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ライトノベルネタブログ

「エヴァSS」から「小説家になろう」までのWeb小説年表

出来事 備考
1990 小説『紺碧の艦隊』発売 90年代を通じて架空戦記*1ブームが起きる。のちの二次創作SSへの影響が指摘される。
1995 アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』放送
1996 SS投稿サイトとエヴァSSの増加 投稿サイトと言ってもテキストを預かって公開するだけのかたち。後に(1999年ごろ?)『楽園』のようなWeb小説検索サイトも整備されていく。
1997 映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』公開 納得のいかない結末を補完するかたちでSSがさらに増加する。
MMORPGウルティマオンライン』開始 ソードアート・オンライン』などへと影響を与える。
1998 ドリーム小説*2が流行 この頃にJavaScriptを使った名前変換スクリプトが配布された。2002年頃に「DreamMaker」というCGIが広まりさらに流行。
1999 掲示板サイト「2ちゃんねる」開設
ゲーム『Kanon』発売 二次創作SSで人気。U-1。
2000 このあたりまでエヴァSSの第一次ブーム 「逆行*3」「断罪*4」「スパシン*5」などが流行。
小説投稿サイト「Arcadia」開設
個人サイトにて『Deep Love』連載開始 2002年にスターツ出版から書籍化されて第一次ケータイ小説ブームが起きる。
2001 2ch葉鍵板にて『葉鍵ロワイヤル』連載開始 小説『バトル・ロワイアル』のパロディで、様々な作品のキャラが殺し合いをするというもの。野球・特撮・漫画・ラノベなど、多くの板で同様のものが作られた。大抵はリレー小説形式。
個人サイトにて『雨の日に生まれたレイン』連載開始 2005年にアルファポリスから『レイン』というタイトルで書籍化される。当時の人気Web小説。
2002 個人サイトにて『ソードアート・オンライン』連載開始 2009年に電撃文庫から書籍化されて大ヒットとなる。
2chエヴァ板にてSSが流行する 「憑依*6」「転生*7」などが流行。
2ch軍事板にて『自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた』スレ開始 『ゲート 自衛隊 彼の地にて斯く戦えり』などへと影響を与える。
2ch漫画サロン板にて『たまにはヤムチャが活躍する物語を考えようぜ』『俺達で「バキ死刑囚編」をつくろうぜ』スレ開始 ヤムスレ・バキスレ。特にバキスレは漫画総合SSスレとして発展していく。
Webサイト「SSこんぺ」開始 Kanon月姫などのテーマで二次創作SSを集めた競作企画。後にオリジナルSSのコンペへと変遷し、プロ作家も輩出する。
2004 小説投稿サイト「小説家になろう」開設
2ちゃんねるVIP板が作られる 2000年代後半に2chで最大の人口を誇り、さまざまな文化を生み出した。
2ch独身男性板にて『電車男』の書き込みが始まる 2004年に新潮社から書籍化、2005年に映画化・ドラマ化。2chにおける創作実話*8スレの流れを作る。
魔法のiらんどにて『天使がくれたもの』連載開始 2005年にスターツ出版から書籍化されて第二次ケータイ小説ブームが起きる。
2005 ふたばちゃんねるにて「素直クール*9が生まれる VIP板で「新ジャンル」スレ*10が流行する。
魔法のiらんどにて『恋空』連載開始 2006年にスターツ出版から書籍化される。
2006 アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』放送 VIP板ハルヒらきすたけいおんあたりを中心に会話形式の二次創作SSが増加する。
アニメ『ゼロの使い魔』放送 二次創作SSで人気。「(異世界への)召喚」「内政*11」などが流行。現在の異世界転生ブームに直接的な影響を与える。
2chVIP板にて『ライアンですが、場車内の空気が最悪です』スレが立つ 『ライアン』が元祖かは分からないが、VIP板ドラクエSS*12が流行する。
リーフ出版「ZIGZAG NOVELS」創刊 公式サイトに小説を掲載して、人気のあった作品だけを書籍化する、という形態のレーベル。2007年にリーフ出版が倒産。
2007 2chVIP板にて『刺身の上にタンポポのせる仕事の採用試験に受かったお!!!!!』『やる夫が小説家になるようです』スレが立つ VIP板でやる夫スレ*13が流行する。
2ch漫画サロン板にて『あの作品のキャラがルイズに召喚されました』スレ開始
イースト・プレスがWeb小説の書籍化に乗り出す*14 アルファポリスと並んで「書籍化ブーム」以前からWeb小説の書籍化を手がけている出版社。
2008 VIP板ドラクエSSがドラクエに限定されない魔王勇者SSへと発展していく 2008年『魔王はなかまをよんだ!しかしだれもあらわれなかった!!』など。
Arcadiaにて『腕白関白』連載開始 歴史もの・憑依もの・内政ものの流行に大きな影響を与える。
2ch漫画サロン板にて『もしもヘタリアの世界に2chがあったら』スレ開始 「もし○○に2chがあったら」系ネタスレと二次創作SSが融合。「ミサカネットワーク」などと合わせて「2ch風SS」を開拓する。
2009 小説『アクセル・ワールド』『ソードアート・オンライン』発売 2009『AW』『SAO』→2010『まおゆう』→2011『ログホラ』『魔法科』という流れで、出版業界の注目が小説家になろうに集まっていく。
2chVIP板にて『まおゆう魔王勇者』連載開始 魔王勇者SS。2010年にエンターブレインから書籍化。
エブリスタにて『王様ゲーム』連載開始 同年に双葉社から書籍化。エブリスタでサスペンス系*15が流行する。
小説家になろうでいわゆる「異世界トリップ」がランキング上位を占めはじめる
2010 小説家になろう」から派生して二次創作専用サイト「にじファン」が開設 小説家になろうに投稿された二次創作をまとめて隔離するサイト。これ以前は一次創作と二次創作が混在していた。
小説『悪ノ娘』発売 いわゆる「ボカロ小説*16」の嚆矢。ニコニコ動画で人気のあったボカロ曲が小説化されたもの。
アルファポリスが「小説家になろう」からの書籍化を本格化する この年に小説家になろうから『リセット』を書籍化したあたりがターニングポイントか。同社の看板作品『ゲート』の出版年でもある。
2011 林檎プロモーション「フェザー文庫」創刊 小説家になろうからの書籍化を行うレーベルの草分けだが、あまりの評判の悪さに黒歴史となっている。
小説『ログ・ホライズン』発売 エンターブレインがWeb小説の書籍化に本格参入する*17アルファポリスなどに倣って大判サイズでの刊行となり「Web小説の書籍化=大判サイズ」の流れを作る。
アニメ『TIGER&BUNNY』放送 Pixivにて、2ch風SSである「シュテルンちゃんねる」が流行する。さまざまな作品で「○○ちゃんねる」が作られていく。
2012 「にじファン」閉鎖 小説家になろうでは二次創作が完全に禁止となる。「ハーメルン」「暁」などの受け皿が作られる。
主婦の友社ヒーロー文庫」創刊 小説家になろうからの書籍化ブームが本格化する。2013年「MFブックス」を経て、2014年に「GCノベルズ」「モンスター文庫」「HJノベルス」「アース・スターノベル」などWeb小説専門レーベルの創刊ラッシュを迎える。

