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2016年ライトノベル個人的ベスト10

1. この恋と、その未来。

六巻で完結。この作品に関しては、もう本当に「ありがとう」を何度でも言いたい(→ ライトノベル『この恋と、その未来。』の打ち切りについて - WINDBIRD)。叶わぬ恋、望まぬ体、どうしようもなかった苦悩を、しかし年月をかけてなんとか消化して、新しいパートナーとともに未来に向かって歩いていく。読み終わったあとに人生に思いを馳せてしまうような。もちろんエンターテインメントとしても素晴らしい。やはりこれは完結すべき作品でした。本当にありがとうございました。

2. 「青春ブタ野郎」シリーズ

引きこもりの妹との絆を描いた「おるすばん妹」。現在の恋人と難病の少女とのあいだで残酷な選択を迫られる「ゆめみる少女」「ハツコイ少女」。いずれも神がかった出来栄えでした。『この恋』の主人公は年相応の少年ですけど、『青春ブタ野郎』の主人公はちょっと老成ぎみのナイスガイなので、だからこそ飄々としている彼が死に物狂いに行動するところに心が揺さぶられるんですよね。『この恋』とともに、2016年のみならず2010年代を代表する青春ラノベとして並び称されていくでしょう。

3. 七日の喰い神

四巻で完結。カミツキレイニーという作家の覚醒を目の当たりにした気持ちです。人を喰う付喪神「マガツカミ」を、元・祈祷師の男とマガツカミの少女のコンビが退治していく、一種の退魔ものなんですが、架空の日米大戦の直後という時代設定で、今なお戦争の記憶に囚われた怪人たちが策謀を巡らせる伝奇的な魅力もある。そしてなによりヒロインのラティメリアちゃんが可愛すぎるんですよね。「んまぁい!」。

4. SとSの不埒な同盟

二巻で完結。読んだのは今年なので。サディスティックな嗜好を持つ男女二人が、清純な異性に取り入っては騙して虐めて自らの欲望を満たすという、馬鹿馬鹿しくも耽美で背徳的な青春ラブコメ野村美月作品というと「清純なヒロイン」と「変人なライバル」のイメージで、自分は常々「俺は良い子ちゃんなんかに興味はねえ、もっと変態を出してくれ!」と訴え続けていたのですが、その望みがようやく叶いました。個人的には野村美月の最高傑作だと思っています。

5. ヒマワリ:unUtopial World

ヒマワリ:unUtopial World3 (角川スニーカー文庫)

ヒマワリ:unUtopial World3 (角川スニーカー文庫)

ハッタリとケレン味に溢れたいつもの林トモアキのノリながら、その最大の特徴はなんと言っても「主人公が眼鏡っ娘」であること。ズボラで引きこもりで最高にバイオレンスな眼鏡っ娘ですよ。素晴らしいですね。個人的に眼鏡っ子ラノベ・オブ・ザ・イヤーの称号を与えましょう。最新の第三巻でひとまず大きな謎が明かされ、次巻から新展開だそうなので、いまのうちに追いついておくことをオススメします。

6. 絶対ナル孤独者

いまさら紹介するのもはばかられる現代最高の売れっ子作家のひとり川原礫……の『SAO』でも『AW』でもない第三のシリーズ。過去の事件から心を閉ざした主人公。トラウマから生み出される異能力。闇夜に蠢く秘密組織。そして日常との別れ。これですよ。これこそが異能バトルですよ。徐々に明らかになる敵組織も(意外に所帯じみていて)魅力的。一年一冊ののんびりペースでの刊行ですが早く続きを読みたいですね。

7. 剣と炎のディアスフェルド

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

大帝国に侵攻されつつある小国の二人の王子を主役としたエピック・ファンタジー。兄王子は和平の代償として帝国に赴きその各地を漫遊し、弟王子は即位して帝国との対決を決意する。刃を通さぬ身体を持つ男、兄弟を殺すたびに強くなる一族、長い髪に神秘的な力を蓄えるアマゾネス……まさにジークフリートヘラクレスかといった英雄叙事詩を、すっかりベテランの貫禄を身に着けた佐藤ケイが確かな実力で描き出しています。

8. さよなら、サイキック

祝・清野静復活。かの名作『時載りリンネ!』から幾年、ついに刊行された新作です。ひねくれた性格の、しかし熱い心を持った少年。彼のガールフレンドである天真爛漫な魔女。そこに現れる謎めいた美しき発火能力者。児童文学風の『リンネ!』とモダンな異能バトルを独自の感性で組み合わせたような、素敵な青春ストーリーに仕上がっていました。この年末に発売の第二巻をまだ読んでいないので期待も込みではありますが、絶対的に面白いことは間違いありません。

9. 弱キャラ友崎くん

ゲームオタクの主人公が、学校一のリア充の指導のもとでリア充のハウツーを学んでいく青春ラブコメです。とはいえ脱オタするわけではなく、むしろ「人生」をゲームとして攻略していこうという、極まったゲーマーたちの物語なんですね。二巻では「リア充を描いたラブコメ」としての側面がより強まり、もはや同レーベルの看板作品『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』のアンチテーゼといっても過言ではなくなりつつあります。これからどう展開していくのか楽しみですね。

10. きみの分解パラドックス

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

きみの分解パラドックス (富士見L文庫)

これは入れるかどうか迷ったんですが……何というか「面白い」よりも「好き」という作品ですね。何でも「分解」してしまうサイコパス気味な少女と、その彼女の幼馴染をやっている少年が、謎の連続殺人事件に巻き込まれていくという、つまりは壊れた少年少女たちによる青春ミステリなのです。他人の苦しみがわからない、嘘をつくのに良心が痛まない、倫理的なブレーキが効かない……まあ、そういうの大好きですよね。


今回は迷いに迷ったあげく、去年のベストに挙げた作品を泣く泣く除外したのですが、このあたりはもう同率同順位みたいなものですから、どれもこれもオススメなんですよ。というわけで選定にあたってリストアップした作品を載せておきますね。

東京侵域:クローズドエデン」(岩井恭平
いでおろーぐ!」(椎田十三
グリモアコートの乙女たち」(雨木シュウスケ
「路地裏バトルプリンセス」(空上タツタ)
「ストライクフォール」(長谷敏司
メロディ・リリック・アイドル・マジック」(石川博品
「リーングラードの学び舎より」(いえこけい)
「漂流王国」(玩具堂
最果てのパラディン」(柳野かなた
「雨の日も神様と相撲を」(城平京
「堕落の王」(槻影)
アウトロー×レイヴン」(長月渋一)
「夜明けのヴィラン」(地本草子)
「不戦無敵の影殺師」(森田季節
「0.2ルクスの魔法の下で」(嶋志摩)
「偽る神のスナイパー」(水野昴)
りゅうおうのおしごと!」(白鳥士郎
エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~」(東龍乃助)
「我が驍勇にふるえよ天地 ~アレクシス帝国興隆記~」(あわむら赤光