は、学生でありながら製紙や印刷術で儲けていく展開が中心となっているが、細かな専門知識が売りというわけでもない。にもかかわらず、めちゃくちゃ面白いのは、やはり巧さなんだろうな。作品世界が手に余っていない。自家薬籠中のものにしていて「よそから借りている」という感じがしない。
ようやくタイトルの意味がおぼろげに見えてくるという程度のスローペースで、いまのところ平和で淡々とした進行をしているが、行く手はどうも不穏だし、とにかくどうなるか分からなくて面白い。続きが楽しみだ。

【20下ラノベ投票/9784865547436】

『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』リュート

貴族令嬢送り届け編の後半ということで、艦隊戦から白兵戦まで派手なバトルが繰り広げられて非常に楽しかったな。ちょいちょい出てくる謎技術とか珍兵器とかこれぞスペオペという面白さがあるし、母船の購入を検討して、スピードがあるほうがいい、いや防御力重視だ、なんて語り合ってるのもワクワク感があって嬉しい。やはりスペオペの王道的な面白さが詰まった良作だよな。クール眼鏡アンドロイドの可愛さは宇宙一やで。

【20下ラノベ投票/9784040738932】

『オーク英雄物語』理不尽な孫の手

無職転生』の人の新作。豚顔で凶暴で他種族を犯して孕ませるタイプのオークたちから一身に尊敬を集める「オーク英雄」が実は童貞で、しかも何千年も続いた戦争が終わって平和になったためにオークたちはレイプが禁じられてしまい、正攻法で嫁探しするしかなくなったので旅に出る…という話。
「オークと女騎士」のミームをパロったキレのいい軽さと、作り込まれたファンタジーとしてのコクの深さを併せもった読み味はさすがという感じ。ボンドガール的に各巻で一人のヒロインを描いていくのかな。すごく面白いのにページ数が少なくて物足りなさすら感じたので早く続きを読みたい。

【20下ラノベ投票/9784040736655】

『王立士官学校の秘密の少女 イスカンダル王国物語』森山光太郎

辺境の島からやってきて王都の軍事学校「黒の門」に入学する男装の少女は、曰く付きの騎士の娘であり、かつてその圧倒的な軍才により島の内乱を鎮圧したが、しかし今はトラウマによりその才能は失われている。…というわけで、本編中の大半で怯えて震えている主人公が、騎士たちの確執と陰謀渦巻く「黒の門」をいかに生き延びるか、あるいはその才能を取り戻せるのか。また故郷の「兄様」と王国の「麒麟児」という二人の英雄を中心に大陸はどうなっていくのか。優秀な人物が次々に登場して英雄譚の趣きがあり、敵もわかりやすい憎まれ役のようでいて一本筋が通っていて良い。
焦らして焦らしてどかんといく、主人公の「覚醒」は否応なく盛り上がる。キャッチーな設定で非常に楽しい作品だった。前に読んだ作品は面白いながらもデコボコしている印象だったけど、本作はバランスが取れていて期待どおりの面白さだったな。

【20下ラノベ投票/9784049134599】

『僕は天国に行けない』ヰ坂暁

僕は天国に行けない (講談社タイガ)

僕は天国に行けない (講談社タイガ)

  • 作者:ヰ坂 暁
  • 発売日: 2020/12/15
  • メディア: 文庫

余命僅かな青年。カルト宗教と集団自殺。連続殺人。死後の世界はあるのか。何のために生きるのか。「死と宗教」というテーマに沿って描かれる青くさいミステリ。良いですね。何が良いってヘビースモーカー眼鏡ボク女が最高に良いですね。親友が事故死した直後に現れるヘビースモーカー眼鏡ボク女
主人公は彼女とともに親友の死の真相を探ることになる、という話。主人公がその親友に抱く崇拝にも近い愛情とか、主人公とヘビースモーカー眼鏡ボク女の恋愛とも言えない共犯者的な関係とか、めちゃくちゃツボにハマりますね。自嘲的で、露悪的で、しかし後ろ向きな希望があって。面白かったですね。

