「ライトノベルは一人称文体で書かれているもの」…というイメージがあるそうです。
簡単に説明しますと、「一人称文体」とは、小説の「地の文」が一人称で書かれているものを指します。たとえば「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」とかですね。これが「メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。」だと三人称文体ということになります。
ライトノベルで言えば、『涼宮ハルヒの憂鬱』は徹底してキョンによる一人称ですが、『とある魔術の禁書目録』だと「上条は〜〜」などと三人称で書かれています。『ソードアート・オンライン』は、主人公であるキリトの視点で書かれているときだけ一人称で、他のキャラの視点では三人称。『魔法科高校の劣等生』は三人称の多元視点です。
まあこうしてヒット作だけを見ても「一人称ばかり」とは言えないわけですが、それだけだと「ごく一部の例外にすぎない」などと文句を言う(けど自分できちんと調べるわけでもない)人が出てきそうなので、とりあえず直近で私が読んだライトノベルを五十作品ほど、それぞれ一人称か三人称かをチェックしてみました。
ちなみにぶっちゃけますと、「一人称が多いか三人称が多いか」という問いに対して、私は直感だけで答えることができません。だって小説を読んでいるときに「人称」なんてまったく気にしないですからね。もしかすると読み終えた直後ですら、いま読んでいた本が一人称で書かれていたかどうかを覚えていないかもしれません。
なので、個人的にもどういう結果が出てくるか楽しみだったりします。それでは見ていきましょう。
タイトル | 人称 | あらすじ |
---|---|---|
クロニクル・レギオン | 三人称 | 過去の偉人たちが復活して異なる歴史を歩んだ世界を舞台とした現代異能戦記もの。 |
死んでも死んでも死んでも死んでも好きになると彼女は言った | 一人称 | ひと夏のボーイ・ミーツ・ガールを描いた切ない恋愛もの。 |
この大陸で、フィジカは悪い薬師だった | 三人称 | モンスターたちを治療しながら旅をする獣医系ファンタジー。 |
キミもまた、偽恋だとしても。 | 三人称 | 互いにオタクであることを隠しながら付き合い始めた(仮)恋人を描く青春恋愛もの。 |
天鏡のアルデラミン | 三人称 | アニメ放送中の大人気戦記ファンタジー。 |
ドウルマスターズ | 三人称 | 『魔法科高校の劣等生』の作者が贈る巨大ロボットもの。 |
学園陰陽師 安倍春明、高校生。陰陽師、はじめました。 | 三人称 | 安倍晴明の子孫である主人公の陰陽師学校での生活を描く学園退魔もの。 |
ヒマワリ:unUtopial World | 三人称 | 不登校引きこもりの眼鏡っ娘が異能を操る不良どもを素手でボコボコにする異能バトル。 |
0.2ルクスの魔法の下で | 一人称 | 腹黒優秀な主人公が、異世界へ行きたいヒロインに協力することになる、ローファンタジーな青春もの。 |
異世界拷問姫 | 三人称 | 異世界召喚から始まるエロティックでグロテスクなダークファンタジー。 |
エイルン・ラストコード | 三人称 | 人類滅亡の危機にアニメの中からヒーローがやってくる、ケレン味に溢れるロボットもの。 |
ナイトメア☆ナイトパーティ! | 三人称 | 不思議な街を舞台に少女たちの活躍を描く、可愛らしい雰囲気の魔女っ娘ファンタジー。 |
この恋と、その未来。 | 一人称 | 性同一性障害の友人への恋心に悩む少年を描いた青春もの。 |
東京侵域:クローズドエデン | 三人称 | 怪物が跋扈する死地と化した東京に命がけで侵入するバトルアクション。 |
我がヒーローのための絶対悪 | 三人称 | 幼馴染のヒーローを救うために、悪の怪人となった主人公を描くダークヒーローもの。 |
弱キャラ友崎くん | 一人称 | 完璧美少女に発破をかけられ、根暗なオタクがリア充を目指して努力を重ねる、ハウツー系な青春コメディ。 |
廃皇子と獣姫の軍旗 | 三人称 | 皇太子の座を追われた主人公が、獣人たちの協力を得て挽回を目指す戦記ファンタジー。 |
アンデッドガール・マーダーファルス | 三人称 | 人狼や吸血鬼が存在する世界を舞台に、不気味な探偵とその助手の活躍を描く幻想ミステリ。 |
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? | 三人称 | たったひとり生き残った人類と、兵器として死にゆく運命の少女たちの交流を描いたファンタジー。 |
ストライクフォール | 三人称 | 巨大ロボットに搭乗して行う架空のスポーツと、それに打ち込む兄弟を描く青春SF。 |
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか | 三人称 | 言わずとしれたWeb小説発のダンジョン・ファンタジー。 |
堕落の王 | 一人称 | 堕落を極めた魔王とその部下たちを、それぞれの視点で描いていく異世界ファンタジー。 |