断っておくと、私は二次創作SSだとか「なろう」だとかに、もともと親しんでいた人間ではない。二次創作SSは漫画サロン系にちょっとだけ、「なろう」は2010年くらいから数年ほど出入りしていた、という程度なので、この年表は自分が体感したことではなくて、「後からググってまとめたもの」にすぎない。そういう意味では正確性に欠けていると思うが、今後の議論の叩き台にでもなれば幸いである。

二次創作SSで人気だった作品

たぶん挙げればキリがないんだろうけど、

あたりが語られているのをよく見かける。
(女性向けがごっそり抜けてるけど…)

*1:太平洋戦争や戦国時代を舞台に歴史のifを描くジャンル。特に現代の人物が太平洋戦争前にタイムスリップして歴史改変をするものが多い。

*2:夢小説。主人公の名前を自分の名前に変更してキャラクターとの疑似恋愛を楽しめる小説のこと。女性向けの文化。

*3:主人公が最終回の記憶を持ったまま物語の冒頭にまで「逆行」してストーリーをやり直すというもの。

*4:原作で気に入らないキャラを「断罪」するように不幸にしたりするもの。アンチ。ヘイト。

*5:スーパーシンジの略。原作主人公がチート能力を得たりして超人化するもの。U-1・HACHIMANなど亜種あり。

*6:現実世界にいた主人公が、原作内のキャラに「憑依」して精神的に乗っ取る、あるいは共存するというもの。

*7:憑依と似ているが、現実世界の主人公がいちど死んで、原作内に「転生」するという形を取る。必ずしも原作キャラを必要としない。

*8:実話風の創作のこと。他に『ゲーセンで出会った不思議な子の話』などが有名。また「げんふうけい」名義で2chVIP板にSSを投稿していた三秋縋が2013年にメディアワークス文庫からデビュー。

