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ライトノベルネタブログ

ライトノベルとエロ、そして表紙イラストについて。

前置き

ライトノベルで想定される読者年齢は中学・高校生である。漫画雑誌で言えば「少年ジャンプ」(小・中学生向け)と「ヤングジャンプ」(高校・大学生向け)の中間くらいのポジション。ジャンプのエロい作品、ヤンジャンにおけるエロい作品、それらと同等の割合で、ラノベにエロい作品が含まれていてもおかしくはない、という感覚だ。

そういう意味で、私はライトノベルの中に「エロい作品」があることを否定はしない。

私がこれから何かの反論めいた文章を書くのは、「ラノベはエロい作品ばかりだ」「ラノベにはエロい作品しかない」といった極端な言説を訂正するためである。*1

また、前提として、ここでは主に「少年向けラノベ」についての話をする。少女向けラノベライト文芸(青年向けラノベ)までは対象を広げない。

そんなんどうでもいいからエロくないラノベのオススメ教えろや、って人は『ストライクフォール』と『ウォーター&ビスケットのテーマ』と『ジャナ研の憂鬱な事件簿』と『錆喰いビスコ』と『七つの魔剣が支配する』を買っていってください。

エロの段階について

まず、「内容のエロレベル」と「表紙のエロレベル」を切り分けて考えてみる。

内容エロレベル0 エロくない。
内容エロレベル1 下着・入浴・ラッキースケベなどのお色気シーンが存在する。
内容エロレベル2 エロを売りとする作品。
ハイスクールDxD』や『魔装学園HxH』あたりを想定。
内容エロレベル3 明確にポルノとして作られている。いわゆる「ジュヴナイルポルノ」。

実際のところ、内容エロレベル0と内容エロレベル1は大差がないと思う。シリアスな作品だってシャワーシーンの一つくらいはあるものだ。ただしラブコメ的な作風で、内容エロレベル1のイベントが多用されたりすると、印象としては内容エロレベル2に近づいていくのだろう。

ジュヴナイルポルノは「広義のライトノベル」には含まれるが「狭義のライトノベル」には含まれないくらいの微妙なポジションにある。しかし文字通り「ポルノ」であるという点で、少年向けライトノベルと一線を画しているのは間違いない。仮にジュヴナイルポルノを指して「最近のラノベはエロい」と言われたら「いやそれはエロ本だし」となる。

表紙エロレベル0 エロくない。
表紙エロレベル1 露出度は低いが、身体のラインがはっきりと出ていたり、ふとももが露わになっていたりする。
表紙エロレベル2 きわめて露出度の高い衣装であったり、服が大きくはだけていたりする。
表紙エロレベル3 全裸。

表紙エロレベル1は、オタクならあまりエロいとは思わないだろうが(画風や構図にもよるけど)、非オタは拒否反応を示すことが多い。このあたりの認識の食い違いは摩擦の原因になっていそうだ。

自分としては、「萌え萌えしたイラストを好むオタクってキモい!」と「このイラストはエロすぎる!」は別の感情なのだが、この二つの感情が同一である人もいるんだろうなあ、と思ったりしている。

表紙エロレベル3については、以下のようなギャグ的なものも存在する。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09451352
https://sneakerbunko.jp/product/misumaruka/321205000224.html

ジュヴナイルポルノとは?

大雑把に言えば「漫画・アニメ的なイラストを用いた官能小説」のことである。つまりライトノベルのポルノ版であり、「エロライトノベル」だとか「ライトアダルトノベル」だとか呼ばれることもある。ジュヴナイルポルノ自体は80年代から今に至るまで存在するもので、最近になって生まれたカテゴリではない。

小説に18禁はない。つまりジュヴナイルポルノは18禁ではない。イラストが過激な場合は18禁扱いになるが、文章だけでは18禁にはならない。なので、書店ではせいぜい違う棚に置かれるくらいで、場合によっては一般向けのライトノベルのすぐ隣に並べてあったりする。猥褻物頒布等罪との兼ね合いについては知らない。