【20下ラノベ投票/9784065219287】

『ボクは再生数、ボクは死』石川博品

ボクは再生数、ボクは死

ボクは再生数、ボクは死

2033年の近未来、バ美肉おじさんがVR風俗で百合えっちしてるところから始まって此は何事ぞという感じだけど、主人公が風俗の金を稼ぐためにVR内で配信を始めて、最初は再生数4の弱小配信者から、GTAみたいな街中での殺し合い、仲間を引き連れての大戦争へと発展していくドライブ感。
現在のYouTuber/Vtuber文化をしっかり下敷きにしたディテール感と、近未来VR世界のSF的な描写力。この「あるあるw」と「ねーよw」のバランスの良さ。台詞も展開もとにかくテンポが良くて読みやすい。さすが俺たちのヒロシ。傑作でしたね。

【20下ラノベ投票/9784047363847】

【結果発表】マニアック・ライトノベル・オブ・ザ・イヤー2020

レギュレーション

・2020年内に読んだライトノベルのなかで面白かった10作品に投票してください(発売日や購入日は関係なく「読了日」を基準とします)
・「重複なし」で「10作品」必須です
・「シリーズ名」で投票してください
・ただし「スピンオフ」は別シリーズとみなします(たとえばSAO本編に対する「プログレッシブ」や「オルタナティブ」など)
・あなたがそうだと思うものがライトノベルであり他人の同意は必要ありません
・投票は「2021年1月3日(日) 24:00」までの予定です

今回の投票者は43人、すなわち全体では430票でした。順調に減っていて悲しい。

それでは投票結果です。

9票

『スパイ教室』
『ボクは再生数、ボクは死』

ボクは再生数、ボクは死

ボクは再生数、ボクは死

8票

『今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。』

7票

『楽園ノイズ』
『探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』
筺底のエルピス

楽園ノイズ (電撃文庫)

楽園ノイズ (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2020/05/09
  • メディア: 文庫
筺底のエルピス (ガガガ文庫)

筺底のエルピス (ガガガ文庫)

6票

『むしめづる姫宮さん』
『魔女と猟犬』

むしめづる姫宮さん (ガガガ文庫)

むしめづる姫宮さん (ガガガ文庫)

魔女と猟犬 (ガガガ文庫)

魔女と猟犬 (ガガガ文庫)

5票

『―異能―』
『竜と祭礼』

―異能― (MF文庫J)

―異能― (MF文庫J)

  • 作者:落葉沙夢
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 文庫
竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から― (GA文庫)

竜と祭礼 ―魔法杖職人の見地から― (GA文庫)

  • 作者:筑紫一明
  • 発売日: 2020/01/11
  • メディア: 文庫

4票

『こわれたせかいの むこうがわ』
『プロペラオペラ』
『ラストオーダー ひとりぼっちの百年戦争
りゅうおうのおしごと!
『君が、仲間を殺した数 ―魔塔に挑む者たちの咎―』
『継母の連れ子が元カノだった』

3票

『オーバーライト』
『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』
『きのうの春で、君を待つ』
シュレディンガーの猫探し』
ダークエルフの森となれ』
『ネクラとヒリアが出会う時』
『ねじまき精霊戦記 天鏡のアルデラミン
『ぼくの妹は息をしている(仮)』
『やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい』
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
『異修羅』
『賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求』
弱キャラ友崎くん
『声優ラジオのウラオモテ』
『地獄に祈れ。天に堕ちろ。』
『豚のレバーは加熱しろ』
『恋に至る病』

2票

『101メートル離れた恋』『イリヤの空、UFOの夏』『カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています』『さよならの言い方なんて知らない。』『ダイブ・イントゥ・ゲームズ』『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』『とってもカワイイ私と付き合ってよ!』『ひきこまり吸血姫の悶々』『むすぶと本。』『ロード・エルメロイII世の事件簿』『ワーウルフになった俺は意思疎通ができないと思われている』『悪役令嬢になったウチのお嬢様がヤクザ令嬢だった件。』『育ちざかりの教え子がやけにエモい』『教え子に脅迫されるのは犯罪ですか?』『禁断師弟でブレイクスルー ~勇者の息子が魔王の弟子で何が悪い~』『君死にたもう流星群』『経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。』『七つの魔剣が支配する』『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』『星継ぐ塔と機械の姉妹』『青春ブタ野郎シリーズ』『探偵はもう死んでいる』『超世界転生エグゾドライブ』『転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?』『叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士』『不全世界の創造手』『魔法科高校の劣等生』『幼なじみが絶対に負けないラブコメ』『狼は眠らない』

