http://d.hatena.ne.jp/mizunotori/20060815/1155586679#c1155740532
深海 『はじめまして。
いきなりなんですが、「溜息」の魅力について教えてください。
一応全て読んだのですが、読む前にネットでの意見を鵜呑みしてしまって・・・。』
これから回答を書きますが、まず最初に断っておくことが3つあります。
- たぶん私の好みは特殊です。他の方の参考にはならないかもしれません。
- いま手元に『溜息』がありません。誤りがあれば指摘してください。
- 超ネタバレしまくりです。まだ読んでない人はいますぐ買ってきて読みましょう。
さて、『涼宮ハルヒの溜息』といえば涼宮ハルヒシリーズの第二巻であり、SOS団が文化祭に出品するための映画撮影をするという話であり、そしてシリーズ中でもっとも人気のない巻*1のひとつでもあります。
なぜ人気がないのでしょう。すぐに思いつくところでは、「映画撮影をする」というだけの単調なストーリーや、一般人にエアガンをぶっ放すハルヒのDQNさなどが挙げられます。そう、たしかに全体を見れば単調かもしれません。ハルヒはDQNかもしれません。しかし、部分を抜き出せば決して悪くない…どころか、他の巻にはない魅力に溢れていることがわかるはずです。
たとえば、ハルヒと喧嘩したあとにキョンがハルヒに謝りにいく場面。キョンが部室に入った瞬間、髪を括っていたらしいハルヒがぱっと髪をほどく、というシーンがあります。これはキョンがポニーテール好きであることが伏線となっていて、つまりキョンと仲直りしたいハルヒが自分の髪をポニーテールにしていたわけです。ハルヒが最も可愛い瞬間です。こういうさりげない描写は谷川流の得意とするところですね。
しかし、『溜息』の魅力はハルヒのポニーテールにあるのではありません。
注目すべきは、ハルヒがポニテをしたその原因の方です。
映画撮影の途中、ハルヒはみくるに無理難題を言い出します。それは嫉妬のあらわれだったのかもしれません。ついにはみくるをポカポカと殴りはじめたハルヒを、キョンはきつい口調で咎めます。それでも自らの非を認めようとしないハルヒ。そんなハルヒを殴りそうになるキョン。二人はお互い一歩も引かない大喧嘩をやらかします。…太字で叫びましょう。
私はこういう口論が大好きなんですよ!!
もし、ここでキョンがハルヒを優しく諭したり、ハルヒがみくるに謝罪したりしたら興冷めです。一方的にハルヒをやりこめるキョンなんて見たくもありません。感情と感情が対立し、本音と本音が衝突する、そういったマジな口論こそがキャラの魅力を引き出すのです。
他の巻を見てください。ハルヒとキョンがここまでの喧嘩をしたことがあるでしょうか。『溜息』以降はハルヒのDQNさは消えていきますし、もしハルヒが無茶を言ってもキョンが妥協して終わりでしょう。『溜息』では二人の激しい口論が読める。この一点があるだけで『溜息』は『消失』に並ぶ傑作となっているのです。
…これで回答になっているでしょうか。
関連:なぜ『涼宮ハルヒの消失』は傑作なのか - WINDBIRD
おまけですが、私と同じ嗜好の方には以下のライトノベルがおすすめです。
ソラにウサギがのぼるころ〈2〉ash and diamond (MF文庫J)
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