WINDBIRD::ライトノベルブログ

ライトノベルブログ

『LOOP8』発売直前! 芝村裕吏が書いた最近のラノベを読もうのコーナー!

かつて『ガンパレード・マーチ』というゲームがありました。伝説のゲームです。愛すべき個性的なキャラクターたち。簡素だが自由度の高さを感じさせる箱庭的なプレイフィール。膨大な世界設定を背負った謎めいたストーリー。私も非常に楽しませていただきました。

その『ガンパレード・マーチ』のゲームデザイナーである芝村裕吏氏が開発に参加したゲーム『LOOP8(ループエイト)』が2023年6月1日に発売されます。ガンパレのゲームシステムを踏襲したRPGということです。いえーい。買うぜ。というか買ったぜ。DL版を事前購入したぜ。
loop8.marv.jp

なんかインタビューとかも公開されたりして盛り上がっております。
news.denfaminicogamer.jp

しかし。

しかしですね。いにしえのオタクほど「芝村裕吏」という人物を信頼していない。悲しいかなそれも事実なんですよね。

というのもガンパレのあとに出された「ガンパレの後継作」の評判がことごとく悪かったんですよ。それも「ガンパレのファンほど不満を募らせる」ようなかたちで。待望の続編だと思ったら分割商法だったとか。ネット上の企画で生まれた設定を盛り込みすぎてガンパレしかやってないファンが置いてけぼりだったとか。なんか単純にゲームバランスが悪すぎるとか。そういう怒りがぜんぶ芝村氏に向かっていったわけですね。

まあインタビューなんかを読んでも、どうにも癖が強くてふてぶてしくて、いかにも人に嫌われそうな感じですもんね。芝村氏。

それに『新世紀エヴァンゲリオン2』も『絢爛舞踏祭』も『ガンパレード・オーケストラ』も今ではなかなかプレイできないんですよね。ゲームアーカイブスでも出ていないし。だから「あらためてプレイしてみたけど今ならギリギリ受け入れてやらんでもない」みたいな和解もできないんですよ。「ガンパレの続編」を期待して裏切られた、あのときの気持ちが冷凍保存されたまま来ている人も多いんじゃないかと思います。

ただ、あれからずいぶんと経ちました。芝村氏はブラウザゲーム刀剣乱舞』のシナリオを担当して大ヒットに導き、『マージナル・オペレーション』で小説家デビューも果たしてそちらも評判は上々。さまざまな作品を次々と世に送り出しています。

いまなら信じていいのか芝村? 『LOOP8』は買ってもいいのか?

というわけで「ラノベ作家・芝村裕吏」の近作である戦記ファンタジー2作品をオススメしたいと思います。『LOOP8』は現代ものなのになぜ戦記ファンタジーなのか、といえば単純に面白かったからですね。それだけです。これらを読んで最近の芝村氏がどういう作品を書いているのかを知れば『LOOP8』を買う程度の信頼は取り戻せるかもしれません。取り戻せないかもしれません。よろしくお願いします。

やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい

bookwalker.jp
主人公はエルフに育てられた人間で、お人好しでおっとりとしていて、他の人間からするとすごくズレた感覚を持っています。そんな彼が「軍師」としての才能を発揮していくというストーリー。

エルフや巨人が存在するファンタジー世界でありつつ、現実で言えば16世紀くらいの銃器が普及しつつある時代設定です。芝村氏のミリタリ趣味が発揮されており「妖精管制間接射撃」だとか怪しいワードが炸裂します。

あとは「歴史家が後世から振り返ったような語り口」を採用しているのも特徴ですね。芝村氏が関わったゲームだと『エンブレム・オブ・ガンダム』という作品のシナリオがこういう疑似史書調で書かれていてクッソ叩かれたそうですが(未プレイ)、本作についてはそれが上手く決まっていると思います。「このときの主人公の行動が後世のこういう言い回しの語源となった」みたいな与太話とか民明書房みたいで愉快ですね。

戦記ファンタジーとしての本格的な部分と、主人公が醸し出すちょっとトボけた空気がちょうどよく入り混じっていて、とても楽しく読める作品なんじゃないかと思います。

紅蓮戦記

bookwalker.jp
こちらの主人公は、いかにも才気走った感じの少年で、実際に戦術級の強さを誇る桁違いの天才魔導師でもあります。しかし、いくら主人公の部隊だけが連戦連勝でも、全体としては衆寡敵せず、彼の母国は滅亡の淵に立たされています。そして、そこから彼とその部下たちによる、クソ性格の悪いゲリラ戦が始まるのであった…というストーリーですね。

『大軍師』が受け身型でいつのまにか雪だるま式に話が大きくなっていく物語だとしたら、こちらは主人公が敵味方を巻き込みながら突き進んでいくわかりやすく痛快な物語になっています。敵側の視点が多く挿入されているのも特徴で、お約束のように主人公にやられていくのはちょっとコントっぽいというかコミカルな雰囲気があります。

やはり芝村氏のミリタリ趣味が活かされた細かな軍隊描写があり、魔法というものをどのように戦闘教義に組み込むかというのも読みどころとなっています。

そして例によって例のごとく、実は『やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい』と世界設定が繋がってるんですね。いやそんなガッツリじゃなくて最後にちょろっとリンクしている部分が明かされる程度ですけど。いきなりよくわからん設定がダダ漏れてくるようなことはないのでご安心ください。


というわけで『やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい』と『紅蓮戦記』、併せて読んで『LOOP8』も買っちゃいましょう!