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韓国の「異世界転生もの」「悪役令嬢もの」の解説記事を翻訳して読んでみる

日本のコンテンツ業界を「なろう系」が席巻するにしたがって、中国や韓国のWeb小説事情も漏れ伝わってくるようになりました。それによれば、中国でも韓国でも、細かい差異はありつつ、似たような主人公最強もの、異世界転生もの、ゲーム転生もの、あるいは悪役令嬢ものが流行しているようです。ところが、それらについて互いにどう影響しているのか、というところが、なかなかはっきりしません。

異世界転生は二十年前から定着していますよ」みたいな韓国人のインタビューがあったり、「日本のWeb小説は時代遅れだよ」という中国の翻訳ブログがあったり、もちろん日本でもWeb小説を語るときに「中国や韓国の影響があった」なんて話は聞かないわけで、じゃあいったいどこが最初でどこから影響を受けているんだ、もしかすると収斂進化のようにWeb小説では似たジャンルが流行するというだけなのか……などと悩んでいた次第です。

日本のラノベ、ネット小説は時代遅れだと中国で言われるのはなぜか 中国オタク事情新年編【中国オタクのアニメ事情】 - アキバ総研

韓国でも「異世界転生」が流行している? 韓国ウェブ小説の衝撃(飯田 一史) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)

日本の悪役令嬢と韓国の悪女…ピッコマに悪女作品について聞いてみた | 教えて!悪役令嬢 Vol.3 - コミックナタリー

というわけで、韓国ナムウィキの異世界転生ものや悪役令嬢ものに関連する項目のうち、特に関係のありそうな部分をNAVER papagoを使いながら翻訳してみました。私は韓国語はまっっっっったくできないので誤訳も多いと思いますが予めご了承ください。

中国のほうは今回は無しです。大変なので。

「ちょっと待って、そもそも日本のWeb小説で異世界転生とか悪役令嬢が流行りはじめたのっていつごろなの?」という方は、以下の記事を読んでいただければ多少の参考になるのではないかと。

「エヴァSS」から「小説家になろう」までのWeb小説年表 - WINDBIRD::ライトノベルブログ

悪役令嬢は「小説家になろう」において如何にして生まれたか? - WINDBIRD::ライトノベルブログ

では見てみましょう。

フュージョンファンタジー

퓨전 판타지 - 나무위키

概要

フュージョンファンタジー(Fusion Fantasy)は、韓国のファンタジー小説の代表的なジャンルで、ファンタジーに異なるジャンルを融合(フュージョン)させるジャンルをいう。

基本的に「他のジャンルとのフュージョン」であるが、事実上、韓国における異世界ファンタジーものの通称となっている。フュージョンファンタジーが登場したごく初期である2000年代初めには、実際に武侠や他の様々なジャンルを混ぜて作った傾向が強かったが、時代が経つにつれて異世界ものが氾濫し、2000年代半ば以降、事実上「異世界もの」と同じ意味で使われるようになり、その後、レンタル店が没落してウェブ小説が幅を利かせる2010年代半ばになって、再び本来の意味である「多様なジャンルを融合させたジャンル」に戻った。

2000年代のレンタルブック店時代と2010年代以降のウェブ小説時代を通して人気ジャンルだが、2000年代のフュージョンファンタジーと2010年代以降のフュージョンファンタジーは名前だけは同じで、事実上、全く違うジャンルと言ってもいいほど内容や展開、クリシェに大きな差がある。

余談として、「フュージョンファンタジー」が登場したあと、従来の1990年代パソコン通信時代のファンタジー小説をそれと区別して「正統ファンタジー」という用語で呼び始めた。 したがって、この記事では2000年代と2010年代以降のフュージョンファンタジーを別々に区分して記述する。

개요

퓨전 판타지(Fusion Fantasy)는 한국 판타지 소설의 대표적인 장르로, 판타지 장르에 다른 장르를 혼합/퓨전한 장르를 일컫는다.

기본적으로 '다른 장르와의 퓨전'이라고는 하지만, 사실상 한국에서 이세계 판타지물를 통칭하는 단어이다. 퓨전 판타지의 등장 극초기인 2000년대 초반에는 정말로 무협이나 다른 여러가지 장르들을 혼합해서 만든 경향이 강했지만 시대가 지나면서 점점 이세계물이 범람하더니 2000년대 중반 이후에는 사실상 이세계물과 동일한 뜻으로 사용되었다가, 이후 대여점이 몰락하고 웹소설이 득세하는 2010년대 중반 쯤 가서야 다시 원래 뜻인 '다양한 장르들을 혼합한 장르'로 되돌아갔다.

2000년대 도서대여점 시절과 2010년대 이후 웹소설 시절을 관통하는 인기 장르지만, 2000년대의 퓨전 판타지와 2010년대 이후의 퓨전 판타지는 이름만 같지 사실상 완전히 다른 장르라고 봐도 무방할 정도로 내용 전개와 클리셰가 천지차이다.

여담으로 '퓨전 판타지'가 등장하면서 기존의 90년대 PC통신 시절 판타지 소설을 따로 묶어서 정통 판타지라는 용어로 부르기 시작했다. 따라서 본 문서에서는 2000년대와 2010년대 이후의 퓨전 판타지를 따로 구분해서 서술한다.

2000年代の韓国では、漫画や小説を貸し出すレンタルブック店が隆盛していたようです。

韓国においては,レンタルブック店の急増により,「マンガは買って読むもの」から「マンガは借りて読むもの」という意識が浸透し,年間コミックス販売部数の8割は貸本店が購入し,消費者が直接購入するコミックスは,人気上位10から15作品に限られ,部数は全販売部数の2割を占めるに過ぎず,コミックスの販売部数はピーク時の1割から2割に激減したといわれている。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/04011402/003.htm

Web小説の人気が出ると、出版社が書籍化して、読者はそれをレンタルブック店で借りる、というかたちで作品が広まっていたようです。しかし2010年代に入ると、レンタルブック店は衰退し、読者はWeb小説プラットフォーム上で直接的に課金をするようになった、という流れですね。

「正統ファンタジー」というのは、「フュージョンファンタジー」の対立概念で、転移・転生要素とかゲーム要素とか武侠要素とかが含まれない、オーソドックスな西洋ファンタジーを指しているようです。そうした作品は、1990年代のパソコン通信時代に人気があったので、こういう書き方になっているみたいですね。

2000年代のフュージョンファンタジー

フュージョンファンタジー」という単語自体は多様なジャンルをフュージョンするという意味だが、ごく初期にはファンタジー世界観に武侠小説世界観の要素が入る小説を通称する表現として使われた。 「ソードエンペラー」のように現代-近未来ないしはSF的世界観まで含まれる場合もあったが、ほとんどは読者層が慣れ親しんだ、定型化されたファンタジー武侠の2つの世界観を行き交う構造だった。 以後、フュージョンファンタジーが主流ジャンルとして定着した後に意味が拡張され、転生・次元移動・イゴケンなどをすべて含めた「異世界もの」を通称する表現として使われるようになる。 こうしたフュージョンファンタジーは『墨香』ファンタジー編が始まりと言えるが、厳密に言えば真の元祖は『サイケデリア』だ。

2000년대의 퓨전 판타지

퓨전 판타지라는 단어 자체는 다양한 장르를 퓨전한다는 뜻이지만 극 초기에는 판타지 세계관에 무협소설 세계관의 요소가 들어가는 소설을 통칭하는 표현으로 쓰였다. 소드 엠페러와 같이 현대-근미래 내지는 SF적 세계관까지 포함되는 경우도 있었지만 거의 대부분은 독자층이 익숙할 대로 익숙한, 정형화된 판타지와 무협 두 세계관을 오가는 구조였다. 이후 퓨전 판타지가 주류 장르로 자리잡은 뒤에 의미가 확장되어 환생물, 차원이동물, 이고깽 등을 모두 포함한 이세계물을 통칭하는 표현으로 쓰이게 된다. 이러한 퓨전 판타지는 《묵향》 판타지편이 시초라고 볼 수 있지만, 엄밀히 따지면 진정한 원조는 《사이케델리아》다.

「次元移動」は「異世界転移」のことです。

「イゴケン」というのは、2000年代の韓国で大流行した「イ(イセゲ・異世界)」「ゴ(ゴディン・高校生)」「ケン(ケンパン・乱暴する)」という各要素のことで、高校生が異世界に行って暴れまわるような、つまりは異世界転移・俺TUEEE作品を指すスラングらしいです。ちなみに「俺TUEEE的な最強主人公」のことはTRPG用語から「マンチキン」とも呼ばれているようです。

『サイケデリア』は1998年からパソコン通信上で連載され、2000年に発売された小説で、それ以前にも「フュージョンファンタジー」的な要素を備えた作品はいろいろあったものの、元祖としてはとりあえず『サイケデリア』の名前が挙がるようですね。

『墨香』は1999年に発売された小説で、ファンタジー異世界転移)と武侠を融合させた最初の作品として大ヒットし、後続の作品にめっちゃくちゃ影響を与えたらしいです。『墨香』のほうが発売が先なのに、『サイケデリア』がフュージョンファンタジーの元祖とされるのは、『墨香』の初期は純粋な武侠小説で、第二部「ダークレディ」編以降にファンタジー要素を導入したからのようです。ピッコマで漫画化されています。
墨香 DARK LADY|無料漫画(まんが)ならピッコマ|KUKIT LEE JaeHun JEON DongZo

ちなみに、これらの作品よりまえだと、日本でも発売された『ドラゴンラージャ』が韓国では人気でした。これは1997年にパソコン通信上で連載され、1998年に出版されて大ヒットした作品です。『ドラゴンラージャ』や、それに影響されて出版されたファンタジー作品が、先述した「正統ファンタジー」と呼ばれる作品群にあたるのだと思います。

移動方法による分類

転生もの

転生を介して(異世界に)移動するという話。元祖は『ストーリー・オブ・ファンタジー』(ファンタジー→現代)であり、転生ファンタジーの骨格を作り出した小説は『錬金術師』、そして転生ものの流行を生んだ作品は『アリン物語』だ。 転生しても記憶はほとんどそのまま維持され、前世の記憶を通じて赤ちゃんの時から武功を遂行したりして、天才的な実力を備えるようになる場合がよくある。 さらに胎児の時から運気調息をして経穴が100%開かれたりもする。 次元移動ものとともに2000年代のフュージョン·ファンタジーの二大鉱脈だった。

이동방법에 따른 분류

환생물

환생을 통해 이동을 한다는 이야기. 시초는 《스토리 오브 환타지》(판타지→현대)이며, 환생 판타지의 골격을 만들어낸 소설은 《연금술사》, 그리고 환생물 유행을 불러온 작품은 《아린 이야기》다. 환생을 해도 기억은 거의 그대로 유지되며, 전생의 기억을 통해 아기 때부터 무공을 수행하거나 해서 천재적인 실력을 갖추게 되는 경우가 자주 있다. 심지어는 태아때부터 운기조식을(...) 해서 혈이 100% 뚫리기도. 아래의 차원이동물과 함께 2000년대 퓨전 판타지의 양대산맥이었다.

武功だとか運気調息だとかは武侠ものの用語ですね。これで翻訳が合ってるのか怪しいですけど、まあつまり「転生して幼い頃から魔術の練習をして魔力量がアップ」みたいな話のようです。武侠ファンタジーだと「気功」と「マナ」が同一視されて、中国武術の修行がすなわち魔法の修行になる、みたいな展開になることが多いみたいですね。

さて、個人的に「なろう系」の独自性は「転移」より「転生」にあると思っているんですよ。つまり異世界に転移したり召喚されたりする話はそれこそ『ナルニア国物語』の頃から無数にあって、日本国内で言っても1980年代から1990年代にかけて流行していたけれど、「異世界に別人として生まれ変わる話」ってあんまり無かったじゃないですか。

「別世界」に「別人」として生まれ変わる物語はいつからあった? - Togetter

日本のWeb小説における「異世界転生」は、オリジナルキャラが原作キャラクターに憑依転生するような二次創作小説がベースにあって、そこから2000年代を通じて二次創作界隈で発展していったものだと思うんですが、それとは別に「2000年代に韓国で異世界転生ものが発展していた」というなら、それはかなり重要なポイントだと思うんですよね。

というわけでフュージョンファンタジーについてはいったん措いて、「転生もの」の項目を見てみましょう。

転生もの

환생물 - 나무위키

2000年代のレンタルブック店時代

2000年代の韓国ファンタジー小説における転生ものは、フュージョンファンタジーサブジャンルで、2000年代初めから半ばにかけて主流を占めていたジャンルの一つであった。

2000年代の韓国ファンタジー小説の転生ものと、日本のライトノベル異世界転生ものは、主人公が元々住んでいた世界で死んだ後、別の世界で転生(前世)し、新しい人生を送るという部分で共通点を見出すことができ、大きな枠組みから見ると同じジャンルだと言える。 しかし、細かい部分で言えば、韓国のレンタルブック店時代のファンタジー小説は、日本の異世界転生ものにおいてチート能力で表現されるような特別な理由はなく、主人公がチートであることを避ける場合がほとんどで、一般的な高校生が異世界に移る理由として「転生もの」にする場合は多くなく、ドラゴンものの下位ジャンルとしてドラゴンの体の中に人間の魂が入ったり、武侠世界観の強者が何かの理由で死んでファンタジー世界に転生する場合がもっと多かった。

2000년대 도서대여점 시대

2000년대 한국 판타지 소설에서 환생물은 퓨전 판타지의 하위 장르로써 2000년대 초중반에 주류의 자리를 차지했었던 장르 중 하나였다.

