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2023年ライトノベル個人的ベスト10

1. 『あなたの未来を許さない』

ひとことで言えば「クレイジー百合バトロワ」。未来人が現代で秘密裏に開催している「未来のない人間を集めて殺し合いをさせる」というTVショー。その参加者のひとり、学校ではイジメられているような鈍臭い陰キャ少女が、しかし心から愛する幼馴染のために「天性の殺戮者」として覚醒していく。トリッキーなように見えてものすごく直球のエンタメなんですよね。味方にしろ敵にしろ一癖も二癖もあるキャラクターたち。超能力が与えられた参加者を無能力の主人公が食い破っていく熱いバトル。そして少女たちの抱える巨大な感情。最高でした。

2.『ダンジョンシーカーズ』

いわゆる「現代ダンジョンもの」なんですが、この作品はボーイ・ミーツ・ガールを主軸にしているのが特徴です。というか、ものすごく「異能バトル」の読み味がする。日常に倦んでいた主人公が、ダンジョンという非日常にのめりこんで飛躍的に強くなっていき、一方で古くから異能を管理してきた名家の娘であるヒロインが、主人公と共に戦ううちに惹かれ合い、今度はヒロインを縛る名家との戦いになっていく。キリトとアスナもかくやというバカップル。もはや純度の高い青春ラブストーリーでしたね。

3. 『三傑のサッカーは世界を揺らす!』

サッカー素人の主人公が、自分に憑依した謎の「声」と協力することで、その天才的なパサーとしての能力を発揮していく…という、いわゆるヒカ碁フォーマットの「サッカーもの」。主人公の性格がクソ悪いのが最高で、サッカーは嫌々やってるくせに自信満々、周囲には横柄で協調性は皆無。でも「声」がすごく気のいいやつなのと、主人公の才能に惚れ込んだライバルキャラがめちゃくちゃ人格者なので、全体のバランスは取れてるんだよな。シンプルにスポーツものとしてすごく面白かったです。

4. 『異世界刀匠の魔剣製作ぐらし』

『キッチンやらない-O』の作者の新作。こだわりもクセも強い刀鍛冶の主人公が打った刀剣にまつわるさまざまなエピソードが描かれる。あまりの美しさに自分を斬りたくなってしまう妖剣。病弱な領主を思わず剣術に駆り立ててしまうほどの名刀。それらにさらに魔法が付与され、立派な拵えがつくことで、まさに「魔剣」というべき代物になり、またそれが数奇な運命を生み出していくわけです。主人公が序盤で結婚してラブラブ新婚生活を送ってたりするのも好きです。

5. 『魔王2099』

うおお復活! もう続きが出ることはないと思ってたけど復活! そしてアニメ化! おめでとう! ブランクが心配だったけど面白さもまったく変わらず。魔王や勇者のキャラが完璧に立ってて、ファンタジー設定もサイバーパンク設定もしっかりしてて、それでストーリーがジェットコースターのように推進していくんだから、そりゃ面白いに決まってるんだよなあ。

6. 『クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所』

電撃の新人さん。全種族を巻き込んだ大戦争が終わって「恋愛結婚」や「異種族間結婚」が流行するようになった街の結婚相談所を舞台にしたお仕事ファンタジー。もともと書籍化してる作家さんということもあるんですが、やはりエンタメとしての完成度の高さを感じますよね。明るくて可愛くて、実は身体能力的にもつよつよな主人公がストーリーを引っ張っていくんですが、それでも最初にきっちり失敗させておいたりするバランス感覚なんかは、すごく良かったですね。

7. 『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』

同じく電撃の新人ですが、先行してガガガ文庫でデビューして評判となっていた作家さん。超能力系恋愛もの、奇人変人演劇もの、連続殺人と館ものミステリ、タイムループSFと、いろんなジャンルが詰め込まれていて、エンタメとしてみればとっちらかっている。わけがわからないところもある。でも、そうした要素をひとつの想いが貫いている。読み終わったあとにしばらく頭から離れない、ふと考えてこんでしまうようなところは他の作品にない魅力でした。

8. 『オルクセン王国史

欲望のままに暴れるだけの種族だったオークが、一人の名君のもとで一つにまとまり、ドワーフコボルトなども取り込んだ多民族国家として、著しい発展を遂げたさまを描いた戦記ファンタジー。モチーフとなっているのは近代のドイツ帝国あたりか。社会制度や軍事体制がファンタジーならではの事情も絡めながら興味深く描写されます。「エルフによって虐殺されたダークエルフの生き残り」がオークの国へ亡命し、王のもとでエルフへの復讐を誓うという筋立てもふるっていますね。

9. 『かくて謀反の冬は去り』

古代から数十年くらいで急に現代文明レベルまで発展したような日本が舞台という独特な設定。『オルクセン王国史』と同様に架空史ものとして見ても面白かったですね。主人公は手足に障害のある王子で、非常に頭は回るがもちろん宮廷での立場は悪く、劣等感と自尊心をどちらも抱えながらなんとか生き延びようとしている。そんなときに父王が急死してしまい後継者争いが勃発する…という喜劇的にも悲劇的にも思えるような宮廷サスペンスとなっています。

10. 『死亡遊戯で飯を食う。』

正直、デスゲームものはちょっと苦手なんですけど、この作品はひと捻りがあって面白いですよね。まあ、デスゲームに何度も参加している「プロデスゲーマー」みたいな連中を描いた作品なので、デスゲームというより命懸けのエクストリームスポーツみたいな空気ですが。デスゲームを繰り返すなかでもちゃんと「物語」をやっているのもよい。本当に完成度の高い作品だと思います。