1票

『86 -エイティシックス-』『〈卵王子〉カイルロッドの苦難』『-インフィニット・デンドログラム-』『108回殺された悪役令嬢 すべてを思い出したので、乙女はルビーでキセキします』『14歳とイラストレーター』『1LDK、そして2JK。』『Babel』『BG、あるいは死せるカイニス』『Dジェネシス ダンジョンができて3年』『Fate/Requiem』『Fate/strangeFake』『Hyper Hybrid Organization』『JKハルは異世界で娼婦になった』『Re:ゼロから始める異世界生活』『Unnamed Memory』『アサシンズプライド』『あなたのことならなんでも知ってる私が彼女になるべきだよね』『アニソンの神様』『あの日、神様に願ったことは』『アルバート家の令嬢は没落をご所望です』『ある日、爆弾がおちてきて』『あれは超高率のモチャ子だよ!』『アンチリテラル数秘術師』『イスカンダル王国物語』『いつか僕らが消えても、この物語が先輩の本棚にあったなら』『ウィッチハント・カーテンコール 超歴史的殺人事件』『ウタカイ 異能短歌遊戯』『ウロボロス・レコード』『エージェントが甘えたそうに君を見ている。』『エンドブルー』『オイレン・シュピーゲル』『オーク英雄物語』『オーバーロード』『オリンポスの郵便ポスト』『お庭番デイズ』『ガーリー・エアフォース』『カネは敗者のまわりもの』『カノジョの妹とキスをした。』『キミとは致命的なズレがある』『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』『キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った』『クソゲー・オンライン(仮)』『グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む』『クレイジーカンガルーの夏』『ゲーマーズ!』『ゴーストハント』『ココロコネクト』『このぬくもりを君と呼ぶんだ』『サイコパスガール イン ヤクザランド 』『さびしがりやのロリフェラトゥ』『さよなら異世界、またきて明日』『サンタクロースを殺した。そして、キスをした。』『シャバの「普通」は難しい』『ストライク・ザ・ブラッド』『スプライト・シュピーゲル』『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』『セクステット 白凪学園演劇部の過剰な日常』『ソードアート・オンライン』『その色の帽子を取れ』『それでも、好きだと言えない』『タイム・リープ』『ただし彼女はレベル99』『たとえば俺が、チャンピオンから王女のヒモにジョブチェンジしたとして。』『ダンガンロンパ霧切』『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』『デスペラード ブルース 』『デッド・エンド・リローデッド』『デリバリールーム』『とある飛空士への夜想曲 』『どうも、好きな人に惚れ薬を依頼された魔女です。』『トリコロールをさがして』『トリニティ・ブラッド』『ニンジャスレイヤー』『ノロワレ』『ババヤガの夜』『ハル遠カラジ』『パワー・アントワネット』『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。』『ファンダ・メンダ・マウス』『ブラック・ロッド』『ブレイドスキル・オンライン』『ぼくたちのリメイク』『マージナル・オペレーション』『メックタイタン ガジェット』『やがてはるか空をつなぐ』『やがて恋するヴィヴィ・レイン』『ヤンキーやめろ。メイドにしてやる』『ようこそ実力至上主義の教室へ』『ライアー・ライアー』『ラノベ部』『ラン・オーバー』『リーリエ騎士団とシンデレラの弓音』『リビルドワールド』『リュカオーン』『ルピナス探偵団の憂愁』『レディローズは平民になりたい』『ロード・エルメロイⅡ世の冒険』『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』『悪役令嬢(ところてん式)』『悪役令嬢レベル99 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜』『安達としまむら』『椅子職人ヴィクトール&杏の怪奇録』『異世界拷問姫』『異世界誕生』『異世界迷宮の最深部を目指そう』『異世界料理道』『一つの大陸の物語』『陰の実力者になりたくて!』