2000년대 한국 판타지 소설의 환생물과 일본 라이트 노벨의 이세계 전생물은 주인공이 원래 살던 세계에서 죽은 뒤 다른 세계에서 환생(전생)하여 새로운 인생을 살아간다는 부분에서 공통점을 찾을 수 있으며 큰 틀에서 본다면 같은 장르라고 할 수 있다. 하지만 세부적으로 들어간다면 한국의 2000년대 도서대여점 시절 판타지 소설은 일본의 이세계 전생물의 치트 능력으로 표현되는 별 이유 없이 주인공이 사기인 경우를 지양하는 경우가 대부분이라 일반 고등학생이 모종의 이유로 이계로 넘어가는 경우에 환생물을 사용하는 경우는 많지 않았고, 드래곤물의 하위 장르로써 드래곤의 몸 안에 인간의 영혼이 들어가거나 무협 세계관의 강자가 모종의 이유로 죽어 판타지 세계로 환생하는 경우가 더 많았다.

このあたりの訳が難しい。2000年代の韓国の転生ものでは、日本の作品のように転生の際に得るチート能力(いわゆる「転生チート」)がなかったので、もともと強い力を持っていない高校生を主人公として描くときにわざわざ「転生」という手段を選択することは少なかった、という話をしてるのかな。

韓国ファンタジー小説で転生ものの流行を本格的に呼んだ作品は『アリン物語』だ。 平凡な女子高生がファンタジー世界のドラゴンに生まれ変わるという内容の作品である『アリン物語』は当時爆発的な人気を呼び、以後『アリン物語』の人気に支えられ数多くの転生ものが量産されはじめた。 このように量産され始めた転生ものは、2000年代初め、韓国で『サイケデリア』と『墨香』を筆頭にしたフュージョンファンタジーの流行の影響を受け、次元異動もの(異世界転移もの)とともにフュージョンファンタジーの二大下位ジャンルとして全盛期を謳歌し、韓国ファンタジー小説の主流ジャンルに浮上することになる。

한국 판타지 소설에서 환생물 유행을 본격적으로 불러온 작품은 아린 이야기다. 평범한 여고생이 판타지 세계의 드래곤으로 환생한다는 내용의 작품인 아린 이야기는 당시에 폭발적인 인기를 끌었으며, 이후 아린 이야기의 인기에 힘입어 수많은 환생물이 양산되기 시작했다. 이렇게 양산되기 시작한 환생물은 2000년대 초반 한국에서 분 사이케델리아와 묵향을 필두로 한 퓨전 판타지 유행의 영향을 받아 차원이동물(이세계 전이물)과 함께 퓨전 판타지의 양대 하위 장르로 리즈 시절을 누리며 한국 판타지 소설의 주류 장르로 떠오르게 된다.

『アリン物語』は2000年に発売された作品で、そのあと「ドラゴンもの」というジャンルができるくらいドラゴン転生が流行ったらしいです。

もちろんドラゴンだけでなく、「異世界に別人として生まれ変わる」作品も多くあったようなので、これについては間違いなく韓国が先行していたことになります。

このように2000年代初めに全盛期を迎えた転生ものは量産化され、現在の日本で流行している異世界転生ものと似た問題点を露呈するようになり、結局は2000年代後半、『月光彫刻師』を筆頭としたゲームファンタジー小説がレンタル店を席巻し、韓国ファンタジー小説市場の主流として浮上すると、転生ものは上位ジャンルのフュージョンファンタジーと共に徐々に衰退しはじめ、主流の座から追い出されるようになった。

이렇게 2000년대 초반에 전성기를 맞았었던 환생물은 양산화되면서 현재 일본에서 유행하고 있는 이세계 전생물과 비슷한 문제점들을 노출하게 되었고 결국 2000년대 후반 달빛조각사를 필두로 한 게임 판타지 소설이 대여점을 석권하며 한국 판타지 소설 시장의 주류로 떠오르자 환생물은 상위 장르인 퓨전 판타지와 함께 서서히 몰락하기 시작하여 주류의 자리에서 밀려나게 된다.

『月光彫刻師』は2007年の作品、VRMMORPGで「彫刻師」というジョブになった主人公が活躍するという内容で大ヒットし、「ゲーム小説」の流行のきっかけとなった作品らしいです。ゲーム小説というのは、VRMMORPGに限らず、「ステータスウィンドウ」や「レベルアップ」といったゲームの要素を大きく取り入れた作品全般を指すようです。逆に言うと、それまでのフュージョンファンタジーはゲーム的要素が薄かったわけですね。

というわけで、2000年代末に衰退したらしい「フュージョンファンタジー」の解説に戻りましょう。

フュージョンファンタジー

퓨전 판타지 - 나무위키

2010年代以降のフュージョンファンタジー

2010年代のWeb小説時代にも、依然としてフュージョンファンタジーは人気のある現役ジャンルだが、過去にイゴケン・転生もの・次元移動ものが流行した2000年代のレンタルブック店時代のファンタジーとは、主人公が異世界に行くという点を除けば、完全に違うジャンルに変貌した。
(中略)
このような2010年代のフュージョンファンタジーパラダイム転換をもたらした先駆作は、2012年からジョアラで連載された『メモライズ』で、『メモライズ』は既存のフュージョンファンタジー世界観の大部分を廃棄し、「ステータス」や「チュートリアル」などのゲーム要素を取り入れながら全く新しい世界観を提示した。
(中略)
2010年代以降のフュージョンファンタジーは、異世界ものを通称する表現として使われた過去とは異なり、カテゴリがさらに拡張され、異世界ものでなくても異なるジャンルをフュージョンした作品であれば、フュージョンファンタジーに分類される場合が増えている。

2010년대 이후의 퓨전 판타지

2010년대 웹소설 시대에도 여전히 퓨전 판타지는 인기 있는 현역 장르지만, 과거 이고깽, 환생물, 차원이동물이 유행하던 2000년대 도서 대여점 시절 판타지와는 주인공이 이계로 간다는 점만 제외한다면 완전히 다른 장르로 변모했다.
(中略)
이러한 2010년대 퓨전 판타지의 패러다임 전환을 불러온 선구작은 2012년부터 조아라에서 연재됐던 MEMORIZE로, 메모라이즈는 기존의 이고깽, 현대인 천재론, 양판소/필수요소, 소드마스터, 서클 매직, 마나 등이 중심이 된 퓨전 판타지 세계관을 대부분 폐기하고 상태창과 튜토리얼 등 게임 요소를 도입하면서 완전히 새로운 세계관을 제시했다.
(中略)
2010년대 이후의 퓨전 판타지는 이세계물을 통칭하는 표현으로 쓰였던 과거와는 달리 범주가 더욱 확장되어 이세계물이 아니더라도 서로 다른 장르를 퓨전한 작품이라면 퓨전 판타지로 분류되는 경우가 늘어나고 있다.

2010年代に入って、レンタルブック店からWeb小説の時代になると、フュージョンファンタジーは衰退し、代わってゲーム小説や現代ファンタジーが流行して、さらにそれらのジャンルが細分化されていった、という流れのようです。

たとえば現代ファンタジーのジャンルでは、過去に戻った主人公がビジネスの世界でのし上がっていくという、日本で言えば『現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変』みたいな作品だったり、スポーツ選手が自分の人生をやりなおすという、日本で言えば『やり直してもサッカー小僧』のような作品だったりが人気を獲得していったようです。などと、日本の類似作品を例示してみましたが、もちろん日本ではほとんど流行していないジャンルなので、こうした分野では韓国のほうが先行していると言えるでしょう。

また、2012年ごろから流行りはじめたという「ハンターもの」「レイドもの」というジャンルは、現代に出現したダンジョンに対してパーティを組んで攻略に挑むというジャンルで、日本で言うところの「現代ダンジョンもの」に近いですが、こちらも日本から影響を受けたわけではなく、ゲーム小説や現代ファンタジーの流行を背景として生まれたようです。

しかし「韓国式異世界もの」と呼ばれるジャンルについては、これは日本の異世界ものと、『GANTZ』などのデスゲーム漫画とが融合したもので、「異世界に召喚された人間たちが殺し合う」ようなジャンルになっているらしいです。フュージョンファンタジーが衰退したので、代わりに日本で流行しはじめていた異世界ものをアレンジして輸入しようという試みがあり、そのなかでデスゲームと組み合わせた「韓国式異世界もの」が成功して広まった(その代表格が先述の『メモライズ』だとか)、という流れのようです。なろう系で「デスゲーム」と言えば『SAO』由来の「ログアウトできないVRゲーム」のことですが、韓国式異世界ものはさらに殺伐とした世界観のようですね。

こうして細分化されていったジャンルを組み合わせて融合したものが、2010年代における「フュージョンファンタジー」である、つまり「異世界もの全般」くらいにまで拡散した定義が、また一周して元の意味に戻ってきたのだ、ということのようです。

では最後に「悪役令嬢もの」について見てみましょう。

悪女憑依もの

악녀 빙의물 - 나무위키

概要

女性主人公が、小説の中の主人公のライバルである悪女に憑依する、女性向けの本憑依もの、ロマンスファンタジー

悪女を主人公にした悪女ものと、女性向けの本憑依もの/エキストラ憑依ものが合成されて作られ、その後、日本の悪役令嬢もの、2010年代後半の女性叙事に影響を受けて、悪女もの・悪女クリシェが注目されるようになり、本格的な活性化が始まった。

개요

여주가 소설 속 주인공의 대립항인 악녀로 빙의하는 여성향 책빙의물, 로맨스 판타지 장르.

악녀를 주인공으로 하는 악녀물과 여성향 책빙의물/엑스트라 빙의물이 결합되며 만들어졌으며, 이후 일본의 악역 영애물, 10년대 후반 여성서사에 영향을 받아 악녀물, 악녀 클리셰가 주목받으면서 본격적으로 활성화되기 시작하였다.

これ以降は、韓国のジャンルは「悪女憑依もの」、日本のジャンルは「悪役令嬢もの」と、それぞれ書き分けていきますので注意してください。

「本憑依もの」というのは「本の中の世界に入る」系のジャンルのことです。韓国のWeb小説では、男性向け作品と女性向け作品が厳格に分けられていて(フェミニズム的な対立の激化も影響しているらしい)、それぞれに流行もバラバラなのですが、本憑依に関しては、もとは女性向けのジャンルだったのが、2010年代後半に男性向けの人気作も登場するようになり、珍しく男女ともに人気のあるジャンルになっているようです。

「ロマンスファンタジー」は、単なる「異世界恋愛ファンタジー」にとどまらず、韓国における(ハイ/ロー問わず)ファンタジー要素を含む女性向けWeb小説全般を指す言葉になっているらしいです。

「エキストラ憑依もの」は、本に限らず「創作物の世界に入る」系のジャンル全般のことで、ここで言う「エキストラ」はどうもテレビドラマなどにおける「エキストラ=端役」のことのようですね。なろう風にいえば「モブ」「脇役」あたりでしょうか。

「女性叙事」というのは、韓国でのラディカル・フェミニズムの高まりに応じて流行した、「女性が主体的に活躍する物語」のことらしいです。どちらかというと漫画やテレビドラマにおける流行で、それがWeb小説の流行にも影響した、ということのようです。

歴史

それ以前の類似事例

過去の類似事例として、2007年にインターネット連載されていた『シルウェン皇女』がある。 初期のロマンスファンタジーである『シルウェン皇女』は、小説の中で性格が悪く暴れん坊の皇女であるシルウェンに憑依する話を描いている。 すなわち、本憑依ものと悪女憑依もののモチーフを同時に使用している。

ただし、この場合はロマンスファンタジーの界隈がまだ形成されつつあった時期のため、『シルウェン皇女』が提示した悪女+本憑依のモチーフは、2010年代の悪女憑依ものと、実質的な継承関係・関連性があるとは言い難い。このような悪女クリシェと本憑依クリシェがジャンル初期から使われていたことを示し、悪女クリシェのこうした一面をジャンル的な先例として後続作家たちに提示した、といった程度に考えられる。

역사

이전의 유사 사례

과거의 유사 사례로는 2007년 인터넷 연재되었던 《시르웬 황녀》가 있다. 초기 로맨스 판타지인 시르웬 황녀는 소설 속 개차반이자 망나니 황녀인 시르웬으로 빙의하는 이야기를 다룬다. 즉 책 빙의와 악녀 빙의 모티프를 동시에 사용하는 것.

다만 이 경우 로맨스 판타지라는 계(界)가 형성되는 시점이므로, 《시르웬 황녀》가 제시한 악녀+책빙의 모티프는 10년대에 제시될 장르인 악녀 빙의물과 실질적인 계승관계나 연관성이 있다고 하긴 어렵다. 따라서 이 경우는 악녀 클리셰와 책빙의물 클리셰가 장르 초기부터 사용되었으며, 이러한 악녀 클리셰의 양상을 후대의 작가들에게 장르적인 선례로 제시한 정도로 볼 수 있다.

