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『このライトノベルがすごい!』のランキングを変えてほしい

今年も『このライトノベルがすごい!』が発売されました。既存の作品に贈られる「文学賞」的なものが少ないラノベ業界にあって、最も規模が大きく最も注目度が高いイベントといえるでしょう。

んで、毎年思うんですが、やっぱりWeb票って要らなくないですか???

宝島社の『この○○がすごい!』シリーズは、『このラノ』の他に『このミステリーがすごい!』や『このマンガがすごい!』があるんですけど、その二つはどちらも書評家なり書店員なりの「プロ」「マニア」にしか投票権が無いんですよね。一方で『このラノ』だけは、プロやマニアなどのいわゆる「協力者」の投票の他に、「Web上で誰でも投票できるアンケート」というのが加味されているわけです。

例として(今年の投票結果をいきなりネタバレするのもアレなので)昨年のトップ5を挙げてみます。

2021年のWebアンケートランキング

  1. ようこそ実力至上主義の教室へ
  2. 千歳くんはラムネ瓶のなか
  3. 探偵はもう、死んでいる。
  4. お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件
  5. 本好きの下剋上

2021年の協力者ランキング

  1. 春夏秋冬代行者
  2. ミモザの告白
  3. プロペラオペラ
  4. 千歳くんはラムネ瓶のなか
  5. 佐々木とピーちゃん


Webアンケートのほうで選ばれるのは、すでにアニメ化されて放送されている、あるいはアニメ化の予定が決まっているような人気作品が多いです。どちらかというと「私はこの作品が好きなんです!」と推しへの愛情をアピールするような場になっていて、何年にも渡って同じ作品が票を集める傾向があります。

協力者が選ぶのは基本的に「もっと評価されるべきだ」「もっと売れてほしい」という作品です。つまりアニメ化しているような作品は「すでに評価されているから」ということで避けられ、また「この作品は去年投票したから今年は別の作品に投票しよう」という意識も働くので、毎年の順位の入れ替わりが激しいです。

問題は、このまったく傾向の異なる二つの投票結果がまとめられて、無理やり一つのランキングにされていることです。一般に「このラノ1位」とか言われて大きく扱われるのは、その「合算ランキング」のほうになります。「合算ランキング」の順位は飛び抜けて注目度が高く、その順位だけがメディアに取り上げられて広まっていきます。

2021年の合算ランキング

  1. 千歳くんはラムネ瓶のなか
  2. 春夏秋冬代行者
  3. ようこそ実力至上主義の教室へ
  4. ミモザの告白
  5. プロペラオペラ


見てのとおり、配分としては協力者票のほうが重いのですが、そこにぜんぜん毛色の違う作品が混じってくるかたちになっています。いかにもどっちつかずで中途半端です。

ちなみに『千歳くんはラムネ瓶のなか』は一昨年も1位を獲っていますし、『ようこそ実力至上主義の教室へ』は2017年と2022年にアニメ化されている作品です。協力者からすると「もう人気あるんだから貴重な上位の枠を奪うなよ」という感じですし、Web投票者からすると「よう実の得票数は圧倒的なのにどうして合算では1位を取れないんだ」と不満を募らせることになります。いびつなランキングが不和を生んでいるのです。

このラノ』は何のためにこんなことをしているのでしょうか?

私は協力者の投票結果のほうが『このラノ』の趣旨に沿っていると思っています。『このラノ』はガイド本であり、その役割は「まだ知られていない作品をラノベ初心者に向けてオススメすること」だからです。同じ作品を毎年のように1位にしてプッシュすることに何の意味があるのかわかりません(『このラノ』側もそう思っているから「殿堂入り」というシステムを採用しているのでしょうけど…)。

ただまあ、別に編集部が「このラノはマイナー作品を発掘する企画ではなく純粋な人気投票だよ!」というならそれでもいいんですよ。どちらにせよちゃんと企画としての方針を統一してほしい。せめて無理やり「合算」するのはやめてほしいと思うのです。よろしくお願いします。

余談。いちおう断っておくと、私は何年も前に協力者を辞退しているので、去年も今年もWebから投票していました。自分が協力者だから「協力者を優遇しろ」と言っているわけではありません。あしからず。