『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』『嘘嘘嘘、でも愛してる』『永遠のフローズンチョコレート』『英国幻想蒸気譚』『英雄都市のバカども』『王子様の抱き枕』『王妃ベルタの肖像』『俺、ツインテールになります。』『俺の教室にハルヒはいない』『俺はまだ恋に落ちていない』『俺を好きなのはお前だけかよ』『穏やか貴族の休暇のすすめ。』『家つくりスキルで異世界を生き延びろ』『火の国、風の国物語』『花守の竜の叙情詩』『花木荘のひとびと』『外れスキル【地図化】を手にした少年は最強パーティーとダンジョンに挑む』『骸龍興亡記 人食い龍と聖女の降臨』『機龍警察』『気ままに東京サバイブ。』『虐殺器官』『吸血鬼に天国はない』『虚構推理』『境域のアルスマグナ』『教室が、ひとりになるまで』『金木犀とメテオラ』『熊本くんの本棚』『君の小説が読みたい』『君はヒト、僕は死者。世界はときどきひっくりかえる』『君を失いたくない僕と、僕の幸せを願う君』『現実でラブコメできないとだれが決めた? 』『古き掟の魔法騎士』『後宮妃の管理人』『公女殿下の家庭教師』『国道沿いのファミレス』『黒崎麻由の瞳に映る美しい世界』『黒猫館』『惚れ症のハーフエルフさん』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。』『殺したガールと他殺志願者』『紙山さんの紙袋の中には』『時空のクロス・ロード』『自殺するには向かない季節』『自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園で頂点に君臨するそうですよ?』『失恋後、険悪だった幼なじみが砂糖菓子みたいに甘い ~ビターのちシュガー~』『失恋探偵ももせ』『主人公じゃない!』『終末なにしてますか? 異伝 リーリァ・アスプレイ』『終焉ノ花嫁』『住職探偵』『十三歳の誕生日、皇后になりました。』『重装令嬢モアネット』『銃皇無尽のファフニール』『処刑少女の生きる道』『女王の化粧師』『常敗将軍、また敗れる』『神々の砂漠 風の白猿神』『神様のスイッチ』『神様のメモ帳』『人類最強のヴェネチア』『世界の終わりの壁際で』『世界は愛を救わない』『世界一可愛い娘が会いに来ましたよ』『星を墜とすボクに降る、ましろの雨』『星降る夜になったら』『正捕手の篠原さん』『生活魔術師たち、ダンジョンに挑む』『精霊幻想記』『赤×ピンク』『絶望同盟』『戦闘城塞マスラヲ』『大絶滅恐竜タイムウォーズ』『蜘蛛ですが、なにか?』『中古(?)の水守さんと付き合ってみたら、やけに俺に構ってくる』『中古でも恋がしたい!』『仲が悪すぎる幼馴染が、俺が5年以上ハマっているFPSゲームのフレンドだった件について』『朝日奈さんクエスト』『帝都異世界レジスタンス』『底辺領主の勘違い英雄譚』『天才王子の赤字国家再生術 ~そうだ、売国しよう~』『天才少女Aと告白するノベルゲーム』『転生者の私に挑んでくる無謀で有望な少女の話』『湯けむり温泉郷まほろばの非日常』『董白伝』『二度目の夏、二度と会えない君』『日和ちゃんのお願いは絶対』『白百合さんかく語りき。』『八月の魔女』『叛逆のドレッドノート』『非モテの呪いで俺の彼女が大変なことに』『髭を剃る。女子高生を拾う。』『氷の海のガレオン』『封仙娘娘追宝録』『物理的に孤立している俺の高校生活』『文学少女シリーズ』『変態王子と笑わない猫。』『放課後のフェアリーテイル』『亡びの国の征服者』『僕が七不思議になったわけ』『僕たちのリメイク』『僕の軍師はスカートが短い』『僕は天国に行けない』『魔王の右腕になったので原作改悪します』『魔術士オーフェンはぐれ旅 コミクロンズ・プラン』『魔女の旅々』『魔物の国と裁縫使い ~凍える国の裁縫師、伝説の狼に懐かれる~』『無職転生』『明日の世界で星は煌めく』『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』『薬屋のひとりごと』『勇者刑に処す』『友達いらない同盟』『友達の妹が俺にだけウザい』『有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿』『裏世界ピクニック』『瑠璃色にボケた日常』『麗子の風儀』『錬金術師の密室』『烙印の紋章