二つめの段落が難しくて訳に自信がない。

2010年代初頭

韓国の悪女憑依ものの原型は、2011年にジョアラに連載され正式出版されたユ・ハンリョの『ラシタ!』とされる。 『ラシタ!』は、自分が書いた荒唐無稽な小説『ラシタ』の悪女ドルビーチェに憑依する話で、その後、同作者の小説『インソの法則』とともに、女性向け本憑依ものの本格的な流行を引き起こしたとされる。

一方、それから7カ月後の2011年11月に連載を開始した『捨てられた皇妃』には、現在の悪女憑依ものの通俗的クリシェが登場する。

10년대 초

한국의 악녀빙의물의 원형은 2011년 조아라에 연재되어 정식 출판된 유한려의 《라시타!》로 여겨진다. 라시타!는 자신이 썼던 막장소설 '라시타'의 악녀 돌비체로 빙의하는 이야기를 다루며, 이후 동 작가의 소설 《인소의 법칙》과 함께 여성향 책빙의물의 본격적인 유행을 이끌어내기도 한다.

한편 그로부터 7개월 뒤인 2011년 11월 연재를 시작한《버림받은 황비》는 악녀물 장르로서 현재 악녀 빙의물의 통속적인 클리셰를 이르게 선보인다.

『ラシタ』で発音あってるのかな。『インソの法則』は現代を舞台にした作品ですが、どちらかというと「女性向け本憑依ものの本格的な流行」の起点になったのは『ラシタ』よりも『インソ』の方らしいですね。『インソの法則』の投稿開は2013年7月ごろ。ピッコマで漫画化されています。
ネット小説の法則|無料漫画(まんが)ならピッコマ|A Hyeon Yu Han-ryeo

『捨てられた皇妃』もピッコマで漫画化されていて、あらすじを読むかぎり、悪女憑依というよりは、婚約破棄+時間遡行という感じでしょうか。
捨てられた皇妃|無料漫画(まんが)ならピッコマ|iNA Yuna

2010年代後半:本格的な活性化

以後、悪女憑依ものが本格的に創作されるのは、日本の悪役令嬢ものが翻訳された後、そして2010年代中盤〜後半の「女性叙事」に関心が高まってからだと思われる。

2010年初頭を過ぎ、ロマンスファンタジー市場が活性化する中、日本の『謙虚、堅実をモットーに生きております!』が2013年中頃に韓国に翻訳される。 これにより「悪役令嬢もの」が作家・読者に読まれるようになり、これに影響を受けて既存の類似クリシェである「悪女憑依もの」の創作が活性化し始める。 悪役令嬢ものや乙女ゲーム憑依もののクリシェと設定を多数輸入し、本憑依ものではなく乙女ゲームを舞台にした悪女憑依ものが生じたりもした。

一方、これによって悪女憑依ものが、悪役令嬢ものの影響を受けて生まれたジャンルだという認識が生まれたりもした。しかし上述のように悪女に憑依する女性向け憑依ものの試みは、その関連クリシェがそれ以前から存在したため、影響を受けて作られたとは言えない。 ただ、2015年以来、悪役令嬢ものの影響を受けたのは事実である。 詳細については、後述される「悪役令嬢ものとの関係」の段落を参考のこと。

10년대 중후반 : 본격적인 활성화

이후 악녀 빙의물이 본격적으로 창작되는 것은 일본 악역 영애물이 번역된 후, 그리고 10년대 중후반 여성 서사에 관심이 높아진 후 부터로 여겨진다.

10년도 초를 지나며 로맨스 판타지 시장이 활성화되는 가운데, 일본의 겸허, 견실을 모토로 살아가고 있습니다가 2013년 중순 한국에 번역되기 시작한다. 이로 인해 악역 영애물이 작가, 독자에게 읽혀지기 시작하였고, 이에 영향을 받아 기존 유사 클리셰인 악녀 빙의물 창작이 활성화되기 시작한다. 악역 영애물의 오토메 게임 빙의 클리셰와 설정을 다수 받아들여 책빙의물 혹은 엑스트라 빙의물이 아닌 오토메 게임 빙의물인 악녀 빙의물이 생겨나기도 한다.

한편 이로 인해 악녀 빙의물이 악역 영애물의 영향을 받아 생겨난 장르라는 인식이 생겨나기도 한다. 그러나 상술된 것 처럼 악녀에 빙의하는 여성향 책빙의물이란 시도, 관련 클리셰는 07년, 11년 초부터 존재하였으므로 영향을 받아 만들어졌다곤 할 수 없다. 다만 2015년 이래로 악역 영애물의 영향을 받은 것은 맞다. 자세한 사항은 후술될 악역 영애물과의 관계 문단 참고.

先ほどの『インソの法則』の投稿開始と、韓国で『謙虚』が翻訳・紹介されたのがほとんど同時期のようです。ということは「女性向け本憑依ものの流行」と「悪女憑依ものの活性化」は意外に時期が近いということになるのでしょうか。

悪役令嬢ものは悪女憑依ものの嚆矢?

一方、悪女憑依ものは、ジャンルが流行する過程で、日本の類似ジャンルである悪役令嬢ものから影響を受けることもあった。 本憑依もの、悪女憑依ものと非常に似た特徴を持つ悪役令嬢ものが、韓国に翻訳されて紹介される過程で、様々なクリシェの展開に影響を受けるようになったのだ。 一方、この過程が誤解され「悪役令嬢ものが悪女憑依ものの嚆矢である」という話も出てくるようになった。

原型・クリシェの時代的な交差

しかし、「悪役令嬢もの」は「悪女憑依もの」の嚆矢とは言い難い。 例えば、日本の悪役令嬢ものが輸入される前から、韓国の悪女憑依ものの原型とも言える『ラシタ!』があったとか、悪女憑依ものでなくても『捨てられた皇妃』のように悪女憑依ものの通俗的クリシェを用いた小説があった。 つまり、もともと悪女憑依もの・悪女ものが創作され、その後、悪役令嬢ものが輸入され、ジャンル的な交流が起こったのである。 また、『ラシタ!』は『謙虚、堅実をモットーに生きております!』より連載日が2年ほど早いので影響を受けたとは言えない。 さらに、本の中の悪女に憑依するインターネット連載小説『シルウェン皇女』は、2007年から連載され人気を博した。

原型ジャンルの悪女ものと収斂進化

また、悪役令嬢もの・悪女憑依ものは、すべて原型的な「悪女もの」(悪女クリシェ)から発達したジャンルだ。 悪役令嬢ものが作られたなろう系、悪女憑依ものが作られたロマンスファンタジーは、女性向けのロマンスを背景に悪女ものを使用してきており、このような悪女ものにそれぞれゲーム憑依もの・本憑依もののクリシェを加えて作られたジャンルが悪役令嬢もの・悪女憑依ものである。 つまり、土台と発達過程が非常に類似した収斂·進化である。 その後、15年以来、悪役令嬢ものが韓国に翻訳・輸入され、悪女憑依もののクリシェに影響を及ぼし、本来同じジャンルがさらに類似している。

つまり、悪女憑依ものと悪役令嬢ものは、類似した土台とジャンルから発達した収斂進化と言え、その後、悪役令嬢ものが輸入され、悪女憑依ものに影響を与えて、さらに類似した形になったと言える。

악역 영애물은 악녀 빙의물의 효시?

한편 악녀 빙의물은 장르 유행과정에서 일본의 유사 장르인 악역 영애물에게서 영향을 받기도 하였다. 책빙의물, 악녀 빙의물과 굉장히 비슷한 맥락을 지닌 악역 영애물이 한국에 번역되어 소개되는 과정에서 여러 클리셰나 전개에 영향을 받게 된 것. 한편 이 과정이 오인되어 악역 영애물이 악녀 빙의물의 효시라는 이야기가 나오기도 한다.

원형, 클리셰의 시대적인 교차

그러나 악역 영애물은 악녀 빙의물의 효시라 하기 어렵다. 예를 들어 일본의 악역 영애물이 수입되기 전부터 한국의 악녀빙의물의 원형이라 할 수 있을 '라시타!'가 있었다던지, 혹은 악녀빙의물은 아니더라도 버림받은 황비처럼 악녀 빙의물의 통속적인 클리셰를 드러냈던 소설이 있어왔다[10]. 즉 본래부터 악녀 빙의물, 악녀물이 창작되고 있었으며, 이후 악역 영애물이 수입되면서 장르적인 교류가 일어난 것이다. 또한 '라시타!'는 겸허, 견실을 모토로 살아가고 있습니다보다도 연재일이 2년 가량 빠른 모습을 보이므로 영향을 받았다고 할 수 없다. 나아가 책속의 악녀로 빙의하는 인터넷 연재 소설 '시르웬 황녀'는 07년도부터 연재되어 인기를 끌었기도 했다.

원형 장르인 악녀물과 수렴진화

또한 악역 영애물, 악녀 빙의물은 모두 원형적인 악녀물(악녀 클리셰)로부터 발달한 장르이다. 악역 영애물이 만들어진 나로우계, 악녀 빙의물이 만들어진 로맨스 판타지는 여성향 로맨스를 배경으로 악녀물을 사용해왔으며, 이러한 악녀물에 각기 게임빙의물, 책빙의물 클리셰를 덧붙이며 만들어진 장르가 악역 영애물, 악녀 빙의물이다. 즉 토대와 발달과정이 매우 유사한 수렴진화인 것이다. 그 이후 2015년 이래로 악역 영애물이 한국에 번역, 수입되면서 악녀 빙의물 클리셰에 영향을 끼치면서 본래도 흡사한 장르가 더욱 유사해진다.


즉 악녀빙의물과 악역 영애물은 유사한 토대와 장르에서 발달한 수렴 진화라 할 수 있으며, 그 이후에 악역 영애물이 수입되며 악녀 빙의물에 영향을 주어 더욱 흡사한 모양새가 되었다고 할 수 있다.

うーん、「ジャンルの起源」と「ジャンルの流行の起点」は往々にして異なるもので、「悪女憑依」ジャンルの起源は『シルウェン皇女』や『ラシタ』だけど、流行の起点は日本の悪役令嬢ものである、というような話に感じますね。

まとめ

韓国では、2000年代からWeb小説が積極的に書籍化され、そのなかで「異世界もの」のファンタジーが爆発的に流行したことから、日本に先行して「転移」「転生」のさまざまな類型が登場していた。それらの多くは日本の「異世界もの」でも見られるもので、どちらかと言えば収斂進化的なものが多いが、2010年代には日本の「異世界もの」から影響を受けたジャンルも現れるようになった。

みたいな感じのまとめになりますかね。

こうして調べていて痛感したのは「韓国の人たち、ちゃんとWeb小説の歴史を記録してるの偉い〜」ということですね。

日本の「異世界もの」は、2000年代のあいだは二次創作界隈やアマチュアの個人小説サイトの奥底に留まっていて、書籍化もほとんどされなかったので表に出てきていない、だから誰も歴史を記録していないし把握もしていないんですね。「韓国が日本から影響を受けたところ」は向こうが記録しているので分かるけど、「日本が韓国から影響を受けたところ」は分からないという一方通行的な関係。

日本のWeb小説の歴史について書かれた記事というと飯田一史さんの「Web小説書籍化クロニクル」がほとんど唯一ではないでしょうか。Web小説を取り巻く状況を外側からジャーナリスティックに追った記事で、コミュニティの内側から見た当時の雰囲気やジャンルの変遷などはわかりませんが、非常に読み応えがあるのでオススメです。

以上、韓国のWeb小説事情の紹介でした。

ライトノベルの読者年齢を考える

はじめに

ライトノベルの読者年齢について語られるとき、近年はしばしば「高齢化した」ということが指摘されます。

しかしその多くは「現在のラノベ読者年齢が高い」ことだけをもって「高齢化した」と言っており、10年前あるいは20年前のラノベ読者年齢と比較していることはほとんどありません。なにせ資料が少ないからです。

私は2000年代からラノベ関連のニュースを観測していますが、ラノベ読者年齢の推移を表すわかりやすいデータはほとんど無かったと思います。しかも、10年前ならもっと資料が残っていたと思うのですが、いまや2000年代の多くの記事は削除されており、ネット上では遡れなくなっています。

というわけで、現在でも残っている「ラノベの読者年齢」のデータを、いまのうちに整理しておこうというのがこの記事の主旨です。

あらかじめ言っておくと、この記事を読んでも「ライトノベルの読者年齢」はわかりません。そのものズバリのライトノベル全体の読者年齢ではなく、ものすごく条件が限定されたデータだったりするからです。少なくとも「間接的に窺い知るためのもの」くらいに思ってください。

2004年ごろの「電撃文庫の特定作品」の読者年齢

http://www1.tcue.ac.jp/home1/takamatsu/104221/15.html
これは広告の媒体資料ですね。「電撃文庫は中高生の男女が中心読者層です!」との宣言が眩しい。そして当時の電撃文庫で売れ筋だった三作品の読者年齢が書かれています。

2004年がどういう時期だったかを補足しておくと、ライトノベル市場が拡大を始めつつ、『ライトノベル完全読本』や『このライトノベルがすごい!』といったラノベ解説本が刊行され、一般に「ライトノベル」というものが知られはじめた、「ライトノベル」という呼称が広まりはじめた時期となります。ラノベアニメが急増する直前でもあり、アニメ経由でどっと入ってきた読者の影響がまだ無かった頃のデータであるとも言えます。

キノの旅 イリヤの空 灼眼のシャナ
小学生 6.0% 0% 0%
中学生 46.3% 16.0% 36.0%
高校生 27.7% 39.0% 42.0%
大学生 8.8% 23.0% 11.0%
社会人 4.0% 12.0% 7.0%
その他 6.8% 9.0% 7.0%