*9:ツンデレの対義語として考案された萌え属性。常にクールに照れを見せずにデレる。クーデレと同義(最近は別物とされることも多い)。

*10:2005年からのツンデレブームから派生して、新しい萌え属性を作ろうという機運が高まり、SS形式で様々な萌え属性が開拓されていった。

*11:貴族などに転生したりして、現代知識を駆使して異世界を改革するもの。

*12:他に2006年『勇者の代わりにバラモス倒しに行くことになった』2009年『片乳首出したおっさんの後つけたら天空の剣見つけたwwww』など。

*13:「やる夫」を始めとした様々なAAを使った台詞劇。初期は学習漫画のような内容が多かったが、歴史上の人物を描くもの、既存のゲームのストーリーをなぞるもの、2012年『ゴブリンスレイヤー』のような一次創作など、独自に発展していく。ただし、VIPは規制がきついためにやる夫スレに向かず、やがて外部の専用BBSなどへ移住していくことになる。

*14:2007年『華鬼』2008年『wonder wonderful』など

*15:2012年『奴隷区』2013年『復讐教室』など。

*16:2012年『カゲロウデイズ』2013年『小説 千本桜』『ミカグラ学園組曲』2014年『告白予行練習』など。

*17:2012年『オーバーロード』『ニンジャスレイヤー』2013年『幼女戦記』など。

「ギャップ萌え」の功罪

「萌え」という言葉が一般に普及したのはいつ頃からだっただろうか。
Wikipediaによると『電車男』がヒットした2005年前後のようだ。
私の体感としてもそのくらいだったと思う。

さて、一般人に対して「萌え」を説明するとき、あなたはどうするだろうか?
2005年ごろ、ちょうどブームになっていた概念がある。

それが「ツンデレ」!

人々はこの「ツンデレ」を例に挙げて「萌え」を説明した。
「ツンツンしていた子がデレデレしはじめたらギャップがあって可愛いだろ? その気持ちが萌えだよ!」
みたいな。

このような例示とともに「萌え」文化は普及していった。
「ギャップ萌え」の分かりやすさがオタクの地位向上に貢献したと言っても過言ではないだろう。

しかし!

「ギャップ萌え」があまりにも分かりやすかったために、すっかり「萌え=ギャップ萌え」と勘違いされていないだろうか!?

姉は何故かぐーたら!
妹は何故かしっかり!

かっこいいヒロインは実は可愛いもの好き!
かわいいヒロインは実は腹黒!

ぶっきらぼうな女性は意外に優しく!
頼りない女性ほど意外にしたたか!

あまりにも定番すぎてすっかりお約束と化してしまったギャップ萌え。
もはやどこに「ギャップ」が残っているというのか。

特にかっこいいヒロイン=可愛いもの好きとか100%くらいの確率じゃないですか?
もっとかっこよさを貫きとおしたヒロインを見たくないですか?

正統派があってこそ、たまのギャップがまた映える!

というわけで、私はギャップに囚われないヒロインを待っています。
よろしくお願いします。

ライトノベルは月に200冊発売されています

ということでアンケートを取りました。

所詮はTwitterアンケートなのですが、やはりライトノベルの規模を小さく見積もっている人はそこそこいるのでは?と思ったので、そのあたりについての解説をさせていただきます。

まず最初に断っておきますが、これは「200冊も出ているのだからせめて100冊くらいは読め」といったような話ではありません。

いまから書くのは「規模感を把握してくれ」という話です。

たとえば2018年6月に国内で発売されたゲームは98本。
https://www.famitsu.com/schedule/calendar/all/2018/06/-/

2018年7月期に新しく始まるテレビドラマは44本。
https://thetv.jp/program/selection/251/

2018年6月に公開された映画は95本。
https://www.cinematoday.jp/movie/release/201806?format=text

2018年夏アニメは64本。
https://anime.eiga.com/program/

2017年に発売されたコミックスは1万2461点だから月あたりで約1000冊。
https://twitter.com/ryou_takano/status/968710298663378945