2020年ライトノベル個人的ベスト10

1. 帝都異世界レジスタンス

帝都異世界レジスタンス

帝都異世界レジスタンス

人間とともに亜人たちも暮らす架空の大正時代を舞台に、ハーフエルフの貴族令嬢や、オークの軍人、忍者の新聞記者といった個性的な面々が、謎めいた装置を使ってさまざまな異世界を行き来し、怪しげな陰謀と世界の謎へと迫っていくというお話。とにかく魅力的なのがハーフエルフの貴族令嬢こと主人公のエアルミアで、ただのお転婆な女学生と思いきや、エルフの誇りを胸に日頃から鍛錬を積んでいるバイオレンスお嬢様なんですよ。モンスターを素手で縊り殺す完全戦闘民族。超かっけえ。それでいて可愛らしい大正浪漫の雰囲気もたっぷりで、作者の力量が遺憾なく発揮されています。時代小説とファンタジー、SF的な要素が見事に調和した痛快な冒険活劇。紛れもなく2020年ベストです。

2. 亡びの国の征服者

こちらの世界で死んだ主人公が、異世界の貴族の息子に生まれ変わり、長じて騎士学校へ入学するという、実にオーソドックスな異世界転生ものです。何か目新しいアイディアがあるわけでもなく、意外な展開が目白押しというわけでもないスローペースぶりなのですが、とにかくディティールが優れていて、主人公の半生がじっくりと描かれていくだけでも滲み出るような面白さがあります。スタンダードな作りだからこそ実力が際立つと言いますか、ただ「テンプレに乗っかっている」のではなく、この作品世界を自家薬籠中のものとして「乗りこなしている」感じがするんですよね。いま異世界転生ものをどれか一つオススメしてくれと言われたら迷いなくこの作品を選びますよ。
亡びの国の征服者~魔王は世界を征服するようです~|株式会社オーバーラップ

3. 目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい

いまいちタイトルはそそられませんが、しかしその内容は「力!」「女!」「金!」のたった三言で説明できるような王道的なスペースオペラとなっております。ふと主人公が目覚めるとそこはゲームによく似た世界。ゲームでも愛機だったハイスペックな戦闘艦と、ゲームで培った変態的な操縦手腕を武器に、傭兵として星々を駆け回り、美女を助けてハーレムとし、夜はとっかえひっかえでベッドイン、宇宙海賊と出会ってはこれを退治し、大金を稼いではまた新たな装備を購入していくわけです。さまざまなSFガジェットが登場するのも楽しいところ。スペオペというジャンルの魅力をこれでもかと詰め込んだ素晴らしい作品です。

4. 楽園ノイズ

楽園ノイズ (電撃文庫)

楽園ノイズ (電撃文庫)

  • 作者:杉井 光
  • 発売日: 2020/05/09
  • メディア: 文庫
この世に存在する「間違いのないもの」の一つ、杉井光の音楽ラノベですよ。『さよならピアノソナタ』をセルフカバーしたようなあざとい作品なんですが、そうとわかっていても私には効いてしまうわけです。女装してアップしたオリ曲の演奏動画がバズってしまった主人公と、その弱みを握った破天荒な女教師と、それぞれにワケありの少女たちが集まってバンドを結成するという輝かしい青春なんですよ。まあエモい文章を書かせたら杉井光の右に出る者はなかなかいないですよね。
楽園ノイズ | 特設ページ | 電撃文庫・電撃の新文芸公式サイト

5. オーク英雄物語

無職転生』作者の最新作。長く続いた大戦争が終わったあとの平和な時代、女騎士とかをレイプするのが生き甲斐のオークにおいて「英雄」と呼ばれる最強のオークが実は情けなくも童貞で、その彼がこっそり童貞を捨てるべく嫁探しの旅に出るというヒロイック・ファンタジー。素軽く切れのいいコミカルと、きっちり作り込まれたシリアスが見事なバランスで溶け合っていて、作者がその実力を再び示した良作だと言えます。
オーク英雄物語 忖度列伝 | ファンタジア文庫