※「その他」は主婦・フリーター・無職などの合算

キノは現在でも中高生に人気の「図書館に入っているラノベ」の定番ですね。おそらくライトノベルのなかでは(今も昔も)かなり読者年齢が低めの作品だと思います。

イリヤも今になるまで売れ続けているロングセラーですが、映像化はOVAのみ*1ですし、この中ではマニアックな印象があります。ゆえに大学生以上から支持を受けているのは納得できますね。

シャナは、2004年時点ではまだテレビアニメ放送前ですが、この三作品のなかでは「ライトノベルの平均的な読者層」に最も近いような印象です。

そして、その「シャナ」でさえ大学生以上の割合を合計すると25%、「イリヤ」にいたっては大学生以上の割合が44%にもなるということは、当時から20代・30代のラノベ読者がそれなりにいたことを示しています。

2008年ごろの「電撃文庫MAGAZINE」の読者年齢

http://web.archive.org/web/20090306075502/http://asciimw.jp/info/ad/comic/bunko-info.pdf
2009年初頭に公開されていた広告媒体資料です。データ的には2008年ごろのものでしょうか。添付されている表紙は2008年7月号ですね。

電撃文庫MAGAZINE」というものを解説すると、これは電撃文庫の旗艦雑誌だったのですが、ライトノベルは書き下ろしが中心なので、雑誌に掲載されているものは人気作品の外伝や短編が中心となっていました。漫画雑誌みたいに「自レーベル作品のショーケース」として機能していたわけではなく、むしろ各作品のファンが購入するいわば「ファンアイテム」的なものでした。「ラノベ読者ならたいてい買っていた」とは言い難く、必然的に「ラノベ読者」全体の傾向からはズレがあったであろうという点に留意せねばなりません。

棒グラフの数値を目分量で読み取って整理すると、

中学生 23%
高校生 22%
大学生 23%
それ以上 28%

くらいになりますか。ピークは15歳ですが、意外にまんべんなく広がっている印象です。平均年齢は20.3歳とあります。

2008年といえばラノベ原作アニメもすっかり定着した頃で、新しい読者が大量に流入して、「ライトノベルの黄金期」はこの時期とされることが多いのではないでしょうか*2。となると、パーセンテージに対して、それが示す読者の実人数はかなり異なっていることが予測されます。というわけで、先ほどの2004年ごろのデータと、こちらの2008年ごろのデータを、パーセンテージだけ見て単純比較するには、やはり注意が必要と思われます。

2010年の出版月報に掲載されたライトノベルの読者年齢

2015年ごろのPOSデータに基づくライトノベルの読者年齢

とりあえず表にしておきます。

10代 10〜20%
20代 20〜35%
30代 20〜35%

2015年のBOOK☆WALKERの「ライトノベルの平均読者年齢」

https://bookwalkerstaff.tumblr.com/post/128323701752/

条件としては、
BOOK☆WALKERで10冊以上書籍を所持している。
・書籍のうち50%以上がライトノベルである。
・会員登録情報として常識的におかしいものは省く。
(データは2015年8月末時点、 対象者数:企業秘密デス…m(__)m)
といった条件で対象者を抽出して、平均年齢を算出してみました。

結果・・・

平均年齢:31.8歳!

BOOK☆WALKERは、KADOKAWA直営ということでラノベ読者の多い電子書籍プラットフォームであり、その点では参考にできるのですが、「電子書籍」自体がクレジットカードなどの決済手段を必要とするので、そもそも中高生の読者は少ないであろうというバイアスがかかっています。

逆に言うと、かなり高めに出るであろう数字でも30歳程度ということは、実際の平均年齢はもっと低いとは言えるのかもしれません。

2016年の「小説家になろう」の読者年齢

https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1011309.html

ユーザーは、男性55%、女性29%、未回答16%。年齢は、10代以下が18%、20代が48%、30代が21%、40代が9%。ただしこれらの情報はユーザーの登録情報をもとにしており、相当数が未入力なのと、登録せずに読んでいる人もいるので正確なところは分からない。

ライトノベルそのものの情報ではないにしても「ライトノベル的な作品」の需要をおぼろげに察する材料にはなる?

2019年の「小説家になろう」の読者年齢

https://premium.kai-you.net/article/53

年齢層は20代が44パーセントで半分近く、10代が14パーセント、30代が24パーセントと、これでほぼ8割を占める計算になります。あとは40代が12パーセント、50代以上が6パーセントくらいでしょうか。

2016年と比較するとやや高齢化しているか?

考える

以下は個人の感想です。データだけ知りたい人は読まなくていいです。

まず「ライトノベルの読者は中高生」という前提を疑うべきです。これは「週刊少年ジャンプの読者は小学生」くらいの「建前」なのですが*3ラノベをよく知らない人がこれを信じてしまったため、「ラノベには20代30代の読者もいるよ」と聞いただけで「ラノベ読者って高齢化しているんだ」と思い込んでしまう現象がしばしば観測されます。2004年のデータからも分かるように、昔からライトノベルには20代以上の読者がそれなりにいました。

その上で、ライトノベル読者が高齢化しているのは事実だと思います。いまのラノベ業界が「中高生の男女が中心読者層です!」とはお世辞にも言えないでしょう。ただ「高齢化」というより「全年齢化」と言ったほうがしっくり来るんじゃないでしょうか。いわゆるオタク文化、漫画やアニメやゲームがいまどき「子供向けのもの」と言われないのと同じく、ラノベもまた全年齢に読まれるのが当然になっているわけです。

ただし、ライトノベルの読者年齢の話は「ライトノベル」自体の定義にも左右されます。たとえば、高価格なので読者年齢が高いとされるウェブ文芸の単行本や、想定読者年齢が20代以上だと言われるライト文芸、あるいは小学生向けの児童小説などを「ライトノベル」に含めるかどうかで、「ライトノベル」の読者年齢は如実に変わってくるのですね。

さらに、中学生のお小遣いは平均2500円、高校生のお小遣いは平均5000円らしいですが、いずれにせよそれだけでは月に何十冊も新刊を買い漁れるはずもないので、中高生のラノベ読者の行動は、学校図書館で読む、中古本を買う、親の持っている作品を読む、1つ2つの好きなシリーズだけを追いかける、などといった傾向になることは明らかです。これら中高生の読書行動は、書店のPOSデータなどからは窺いづらいはずで、このあたり実態としてどうなっているのかよくわかりません*4。近年であれば「小説家になろう」などでライトノベルとして書籍化されている作品が無料で読めるので、お金のない中高生がそちらに流れているということは考えられそうです。

ついでに、しばしば「大人向けラノベ」と称されるライト文芸ですが、中高生の「朝の読書」の人気ランキングを見ると「住野よる」や「有川浩」といったライト文芸の作品が上位を占めているわけで、このあたりもまた「想定イメージ」との乖離というか、やっぱり業界が「中高生向けに書きました」とか「大人狙いです」とか言ってるのは信用なんねえな、みたいに思ったりも。

というわけで結論としては「よくわからん」ということになるわけですが、少なくとも年季の入ったラノベ読みでも「ラノベ読者がどのくらい高齢化しているかどうかはよくわからん」のだ、ということだけ覚えてくれればOKです。以上です。

*1:2004年時点では未発売

*2:市場規模で見るとこの時期が最大というわけではないのですが

*3:そもそも「想定読者」と「実際の読者」は必ずしも一致するものではない

*4:学校での「朝の読書」調査などがひとつの判断材料になるでしょうか

「好きラノ 2021年上期」投票

声優ラジオのウラオモテ

いやめっちゃ良かったな。このシリーズは基本的に「声優の話」と「声優ラジオの話」が分裂してるんですよね。たとえばラジオでトークの経験を積んでも、リスナーが増えても、別に「声優」として演技が上手くなったりするわけじゃない。逆に、声優としての成長に焦点を合わせると、今度は「声優ラジオ」との関係が薄れてしまう。で、今回はその別々の話を力技で一つのパッケージに押し込んだ感じ。でもそれが正解だったと思う。前半がラジオリスナーのあいだで主役二人のガチ不仲説が囁かれて…という「声優ラジオ」の話。後半は、頼れる先輩がワーホリで鬱っぽくなっちゃって、そこから「声優」という職業の話になっていく。これがまたどっちもてぇてぇんすよね。

【21上ラノベ投票/9784049134995】

七つの魔剣が支配する

ゴッドフレイ先輩が最上級生になって、時の経つのは早いなあ、と思ったところで、三年生となった剣花団の面々の成長が、新入生たちの視点から描かれて、彼らが「かつてのゴッドフレイ先輩」のポジションに立っているんだなあと思わされる。今回はまるまる校内一武闘会、もとい「決闘リーグ」が描かれていて面白かったですね。大勢のキャラクターにそれぞれ見せ場を用意しつつ、複雑になりすぎずテンポ良く描かれている。やはりバトルものといえばトーナメント展開なんですね。

【21上ラノベ投票/9784049135305】

楽園ノイズ

やっぱり良いっすね。構成は一巻から変わらず。バンドメンバーの家庭問題とかを取り上げて、でもそれを明快に解決するわけではなく、うじうじぐだぐだと悩み続け、最後に超エモい演奏シーンで包み込んでなんとなく良い感じにオチをつける、みたいな感じ。いかにも杉井光だなあ、とほんわかしますね。今回はちゃんとラストに女装してくれて感謝感謝ですね。真琴くんは女装してなんぼなんですよ。それを真琴くん自身がわかってない。由々しきことです。あと、「さよならピアノソナタ」とのリンクもニヤニヤでしたね。ファンサービスが良い。

【21上ラノベ投票/9784049136814】

インフルエンス・インシデント

戦闘役の女子大生と探偵役の美人教授がインターネットにまつわる様々なトラブルを解決していく青春ミステリ。いわゆる「本格」というわけではないけど、素性当ての得意な探偵とか、事件の裏で糸を引く黒幕ポジの奴とか、ホームズ的なツボは押さえてるなという感想。作品内容としても、まあ「インターネットの正しい使い方」というような説教くさい話ではなく、なんかこうカーペットの裏から悪意が滲み出てくるような感じでグッと来ますね。主人公がやべえおねショタセクハラ女だったり、ネットストーカー被害を受けた男の娘配信者もわりとストーカー気質だったり、だいたい事件の解決方法が暴力&暴力だったりと、なんだか作風自体がちょっと露悪的でもある。銀賞受賞作らしくクセが強くて「これこれ、これだよ」と嬉しくなりました。期待どおりの面白さでしたね。

【21上ラノベ投票/9784049136852】

PAY DAY

ヒーローものベースの青春異能バトル。「日傘の魔女」という謎の存在によって怪物にさせられた四人の少年少女たち。自らの寿命を削ることで異能を使い、他人の寿命を奪ってまわる。それでも魔女の要求する寿命にはとても足りない。まさに借金漬けの自転車操業。そして目立ち過ぎれば最強の「ヒーロー」が飛んできて成敗される。進むも地獄、退くも地獄。仕方なく四人は一発逆転を期してヒーローに戦いを挑むのだが…というわけで、邪悪だけど熱血、暗黒だけど痛快、ヴィランを主役にしたアクションものとしても、クライムムービー的な青春友情ものとしても、非常に楽しい作品でしたね。

【21上ラノベ投票/9784046800770】

魔王2099

素晴らしかった。天変地異により科学世界と魔法世界が融合し、「魔導工学」の力で急激な発展を遂げた2099年の新宿において、実に五百年ぶりに復活した魔王。彼はメガコーポの社長となったかつての部下のもとに赴き、しかし最新の魔導工学の下に無様な敗北を喫する。……というわけで、魔法の発動を補助する電脳「ファミリア」、霊竄士(ハッカー)が跋扈する「エーテルネット」、パワードスーツとゴーレムが融合した「魔導鎧骨格」など、それらしいガジェットがわんさか登場する近未来SFファンタジー。「サイバーパンク世界に魔王が復活する」というアイディアもさりながら、それを裏打ちする技巧があり、そしてストーリーを一気に読ませる分かりやすさ、面白さがある。これは見事な新人が出てきたなという会心の受賞作だった。

【21上ラノベ投票/9784040739588】

亡びの国の征服者

相変わらずべらぼうに面白い。前半は天測航法を実現して交易が格段に広がる話。後半は隣国キルヒナ王国への援軍へ向かう展開。順調に成長してほぼ成人に近い年齢となり、人脈も商売も手広くなってきた感じ。世界観の厚みがずっしりと感じられる。戦争がひたひたと迫り来るまでの猶予期間、まさにモラトリアムといったところの平和を謳歌しているけど、この雰囲気が好きなので延々とこういう話をやっていてほしい気もするし、しかし決定的なターニングポイントを迎えるときが楽しみな気もする。とはいえ3巻まで終わっても、未だに国は亡びていないし、魔王になってもいないのである。

【21上ラノベ投票/9784865548495】

サイレント・ウィッチ

「七賢人」のひとりにして無詠唱魔法を操る「沈黙の魔女」が、王子様を密かに護衛するために学園に潜入する話。主人公が「魔法の天才」というより「数学の天才」として描かれているのが面白いところですね。「数学の天才が異世界に生まれたら魔法の天才として扱われる」というような感じ。また、主人公のキャラクターとしても、自己評価が低く、小動物のように震える鈍臭い少女といったところで、非常に可愛らしい。自然と、他の登場人物にはクールでサドっけの強いイケメンが多くて、虐げられる主人公が引き立ちますね。ちょっとしたミステリ要素もあって読み応えがありました。面白かったですね。

