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2022年ライトノベル個人的ベスト10

1. 『ヘンダーソン氏の福音を』

個人的に今年は「なろう系の評判いい作品をあらためて読んでみよう」キャンペーンを開催していまして、この作品もそのうちの一作でした。心躍る冒険を描くオーソドックスな異世界転生もので、分かりやすく売りになるような設定とかは無いんですが、とにかく基本的な部分のクオリティがめちゃくちゃ高いんですよ。一巻だけは昨年読んでいたんですが、そのときはあんまりピンと来なくて、そのあと2巻も読んでみるかと思ったら面白くて、続けて3巻も読んでみたら超絶バチクソ面白かった。というわけで、ちょっとスロースターターな作品なんですが、しかしそのウィークポイントを補って余りある面白さだと思います。
あと注意点として、各巻の最後に「ifルートを描いた短編」が載ってるんですが、それがifルートだとわかってないとだいぶ混乱する、というのがありますね。私は混乱しました。「なんか急に時間が飛んだぞ????」ってなる。もちろんちゃんと読んでみると超面白くて、どのifルートも「スピンオフとして連載してくれ〜」と思いまくる出来です。

2. 『第七魔王子ジルバギアスの魔王傾国記』

魔王に殺された勇者が、その魔王の息子に転生する、という設定だけで楽しくなりますよね。そこで主人公は、内側から魔王を倒すことを目指すのですが、周囲から疑われないために救うべき人類を殺してみせないといけなかったりする。ダークヒーローなんですよね。主人公の能力が「禁忌を犯すほど強くなる」というもので、それが「目的のために禁忌を犯さざるを得ない」という主人公の立場をそのまま表しているのが上手い。魔王や他の王子たちも、キャラとしてはすごく魅力的で感情移入してしまうんですけど、でも確かに人類とは決定的に相容れない部分もある。そのアンビバレントな面白さ。続きがとても楽しみです。

3. 『ブービージョッキー!!』

若くしてダービージョッキーとなった主人公がそこからスランプに陥ったところでお姉さんと出会って復活を目指す…という話。言ってしまえば『りゅうおうのおしごと!』の競馬版といった感じなんですが、それが本当に『りゅうおうのおしごと!』と同じくらい面白い。「サラブレッドが好きだ」というキラキラとした初期衝動が詰め込まれた、熱く、楽しく、輝かしい物語となっています。

4. 『Dジェネシス

こちらも「なろう系の評判いい作品をあらためて読んでみよう」キャンペーンで読んだ作品でした。現代にダンジョンが出現して、モンスターが現れたり、人類が特殊能力を身につけたりする、いわゆる「現代ダンジョンもの」としては随一のクオリティだと思います。科学知識や政治描写を駆使して「ダンジョンが現代社会に与える影響」を深く掘り下げていく。「そろそろ現代ダンジョンものを一つ読んでおきたい」という人に断然オススメですね。

5. 『ハイセルク戦記』

これもものすごい作品でしたね。一巻は「平兵士の青年が戦場でズタボロになりながら次第に覚醒して強くなっていく」という、面白いながらもかなり地味な話だったんですが、二巻では最強格の兵士となった主人公が、とある「戦況の激変」に巻き込まれて、勝利を望めぬ凄絶な防衛戦に身を投じていくことになるんですよ。地獄のマラソンのゴールがようやく見えてきたかと思ったら、いきなり目の前が崖になってノーロープでバンジージャンプを始めたみたいな衝撃ですよ。誰かに読ませて反応を見たいという点では今年ナンバーワンでした。

6. 『12ハロンのチクショー道』

またまた競馬もの。なんと競走馬に転生した男が主人公なんですが、本編はその「サタンマルッコ」と名付けられた規格外の競走馬を中心として、その周囲のさまざまな人たちの視点から語られる群像劇といったおもむきになっています。酸いも甘いも知っている長年の競馬ファンがディープに描き込みましたという感じの、『ブービージョッキー』とは好対照な作品だと思います。ぜひともセットで読んでほしいですね。

7. 『亡びの国の征服者』

昨年に引き続き、本当に素晴らしい完成度の高さでした。現代知識を上手く活かすタイプの作品で、若きリーダーとして社会を変革したり、戦争に赴いたりするところを描いているのですが、とにかく物語の幅が広いうえに、細かい部分まで作りが丁寧で、めちゃくちゃ面白いんですよ。転生もののマスターピースですよね。

8. 『8歳から始める魔法学』

主人公がいかにも学園ファンタジーの悪役的な「貴族のドラ息子」に転生する話なんですが、そこで単純に改心するというより「冷酷だがどこか一本筋の通った悪役キャラ」として育っていくんですよね。主人公のもともとの性格がちょっとドライだったりして。で、同級生に勇敢で正義感の強い、いかにも主人公的なキャラがいて、その二人がライバルとして張り合っていく。男と男の巨大感情ってやつですよ。学園青春ものとしても読める優れた作品でした。

9. 『エナメル』

生まれも育ちも頭脳も容姿も、あらゆるものに恵まれたヒロインが、しかし事故で下半身不随となり、その責任を負った主人公が彼女のワガママに応え続けるという、歪な関係を描いた青春ミステリ。殺人事件とかは起きないながらも、ちょっと嫌な気分になるような事件ばかりで、全体的に陰鬱な雰囲気があるんですけど、そういうベールを剥ぎ取ってみると、可愛いらしいくらいの恋愛小説だったりするんですよね。暗くて痛々しい青春ミステリ、大好きです。

10. 『転生したら皇帝でした』

こちらも転生ものですね。とにかく「政争」の部分に力を入れているのが特徴的な作品です。幼くして皇帝に即位した主人公が密かに実権を取り戻そうとする、というのが大まかな流れなんですが、大きな戦争よりも政治的な駆け引きのほうに重点が置かれていて、各国の歴史とか政治体制の説明にだいぶ紙幅が割かれていたりします。かなりスローペースで地味な作品なんですけど、歴史小説的な面白さもあってとても良かったです。