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嗚呼、華麗なる富士見ミステリー作家たち

かつて「富士見ミステリー文庫」という伝説的なライトノベルレーベルがあった。
詳しくは以下の記事を読んでほしい。


さよなら富士見ミステリー文庫 ―好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!


富士見ミステリー文庫追悼の辞・レーベル編 - SSMGの人の日記
富士見ミステリー文庫追悼の辞・作品編 - SSMGの人の日記


さて先日、『機巧少女は傷つかない』のアニメ化が発表された。


この作品自体はMF文庫Jから刊行されているものの、作者の海冬レイジ富士見ミステリー文庫の新人賞の出身。


そう、富士ミス大賞受賞者の作品のアニメ化は、史上初の快挙である。


考えてみれば、近年は富士ミスに縁のある作家たちの活躍が目立つ。
そこで、主だった「富士ミス作家」たちの現在を簡単に紹介してみたい。

海冬レイジ

第4回富士見ヤングミステリー大賞の大賞受賞者。田代裕彦壱乗寺かるたと共に生え抜きとして富士ミスを支えたが、富士ミスの終焉と前後して富士見ファンタジア文庫MF文庫Jへ活躍の場を移す。しかし、その新天地にて刊行した『機巧少女は傷つかない』がヒット、ついにアニメ化を射止めた。また、最近では『も女会の不適切な日常』という濃厚な富士ミス臭を醸し出す怪作を送り出している。

機巧少女は傷つかない10 Facing

機巧少女は傷つかない10 Facing "Target Gold" (MF文庫J)

も女会の不適切な日常3 (ファミ通文庫)

も女会の不適切な日常3 (ファミ通文庫)

深見真

記念すべき第一回富士見ヤングミステリー大賞の大賞受賞者。デビュー作『ブロークン・フィスト』がバカミスの代名詞となったのも今は昔、いまや実力派作家としての地位をすっかり確立している。銃器と腹筋をこよなく愛し、ダークかつハードな青春を描くのを得意とする。現在は虚淵玄と共にアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』の脚本を務めており、今後もマルチな活躍が期待される。

小説 PSYCHO-PASS サイコパス (上)

小説 PSYCHO-PASS サイコパス (上)

師走トオル

第2回富士見ヤングミステリー大賞から『タクティカル・ジャッジメント』でデビュー。富士見ファンタジア文庫に移ってからの『火の国、風の国物語』は素晴らしい戦記ファンタジーであるので是非とも読んでいただきたい。また、電撃文庫から刊行中の『僕と彼女のゲーム戦争』がすこぶる好調。海冬レイジに続くのはこの男だろうか。

桜庭一樹

富士ミス大賞の出身ではないが、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』などで名を上げ、一般文芸に進出し、ついには直木賞まで受賞した。代表作『GOSICK』は富士ミスから刊行された中では初めての、そして唯一のアニメ化作品である。もっとも、アニメが放映されたとき、既に富士ミスは亡かったが…。

GOSICK  ―ゴシック― (角川文庫)

GOSICK ―ゴシック― (角川文庫)

(いずれも角川文庫から刊行された新装版)

あざの耕平

こちらも富士ミス大賞の出身ではないが、富士ミス創刊時からのメンバーである。ジャンキーな少年たちの異能バトルを描いた『Dクラッカーズ』はいまなお名作の呼び声高い。富士見ファンタジア文庫に移って執筆した『BLACK BLOOD BROTHERS』もヒットしアニメ化。さらに『東京レイヴンズ』もアニメ化が決定し、まさに押しも押されもせぬ人気作家といったところ。

Dクラッカーズ〈1〉接触‐touch (富士見ファンタジア文庫)

Dクラッカーズ〈1〉接触‐touch (富士見ファンタジア文庫)

(『Dクラッカーズ』は富士見ファンタジア文庫から刊行された新装版)

ヤマグチノボル

ヤマグチノボルと言えば、まもなくの完結を控える『ゼロの使い魔』が有名だが、富士ミス的にはもちろん『描きかけのラブレター』である。この青春恋愛小説の傑作を読まずしてL・O・V・E!富士ミスを語れようか。…とはいえ、いまとなっては入手しづらいのも事実。再刊されないですかねー。

鈴木大輔

富士ミスでは一冊しか出していないが、その一冊『空とタマ』が名作すぎて、個人的にいまだに「富士ミスの人」の印象が強い。『空とタマ』後、富士見ファンタジア文庫から出ていた『ご愁傷さま二ノ宮くん』がアニメ化。また『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』のアニメも記憶に新しい。

空とタマ―Autumn Sky,Spring Fly (富士見ミステリー文庫)

空とタマ―Autumn Sky,Spring Fly (富士見ミステリー文庫)

お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ8 (MF文庫J)

お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ8 (MF文庫J)




その他、葉山透田代裕彦瑞智士記壱乗寺かるた中村九郎上月雨音
あるいは上遠野浩平水城正太郎新井輝小林めぐみ野梨原花南、etc…


どこぞでは「数年で消えたレーベル」として富士ミスが挙げられていたが、富士ミスの8年と4ヶ月の歴史は「数年」程度ではないし、富士ミスの魂は決して「消え」去ってはいない。


レーベル出身作家の初アニメ化という節目を迎え、富士ミスの偉大さをいまいちど噛みしめたい。