【21上ラノベ投票/9784040740355】

目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい

うーん、変わらず最高。宇宙エルフに続いて宇宙ドワーフが登場。ドワーフたちが働く「造船所」で惜しみなく金を注ぎ込んだ母艦を購入することに。というわけでmy new gear...感がいいな。ワクワクする。そして新たなクルーとして整備員として働くことになるドワーフの双子姉妹も登場する。彼女らに関するエピソードはドタバタコメディめいていてすこぶる楽しかった。肩の力を抜いて楽しめるコメディ展開に、ヒロインたちとのエロティックな関係、血生臭くも爽快なバトルアクション、少年心をくすぐるSFガジェット、というバランスが本当に素晴らしい。

【21上ラノベ投票/9784040740836】


隷王戦記

東方世界を征服した若き覇王により、愛する女と親友を奪われた主人公が、群雄割拠の「世界の中央」へと逃れ、奴隷の身分から再起を志すまでを描いた戦記ファンタジー。「漆黒の狼と白亜の姫騎士」のときは異能者たちの扱いがよくわからなくてリアリティレベルで混乱していたけど、本作では最初から「超常の異能を持った英雄たち」がいることが明示されるのでだんぜん読みやすいな。全体的にチンギスハンとバイバルスがモチーフっぽくて、中央アジアや中東あたりの雰囲気が濃い。全てを奪われてから這い上がっていく展開も、権謀術数が渦巻く「世界の中央」の状況も、王道の読み応えで面白かった。

【21上ラノベ投票/9784150314774】

ラノベ定義論スペースのメモ

書き起こしというほどでもない。聴きながら他の参加者の発言をメモしていたものを元に、後から動画を聴き直して自分の発言を補完したもの。詳しくは動画をお聴きください。


www.youtube.com

自己紹介(00:03:30〜)

夏鎖
ラノベブログ7年。イキってるラノベ読み。

mizunotori
ラノベを本格的に読み始めたのは2003年くらい。最近のオススメは「魔王2099」。

リイエル
なろう系Vtuberラノベは2003年くらいから。ここ5年ほどはラノベから離れ気味だったが、Web小説を読み始めて、なろう作品を紹介するような活動をしている。

岡田
編集者。2012年から「このライトノベルがすごい!」を担当。ラノベは2002年くらいから読んでいる。

平和
編集者。ラノベを読み始めたのはスレイヤーズのアニメくらいからで、大学の時期は離れていたが、2003年ごろからはずっとラノベを読んでいる。そのあとラノベ編集者になった。現在はストレートエッジ所属。冴えカノおもしろい。

なろう系単行本はラノベか?(00:08:40〜)

mizunotori。ある程度は合意を得られるだろうという議題。「なろう系単行本」は回りくどく言ったが「新文芸」。まあラノベだよね。

リイエル。ラノベではあるがラノベではない。狭義のラノベは若者向けに価格を抑えた文庫本であってこそ。単行本は中高生をターゲットにしていない。しかし文章・内容が軽く、挿絵が多いのがラノベであり、それはなろう系単行本と合致する。なろうから書籍化されたものの中には一般寄りの作品もある。が、概ねラノベではないか。

夏鎖。文庫かどうかは気にしていない。イラストとコラボレーションしているのがラノベ

岡田。なろう系とは何か。「新文芸」はUGCの作品群。ボカロ小説も含まれる。ライトノベルに組み込まれたのかなと思う。このラノでも難儀している。部門を分けている。読者層が既存のレーベルと違う。本の作りはライトノベルだよね。電子で買っている人は文庫か単行本かわかない。

平和。ラノベに含む。スタンスとしては、ライトノベルレーベルから出ていればライトノベルである。レーベル派。パッケージ派。作り手(出版社)の意図を重視する。ラノベの単行本は文庫のライトノベルの方法論を踏襲している。値段が違って意図してかどうか読者層が変わっている。ただ概ねラノベに含むのではないか。

質疑応答。

mizunotori。「なろう系」とはWeb小説サイトに投稿されていた作品全般を漠然とイメージしている。なろうの流行も変わっているし内容面では判断しづらい。キミスイ横浜駅SFもラノベ

なろうに投稿されたなろう系っぽくない作品もあるし、なろうではないけどなろう系っぽいラノベもあるし…みたいな話。

読者層で判断しているリイエルさんと岡田さん。イラストなどのパッケージで判断している夏鎖さんと平和さん。という整理。

mizunotori。ライトノベルという言葉は読者主導で作られたものであって、出版社の意図とは関係がない。という点で平和さんと対立。

ラノベ売り場って漫画売り場と隣接してる?みたいな話。

少女向け作品はラノベか?(00:36:28〜)

平和。広い意味ではラノベ。少女向けレーベルは少年向けレーベルと同じ方法論。とはいえラノベ読者は「ライトノベル」と言ったときに「ただし少年向けに限る」のような意識がある。その理由のひとつに、少女向け作品がラノベ扱いされたがっていないことがあるかもしれない。「少女小説」として定義する流れ。

夏鎖。少女向け・女性向けの作品群は「少女小説」として呼ばれたがっている気がする。

岡田。平和さんと似てはいる。ラノベだと思う。昔からあるビーンズなどはフォーマットも内容もライトノベル。オレンジ・富士見Lなどはライト文芸なんだけどラノベ。扱いが困る。混乱している。「少女小説」と呼ばれたがっているかは疑問。

リイエル。広い意味ではラノベ。狭義ではターゲットが違う。2005年前後くらいに創刊したビーズログ・ルルルあたりは少女向けライトノベルと名乗っていた。BL小説はラノベなのか。アルファポリスのレジーナブックスなどをどう捉えるか。

mizunotori。もちろんラノベ。「少女小説ラノベ扱いするな」という勢力がいると同時に「なぜ少女向けをラノベ扱いしてくれないのか」という勢力もいる。漫画で言うと、少年漫画は男性読者も女性読者も読むが、少女漫画は男性読者はあまり読まない、という非対称性がある。それと同じで、読まれていないので言及が少なくなってしまう。とはいえ、ブログ界隈でやっていた人気投票などでは、いくつかの少女向けラノベが入っていたし、昔からラノベとして扱われていたとは思う。

質疑応答。

夏鎖。オーバーラップノベルスfやKラノベブックス​fなど、男性向けレーベルから女性向け作品を出している流れについてどう思うか?

そもそも「本好き」「薬屋」など女性人気の高い作品が、少女向けレーベル以外から出てきている。ラノベで女性主人公は売れないという謎の偏見をなろう系が破壊した。みたいな話。

漫画のノベライズはラノベか?(01:01:25〜)

mizunotori。もちろんラノベ。昔からノベライズは売れていて、ロードスもTRPGのノベライズと言えなくもないし、スニーカーのガンダムや、ファミ通文庫のゲームノベライズなど、レーベルの主力ともなっていたが、しかしラノベ読みのあいだではあまり話題にならない。そのあたりについて意見を聞きたい。また最近話題のYouTube漫画系のラノベをノベライズと捉えたときにどう考えられるか。

リイエル。そもそもノベライズの数が少ない。ラノベ読みは(売上的に重要度が高いはずの)ジャンプのノベライズを読んでない。YouTube漫画は異質。これまでのノベライズはゲームや漫画の内容をそのままなぞっていたが、YouTube漫画は新しく話をつくっている。ファンアイテム的でもある。メディアミックス的な売り出し方をしている。

岡田。ノベライズは狭義のライトノベルに含まれる。昔からあるが、最近は「何をもってノベライズなのか」が分からなくなっている。メディアミックスの一部になっている。リイエルさんに同意。

平和。異論の余地なくラノベ。一定のパッケージに落とし込んでいるのでラノベ

夏鎖。ノベライズはラノベではない。ノベライズというジャンルがあると認識している。アニメなどは既にイラストとコラボレーションしている作品で、それを小説化してもラノベとは言えない。

質疑応答。

夏鎖さんの「イラストとコラボレーションしたものがラノベ」理論を掘り下げる。

で、ボカロ小説はどういう立ち位置になるのか?みたいな話。

mizunotori。ライトノベルの文体は「読みやすい」か。別に一般文芸でもわざわざ読みづらくはしないのでは。たとえば、漫画でも絵柄はリアルだったりデフォルメが強かったりいろいろあるが、西洋画と漫画の白黒のコマを並べると「漫画っぽい絵柄」というのは分かる。それと同じくらい、一般文芸とラノベの文体に違いがあるかというと、無いのではないか。

YouTube漫画のノベライズは今後どうなるか?みたいな話。

ライト文芸ラノベか?(1:36:00〜)

平和。はっきり答えられない。どちらとも言える。文庫のいわゆるライトノベルの方法論は使っている。そのわりにレーベルは分けている。出版社が分けているのだからライトノベルにしにくい。

岡田。中間のジャンルが生まれたからなんとか名前をつけてみようというもの。小説とライトノベルのあいだにできた新しい国。

リイエル。狭義のライトノベルから追い出されたものたち。メディアワークス文庫。「ミミズクと夜の王」などのようにラノベとして売り出せなかったものを隔離。ラノベとも一般文芸ともどちらともつかない。ただしライト文芸として成立したあとに出てきたものもある。

mizunotori。ライト文芸とは「キャラ文芸」や「キャラノベ」と同じもの。場合によっては「なろう系単行本」を指して新文芸と言うこともある。が、この場では一般に「ライトノベルと一般文芸の中間」と言われるような作品群を指す。ライト文芸の始まりはメディアワークス文庫。書店でライトノベルの棚が一杯になったから一般文芸の棚に置いてもらうために『ライトノベルではありません』と名乗ったのがライト文芸。なので建前では別モノと言ってるけど実質的にはラノベ。とはいえライト文芸として成立してからかなり変わっている。ライトノベルにそれまでなかったようなジャンルも新しく生えてきている。売れなかったものを隔離したという感じではない。そもそも「ミミズク」なんかはラノベとして出せているし売れている。ビブリア古書堂が売れたのを見て周りからぎゅっと寄ってきて新しい文化を形成した。

夏鎖。イラストとコラボレーションしているかが重要なので、ライト文芸ライトノベルではない。イラストが表紙にしかない。

質疑応答。

10代の意見も聞きたい。YouTube世代とかラノベの定義についてどう考えているのか気になる。

mizunotori。ラノベが10代向けの小説だというのは古いのではないか。

平和。「オタク向けの小説」としたほうがしっくりくる。そして「オタク」の範囲が広がっているから境界が曖昧になる。

このラノライト文芸は扱わないのか?みたいな話。

mizunotori。中高生にもライト文芸は人気(ライト文芸のなかに中高生に人気のジャンルと大人に人気のジャンルがある)。読者年齢的にラノベライト文芸→一般文芸という段階を踏む、というのは違う。

では「ラノベと一般文芸の中間」というのはどういう性質が中間なのか?

非商業作品はラノベか?(2:11:25〜)

書籍化されていないWeb小説はライトノベルなのか?

平和。著者の意図としてライトノベルを志向していればラノベ

mizunotori。この議題の何が難しいかというと、ライトノベルにとって「非商業作品」は眼中になかった。「非商業作品はラノベじゃないよ」と言っていたわけではなく、売られているものをライトノベルと呼ぶのが当たり前で、そんなものを考慮してなかった。そして、「非商業作品もラノベだよ」ということになるとパッケージ派は苦しくなってくる。

電子書籍オンリーレーベルの扱い。

翻訳小説の扱い。

「いいな」と思った最近のライトノベル表紙

ふと思いついたので好きな表紙をだらっと挙げていきます。本当に素人目で見たときの「いいな」なのでデザインの専門的な解説などはありません。作品内容の良し悪しとも関係ありません。

前回似たようなことをやったときのはこちら。
https://kazenotori.hatenablog.com/entry/2017/06/17/211132

主人公じゃない!