ロクでなし魔術講師と禁忌経典 | 三人称 | 魔法の知識だけは一流のダメ人間を主人公とした教師ファンタジー。 |
七日の喰い神 | 三人称 | ダーティな祈祷師と、彼に弱みを握られたツクモガミの少女、二人の戦いを描く退魔もの。 |
近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係 | 一人称 | 主人公の家に下宿することになった親戚の女の子との恋を丁寧に描いた青春恋愛もの。 |
呪術法律家ミカヤ | 三人称 | 凶悪犯罪者の弁護をすることになった新米弁護士の少女が、二人で事件の真相を追いかける法廷ファンタジー。 |
エロマンガ先生 | 一人称 | アニメ化決定。ラノベ作家の主人公とイラストレーターの妹のドタバタを描くラブコメ。 |
俺を好きなのはおまえだけかよ | 一人称 | 複雑に絡み合った人間関係を小気味良く描いた、アンチお約束ラブコメ。 |
偽る神のスナイパー | 三人称 | ゾンビが地上を支配する近未来を舞台に、トラウマに苦悩する少年スナイパーを描くSFバトルもの。 |
ウォーロック・プリンセス 戦争殺しの姫君と六人の家臣たち | 三人称 | 戦車に乗って紛争に介入するお姫様とその家臣たちを描くファンタジー。 |
いでおろーぐ! | 一人称 | 恋愛至上主義を打破しリア充どもを打倒することを誓い合った二人の恋愛模様を描いた青春ラブコメ。 |
絶対ナル孤独者 | 三人称 | 異能を使って欲望のままに暴れまわる敵と、異能を以てそれらと戦う秘密組織を描いた、『SAO』作者による異能バトル。 |
城下町は今日も魔法事件であふれている | 三人称 | 魔法世界のちょっとした事件を騎士と魔女が解決していくファンタジーミステリ。 |
カフェ・ド・ブラッド | 三人称 | 吸血鬼向けのカフェで働く人間の主人公が次第に争いに巻き込まれていく伝奇風の異能バトルもの。 |
りゅうおうのおしごと! | 一人称 | 若くして竜王となったプロ棋士と、そこに弟子入りにやってきた少女の成長を描く、いま最も熱い将棋ラノベ。 |
LOST 風のうたがきこえる | 一人称 | 死んだ幼馴染の音楽をVOCALOIDを使って広めていく主人公の、ちょっと不思議で切ないラブストーリー。 |
漂流王国 | 三人称 | 異世界から現代日本に国ごと転移してきた人々のために、何故かアイドルをプロデュースすることになるファンタジックコメディ。 |
リーングラードの学び舎より | 一人称 | 義務教育導入プロジェクトに教師として参加することになった魔法使いの奮闘を描く、ファンタジーが舞台の教師もの。 |
一〇八星伝 天破夢幻のヴァルキュリア | 三人称 | 水滸伝をモチーフとした中華風異能バトル。 |
浪漫邸へようこそ | 三人称 | 大正時代を舞台に、貧乏華族の令嬢と優秀な大学生の恋を描いた恋愛もの。 |
雨の日も神様と相撲を | 三人称 | 身体は小さいながらも頭を使って相撲を取る主人公が、何故だかカエルの神様に相撲を教えることになる青春相撲ミステリ。 |
グラウスタンディア皇国物語 | 三人称 | 聡明な皇女とその軍師が「皇国七聖」と呼ばれる仲間とともに活躍する戦記ファンタジー。 |
イキシアノ戦物語 | 三人称 | 最強の騎士と最高の軍師が、敵同士として相見えながらも、実は互いに好き合っていて…という戦記ファンタジー。 |
夜明けのヴィラン | 三人称 | 癖の強いヒーローたちと強大なヴィランが入り乱れる、アメコミをモチーフとした異能バトル。 |
アウトロー×レイヴン | 一人称 | 伝説の賞金稼ぎとその弟子が、美しき姫のために銀河を駆けまわる、オーソドックスなスペースオペラ。 |
偉大なる大元帥の転身 | 三人称 | 異世界に召喚されて魔王軍の大元帥をやっていた主人公が、正体を隠して人間の学校に入学しなおすファンタジーコメディ。 |
セブンサーガ | 三人称 | 復讐のために子連れで旅する主人公を描く、中世イギリスをモチーフとした冒険ファンタジー。 |
妹さえいればいい。 | 三人称 | 『はがない』の平坂読による、ラノベ作家を題材にした日常系ラブコメ。 |
最果てのパラディン | 一人称 | 異世界転生して骸骨剣士、聖女のミイラ、大賢者の幽霊に育てられた主人公の旅立ちと冒険を描くファンタジー。 |
皿の上の聖騎士 | 三人称 | 優秀な騎士である姉弟が祖国を追われながら霊獣を倒すことを目指すファンタジー。 |
ということで調査の結果、「一人称」は50作品中14作品でした。
あらすじを読んでいただければ分かると思いますが、軽妙な語り口のラブコメや、思春期の繊細な心理を描いた恋愛ものは一人称で書かれることが多く、それ以外の作品は三人称で書かれることが多いようです。まあそりゃそうですよね、と言うしかない、つまらない結果になってしまいました。
ともあれ、そういうことですので今後は「ライトノベルは一人称文体ばかりだ」なんて言わないであげてくださいね。よろしくお願いします。