大昔ならいざしらず、さすがに現在では『ONE PIECE』や『進撃の巨人』あたりしか読まずに「最近の漫画は暴力的な作品ばかりだ」などと語り出す人もいない…めったには…そこそこいるかも…まあ、いないということにしておきましょう。

一方で、週刊少年ジャンプの現行連載は21作品。まあ半分の10作品くらい読んでいれば、「最近のジャンプは」などと語っても、よほど的外れでなければ許されるのではないでしょうか。

このように多くの人は「自分が知っている作品数」と「全体の作品数」を感覚的に照らし合わせて、適切な「話題の大きさ」を選択します。

ところがライトノベルの場合は、まだ多くの人にとって馴染みが薄いために「全体の作品数」を誤認したままで語り出すので、決定的に「話題の大きさ」を間違えてしまうのではないかと思うわけです。

というわけで、2018年6月に発売されたライトノベルは222点です。

ソースはラノベ読み御用達の「ラノベの杜」です。いつもありがとうございます。
http://ranobe-mori.net/db/release/2018

もちろんライトノベルの定義は明確に定まっていませんからこの数字は上下します。

細かい数字を見ていきましょう。

「男性向け文庫(86点)」はそのまんまですね。「電撃文庫」や「富士見ファンタジア文庫」などの男性向け文庫レーベルを指します。右側にレーベル別の刊行点数も出ていますね。電撃文庫なんて一時期は月20点近く出していたんですが、近年は月10点程度に落ち着いています。そのぶん同じ編集部でメディアワークス文庫もやってるんですけどね。

同じく「女性向け文庫(21点)」も「コバルト文庫」や「角川ビーンズ文庫」などの女性向け文庫レーベルを指します。コバルト文庫がいまや月1・2点しか出ていないのが悲しいところですね。こちらも姉妹レーベルのオレンジ文庫に重心を移している感じです。

「男性向け単行本(71点)」は、MFブックスカドカワBOOKSのような、主に「なろう系」の書籍化レーベルです。文庫ではなく四六判サイズで出ているやつですね。もちろん文庫で出ている「なろう系」もありますが、大半はこういった単行本レーベルから刊行されているのが現状です。

「女性向け単行本(10点)」も、概ね「なろう系」のレーベルです。

「一般文庫(34点)」は、「メディアワークス文庫」や「富士見L文庫」などの、「ライト文芸」「キャラ文芸」「キャラノベ」と呼ばれるあたりですね。

さらに、この222点以外にも「ライトノベル的」な作品は出ていますし、
http://ranobe-mori.net/label/else/

美少女文庫二次元ドリーム文庫のような「ジュヴナイルポルノ」と呼ばれる作品や、
http://jp.ranobe-mori.net

BL小説もあります。
http://bl.ranobe-mori.net

ライト文芸ライトノベルに含まれるのか、ジュヴナイルポルノはライトノベルなのか、といった定義論はさておき、「だいたいそのくらいの規模なんだな」と感じていただければそれで結構です。

かつてのライトノベルは、「ファンタジーノベル」などと呼ばれていたこともあるようにミステリやSFのような「ジャンル小説」の一種、あるいは児童文学やヤングアダルトのような「読者年齢の区分」のひとつにすぎなかったかもしれませんが、現在では多様なジャンルと幅広い年齢層を抱える「漫画」のようなプラットフォームに近づいているように思います。

漫画の刊行点数の1/5ですから、まだまだ偏りは大きいですが、それでも、たかだか数作品から全体を説明できるものでもなければ、「昔と違って同じような作品ばっかり」になるようなものでもないのです。

そこのところ何卒ご理解よろしくお願いいたします。以上です。



「そんなに多いんじゃ何を読めばいいかわからない」という方へ。

当ブログではさまざまにオススメを紹介していますので参考にしてください。
kazenotori.hatenablog.com

「おまえのオススメなんて当てにならん」という方には、ラノベ読者の人気投票である「好きラノ」だとか、
lightnovel.jp

毎月開催の「ラノベニュースオンラインアワード」なんてのもあります。
ln-news.com

おそらくラノベ関係では最も知名度が高いであろうムック「このライトノベルがすごい!」も現在Webアンケートを受付中でして、11月に発売されるはずですので楽しみにお待ちください。
questant.jp