「イラストが過激な場合」の実例としては、たとえば二次元ドリームノベルズがある。同じ出版社の二次元ドリーム文庫(こちらは非18禁)と比べると、表紙イラストで乳首が描かれていたりするが、そのあたりが一つの境界になっているのだろう。逆に言うと、二次元ドリーム文庫美少女文庫は、意図的に「過激でない表紙」にしているわけで、「最近のラノベは表紙だけ見たらジュヴナイルポルノと区別がつかない」と言われるのも、さして不思議ではないのかなと思う。とは言っても、ライトノベルのなかでエロめのイラストが、ジュヴナイルポルノでは標準的なエロさ、くらいの違いはあると思うが。

もう一つ。

小説投稿サイト「小説家になろう」では規約でエロが禁止されていて、エロ描写が含まれる作品は「ノクターンノベルズ」「ミッドナイトノベルズ」「ムーンライトノベルズ」に隔離されている。ノクターンは男性向けエロ、ミッドナイトは「エロが主目的ではないがエロ描写のある作品」、ムーンライトは女性向け、といった分類である。よって、「なろう」から書籍化された作品は基本的にエロ要素が薄く、表紙イラストも単行本サイズの大きさを活かして、背景が描き込まれた落ち着いたものが多くなっている。以下に主だったレーベルの新刊紹介ページを並べる。
http://mfbooks.jp/all/
https://kadokawabooks.jp/product/series/
http://hobbyjapan.co.jp/hjnovels/lineup/2018.html

一方で、先に述べた「ノクターンノベルズ」から書籍化するレーベルも最近は目立つ。こちらは分類としてはジュヴナイルポルノに近く、エロありバイオレンスありの大人向けレーベルといった趣きである。以下に主だったレーベルの新刊紹介ページを並べる。
http://ktcom.jp/bn/
http://www.takeshobo.co.jp/sp/tvn/
http://diverse-novel.media-soft.jp/?mode=cate&csid=0&cbid=2334468

繰り返すが、ジュヴナイルポルノは「18禁」ではない。つまり、たとえば電撃文庫美少女文庫や、MFブックスとビギニングノベルズが、隣同士の棚に並んでいることがあるということだ。そのため実際以上に「ラノベはエロい」「なろう作品はエロい」と勘違いされている可能性もある。

今月の新刊を確認しよう

百聞は一見にしかずということで実物をチェックしていこう。

電撃文庫の9月刊。
https://dengekibunko.jp/product/2018/09/
アクセル・ワールド』は全裸に近いので表紙エロレベル3(色気はないが…)。『境界線上のホライゾン』『賢者タイムが終わらない。』『異世界に間違った人材を〜〜』は表紙エロレベル2。『ゴスロリ卓球』も巨乳が強調されていて、場合によっては表紙エロレベル2相当と思われるかもしれない。

ただし内容でいえば『アクセルワールド』や『境ホラ』『ゴスロリ卓球』はレベル1相当だろう。『賢者タイムが終わらない』は未読だが、あらすじからすると下ネタっぽいので、内容エロレベル2相当の可能性はある。

スニーカー文庫の9月刊。
https://sneakerbunko.jp/product/2018/09/
『回復術士のやり直し』が表紙エロレベル2、『JK堕としの名を持つ男、柏木の王道』が表紙エロレベル1かな。

『回復術士』はエログロありの復讐ものらしいので、内容エロレベル2相当だろう。

MF文庫Jの9月刊。
https://mfbunkoj.jp/product/2018/09/
ブコメの多いレーベルなので表紙もそれらしいものが多い。『おまえ本当に俺のカノジョなの?』で胸の谷間、『サブヒロインだって攻略されたい!』『精霊使いの剣舞』でパンチラがある。露出度で言えばそれほどでもないにもかかわらず、非オタから「いかにもオタクっぽくてキモい」と思われそうな感じである。

