ということでアンケートを取りました。昔のラノベを語るにしろ今のラノベを語るにしろ、2、3作品ほど挙げるだけで「ラノベの大半を例示し終えました」という感じを出す人、新刊が月に数冊しか出ないジャンル小説みたいなイメージでラノベを認識しているのではないかという懸念がある。
— mizunotori (@mizunotori) 2018年9月16日
ラノベが毎月何冊発売されているか知らない人向けのアンケートです。
— mizunotori (@mizunotori) 2018年9月16日
ラノベは毎月何冊発売されていると思いますか?
実際の数はリプライにぶら下げておくので回答してから見てください。
所詮はTwitterアンケートなのですが、やはりライトノベルの規模を小さく見積もっている人はそこそこいるのでは?と思ったので、そのあたりについての解説をさせていただきます。
まず最初に断っておきますが、これは「200冊も出ているのだからせめて100冊くらいは読め」といったような話ではありません。
いまから書くのは「規模感を把握してくれ」という話です。
たとえば2018年6月に国内で発売されたゲームは98本。
https://www.famitsu.com/schedule/calendar/all/2018/06/-/
2018年7月期に新しく始まるテレビドラマは44本。
https://thetv.jp/program/selection/251/
2018年6月に公開された映画は95本。
https://www.cinematoday.jp/movie/release/201806?format=text
2018年夏アニメは64本。
https://anime.eiga.com/program/
2017年に発売されたコミックスは1万2461点だから月あたりで約1000冊。
https://twitter.com/ryou_takano/status/968710298663378945
大昔ならいざしらず、さすがに現在では『ONE PIECE』や『進撃の巨人』あたりしか読まずに「最近の漫画は暴力的な作品ばかりだ」などと語り出す人もいない…めったには…そこそこいるかも…まあ、いないということにしておきましょう。
一方で、週刊少年ジャンプの現行連載は21作品。まあ半分の10作品くらい読んでいれば、「最近のジャンプは」などと語っても、よほど的外れでなければ許されるのではないでしょうか。
このように多くの人は「自分が知っている作品数」と「全体の作品数」を感覚的に照らし合わせて、適切な「話題の大きさ」を選択します。
ところがライトノベルの場合は、まだ多くの人にとって馴染みが薄いために「全体の作品数」を誤認したままで語り出すので、決定的に「話題の大きさ」を間違えてしまうのではないかと思うわけです。
というわけで、2018年6月に発売されたライトノベルは222点です。
ソースはラノベ読み御用達の「ラノベの杜」です。いつもありがとうございます。
http://ranobe-mori.net/db/release/2018
もちろんライトノベルの定義は明確に定まっていませんからこの数字は上下します。
細かい数字を見ていきましょう。
「男性向け文庫(86点)」はそのまんまですね。「電撃文庫」や「富士見ファンタジア文庫」などの男性向け文庫レーベルを指します。右側にレーベル別の刊行点数も出ていますね。電撃文庫なんて一時期は月20点近く出していたんですが、近年は月10点程度に落ち着いています。そのぶん同じ編集部でメディアワークス文庫もやってるんですけどね。
同じく「女性向け文庫(21点)」も「コバルト文庫」や「角川ビーンズ文庫」などの女性向け文庫レーベルを指します。コバルト文庫がいまや月1・2点しか出ていないのが悲しいところですね。こちらも姉妹レーベルのオレンジ文庫に重心を移している感じです。
「男性向け単行本(71点)」は、MFブックスやカドカワBOOKSのような、主に「なろう系」の書籍化レーベルです。文庫ではなく四六判サイズで出ているやつですね。もちろん文庫で出ている「なろう系」もありますが、大半はこういった単行本レーベルから刊行されているのが現状です。
「女性向け単行本(10点)」も、概ね「なろう系」のレーベルです。
「一般文庫(34点)」は、「メディアワークス文庫」や「富士見L文庫」などの、「ライト文芸」「キャラ文芸」「キャラノベ」と呼ばれるあたりですね。
さらに、この222点以外にも「ライトノベル的」な作品は出ていますし、
http://ranobe-mori.net/label/else/
美少女文庫や二次元ドリーム文庫のような「ジュヴナイルポルノ」と呼ばれる作品や、
http://jp.ranobe-mori.net
BL小説もあります。
http://bl.ranobe-mori.net
ライト文芸がライトノベルに含まれるのか、ジュヴナイルポルノはライトノベルなのか、といった定義論はさておき、「だいたいそのくらいの規模なんだな」と感じていただければそれで結構です。
かつてのライトノベルは、「ファンタジーノベル」などと呼ばれていたこともあるようにミステリやSFのような「ジャンル小説」の一種、あるいは児童文学やヤングアダルトのような「読者年齢の区分」のひとつにすぎなかったかもしれませんが、現在では多様なジャンルと幅広い年齢層を抱える「漫画」のようなプラットフォームに近づいているように思います。
漫画の刊行点数の1/5ですから、まだまだ偏りは大きいですが、それでも、たかだか数作品から全体を説明できるものでもなければ、「昔と違って同じような作品ばっかり」になるようなものでもないのです。
そこのところ何卒ご理解よろしくお願いいたします。以上です。
「そんなに多いんじゃ何を読めばいいかわからない」という方へ。
当ブログではさまざまにオススメを紹介していますので参考にしてください。
kazenotori.hatenablog.com
「おまえのオススメなんて当てにならん」という方には、ラノベ読者の人気投票である「好きラノ」だとか、
lightnovel.jp
毎月開催の「ラノベニュースオンラインアワード」なんてのもあります。
ln-news.com
おそらくラノベ関係では最も知名度が高いであろうムック「このライトノベルがすごい!」も現在Webアンケートを受付中でして、11月に発売されるはずですので楽しみにお待ちください。
questant.jp