主人公じゃない!02
こういうのってデザイン的にはなんて言うんでしょう。レトロポップ? 原色が映えて、タイトルのフォントとも合っていて、演劇のポスターみたいで綺麗ですよね。

春夏秋冬代行者


春夏秋冬代行者 春の舞 上 (電撃文庫)春夏秋冬代行者 春の舞 下 (電撃文庫)
ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の作者・暁佳奈の新作なんですが、ただただ純粋に美麗ですよね。強い。上下巻で表紙が繋がってるやつ、みんな大好き。

オーバーライト

オーバーライト――ブリストルのゴースト (電撃文庫)
これもラノベ読みのあいだでは話題になった表紙ですね。「グラフィティ」を題材にした作品だということで、殴り書きしたような文字と、カラースプレーの跡に、蛍光グリーンの特色を使っているというやつです。かっこいい。ちなみに2巻は蛍光ピンクで、そちらもとても良かったです。

スーパーカブ

スーパーカブ 3【電子特別版】 (角川スニーカー文庫)
アニメ放送中の人気作品を取り上げるのもいまさらですけど、いまさら考えてみるとラノベ表紙でモノクロイラストを使ってるのって珍しいですよね。この3巻のイラストがいちばん好き。題材がスーパーカブということでレトロっぽい感じを狙っているのか分かりませんが、イラストの「博」が漫画家でちゃんと白黒を描ける人だっていうのが活きてますよね。

鋼鉄城アイアン・キャッスル

鋼鉄城アイアン・キャッスル (ガガガ文庫)
原案が別にある作品なので(まあそれが関係あるかどうか分かりませんが)、いわゆる「ラノベでよくあるデザイン」とは違う文法で作られている感じ。端正ですね。

魔女と猟犬

魔女と猟犬 (ガガガ文庫)
単純なインバクトではグッドデザイン・オブ・ザ・イヤーを個人的に与えたい表紙。真っ赤な背景色、真っ赤な瞳、真っ赤な舌。うーん、かっこいい。

ガンナー・ガールズ・イグニッション

ガンナー・ガールズ・イグニッション Case1.フェイタル・インシデント (オーバーラップ文庫)
はい。単色背景、好きなんですよ。

5分で読める驚愕のラストの物語

5分で読める驚愕のラストの物語 (JUMP j BOOKS)
イラストは漫画『チェンソーマン』の藤本タツキ。こういう「5分で読める」みたいなのって最近流行ってる形式で、学校の「朝読」の時間とかに読まれるのを想定しているんですが、朝から読むにしてはめちゃくちゃ乾いた感じ。もちろんそれがかっこいいんですけど。

バケモノたちが嘯く頃に

バケモノたちが嘯く頃に ~バケモノ姫の家庭教師~ (電撃文庫)
前回紹介した『キリングメンバー』とかもそうでしたが、横向きの構図がべらぼうにかっこいいですよね。

銀剣のステラナイツ

銀剣のステラナイツ
これめちゃんこいいですよね。星明かりに照らされて見つめ合う二人。もう百合を体現してますよ。

錆喰いビスコ

錆喰いビスコ6 奇跡のファイナルカット (電撃文庫)
ビスコ』の表紙はどれもいいんですが、この巻のやつは「主人公が写ってる映画を見る悪役」っていうシチュエーションが好きです。

竜馬がくる

竜馬がくる (ダッシュエックス文庫DIGITAL)
このタイトルロゴくっそ好きなんですよね。

灰と幻想のグリムガル

灰と幻想のグリムガル level.15 強くて儚きニューゲーム (オーバーラップ文庫)
『グリムガル』は15巻から表紙デザインが変わったらしいです。めっちゃカッコよくなってますね。

1LDK、そして2JK

1LDK、そして2JK。III ~夏が始まる。二人はきっと、少し大人になる。~ (富士見ファンタジア文庫)
わかりやすく『ひげひろ』を意識してるタイトルはご愛嬌。こういうストーリーを感じさせる一枚絵っていいですよね。

声を聞かせて

声を聞かせて(1)精霊使いサリの消失 (ウィングス・ノヴェル)
こういう雰囲気の表紙ってサブカルっぽい女性向け漫画でたまにある気がする。好き。

オニキス

オニキス―公爵令嬢刑事 西有栖宮綾子―(新潮文庫)
まあ清原紘のイラストが強すぎるんですが。新潮文庫nexの表紙はだいたい良いです。

楽園殺し

楽園殺し: 鏡のなかの少女 (1)
まだ発売されてないけど登録されてたので。単色背景にモノクロっぽい人物というパッキリした配色が目を惹きますね。

終わるレジェンドノベルスの救い方

レジェンドノベルスとは?

2018年10月に講談社が立ち上げたライトノベルレーベルが「レジェンドノベルス」です。いきなり「全部傑作!ハズレなし!」と豪語したり、「ネクストファンタジー」という謎のジャンル名をアピールしたり、講談社本体が「NOVEL DAYS」という小説投稿サイトを立ち上げている横で「セルバンテス」という独自の小説投稿サイトを運営したりと、熱意があるのか空回っているのかよくわからないレーベルでしたが、セルバンテスは2020年5月に閉鎖、レジェンドノベルスの新刊は2020年11月以来音沙汰なし、先日になってようやく来月「電子書籍のみ」で新刊が出るとアナウンスされたという状況です。つまり崖っぷちです。

レーベルカラーとしては良くも悪くも「意識が高い」という感じでしょうか。いわゆる「なろう系」作品を取り扱うWeb文芸レーベルではあるのですが、ラインナップがわりと個性的と言いますか、流行りには迎合しない姿勢を打ち出しています。独自に「発掘部隊」を用意して、あまり注目されていないWeb小説でも積極的に拾い上げる愚直さがある一方で、先述したような宣伝文句が大言壮語に感じられるところもありました。

つまるところ、とても個性的で、愛すべきレーベルだったのです。なんだかんだ言いながら私にとっても好きな作品が多いのです。もはや風前の灯のようにも見える現状ですが、ほんの少しでも延命してくれればと願って、いくつかのオススメ作品を挙げさせていただきます。

ゲーム実況による攻略と逆襲の異世界神戦記

強大な力を持つヴァンパイアとエルフの戦いのあいだで、あまりにも弱く、虫けらのように扱われていた「ヒト」が、主人公たる少女のもとに集い、逆襲を開始するという話。と同時に、それは「ゲーム」の中の物語であり、「現実」のプレイヤー視点での軽妙なゲーム実況を交えつつも、徐々にそのゲームと現実の境界は曖昧になっていく……という趣向です。独特の語り口と熱い展開により、濃厚なチーズピザのようにカロリーの高い本格ファンタジーとなっています。

無双航路

壊滅的な敗北を喫した帝国軍の宇宙戦艦(のAI)に転生した主人公が、自分に乗艦している帝国のお姫様と協力して、追手を振り払いながら本国を目指す…という序盤の展開からは想像もできないほど物語は二転三転、ジェットコースターのごとき勢いでスケールアップしていくスペースオペラです。これはもう2010年代のラノベを代表するスペオペの傑作だと言い切ってしまいます。おすすめです。

滴水古書堂の名状しがたき事件簿

クトゥルフ神話をベースとした伝奇ホラー連作短編集。謎めいた古書店の謎めいた店長と、そこで働くことになった女性が、次々に不可思議な出来事に遭遇していくわけですが、この語り手の女性がかっこいいんですよね。とにかく暴力が強い。夜道で襲ってきた暴漢をボコボコにして殺しかける。出会いがしらの怪物に飛び膝蹴りをかましてぶっ殺す。ただ「怖ろしい」だけでは終わらないのがこの作品のいいところだと思いますね。

異世界の名探偵

異世界で巻き起こるさまざまな事件を解決していくファンタジーミステリです。特殊設定ミステリって言うんでしたっけこういうの。異世界に転生した主人公は、友人たちと共に学園生活を送るなかで、異世界の旧態依然とした捜査手法にロジカルな推理を持ち込むことを志します。幼少期から描かれるタイプの異世界転生の面白みを十二分に含みながらも、本筋は「読者への挑戦状」まで織り込んだ本格推理となっていて、ファンタジー好きもミステリ好きも楽しめる作品になっていますよ。

JK無双

人々がゾンビと化し、文明が半ば崩壊した世界で、事も無げに日本刀を振り回し、ゾンビをぶっ殺していく女子高生を描いたバイオレンスな作品です。なろう系のなかでも「現代ハクスラもの」とでも呼ぶべきサブジャンルで、ゾンビものに「ステータス」「レベルアップ」「スキル」的な要素を混ぜ合わせているわけですね。ゾンビパンデミック後にも生き残った人々を描く群像劇でもあって、案外と一本調子ではない面白さがあります。

ダイブ・イントゥ・ゲームズ

やたらシビアな海洋生物シミュレータ、カスタマイズ自在のロボット操縦アクション、ロールプレイ推奨の格ゲー、モンハンめいたMMORPG……さまざまな架空のVRゲームのプレイ日記的なノリの作品ですね。と同時に、重度のコミュ障である主人公がゲームを通して友人をつくっていくまでを描いた青春グラフィティでもあります。


というわけで。

レジェンドノベルス(新文芸)の作品一覧|電子書籍無料試し読みならBOOK☆WALKER

なんたって「全部傑作!ハズレなし!」ですから、あなたが気に入る作品は他にもあるはずです。

読もう、レジェンドノベルス!

「エタる」の語源

はじめに

ラノベってエタっても許されるコンテンツでいいな

増田のこの記事をきっかけに、「エタる」というスラング自体の発祥とかの話が盛り上がっていたので、ちょっと当時の5chを発掘してみた。最初は増田に投稿するつもりだったが、思ったよりURLが多くなったのでブログに書くことにする(増田では記事に多くのURLが含まれると投稿が弾かれてしまうのだ)。

「エタる」とは?

「エタる」は「作品が未完のまま終わること」を意味する。「エターる」「エターなる」「エターナる」「エターナル」などの表記揺れがある。

最初は「エターナル」だったのが、「エターナる」と動詞化され、のちに「エターなる」と変換されることが多くなり、それが「エターになる」と解釈されて「エター」と略され、再び動詞化して「エターる」、さらに「エタる」まで短縮されたと思われる。

現在ではWeb小説界隈で使われることが多いが、元はRPGツクール界隈で生まれた言葉であった。

なぜ「エタる」と言うのかについては「永遠(エターナル)に完成しないから」と説明されることが多く、そこに「未完に終わったエターナルファンタジーというツクール作品があったから」という説明が加わることもある。この点に関しては、ググっていちばん最初に出てくる以下の記事がかなり詳しいが、残念ながら「エターナる」の初出の時期に誤りがある。

エタる発祥の地へ行ってきた ~エタるの語源を探る~

というわけで、補足的に説明したいと思う。

ツクール界隈

2000年8月、「ディアス」という人物が20人以上のメンバーを集めて「エターナルファンタジア」というツクール作品を製作しようとした(「エターナルファンタジー」は誤りである)。しかし一年かけてもほとんど進展がなく、何人ものメンバーに逃げられた末に、2001年8月にディアスのサイトは閉鎖された。

以上の経緯はこちらのWebアーカイブに残っている。
https://web.archive.org/web/20050420130406/http://studiodias.port5.com/

この「ディアス」は当時16〜17歳だった。要するに「高校生が妄想を膨らませて壮大なゲームを作ろうとして全く何も出来なかった」というツクールあるあるが、いろんな人を巻き込んで発動したような形である。今から考えると「そりゃ高校生じゃ無理だろ」「こんな怪しい企画に参加するなよ」という印象を受けるが、おそらく当時のツクール界隈は平均年齢からして高校生〜大学生くらいだったのだろう。

ディアスについては、当時の2ちゃんねるでも話題になっており、ディアスは「痛いツクラー」の代名詞として、また「エターナル」という単語が「駄目な作品のタイトルにありがちなワード」とされて、さんざんネタにされていた。ただし、ディアスがウェブサイトを閉鎖した直後は、まだ「エタる」「エターナる」に類する言葉は生まれていなかった。

PCゲーム板のツクールスレの過去ログを遡ってみると、「作品が未完に終わること」という意味での「エターナる」という言葉が登場するのは2003年頃からである。当時はまだ「ディアス」「エターナルファンタジア」ネタが健在であり、この「エターナる」は明らかに「ディアス」「エターナルファンタジア」を念頭に置いて使われている。

ツクール総合 69
179 :金良八゜千 Ⅱ:03/05/05 12:05 ID: qP6gUvLL
サイトのブックマークなくしましたが何か?
で、ぐぐったら…
∑(゜Д゜;移転してもまだ完成しとらんのか!!
…まぁ、予想済みだけどナー( ´_ゝ`)


180 :名無しさんの野望:03/05/05 12:53 ID: noes707V
また一人、エターナる。

この5月の書き込みはやや先行しすぎていてイレギュラー的である。

【゜Д゜】RPGツクール2000&2003【゜Д゜】
495 :名無しさんの野望:03/07/14 15:18 ID: VrT3CrkD
ツクールは自分のやる気の持続度と
作るゲームの規模のバランスが重要である
むやみに規模の大きなゲームを作ろうとすれば未完に終わる。

何度挑戦してもゲームを完成させられないツクールプレイヤーの事をエターナルと言う。
逆に短編を多数完成させるツクールプレイヤーの事をすぐに次が揚がる事から海老フライと言う。
     ──海老大全上巻第二章より引用

【ナカーマ】RPGツクール20002003【ネカーマ】
274 :255:03/07/28 19:14 id:RNQOLzXv
夏休みの課題
「ブンターエレイのRPGを作ってみる。」
エターナルになるかもしれんが。


275 :名無しさんの野望:03/07/28 19:18 ID: J3g8CsFu
改めて聞くが、このスレで言うエターナルとは
作品が完成しないことだよな?

「作品が未完に終わること」を指す「エターナル」用法が本格的に使われはじめたのは7月に入ってからだろう。この時点では「エターナる」ではなく「エターナル」と表記されている。

【総裁選】RPGツクール2000&2003【流浪当選】
688 :名無しさんの野望:03/11/21 15:43 ID: YQ30q3Q1
>>685
http://www.tkool.net/
こことか行けば?
でもそのぐらい自分で作れって感じする。
大抵そういうこと言うやつはエターナるし。
あと、お手伝いを募集すると負の遺産が付いてくることがよくあることを忘れるな。

そして11・12月頃から「エターナる」「エターナった」などの表記が増えていく。

2004年に入ると「作品が未完に終わること」ことを「エターナル」もしくは「エターナる」「エターなる」と呼ぶ用法はすっかり定着するが、逆に「ディアス」「エターナルファンタジア」ネタが減少していく。この頃から元ネタと切り離されて広まっていったのだと思われる。

エターナルになる人が「エターナラー」と呼ばれることもあった。2005年1月にエターナラーを題材とした「エターナルの逆襲」というツクール作品が投下され、これが高評価を得たことで「エターナル」という語の知名度がさらに上がった、との話もある。

Arcadia界隈

Arcadia(二次創作SS投稿サイトの当時の最大手)系の2chスレでは2009年の用例が見つかる。

アルカディアを語るパート16
737 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2009/08/22(土) 00:27:07 ID: cLlpyqVh0
天災異邦人、最初がきつすぎるw
主人公のテンションがひどすぎるが、ナレーターは普通だから何か仕込んでるとは思ってたが、
面白くなるまでの苦行が……。
なにより、エタってるからなぁ。

この時点で既に「エターナる」ではなく「エタる」と略されているのが興味深い。ちなみに同時期のツクール界隈ではまだ「エターナる」or「エターなる」表記が中心だったようだ。

アルカディアをヲチる パート30
305 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2009/12/03(木) 00:59:32 ID: bkbcjAca0
【習作】 リリカルなのは 正義の指針 アンチ 性格・設定改変 ※お詫び より

[10]( ゚д゚)◆7e40ce53 ID: f5db8c6e
某所で噂んなってるんで来てみました。

>>8
残念ながらこの作品は自分のものではありません。
このトリップのパスは大分前に漏れてるし、
以前の騒ぎのときに某所でバラしてあるから、
成りすましは誰にでも出来ます。
投稿者が意図してやってるのかたまたまかまではわかりませんが。
自分は金輪際ここに作品投稿するつもりはないです。はい。

逆スバモノはブログに転載していますが現状ほぼエタってます。

 こいつって逆スバなのか?

