WINDBIRD::ライトノベルブログ

ライトノベルブログ

タイムトラベル・ライトノベル

まえおき

ちょっと前に『時をかける少女*1を観たので記念エントリ。タイムトラベルを扱ったライトノベルを並べるついでに、タイムトラベルについて適当なことを語ってみるテスト。けっこうネタバレが多いので、先にタイトルだけ見て、未読の作品を速攻で買いにいくのが良いかも。

サマー/タイム/トラベラー

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)サマー/タイム/トラベラー (2) (ハヤカワ文庫JA)
タイムトラベル能力に目覚めた幼馴染と、彼女を中心に巻き起こる事件を描いた話。この作品の中では、タイムトラベルの最重要観念として「二度目の機会(セカンド・チャンス)」が挙げられている。つまり、過去を「やり直す」ためのタイムトラベルである。ところが、この作品での時間移動能力は、「セカンド・チャンス」のための道具として使われない。そもそも幼馴染の能力では過去に飛ぶことができないのだ。
ライトノベルにおいて、セカンド・チャンスは重要視されない。なぜなら、ライトノベルの主人公は少年・少女であり、彼らにとっては「現在」こそが最高に楽しい時期であるからだ。そんなライトノベルの中では、タイムトラベルは「過去をやり直す」ためでなく「現在を繰り返す」ために使われる。つまるところ「タイムリープ→タイムループ」という変遷があるのではないかと思うのだが、単なる思いつきなので根拠はまったくない。
ともあれ、ライトノベルにおけるタイムトラベルは、「過去をやり直す」のも「未来へ進む」のも嫌って、ただ「現在を繰り返す」。ただし、『サマー/タイム/トラベラー』において現在をくりかえしたがっているのは時間移動能力を持たない主人公であり、ヒロインは(モラトリアム的な現在から脱出して)未来へ進むために時間移動能力を使うという点で、役割が逆転しているのが面白い。

時をかける少女

原作の方も子どもの頃に読んだはずなのだけど、はっきりいって全く覚えていない。あまり印象に残らない作品であったことは確かだ。けれど、アニメ映画の『時をかける少女』は面白かった。印象的だったのは、時間移動能力を手に入れたヒロインが、それをくだらないことにしか使わなかったこと。カラオケで10時間うたいつづけるためだとか、プリンを食べるためだとか、聞きたくないことを聞かないためだとか、そういうことばかりに能力を使う。結果、本当にやりなおしたい状況になったとき、ヒロインはタイムリープを使えなくなっている。ご都合主義的なラストを除けば、ヒロインは「やり直し」のために能力を使うことがなかった。これは「タイムリープ→タイムループ」を象徴してるのかなぁと思ったり思わなかったり。
関連:時をかける少女

ALL YOU NEED IS KILL

All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)
謎の生物が人類を襲い、人類は団結してそれに対抗している、という世界の話。主人公はタイムループに巻き込まれ、戦場での数日間を何度も何度も繰り返す。繰り返し経験を積むことで兵士として成長していく主人公。そして心が通じ合う唯一の女性とも出会う。つまり、タイムループがユートピアの維持のために使われているのである。
クライマックスで主人公はヒロインに言う。

このままずっと繰り返せばいいじゃないか。時は前に進まないけれど、ぼくときみはずっと一緒にいられる。いつまでだって。

けれど結局、タイムループは終わる。
そして主人公は未来へと歩き出す。

涼宮ハルヒの暴走

涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)
この中に収録された短編「エンドレス・エイト」は、八月が一万五千四百九十七回繰り返されるという話。そんな事態に陥ったのは、単にハルヒが夏休みを満喫できていないからという、ただそれだけが原因である。まさに楽しい現在を維持するためにタイムループが使われているのである。

キリサキ/シナオシ

キリサキ (富士見ミステリー文庫)シナオシ (富士見ミステリー文庫)
タイムトラベルが関係しているというだけでネタバレになってしまうのだが、そのあたりは勘弁してもらいたい。それを差し引いても面白い作品である。『キリサキ』は、死んでしまった殺人鬼が、とある目的のために美少女の身体で生き返るという話。その続編(っぽい作品)の『シナオシ』は、名は体をあらわすのとおり、「やり直す」ためにタイムトラベルする作品。二つ併せてどうぞ。

DEAR

二人で見つめる土曜日―DEAR〈3〉 (富士見ミステリー文庫)貴方に言えない日曜日―DEAR〈4〉 (富士見ミステリー文庫)寝起きの悪い定休日―DEAR DIARY〈1〉 (富士見ミステリー文庫)
過去の一日を三回繰り返すうちに、自分が死んだ原因を見つけ出して事故を回避してください、という話。つまりタイムループで「やり直し」物。シリーズなので続編が何冊か出ているけど、どれも設定はほとんど同じ。…タイムトラベルとは関係ないことだけど、修羅場分が豊富なところが好きです。

戦う司書と恋する爆弾

戦う司書と恋する爆弾 BOOK1(集英社スーパーダッシュ文庫)
説明するのは難しいけど、要するに「時を越えた恋人」の話。未来を見通す魔女と、その魔女の「記憶」を手に入れた少年の物語。過去と未来で電話が繋がっているような状態と書くとわかりやすいかもしれない。過去と未来が交錯するクライマックスは、本当に鳥肌が立つ。*2

ラスト・ビジョン

ラスト・ビジョン (電撃文庫)
意識だけがタイムトラベルを繰り返し、《素体》やプログラムに拡散していく…という話なんだけど、さっぱりわからない。このエントリを書くために久々に読み返したけど、やっぱりわけがわからない。わけがわからないのに凄いんだから、本当に凄い。こちらも鳥肌物の作品。

学校を出よう!(2) I-My-Me

学校を出よう!〈2〉I‐My‐Me (電撃文庫)
id:kim-peaceさんに指摘されて思い出したので自分でも書く。これを忘れていたなんて谷川流信者として恥ずかしいぜ。
涼宮ハルヒ』シリーズと同作者の、よりSF要素に重きを置いている『学校を出よう!』シリーズの中で、特に評価の高いものがこの作品である。三日前の主人公と三日後の主人公がその真ん中の日にタイムトラベルして、その日の主人公と共にタイムトラベルの謎を解明しようとする話。シリーズの中でも独立性が高いので、これだけ読んでもOK。でもやっぱりシリーズ全体を一気に読んだほうが良いに決まってます。

タイム・リープ

ライトノベル史に燦然と輝くタイムトラベル小説の傑作…らしいんだけど、読んでないのでパス。

おまけ

他にもいくつかタイムトラベル物はあるだろうけど、とりあえずはこんなところでいいかなぁ。「これを忘れんな!」というものがあればお気軽にコメント欄などへどうぞ。
最後に分類マトリクスを置いておきます。縦軸が「タイムリープ⇔タイムループ」、横軸が「時間改変⇔現状維持」。「時間改変」はタイムトラベルの目的が歴史の改変である場合、「現状維持」はタイムトラベルの目的が現状維持である場合。…という感じ。



追記:
id:kim-peaceさんによる補足エントリ。『タイム・リープ』の解説もバッチリ。
http://d.hatena.ne.jp/kim-peace/20060823/p2

*1:2006年上映のアニメ映画の方ね。

*2:誤用とかいうな