どれくらい増えたのか?
まずはライトノベルのアニメ化作品一覧 - Wikipediaをもとに、2010年以降のラノベアニメの年間作品数を数えてみました。「テレビアニメ」しか数えていないので劇場版やOVAは除外です。ちなみに「新作」というのは要するにシリーズ二期とか三期とかを除外した数です。2022年の数値はこれから始まる秋アニメの数も加算しています。数え間違いがあったらごめんなさい。
年 | ラノベアニメ作品数 | うち新作 |
---|---|---|
2010年 | 13作品 | 12作品 |
2011年 | 19作品 | 18作品 |
2012年 | 25作品 | 19作品 |
2013年 | 31作品 | 22作品 |
2014年 | 27作品 | 19作品 |
2015年 | 27作品 | 21作品 |
2016年 | 19作品 | 15作品 |
2017年 | 21作品 | 18作品 |
2018年 | 26作品 | 19作品 |
2019年 | 23作品 | 19作品 |
2020年 | 19作品 | 13作品 |
2021年 | 35作品 | 25作品 |
2022年 | 33作品 | 24作品 |
体感的に「最近アニメ化多いなあ」と思って調べはじめたんですけど、実際に数字を見ると思った以上に増加していて驚きましたね。全体的に波があるとは言え、2018年から2020年まで徐々に落ち込んでいってからの、いきなり連続で30作品超え、というのはインパクトがあります。
TVアニメ全体の制作本数も増えているのか?と思って調べてみましたが、肝心の2021・2022年がまだ集計されていなかったので何とも言えませんでした。ただ、過去の推移を見てみると、2018年〜2020年に落ち込んでいるところは重なるものの、それ以外のところでは「テレビアニメが増えればラノベアニメも増える」と言えるほど、わかりやすく連動しているわけではないようでした。
さて、ラノベアニメの増加がとりあえず立証されたところで、その理由を考えてみましょう。
ラノベのコミカライズの増加
「ラノベのアニメ化の増加」の前段階として、2017年ごろから「コミカライズ」、つまり「ラノベの漫画化」の増加が話題になっていました。
ラノベニュースオンラインによれば、
2017年に連載がスタートしたコミカライズ作品は、昨年の1.5倍を超えて130作品に迫る新連載がスタート。うちWEB発となるライトノベルを原作とした作品の割合は約8割という驚異的な数字を残した。
ライトノベルニュース総決算2017 今年も続いた創刊ラッシュ、コミカライズも130作品に迫った一年 - ラノベニュースオンライン
2018年は昨年を軽々と追い抜く新連載200作品超えを果たしている。上半期の時点で100作品を超え、その勢いのまま年末まで駆け抜けた。コミカライズの作品規模は一昨年から比較すると約3倍と凄まじい速度で広がりをみせている。
ライトノベルニュース総決算2018 コミカライズ新連載は200作品超、1,000万部突破作品が2シリーズ登場した一年 - ラノベニュースオンライン
2019年もコミカライズの勢いは一切衰えることはなかった。2017年からの3年間で、600本近いコミカライズの新連載は、コミック業界としての大小はあるにせよ、ラノベ側からはまさに「怒涛」という言葉に尽きる。昨年の200作品を遥かに超えた270作品以上の新連載が動き出し、あらゆる漫画媒体でラノベ原作のコミカライズを見ないことの方が少ないくらいである。
ライトノベルニュース総決算2019 年間コミカライズ新連載は300作品目前、ラブコメ作品への注目度が高まった一年 - ラノベニュースオンライン
ということで、2017年には130作品、2018年には200作品、2019年には270作品ものコミカライズ作品が新しく連載開始していたというわけです。
「ラノベ」と「コミカライズ」の関係の変化
昔は人気作品だけがコミカライズされていましたよね。コミカライズは、アニメ化に向けての一つのステップ、あるいはアニメ化合わせで開始するもので、そのためコミカライズ作品もそれほど多くはありませんでした。
しかし「紙の漫画雑誌から漫画アプリへの移行」と「なろう系ブームの漫画業界への波及」によって、その状況は変わっていきます。
漫画業界では、Web漫画サービスや漫画アプリが主流となり、紙の雑誌にあったような連載数の上限がなくなってきています。それどころか、漫画アプリでは毎日なにかしらの作品を更新する必要があるために、さらに膨大な弾数が求められるようになっています。そこで原作供給源として白羽の矢が立ったのがライトノベルだったのでしょう。
特に「なろう系」作品が多くコミカライズされているのは、もちろんなろう系アニメがいくつもヒットしていて需要が高まっているということもあるでしょうが、加えて「膨大な原作ストックがある」ということも大きいのではないでしょうか。
従来のラノベであれば刊行は不定期で、作者がスランプにでも陥ればどんなヒット作でも年単位で新刊が出ないことがある、よってコミカライズのほうも先行き不透明な中で連載を続けなければいけない、というような状態になりえました。しかしWeb系ラノベは「Web版」という原作があるために書籍の刊行ペースも早いですし、仮に書籍化のほうが途中で打ち切られてしまってもコミカライズ側は連載を続けることが可能になっているのです。
近年では「書籍化」と「漫画化」が同時に行われることも増えてきました。これも「原作」があるからこそできる力技と言えるでしょう。
「コミカライズ」が当たり前となった時代
ラノベ業界側でも「書籍化だけして終わりではなくコミカライズなどもやって多角的に売り出していくのが当たり前」「書籍化とコミカライズはワンセット」という認識になってきているように思います。Web小説サイト上で開催される新人賞コンテストでも「優秀作品は書籍化だけでなくコミカライズを確約」というものが出てきています。
「売れたからコミカライズする」から「売るためにコミカライズする」への転換、とでも言えばいいでしょうか。
「Web小説→ラノベ→漫画→アニメ」とステップを踏んでメディアミックスされていくような形ではなく、「Web小説」という原作を売り出すために「書籍化」と「漫画化」が同列に進行している、というような形になっているように思うのです。
コミカライズからのアニメ化
そして現在、「これは『ラノベのアニメ化』というより『ラノベのコミカライズ作品のアニメ化』なのではないか」と思われる事例が増えています。
たとえば、アニメ公式サイトにおいて、原作を出している出版社ではなく、コミカライズを担当している出版社の名前がクレジットされていたり。たとえば、ラノベレーベルの公式アカウントではなく、コミカライズを担当している編集部のアカウントでアニメ化の発表がなされたり。たとえば、アニメ化が決まった時点でとっくに原作の刊行が止まっており、コミカライズ作品だけが連載中であったり。
どう見ても「ラノベのコミカライズ作品のアニメ化」なんですよね。
もちろん、従来どおりの「ラノベのアニメ化」も無くなったわけではありません。つまり「売れたラノベがアニメ化される」ルートに加えて、「ラノベが売れなくてもコミカライズ作品が売れていればアニメ化される」ルートが開通して、単純にアニメ化チャンスが倍増しているというか、そんな感じになってるんじゃないかなと思うわけです。
あとは
アニメ業界側からすると、海外向けのアニメ市場が拡大しているなかで、海外人気の高いなろう系作品をアニメ化したがっている…みたいな事情もあるんでしょうか。そのあたりはよく知らないので軽く触れるだけで済ませますが。