こちらの書き込みはArcadia本サイトからの引用であり、本サイトでも当時から「エタる」が使われていたことを示唆している。

東方界隈

東方系の2chスレだとやや古く2008年まで遡れる。

【ニコニコ動画】幻想入り動画について【東方】part2
947 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/03/26(水) 03:00:25 ID: nf7PAX0U0
>>946
そんな事いってお気に入りの作者さんがエターナって帰ってこなかったらどうすんだよw
新しいアイデアは自由な発想から生まれるもんであって誰かがこうしてみたらといって
気安くできるんなら週刊漫画の売り上げが低迷なんかしてねーよw

【雑談・マンセーは】幻想入りアンチ・議論スレ【本スレで】part3
741 :740:2008/06/10(火) 23:26:13 id:xgEvTwaOO
いい忘れてた
ちなみに動画最終投稿日は08/03/14、要するにエターナっている可能性大

こちらは「エターナる」が多い。界隈ごとに方言のように表記揺れが定着していったようだ。

ちなみに「幻想入り」とは、「東方Projectの舞台である幻想郷に主人公が迷いこむ二次創作ストーリーを動画形式で描くもの」のことで、東方Project本体のコミュニティからはやや外れたところにいると思われる。

幻想入りとは (ゲンソウイリとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

また、この「幻想入り」シリーズはRPGツクールによって製作されることもあるようで(「東方陰陽鉄」など)、そちらのルートから「エターナる」が広まった可能性が考えられる。

やる夫スレ界隈

やる夫スレについては、2008年3月に投下された「やる夫がドット絵師でツクール作品に参加するようです」が一つのターニングポイントになっている。実はこのやる夫スレは、前述の「エターナルファンタジア」の開発に参加していた人物が書いたもので、その体験がモチーフとなっているのである。

やる夫がドット絵師でツクール作品に参加するようです
やる夫がドット絵師でツクール作品に参加しているようです

本文中に「エターなれ」「エターなった」などの語句が登場し、

エターなるって何?

RPGツクールでのゲーム製作を途中で中止すること
語源はこのスレの>>1が関わってたゲームのタイトル

といったやりとりも見られる。やる夫スレ界隈で「エタる」が広まったのはこの「やる夫ドット絵師」スレによるという証言もあるが、その真偽は判然としない。多くやる夫スレが立てられていたVIP板にツクール系のスレもあったので、そちらを経由して広まったとも考えられる。

また、この「やる夫ドット絵師」スレが東方界隈やArcadia界隈にまで影響を与えたかというと…どうだろう、広まるスピードに対してちょっとコミュニティの距離が遠い気もするが、ありえないとまでは言い切れないか。

AAスレ界隈

調べている途中で気付いたが、AA系のスレで2008年以前の用例が見つかるようだ。

花を −急性骨髄性白血病と闘った6ヶ月−
189 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2006/05/28(日) 20:58:17 ID: dtPSJpul
このままエターナることを心から願います

【AA】コテハン職人フクロスレ1651【駄作】
253 :名無し戦隊ナノレンジャー!:2007/02/09(金) 20:59:21
エターナったストーリーには意味があるのかないのか

ジサクジエンのラーメン屋 3店舗
225 :( ´∀)・∀),,゚Д)さん:2007/09/30(日) 00:32:51 ID: g3m7idJT0
こっ…これは……!
かつて全ギャラリをwktkさせておきながらエターナった
モナギコラーメンの風雲ラーメン後継者ストーリーを回収するのか!?

すんませんこのラーメンシリーズに粘着しつづけてるギャラリですなんにしろwktk

「AA」という共通点から考えて、のちのやる夫スレ界隈に影響を与えた可能性がある。

さらに遡ると「モナーRPG」スレに辿り着く。

モナーRPGを作ろう! Part27
280 :( ´∀`)さん:04/03/27 22:44 ID:+Wbm0q3/
>>279
そだね。収集つかなくなる可能性は高い。
そいでもって他スレのツクスレで言うところのエターナル。

モナーRPGスレとは「AAキャラを使ったRPG」の完成を目指すスレであり、その製作にはRPGツクールが使われている。すなわち、モナーRPGこそツクール界隈とやる夫スレ界隈をつなぐミッシングリンクなのではないか? …と思ったが、辻褄が合いすぎていて逆に違う気がする。2ch各板に立てられたツクールスレを通して並行的に広まっていった、と考えるべきかもしれない。

まとめ

2000年 元ネタの「エターナルファンタジア」が生まれる
2003年 ツクール界隈で「エターナる」という語が生まれる
2004年 モナーRPGスレ経由でAA系の板に広まる?
2008年 やる夫スレ「やる夫がドット絵師でツクール作品に参加するようです」投下
2008年? 東方界隈に「エターナる」が広まる
2009年? 二次創作SS界隈に「エタる」が広まる
それ以降? 小説家になろうで「エタる」が広まる

みたいな感じなのかな。どうなのかな。みんなも調べてみてね。

ライトノベルの世代分けを考える

世代分けって楽しいですよね。

無意味に「第3世代の特徴はこうだ!」などとレッテルを貼ったり、「第1世代の素晴らしさと比べて最近の世代は」「第7世代の面白さを理解できない老害は消えろ」なんてワイキャイと言い争いたいものです。

というわけでライトノベル作品の世代分けを考えてみましょう。

第1世代 ソノラマ・コバルト世代

1977年 高千穂遙クラッシャージョウ
1979年 栗本薫グイン・サーガ
1980年 新井素子星へ行く船
1982年 田中芳樹銀河英雄伝説
1983年 菊地秀行吸血鬼ハンターD
1984氷室冴子なんて素敵にジャパネスク

ラノベ史のスタンスは「ソノラマ・コバルトから始める」か「スニーカー・ファンタジアから始める」かで大きく分かれる気がしますが、ここではとりあえず「スニーカー・ファンタジア以前」をひと括りに「第1世代」として位置づけようと思います。

第2世代 スレイヤーズ世代

1988年 水野良ロードス島戦記
1989年 深沢美潮フォーチュン・クエスト
1990年 神坂一スレイヤーズ
1991年 中村うさぎゴクドーくん漫遊記
1992年 小野不由美十二国記
1994年 秋田禎信魔術士オーフェン

「スニーカー・ファンタジアの創刊」から「電撃文庫の台頭」くらいまでの世代です。ファンタジースペオペが多かったでしょうか。

アニメ化によって多くの新しい読者を獲得した時代でもあり、『スレイヤーズ』や「あかほりアニメ」などが90年代後半の夕方アニメを彩りました。

ちなみに「ライトノベル」という呼称が誕生したのもこの頃でしたね(一般に広まるのはもっと後ですが)。

第3世代 ブギポ世代

1998年 上遠野浩平ブギーポップは笑わない
1998年 今野緒雪マリア様がみてる
1998年 賀東招二フルメタル・パニック!
2000年 時雨沢恵一キノの旅
2000年 喬林知『まるマ』シリーズ
2001年 秋山瑞人イリヤの空、UFOの夏

電撃文庫の台頭」から「深夜アニメの増加」くらいまでの世代です。

大雑把には「ファンタジーから学園ものへ流行が移った」と語られ、その象徴として『ブギーポップは笑わない』が挙げられることが多いです。

アニメ化時期は主に2000年代前半ですが、ちょうど夕方アニメから深夜アニメへの移行期で、衛星放送のWOWOWでの放送が多かったこともあり、第2世代や第4世代ほど「アニメ化されて大ヒット!」という印象は無い気がします。

この頃に創刊されたレーベルはファミ通文庫富士見ミステリー文庫角川ビーンズ文庫MF文庫Jといったあたりです。

第4世代 ハルヒ世代

2002年 高橋弥七郎灼眼のシャナ
2002年 西尾維新『戯言』シリーズ
2003年 雪乃紗衣彩雲国物語
2003年 谷川流涼宮ハルヒの憂鬱
2004年 ヤマグチノボルゼロの使い魔
2004年 鎌池和馬とある魔術の禁書目録

「深夜アニメの増加」から「アニメ『ハルヒ』のヒット」くらいまでの世代です。ただし『禁書目録』はアニメ化の時期的に4.5世代くらいのイメージですかね。

深夜アニメの増加によってラノベ原作アニメも増加し、さらに2006年にアニメ『ハルヒ』が大ヒットしたことで、ラノベ業界を取り巻く環境が大きく変化しました。

人気ジャンルとしては異能バトルが存在感を見せていました。

この頃に創刊されたレーベルはGA文庫HJ文庫ビーズログ文庫ガガガ文庫といったあたりです。

第5世代 俺妹世代

2006年 竹宮ゆゆことらドラ!
2006年 有川浩図書館戦争
2007年 井上堅二バカとテストと召喚獣
2008年 葵せきな生徒会の一存
2008年 伏見つかさ俺の妹がこんなに可愛いわけがない
2009年 弓弦イズル『IS 〈インフィニット・ストラトス〉』
2009年 平坂読僕は友達が少ない

「アニメ『ハルヒ』のヒット」から「Web小説の書籍化ブーム」くらいまでの世代です。

勢いのあったジャンルはラブコメですが、単一の流行だけでは語りきれないほどラノベ業界は大きくなりました。

ハルヒブームとなろうブームの谷間の世代、という印象も無いではないですが、積極的なプロモーションで話題性を高めた『俺妹』、「萌え四コマ」的な作風を取り入れた『生存』『はがない』、異能学園もの(いわゆる「石鹸枠」)の先駆けとも言える『IS』など、後続への影響が地味に大きい作品が揃っているのではないでしょうか。

電撃のハードカバー路線を代表する『図書館戦争』のヒットから、2009年のメディアワークス文庫創刊、そして「ライト文芸」へと繋がっていく流れも無視できませんね。

第6世代 SAO世代

2009年 川原礫ソードアート・オンライン
2010年 橙乃ままれまおゆう魔王勇者
2011年 佐島勤魔法科高校の劣等生
2011年 三上延ビブリア古書堂の事件手帖
2011年 渡航やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
2012年 丸戸史明冴えない彼女の育てかた
2012年 長月達平Re:ゼロから始める異世界生活
2012年 丸山くがねオーバーロード
2013年 大森藤ノダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
2013年 暁なつめこの素晴らしい世界に祝福を!

単純に発売年で見ると『SAO』は第5世代なんですけど、やはりWeb小説世代を代表させたいところです。

この段階ではまだ、個人サイト(SAO)、2ch(まおゆう)、Twitter(忍殺)、Arcadia(AW・ダンまち・オバロ・幼女戦記)など、なろう以外から書籍化されてヒットした作品が多かった印象です。

Web小説専門レーベルがまだ少なかった(2014年に創刊ラッシュが起きる)ということもあって、この世代はWeb小説が席巻しつつも「なろう一強」になる前段階とみなせるのではないかと思います。

第7世代 なろう世代

2014年 理不尽な孫の手無職転生
2014年 伏瀬『転生したらスライムだった件
2014年 住野よる『君の膵臓をたべたい』
2014年 日向夏薬屋のひとりごと
2015年 衣笠彰梧ようこそ実力至上主義の教室へ
2015年 白鳥士郎りゅうおうのおしごと!
2016年 屋久ユウキ弱キャラ友崎くん
2017年 安里アサト『86 -エイティシックス-』

2014年にWeb小説専門レーベル創刊ラッシュ、2016年にアニメ『このすば』『Reゼロ』のヒット、2017年にヒーロー文庫の二作品がアニメ化(以降、Web小説専門レーベルからのアニメ化が増加)あたりがトピックスで、ここから現在までが「なろう」ブームの全盛期ということになると思います。

とりあえず「お笑い第7世代」になぞらえてここで終わりにしておきますが、もし第8世代を考えるとすれば2018年あたりからのラブコメブームで区切ることになるかもしれません(まだ評価が定まっていないので語りづらい)。

まとめ

「ソノラマ・コバルト世代」
スレイヤーズ世代」
「ブギポ世代」
ハルヒ世代」
「俺妹世代」
「SAO世代」
「なろう世代」

なかなか良い感じじゃないでしょうか。

ラノベは「出版時」と「アニメ化時」の二段階で注目度が変わる(しかもたいていアニメ化時のほうが変化が大きい)ので、その両側面から考えなければいけないのが大変だと思います。

特に、ハルヒ世代と俺妹世代の区切り方と、SAO世代となろう世代の区切り方で、わりと個性が出るような気がしますね。

あるいはそのあたりをひとまとめにしてしまっても面白いかもしれません。

さあ、君も自分だけの世代表を作ってみよう!

