これは大ヒットした「ビリギャル」のポスターなんだけど、原作の書籍の段階からそうなんだけど、ほぼストーリー全部説明しちゃってるわけですよ。こんくらいやらないとその場で「面白そうだな、じゃあ見ようか」っていうお客さんを呼び込めない。https://t.co/GQaUhlzxSd
— cdb (@C4Dbeginner) 2016年5月10日
このツイートをRTして「ラノベの長文タイトルも同じだよね」とか言っている人たちを見かけた。
そういえば「最近のラノベはタイトルで内容を全て説明している」「最近のラノベはタイトルを読めばオチが分かる」などと豪語する人も散見される昨今である。
はてさて、ラノベの長文タイトルは、本当に作品の内容を詳しく説明しているのだろうか。
いくつかの有名作品を例に挙げてみよう。
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俺の妹がこんなに可愛いわけがない
- 作者: 伏見つかさ,かんざきひろ
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2008/08/10
- メディア: 文庫
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さて、皆さんもご存じだろうが、いちおう『俺妹』のあらすじを説明すると、ギャル系で小生意気な妹が、実は隠れオタクのエロゲー好きで、その秘密を打ち明けられた主人公は、嫌々ながらも妹にあれこれと協力していく、という話である。分かるかよ。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
- 作者: 渡航,ぽんかん8
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/03/18
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さて、こちらも説明しておくと、『俺ガイル』はわりとシリアスな青春恋愛もので、性格に問題のある主人公が、生徒会の手伝いでイベントの運営に駆り出されては、恋愛関係やスクールカースト的なトラブルを解決するのに奔走することになる、という話である。分かるかよ。
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)
- 作者: 大森藤ノ,ヤスダスズヒト
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2013/01/16
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さて、読んだ人は知っているだろうが、『ダンまち』における最大の「出会い」は開始1ページで終わる。あとはひたすらヒロインを追いかけて強くなっていく主人公を描いた冒険ファンタジーである。ちなみにダンジョンにまったく入らない巻も多い。分かるかよ。
問題児たちが異世界から来るそうですよ?
問題児たちが異世界から来るそうですよ?YES! ウサギが呼びました! (角川スニーカー文庫)
- 作者: 竜ノ湖 太郎,天之有
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2011/03/31
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と思ったら大間違いで、やはり異世界「に」召喚された少年少女が、チームを組んで戦っていくバトル・ファンタジーである。もちろん、異世界側から見れば、主人公たちが元いた世界こそ「異世界」なので、タイトルに偽りがあるわけではないが…やっぱり分からんだろ。
男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。
男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。 (1) ―Time to Play― (上) (電撃文庫)
- 作者: 時雨沢恵一,黒星紅白
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2014/01/10
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下ネタという概念が存在しない退屈な世界
勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。
俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件
- 作者: 赤城大空,霜月えいと
- 出版社/メーカー: 小学館
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これらはいずれも作品の土台となる設定を説明しているだけで、作品内容のすべてを説明しているわけではないのだ。
まとめ
長文タイトルには三種類があるのだと思う。
1. 雰囲気重視なタイトル
作中の印象的なフレーズをそのままタイトルにしてみたり、突飛なキーワードを並べてみたりしたもの。インパクトはあるけれども、作品内容をそのまま表しているわけではない。役割的にはキャッチコピーに近いかもしれない。
2. 物語の前提を説明したタイトル
先述したとおり、これは「いったいどんな話になるんだ?」と興味を煽る効果を狙っているのであって、「どんな話か分かっていないと安心して買えない」とはむしろ正反対だと思う。あえて言うなら映画の予告編に近い。
3. オチまで説明したタイトル
これの代表格が『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』なわけだけど。
いやさあ、このタイトルを見て「へえ、受験を題材にした映画なのね…私、最後にはちゃんと合格する話じゃないと観たくないんだけど…あ、合格するの? じゃあ観る!」なんて人がいるのだろうか。
普通は「ええっ、どうやって合格したの!?」と思うんじゃないのか。
要するに「オチは決まっているんだから過程で興味を引こう」という話でしかない。ダイエット広告みたいなものである。
というわけで、「最近のラノベはタイトルで内容を全て説明している」とかいうのは、「最近のラノベは主人公がピンチに陥るのがダメらしい」と同じような「『無知で繊細な若者』幻想」に過ぎないと思われる! 以上、解散!