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2009年ライトノベル個人的ベスト10

1. 『ぷりるん。〜特殊相対性幸福論序説〜』十文字青/一迅社文庫

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

ぷりるん。~特殊相対性幸福論序説~ (一迅社文庫)

勃起機能障害になった少年と、彼を取り巻く少女たちの物語。って、主人公がEDっていうのはインパクトあるから紹介に使うけど、あくまでそれは作品の一要素にすぎない。やはり、この作品の魅力は、十文字青らしいねちっこい心理描写だと思う。底なし沼のような無気力に陥った少年が、そこから這い上がるまでの軌跡。青春ですよ青春。
以前書いた紹介→愛と鬱と性の青春ライトノベル、十文字青『ぷりるん。』がすごい!

2. 『クロノ×セクス×コンプレックス壁井ユカコ/電撃文庫

「女装とか性転換とか多くね?」なんて言われたり言われなかったりした2009年の代表としてこの一冊。美少女とぶつかって身体が入れ替わり(性転換)、異世界の魔法学校に入学(ファンタジー)、「アンニュイな王子様」を演じて女子生徒たちを魅了(百合)、そしてタイムループに巻き込まれてしまう(SF)。人気のおかずを一皿にのっけましたみたいな感じで、もう読んでて楽しすぎる。もちろん、お風呂やトイレなどの、性転換ネタではお約束のイベントも完備。それでいて必要以上のいやらしさを排除しているのが素晴らしい。

3. 『戦闘城塞マスラヲ Vol.5 川村ヒデオの帰還』林トモアキ/角川スニーカー文庫

最高に明るく、楽しく、そして燃える傑作。勇者や魔人も参加する巨大な武闘大会「聖魔王杯」に、超ネガティブ超目付き悪い無職引きこもりが、パソコンウイルスの精霊と共に出場、度胸とハッタリだけで勝ち上がっていく、笑いあり涙ありの、バトル物というか、ギャグというか、ファンタジーというか、なんだかよく分からないシリーズ、の完結巻。作者自ら「何も考えずに風呂敷を広げた」みたいなことを宣言しているにも関わらず、奇跡のように素晴らしい終わり方をしてしまった。いったいどこまで計算していたのだろう…。

4. 『火の国、風の国物語8 孤影落日』師走トオル/富士見ファンタジア文庫

チートしまくり作中最強の主人公がばっさばっさと敵兵をなぎ倒す、爽快感抜群の人気ファンタジー。…だったはずが、この8巻でまさかの急展開。いやー、酷い。酷すぎる。面白くなってまいりました。ネタバレに触れざるを得ないので詳しい紹介はできないけど、7冊分溜めてのこの展開は激しく熱い。
ネタバレありだとこちら→『火の国、風の国物語』の真のヒロインはやはりパンドラ様だった件

5. 『ほうかごのロケッティア大樹連司/ガガガ文庫

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)

ほうかごのロケッティア (ガガガ文庫)

落ちこぼれの吹き溜まりとなった離島の学校で、元邪気眼・現奴隷少年と、元アイドル・現電波少女が、協力者を得てロケットを作る話。「学生が大きな物を作り上げる青春ストーリー」というこのジャンルでは、今年はもうひとつ『ピクシー・ワークス(南井大介/電撃文庫)』という良作があったけれど、なのにどうしてこちらを選んだかと言えば、『ロケッティア』は三角関係だったからだ*1。翠さんっていう、主人公の飼い主みたいな人がいるんだけど、もう素敵すぎるんだよ彼女が!
作品としては『ロケッティア』も『PW』も、どちらも同じくらい面白いので、読んでない人はどちらも読めばいいと思うよ!

6. 『アキカン! 9缶めっ』藍上陸/集英社スーパーダッシュ文庫

アニメ化もされたのにいまいち知名度が低いような気がするけど、原作の方はいまが盛り上がり最高潮。作者の頭はもう手遅れじゃないかと真剣に心配になるくらいの過激なギャグシーン。作者の心は既に凍りついているんじゃないかと思ってしまうほど容赦のないシリアス展開。この落差こそが藍上陸の真骨頂。いま最も続きが楽しみなシリーズのひとつ。

7. 『あまがみエメンタール瑞智士記/一迅社文庫

あまがみエメンタール (一迅社文庫 み 3-1)

あまがみエメンタール (一迅社文庫 み 3-1)

瑞智士記の百合に間違いはないということで。母親が恋しいあまりに親友に噛みついてしまう少女、親友に噛まれることに快感を覚える少女、そんな二人の物語。互いに依存しあう彼女たちが痛々しく、というか物理的に痛い。少なくとも「あまがみ」ではない。いや、そんな設定だけど、基本的には二人がまったりといちゃつく話ですよ。百合好きには是非とも読んでもらいたい良作。
…今年のうちに『あかね色シンフォニア』が買えなかったのが無念。

8. 『電波女と青春男2』入間人間/電撃文庫

電波女と青春男〈2〉 (電撃文庫)

電波女と青春男〈2〉 (電撃文庫)

青春を追い求める苦労性の少年と、社交スキル皆無の超絶美少女の交流を描いたシリーズ。の第二巻。この巻の主役は主人公の叔母・女々さん。新ジャンル・40歳ヒロイン。彼女の行動はあまりにエキセントリックで、なにもかもはぐらかされているようで、だからこそ全てが明らかになるラストで不思議な感動が生まれるのだ。…女々さんに騙されている気もするが。いま気づいたけど、これもロケットを打ち上げる話だなぁ。

9. 『紫色のクオリアうえお久光/電撃文庫

紫色のクオリア (電撃文庫)

紫色のクオリア (電撃文庫)

親友を救うために奮闘する少女を描いたSFライトノベル。むかし『ラスト・ビジョン』という作品があったけれど、『紫色のクオリア』を読んだときの感想はあれに近い。「どこまでいっちゃうんだこいつ」みたいな感覚。主人公は、時空間も物理法則も超越して、どこまでも拡散していく。そのスケールに圧倒されてしまう。個人的には、天才少女を手懐けて、世界を操る悪の首領みたいになってたときの主人公が大好き。

10. 『BLACK BLOOD BROTHERS 11 賢者転生』あざの耕平/富士見ファンタジア文庫

吸血鬼と人間の戦いを描いた人気シリーズ。見事な完結。もう読んでいる途中から、敵の《九龍の血族》のほうに完全に感情移入してしまって、むしろ《九龍の血族》を主役に書き直すべきじゃないか、とか思ってしまうくらいに、彼らの生き様は素敵だった。あとがきに書かれた後日談よりも、ミミコさんが《九龍の血族》の方に付いたifを読んでみたい。


過去記事:
2008年ライトノベル個人的ベスト10 - WINDBIRD
2007年ライトノベル個人的ベスト10 - WINDBIRD
2006年 お気に入りライトノベル10冊 - WINDBIRD

*1:ちなみに『PW』は百合だ。