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ライトノベルのタイトルの「長文」化について

「〜〜記」「主人公の肩書き + 主人公の名前」

一昔前、まだ俺がライトノベルを読んでいなかった頃の作品を調べてみると、「〜〜記」や「主人公の肩書き + 主人公の名前」といったものが多いように思う。

たとえば前者であれば『アルスラーン戦記』『ロードス島戦記』『ゴクドーくん漫遊記』『十二国記』『デルフィニア戦記』など、後者ならば『無責任艦長タイラー』『魔術士オーフェン』『魔法戦士リウイ』『魔獣戦士ルナ・ヴァルガー』など。

学園ラブコメに「戦記」やら「魔法戦士」やらはつかないだろうから、ファンタジー全盛期ならではの命名と言えるかもしれない。

ひらがな/カタカナ四文字

では最近の傾向はと言えば、たとえばひらがな/カタカナ四文字タイトルがある。これは漫画などでも流行りまくったもので、別にラノベに限った命名ではないが、だいたい萌え系ラブコメによく見られる。『まぶらほ』『とらドラ!』『かのこん』『まよチキ』など。

メリットとしてはインパクトがあること、覚えやすいこと。デメリットとしては、一見してどんな内容なのかが分からないこと、似たような語感になってしまって混乱してしまうこと、などが考えられる。

ひらがな4文字ライトノベル - Fall Cherry

とらドラ!1 (電撃文庫)

とらドラ!1 (電撃文庫)

「○○の××」「○○と××」

また別のよくある形式として、「○○の××」や「○○と××」といったタイトルがある。いや、こういうのはまったくごく普通の命名であって、あえて「形式」と呼ぶほどのものではないかもしれない。ぶっちゃけて言えば、良くも悪くもあんまり「凝ってない」タイトルだ。

例を挙げれば『キノの旅』『ゼロの使い魔』『灼眼のシャナ』『狼と香辛料』『鋼殻のレギオス』『生徒会の一存』などなど数えきれない。

メリットとしては、作品の内容を端的に表していて分かりやすいこと。デメリットとしては、インパクトに欠けることが考えられる。

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))

灼眼のシャナ (電撃文庫)

灼眼のシャナ (電撃文庫)

「(ヒロインのフルネーム)の××」

さて、そうした「○○の××」系タイトルの中から一つのヒット作が誕生する。『涼宮ハルヒの憂鬱』である。この「(ヒロインのフルネーム)の××」という形式については、フルネームであることから必然的にタイトルが長めになっており、これが「長文」化の第一歩なのではないかと思うのだが、もちろんこの時点では「長くしよう」というよりも「ヒロインの名前を印象づけよう」という意識のほうが強いだろう。

他の例としては『乃木坂春香の秘密』『織田信奈の野望』など。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

「○○と××と△△」

「○○の××」のさらなる発展形としては、『バカとテストと召喚獣』を初めとする「○○と××と△△」という形式も挙げられるが、この形式の究極系とも言える『俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長』がよりにもよってパクリ騒動を引き起こしてしまったことで、やや味噌がついてしまった感がある。

バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)

バカとテストと召喚獣 (ファミ通文庫)

俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 (電撃文庫)

俺と彼女が魔王と勇者で生徒会長 (電撃文庫)

「○○は××ない」

近年において最も流行したと言えるのが「○○は××ない」という形式である。否定形で終わるタイトルは『ブギーポップ』の昔から多かったのだが、2009年頃になってその数が爆発的に増えはじめた。

その先駆けとなったのが『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』である。いろいろと飾りがついて「長文」化もしており、以降の「長文」化の直接的な発端となったとも言える、まさに記念碑的作品である。形式は違うが、『とある魔術の禁書目録』(「○○の××」形式)なども、同じように飾りがついて「長文」化している例だろう。

ライトノベルの「○○ない」タイトルまとめ: ラノベ365日
ラノベのタイトルはバリエーションが少ない - ダ・ニッキ
作品名に「ない」を含むライトノベル - Fall Cherry

また、ヒロインのフルネームが入った『鳳凰堂みりあは働かない』『藤宮十貴子は懐かない』『白鷺このはにその気はない!』『宝城瑠璃華は止まらない! 』などには、『涼宮ハルヒの憂鬱』形式の影響が感じられる。

ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))

ブギーポップは笑わない (電撃文庫 (0231))

そして長文へ

現在。否定形タイトルもネタが尽きてきたのか、最近のタイトルはごく普通に「長文」化してきている。たとえば『魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる』『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』、そして極めつけ、『気がついたら女の子になって妹を守ることになったから、とりあえず揉んでみた』!

作品内容を過不足無く表し、インパクト満点で、書店でも目を引きやすい。まさに、ライトノベルのタイトルの「長文」化の最終到達点と言えるだろう。

題名が長いライトノベル(2010〜2011年版) - 平和の温故知新@はてな

魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる (ファミ通文庫)

魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる (ファミ通文庫)

俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる (GA文庫)

俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる (GA文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)



だが、磐石に思えるこれら長文系ラノベタイトルにも致命的な弱点がある。

あまりにも長すぎて略称を使わざるを得ないのだが、略称にすると区別がつかなくなってしまうのである。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』は「俺妹」、『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』は「俺修羅」、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている』は「俺ガイル」。はっきり言ってややこしすぎる。

また、『僕は友達が少ない』の略称「はがない」などは、せっかく「長文」化したのに再び「四文字」化しており、四文字系の弱点をも引き継いでしまっている。

僕は友達が少ない (MF文庫J)

僕は友達が少ない (MF文庫J)


追記:
おっとしまった、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』のことを忘れていた。この大ベストセラーの影響も、もちろんあると思われる。

lunaticprophet.org - このウェブサイトは販売用です! -  リソースおよび情報

というわけで

そろそろ「長文」にするのも限界だと思う。

二文字くらいでビシッと決めたほうが逆に目立つのではないだろうか?

ちなみに最近でいちばんインパクトがあったと思う表紙↓

成金 (メガミ文庫)

成金 (メガミ文庫)