6. イスカンダル王国物語

天賦の軍才を持つ少女が、さまざまな政治的事情のもと、男装して王都の騎士学校に入学することになる学園ファンタジー。この主人公、過去のトラウマから現在はまったく覇気を無くしていて、戦いに怯えて気を失ってしまうありさま、もちろん騎士学校では周囲から馬鹿にされているのですが、そうしたフラストレーションの溜まる展開があってこそ、ここぞというところで見せる彼女の「覚醒」が大いに盛り上がるんですよね。非常にキャッチーで優れた作品だと思います。

7. ダイブ・イントゥ・ゲームズ

シビアすぎる海洋生物シミュレータ、ロボット操縦アクションでのレイドバトル、モンハンめいたVRMMORPG、中二病ロールプレイな対戦格闘ゲーム――コミュ障の主人公がさまざまな架空のVRゲームをプレイしていく趣向で、いわばビュッフェ形式でいろんな料理の美味しい部分だけを摘み食いするような作品となっています。主人公に少しずつ友人ができていくのも楽しいところで、ゲームに興じる若者を描いた青春小説としても高く評価できます。

8. こわれたせかいの むこうがわ

今年の電撃文庫の新人は粒揃いで、三巻でさらに化けた『声優ラジオのウラオモテ』や、完成度の高い『オーバーライト』も選びたいところなんですが、ここは爆発力で『こわれたせかいの むこうがわ』を推しましょう。人類が滅びたあとにたった一つ残った国家が舞台。ふと手に入れたラジオから流れてくる教育番組を聴いて「学問」を知った貧しい少女が、何があるかも分からない国外への脱出を目指すディストピア・サバイバル百合SFです。クライマックスがとにかく熱く胸に迫ります。
こわれたせかいのむこうがわ 〜少女たちのディストピア生存術〜 | 電撃文庫・電撃の新文芸公式サイト

9. やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい

限りなく優しい天才軍師の活躍を描いた戦記ファンタジー。豊富な知識に裏打ちされた独自性の高い異世界描写が面白く、また後世の歴史家が書いているというような体で「この出来事からこういうことわざが残っている」とか「今ではこう伝わっているが史実ではないと思われる」などといった「くすぐり」を入れてくるのも楽しい作品です。戦記ファンタジーでは『我が驍勇にふるえよ天地』や『天才王子の赤字国家再生術』などと並んで今が旬の作品ですね。

10. 探偵くんと鋭い山田さん

2010年代の学園ミステリの傑作『子ひつじは迷わない』の作者である玩具堂が再び挑む「日常の謎」。天才肌の姉と秀才タイプの妹と調整役の主人公の三人が、何かにつけて持ち込まれる相談に対して、あれこれと推理を巡らせていくお話です。いわゆるホームズとワトソンのような関係ではなく、得意分野の異なる三人で相談しあって真相を探っていくあたりが好きですね。もちろん三角関係ラブコメでもあり、かつて「お気に入りのぬいぐるみを取り合ってボロボロにした」という姉妹二人の修羅場にも期待したいところです。
探偵くんと鋭い山田さん | 特設ページ | MF文庫J オフィシャルウェブサイト

2020年ライトノベル10大ニュース

9年ぶりの新刊『涼宮ハルヒの直観』発売

sneakerbunko.jp

既に発表されていた2作品+書き下ろし1作品が収録された短編集で、長編『驚愕』の続きというわけではありませんでしたが、書き下ろしの『鶴屋さんの挑戦』は作者の趣味が100%反映された良い作品でした。

谷川流はミステリなら新作を書きやすいんですかね。谷川流に加えて乙一米澤穂信玩具堂・井上悠宇あたりのスニーカー文庫ミステリ組でアンソロジーとか作ってほしいですね。どうですかKADOKAWAさん!