全体的に内容エロレベル2は無さそうだが、「内容エロレベル1が多用されるラブコメ」はいくつかありそうだ。

富士見ファンタジア文庫の9月刊。
http://www.fujimishobo.co.jp/novel/fantasia.php
「2018年9月」を指定できないので、来月には内容が変わっているだろうが、とりあえず2018年9月の新刊を前提とする。『ハイスクールDxD』が貫禄の表紙エロレベル2、『非オタの彼女が〜〜』もレベル2、『いづれ神話の放課後戦争』『始まりの魔法使い』もレベル1はあるだろうか。

内容では『ハイスクールDxD』『いづれ神話の放課後戦争』がレベル2か。『非オタの彼女が〜〜』はわからん。

というわけで、私としては「ほら、エロばっかりということはないでしょ?」と言いたいところなのだが、これを見て「やっぱりどれもエロいね」とか「思った以上にエロいじゃん」ってなる人はいると思う。それはしょうがない。私としては「思ったよりエロくないな」となる人がいることを祈るのみである。

ここでは、内容のエロレベルと表紙のエロレベルに齟齬があることは多いのだ、ということだけは強調しておきたい。

昔のラノベは今より健全だったのか?

大して変わらんでしょ。
健全度も不健全度も。
http://ranobe-mori.net/label/dengeki-bunko/?page=28

ライト文芸と差別化を図るためにラノベはエロ特化している?

ライト文芸で多いイメージの青春もの・純愛ものなどは、むしろラノベでも増加しているところである。
なろう系の影響もあって、なろう発でなくともファンタジーが多く出てきているし、特に戦記ファンタジーはちょっとしたブームが長らく続いている。
全体として、ライト文芸やなろう系は、ラノベに負の影響を与えるというよりも、それぞれに影響を与えあって多様性を生んでいるし、単純な刊行点数の増加もあって、たとえば10年前と比べても、ラノベ全体のバリエーションは増えていると言っていいと思う。

終わりに

なんだか取り留めがなくなってきたが。

私だってラノベの表紙デザインが無謬であるとは思っていない。

ラノベ売り場のオタオタしい雰囲気」みたいなものの存在は否定できないし、それによる集客効果よりも、それによってラノベ売り場から遠ざかる読者のほうが多いだろうという印象は持っている。*2

「表紙では男主人公よりもヒロインを優先する」なども非合理な慣習だと思っているし、「エロくない作品にエロいイラストをつける」といったやり方には憤りさえ覚える。

それは「倫理的に問題がある」だとか「子供の教育に悪い」といった理由からではない。「エロくない作品にエロいイラストをつける」というのは、エロを期待した読者は期待を裏切られ、エロが嫌いな読者は(実際に読めば好きになるとしても)買おうとしないということで、誰も幸せにならないからだ。

イラストによって学校図書館に入れてもらえない、親に買ってもらえない、朝の読書などでも敬遠される、といったことがあるのは、さらに問題だ。未来のラノベ読者の育成をも阻害していることになる。

なぜ、そういった「内容のエロレベル」と「表紙のエロレベル」に齟齬が生まれるのかと言えば、これは完全に憶測で、失礼な物言いになるのだが、可愛くてエロい女の子を描きたいイラストレーターが多いからだと思っている。多くの(オタク系)イラストレーターはそういうイラストを描くのを好み、画風もそういう方向へ特化している。

また、作家や編集も可愛くてエロい女の子が大好きだから、可愛くてエロいイラストを良しとする。「読者サービス」的な意識はあるのだろうが、それも「自分たちが嬉しいのだから読者も嬉しいだろう」という発想なのではなかろうか。

念押しをするが、エロいラノベにエロいイラストを付けるのは別に良いのだ。

しかし、エロくないラノベにエロいイラストを付けるのを、本当に「読者サービス」程度の気持ちでやっているなら、それは止めてほしいと思うのである。

補足

*1:念のため言っておくが、「ばかり」や「しかない」といった表現は「すべてがそうだ」という意味であって、ごく少数の例外は除いたとしても8割9割はエロい作品で占められていなければ不適当であろう。

*2:それへの対策が、ガワだけ変えて一般向けの売り場にラノベを並べる、すなわちライト文芸であろう、とか。