「ライト文芸」周辺の用語整理

文学

小説や詩や随筆や戯曲などの総称。
もちろんライトノベルも文学の一種である。

業界的には何故か「純文学」の略称にもなっている。

純文学

芸術性に重きを置いた文学のこと。
対義語は、娯楽性に重きを置いた「大衆文学」。

芥川賞は純文学の賞。
直木賞は大衆文学の賞。

何故か「文学」と略されてしまう。

文芸

辞書的には「文学」とほぼ同義。
すなわち小説や詩や随筆や戯曲などの総称である。

業界的には何故か「一般文芸」の略称にもなっている。

また書店の「文芸書コーナー」から、そこに置かれることが多い作品=大判の小説単行本のことを「文芸(書)」と呼ぶ風潮もある気がする。

一般文芸

小説や詩などの「文芸全体」のような意味であることもあるし、「同人誌」と「一般文芸誌」が対置されることもあるし、「純文学」に対する「大衆文学」のような意味で使われることもある、極めて曖昧な呼称。

ラノベ業界においては「ラノベ以外の小説」を意味する。

何故か「文芸」と略されてしまう。

ライトノベル

1990年に神北恵太氏によって作られた造語。

長くなるので詳細な説明は避ける。

ライト文芸」や「キャラ文芸」といった言葉は出版社が打ち出したのに対し、「ライトノベル」は読者が作り出したという点で異なる。

ライト文芸ライトノベルに含まれるかについては議論があるが、そもそも「出版社から見た分類」と「読者から見た分類」ということで次元が違うようにも思える。

キャラクター小説

ライトノベル」と同義。

大塚英志の影響もあり「非現実的な誇張されたキャラクターを描いた小説」や「キャラクターありきで作られた物語」といったニュアンスを持つことが多い。

個人的には「キャラクター性」がライトノベルの特徴であるかは疑問に思うが、少なくともKADOKAWAはそう信じているようだ。

ライト文芸

ライトノベルの「ライト」と一般文芸の「文芸」をあわせてライト文芸

集英社オレンジ文庫の創刊(2015年)のときに使われたのが最初であると思われる。

「表紙にイラストを用いた青年向けの書き下ろし文庫小説」を指すことが多い。

ライト文芸的な領域」は以前から脈々とあったものの、やはりメディアワークス文庫の登場(2009年)と『ビブリア古書堂の事件手帖』のヒット(2011年)によって領土が確定した感がある。

刊行点数が増えすぎて書店の棚がいっぱいいっぱいになった電撃文庫が「これはライトノベルではありません」と自称して一般文芸の棚に置いてもらうように画策したのがライト文芸のはじまりである。

いったん少年向けレーベルから切り離されると「お仕事」「青春」「オカルト」「ミステリ」などを特徴とする独自の文化が花開き、そこに少女向けラノベや一般文芸側のレーベルも相乗りしてきて、現在の「ライト文芸」というものが出来上がった。

キャラ立ち小説

ライト文芸」と同義。

KADOKAWAの「ダ・ヴィンチ」から出てきた言葉で、「メディアワークス文庫的な小説群」の最初期の命名である。

とはいえメディアワークス文庫だけを見ていたわけではなく、当時からすでに『図書館戦争』『トッカン』『万能鑑定士Qの事件簿』なども射程におさめていた。

もはや誰も使わない呼称。

キャラノベ

ライト文芸」と同義。

これもKADOKAWAの「ダ・ヴィンチ」あたりから出てきた言葉。

ライト文芸やキャラ文芸と比べるとわりと廃れぎみな呼称。

キャラクター文芸

ライト文芸」と同義。

「キャラ文芸」と略されることが多い。

キャラ文芸を「オカルトものやミステリもの」、ライト文芸を「青春ものや感動もの」として区別する出版社もあるが、後出し独自定義なので無視してよい。

2013年にKADOKAWAが自称したのが始まりである。
kadobun.jp

やはりKADOKAWAは「キャラ」推し。
ライトノベルの特徴は「キャラクター性」であり、そのキャラクター性を取り入れた一般文芸が「キャラ文芸」なのである、というKADOKAWAの強い信念がうかがえる。

新文芸

KADOKAWAの造語。

「ネット上で発表された作品を書籍化したもの」という定義で、本来はボカロ小説なども含まれるが、現在ではほぼ「Web小説系の単行本レーベル」を指すようになっている。

何年経っても「新」文芸なのか?とか、これじゃ字面から意味が推測できないだろ?とか、いろいろツッコミどころの多い呼称であるが、徐々に広まってはいるらしい。

ただし一時期(現在も?)、出版社と書店のあいだで新文芸のことを「ライト文芸」と呼んでいたことがあり、いまでも混同されることが多い。
この用法での「文芸」は、先述した「文芸=大判の小説単行本」の発想からだろうか。

ラノベ文芸

2011年に富士見書房が「富士見ラノベ文芸大賞」を立ち上げ、ライト文芸的な作品を募集しはじめたのが最初だが、近年はそれとは別に「新文芸」を指していることが多い。

単純に「ライト文芸」の覚え間違い・書き間違いだと思うが、書店側がライト文芸と区別するために字面を変えた可能性もある。

「好きラノ 2020年下期」投票

『声優ラジオのウラオモテ』二月公

一巻・二巻が「プライベートで問題が発生して声優の仕事が阻害される」という「仕事を取り巻く環境」の話だったのに対して、今回は「声優の仕事でぶつかった壁をどう乗り越えるか」という「内側」の話になっていて、「お仕事小説」として飛躍的に面白くなったように感じる。
展開的に由美子が落ち込む状況が多くて、周りが敵に見えがちなんだけど、めくるちゃんが歌種やすみのこと大好きなのが一つのクッションになってる。めくる周りのエピソードはほのぼのしていて好き。厳しくも優しい先輩方の描かれ方も良い。声優・歌種やすみのサクセスストーリーとして読んでいきたいな。

【20下ラノベ投票/9784049134919】

『ネクラとヒリアが出会う時』村田天

これは面白かったな。女の子に囲まれて怯えている非モテマインドの残念イケメンと、クールなお嬢様だと遠巻きにされて「もっとくだらない話をしたいのに…」と思い悩むぽやぽや美少女が、互いの顔を知らないまま棚越しにお喋りするようになって惹かれ合うというラブコメ
少女漫画を彷彿とさせる可愛らしい設定がハマっていて、恋愛経験皆無な二人がのろりのろりと距離を縮めていくのが微笑ましい一方で、ちょっとした言い回しにもギャグセンスが迸る、勢いのある会話がとても楽しい。比嘉智康を好きな人にオススメしたいなあ。

【20下ラノベ投票/9784040737331】

『やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい』芝村裕吏

2巻で敗れたリエメンがいよいよ立ち行かなくなり座して死ぬか否かという断末魔のような一大攻勢に打って出て、それを主人公であるお人好しのガーディが残酷なまでに一方的に打ち砕く話。今回はわりとシンプルな構成だけど、毎度の「後世から歴史家が振り返るような」書き方や、ガーディを取り巻くドタバタな人間模様の描写が巧みで、とにかく面白く読める。ますますガーディ視点が減ってその周囲の人物たちが彼を讃えあるいは畏れる様を描くのに力点が移った感もある。そうなるとこの歴史書のような書き方がさらにマッチしてくるなあと思ったり。是非とも続きを読みたいな。

【20下ラノベ投票/9784040647326】

涼宮ハルヒの直観』谷川流

涼宮ハルヒの直観 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの直観 (角川スニーカー文庫)

  • 作者:谷川 流
  • 発売日: 2020/11/25
  • メディア: 文庫

「あてずっぽナンバーズ」。短編。ひたすらニヤニヤ度の高い話。ウェットなラブコメだ。「七不思議オーバータイム」。中編。ハルヒが七不思議を探そうと言い出すまえに七不思議を考える話。キョンと古泉の会話劇でほとんど漫才のようだ。部分的にミステリ的な話もある。最後の話の原型のような趣向。
鶴屋さんの挑戦」。書き下ろしの長編。初っ端から後期クイーン問題について結構な紙幅が割かれる、作者のミステリ趣味を最大限に詰め込んだ話。鶴屋さんから送られてくる幾つかのエピソードに隠された謎を解き明かす。違和感を持つべきところで違和感を持てるような丁度いい謎解き。面白かった。

【20下ラノベ投票/9784041107928】

『亡びの国の征服者』不手折家

この作品の面白さを説明するのはなかなか難しい気がする。何か特徴的な設定があるわけでもないオーソドックスな転生ものだ。幼児から少年、青年へと成長していくなかで、学園編が始まったり、王女さまと仲良くなったり、現代知識をもとに商売を成功させたりするのは、それこそテンプレと言っていい。
特に今巻は、学生でありながら製紙や印刷術で儲けていく展開が中心となっているが、細かな専門知識が売りというわけでもない。にもかかわらず、めちゃくちゃ面白いのは、やはり巧さなんだろうな。作品世界が手に余っていない。自家薬籠中のものにしていて「よそから借りている」という感じがしない。
ようやくタイトルの意味がおぼろげに見えてくるという程度のスローペースで、いまのところ平和で淡々とした進行をしているが、行く手はどうも不穏だし、とにかくどうなるか分からなくて面白い。続きが楽しみだ。

【20下ラノベ投票/9784865547436】

『目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい』リュート

貴族令嬢送り届け編の後半ということで、艦隊戦から白兵戦まで派手なバトルが繰り広げられて非常に楽しかったな。ちょいちょい出てくる謎技術とか珍兵器とかこれぞスペオペという面白さがあるし、母船の購入を検討して、スピードがあるほうがいい、いや防御力重視だ、なんて語り合ってるのもワクワク感があって嬉しい。やはりスペオペの王道的な面白さが詰まった良作だよな。クール眼鏡アンドロイドの可愛さは宇宙一やで。

【20下ラノベ投票/9784040738932】

『オーク英雄物語』理不尽な孫の手

無職転生』の人の新作。豚顔で凶暴で他種族を犯して孕ませるタイプのオークたちから一身に尊敬を集める「オーク英雄」が実は童貞で、しかも何千年も続いた戦争が終わって平和になったためにオークたちはレイプが禁じられてしまい、正攻法で嫁探しするしかなくなったので旅に出る…という話。
「オークと女騎士」のミームをパロったキレのいい軽さと、作り込まれたファンタジーとしてのコクの深さを併せもった読み味はさすがという感じ。ボンドガール的に各巻で一人のヒロインを描いていくのかな。すごく面白いのにページ数が少なくて物足りなさすら感じたので早く続きを読みたい。

【20下ラノベ投票/9784040736655】

『王立士官学校の秘密の少女 イスカンダル王国物語』森山光太郎

辺境の島からやってきて王都の軍事学校「黒の門」に入学する男装の少女は、曰く付きの騎士の娘であり、かつてその圧倒的な軍才により島の内乱を鎮圧したが、しかし今はトラウマによりその才能は失われている。…というわけで、本編中の大半で怯えて震えている主人公が、騎士たちの確執と陰謀渦巻く「黒の門」をいかに生き延びるか、あるいはその才能を取り戻せるのか。また故郷の「兄様」と王国の「麒麟児」という二人の英雄を中心に大陸はどうなっていくのか。優秀な人物が次々に登場して英雄譚の趣きがあり、敵もわかりやすい憎まれ役のようでいて一本筋が通っていて良い。
焦らして焦らしてどかんといく、主人公の「覚醒」は否応なく盛り上がる。キャッチーな設定で非常に楽しい作品だった。前に読んだ作品は面白いながらもデコボコしている印象だったけど、本作はバランスが取れていて期待どおりの面白さだったな。

【20下ラノベ投票/9784049134599】

『僕は天国に行けない』ヰ坂暁

僕は天国に行けない (講談社タイガ)

僕は天国に行けない (講談社タイガ)

  • 作者:ヰ坂 暁
  • 発売日: 2020/12/15
  • メディア: 文庫

余命僅かな青年。カルト宗教と集団自殺。連続殺人。死後の世界はあるのか。何のために生きるのか。「死と宗教」というテーマに沿って描かれる青くさいミステリ。良いですね。何が良いってヘビースモーカー眼鏡ボク女が最高に良いですね。親友が事故死した直後に現れるヘビースモーカー眼鏡ボク女
主人公は彼女とともに親友の死の真相を探ることになる、という話。主人公がその親友に抱く崇拝にも近い愛情とか、主人公とヘビースモーカー眼鏡ボク女の恋愛とも言えない共犯者的な関係とか、めちゃくちゃツボにハマりますね。自嘲的で、露悪的で、しかし後ろ向きな希望があって。面白かったですね。

【20下ラノベ投票/9784065219287】

『ボクは再生数、ボクは死』石川博品

ボクは再生数、ボクは死

ボクは再生数、ボクは死

2033年の近未来、バ美肉おじさんがVR風俗で百合えっちしてるところから始まって此は何事ぞという感じだけど、主人公が風俗の金を稼ぐためにVR内で配信を始めて、最初は再生数4の弱小配信者から、GTAみたいな街中での殺し合い、仲間を引き連れての大戦争へと発展していくドライブ感。
現在のYouTuber/Vtuber文化をしっかり下敷きにしたディテール感と、近未来VR世界のSF的な描写力。この「あるあるw」と「ねーよw」のバランスの良さ。台詞も展開もとにかくテンポが良くて読みやすい。さすが俺たちのヒロシ。傑作でしたね。

【20下ラノベ投票/9784047363847】