『デアラ』『このすば』『魔法科』『フォーチュン』…人気シリーズ大量完結

今年は人気シリーズの完結が多かったですね。『フォーチュン・クエスト』なんて三十年越しの大団円ですよ。いやあレジェンドですね。

ということで、以下の記事でまとめております。
kazenotori.hatenablog.com

一方で「このライトノベルがすごい!」を見ると、『スパイ教室』『探偵はもう、死んでいる。』『カノジョの妹とキスをした。』など、今年は特に多くの新作がランキングに入っていて、世代交代の感がありましたね。

追記。そういえば今年は電撃文庫の雑誌である「電撃文庫MAGAZINE」も休刊してしまいました。ザスニもコバルトも亡き今、残るライトノベル誌は「ドラゴンマガジン」だけとなりました。

ラノベ系YouTuberに注目が集まる

やまさきりゅうさんやTERUさんなどのラノベ系YouTuberについて、新聞に取り上げられたり、出版社も宣伝を依頼したりと、その活動がさらに注目されるようになった気がします。

いわゆる「ラノベブロガー」を中心としたクラスタとはまったく範囲が重ならない別のコミュニティという感じで、個人的にこれまで見えなかった若い層が視覚化された感じがします。こうして読者も世代交代していくんですね。

あるいは、いまやVtuber業界を二分するにじさんじホロライブラノベの広報を依頼したり、若者に人気のTikTokを宣伝に使おうという流れもありますね。動画SNSを使ったマーケティングはますます盛んになっていくのでしょう。

『はめふら』と「悪役令嬢」の広がり

アニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』が注目されたことにより、いわゆる「悪役令嬢もの」というジャンルの認知が界隈の外にまで広がったのが、今年の大きな変化の一つかと思います。

というわけで「悪役令嬢もの」についてまとめた記事もあります。

kazenotori.hatenablog.com

しかし悪役令嬢もの、次のアニメ化は『はめふら』の2期しかまだ決まってないのかな。継続的なブームとしては難しいかもしれませんね。

「百合ラノベ」がトレンドに

今年のトレンドについてひとつ取り上げるなら「百合」でしょうか。もちろん、これまでも少なからぬ数の百合ラノベが出てきたわけですが、「トレンド」と認識されるまでには至らなかったと思います。

そもそもを言えば、2000年代に「萌え4コマ漫画」が流行し、それからオタク業界の中では「女の子だけの空間を描いた物語」が定着しているわけですよね。そうした作品のキャラクターを「百合」として受容することも普通に行われてきました。

しかし、その「萌え4コマ」をラノベが取り入れた際に、視点人物としての男性主人公を導入してしまったのです(生存・はがない・GJ部…)。これによりラノベの百合ブームは10年遅れたと言われています[誰に?]。

それが去年あたりからハヤカワが「百合SF」を大々的に打ち出し、そして今年は『安達としまむら』のアニメが放送、さらにハヤカワの百合SF『裏世界ピクニック』もアニメ化決定ということで、にわかに百合ラノベが盛り上がりを見せはじめました。

なろう系でも以前から「女性主人公」の作品群があり、それが女性向けに限らず男性にも読まれるユニセックスな受容がされたことで、「女の子だけのファンタジー」あるいはもっと明確に「百合を志向したファンタジー」が登場してきたという流れもあります(『私、能力は平均値でって言ったよね!』『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』『くまクマ熊ベアー』など)。

そうしたなかで、いま百合ラノベを引っ張っているのは、みかみてれんのガールズラブコメでしょう。
ln-news.com

またヒットメーカー・平坂読まで百合ラノベに参入してきたということで、来年以降のさらなる盛り上がりに期待したいところです。
ga.sbcr.jp

LINEノベル終了

novel-blog.line.me
昨年、鳴り物入りで始まったLINEノベルですが、早くもサービス終了ということになってしまいました。スタートダッシュを決められなかったこともさりながら、親会社が見切りをつけるのが早すぎた感もありましたね。ソフトバンクとの経営統合なんかも影響したのかもしれませんが。

知ってのとおり、「LINEノベル」は今回で三回目の挑戦だったんですが、三度目の正直とはならず。また2022年くらいに再々々挑戦してほしいですね。

ゲームアプリ『ファンタジア・リビルド』リリース

project-frb.jp

ゲーム内容はまあぶっちゃけ「FGOのシステムでスーパー富士見大戦」なんですが、富士見ファンタジア文庫の人気キャラクターが勢揃いするということで、ラノベ読みにはたまらないゲームとなっております。いずれ、まだアニメ化されていない新作や、他レーベルの人気作品の参戦も期待したいですね。

ところで、スパロボとかをやっていてもしみじみ感じるんですが、「好きなキャラを動かす」という魅力は七難を隠すと思うんですよね。どんなにゲームシステムがマンネリでも好きなキャラがいれば苦にならない。好きなキャラを獲得するためなら課金もしたくなります。でもガチャが渋すぎると「好きなキャラを手に入れるために課金する」が「課金しても好きなキャラが手に入らない」となってしまい、むしろゲームを進める気がなくなってしまうと思うんですよ。ええ。運営さん。わかってますね?

あとほぼ同時に電撃文庫がプロデュースしたゲームもリリースされたんですけど、こちらはシナリオ担当がラノベ作家のおかゆまさきなのと、電撃文庫のアニメの主題歌が収録されたリズムゲームというくらいで、特に人気作品のキャラが出てくるとかでもないみたいですね。ファンリビに話題が掻き消された感が。
onegai-ss.com

鬼滅の刃』ノベライズが大ヒット

prtimes.jp

去年から引き続き日本を席巻している『鬼滅の刃』ブームですが、ラノベ業界でもそのノベライズが爆売れして存在感を示しています。オリコンの年間ランキングでもダントツの1位でした。

昔からノベライズは堅い売上が見込めるものでしたが、特に近年はJUMP j BOOKSが好調で、ジャンプ作品のノベライズを戦略的に売り出してきている印象がありますね。
realsound.jp

『シャングリラ・フロンティア』コミカライズがスタート

mantan-web.jp

こちらもメディアミックスの話題ですね。小説家になろうに投稿されている『シャンフロ』が書籍化をすっ飛ばして週刊少年マガジンでコミカライズ。1巻は10万部以上のスマッシュヒットということでマガジン連載陣の中でもかなり期待されている印象です。

ラノベのコミカライズの増加についてはここ五年くらいずっと言われてる気がしますね。ラノベの原作よりもコミカライズのほうが売れる、というのも昔からの傾向だと思いますが、近年は漫画アプリの普及もあり、紙なら連載枠の上限があるところを、それに制限されない大量連載が可能になったことで、コミカライズの強さがあらためて強調されている感じがします。

薬屋のひとりごと』など漫画版から人気に火が付いた作品が増えていますし、先述のとおりノベライズが好調だという話もありますから、ラノベとマンガのより密接なメディアミックスがますます重視されていくのでしょうね。

「ところざわサクラタウン」オープン

tokorozawa-sakuratown.jp

KADOKAWAの本社機能だけでなく、レストランやミュージアム、ホテル、神社まで備えた複合商業施設ということで、オープン時にはさまざまなレポートが公開されて盛り上がっていました。

KADOKAWAといえばもちろん押しも押されもせぬラノベ業界最大手であり、自社のラノベがすべて所蔵されている「マンガ・ラノベ図書館」は「日本で一番ラノベが読める図書館」と豪語しているということです。ハルヒの新刊発売時にもそれに合わせてさまざまなデコレーションをしていたみたいですね。

KADOKAWAが本社を所沢に移転するというニュースが流れたときには罰ゲームかのように騒がれたものですが、折からのコロナ禍で「リモートワークの推進」や「本社機能の地方移転」が話題となる中でのオープンとなり、図らずも時流に乗ったようにも思えます。

まあそんなこと抜きに「オタク向け観光スポット」として見てもかなり力が入っているようです。いちど行ってみたいですねえ。


というわけで2020年のラノベ業界はいろんな意味で転換期を迎えた印象ですかね。新旧の世代交代。なろうブームの爛熟。コロナ禍によるダメージと、それに伴う販売戦略の見直し。それらの変化が良い方向に働くことを願っております。

去年までの年間ニュースはこちらからどうぞ。
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