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ライトノベルレーベルからのWeb小説刊行は増えるか?

小説家になろう
「小説家になろう」のランキングは、たとえるなら、あらかじめ麺とスープと具材が各種用意された、素人参加型の手作りラーメンコンテスト。食材を自由に組み合わせて、初心者でも簡単にラーメン作りを楽しめるようになっています。その中から、プロもびっくりの見事なアレンジのラーメンだとか、奇抜な組み合わせで癖になる味のラーメン、自家製スープを持ち込んだ本格派ラーメンなどが登場。いずれも好評だったことから、なんと全国的なラーメンチェーンの新作メニューとして採用されることになりました。


しかし、それらのラーメンをいきなり既存のメニューの中に混ぜて提供したらどうなるでしょう。何も知らないお客さんからは「今回の新作は似たような具材ばっかりじゃないか」と文句を言われかねませんよね。そこで、「手作りラーメンコンテスト入賞作品フェア」などを開催し、コンテストの趣旨を説明した上で、コンテスト発のラーメンをひとまとめにして売り出す必要が出てくる。もとい、Web小説を既存のレーベルから出すのではなく、ひとまとめにして「Web小説専門レーベル」を創刊しよう、ということになるわけです。


実際に、積極的にWeb小説を書籍化しているのは、アルファポリスイースト・プレスの「レガロシリーズ」、主婦の友社の「ヒーロー文庫」、かの悪名高い「フェザー文庫」「フリーダムノベル」などであり、レガロシリーズを除けば、いずれもWeb小説専門レーベルとなっています。

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編

ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈1〉接触編

理想のヒモ生活 1 (ヒーロー文庫)

理想のヒモ生活 1 (ヒーロー文庫)


エンターブレインもいくつかWeb小説を書籍化していますが、やはり自社で持っているライトノベルレーベルからではなく、単行本サイズで刊行されています。

オーバーロード1 不死者の王

オーバーロード1 不死者の王


一方、既存のライトノベルレーベルはと言えば、あくまで「新人賞を通して採用する」という建前を崩していません。Web小説発で最も有名であろう『アクセルワールド』(と『ソードアート・オンライン』)は電撃小説大賞を受賞して刊行されましたし、同じく電撃文庫の『魔法科高校の劣等生』も、作者が新人賞を落選*1したことがきっかけで「拾い上げ」に近い形で刊行されました。スーパーダッシュ文庫の『暗号少女が解読できない』も、GA文庫の『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』も、新人賞を受賞したことで刊行されたものです。

暗号少女が解読できない (集英社スーパーダッシュ文庫)

暗号少女が解読できない (集英社スーパーダッシュ文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか (GA文庫)


たとえば電撃小説大賞には長編だけで4000作品も応募されてくるわけで、そこからの供給が絶たれないかぎり、あえてWeb小説を直接採用する理由はないように思います。


それと弾数の問題。いまでさえ目ぼしい作品はだいたい書籍化されているのに、そのうえライトノベルレーベルの大口需要に堪えうるほどの供給は期待できないでしょう。


また、「小説家になろう」で多い異世界召喚モノやVRMMORPGモノですが、プロの作家からだって次々と送りだされています。そうしたジャンルを出したいだけであればWeb小説に頼る必要は無いわけです。

ノーゲーム・ノーライフ 1 (MF文庫J)

ノーゲーム・ノーライフ 1 (MF文庫J)

スカイ・ワールド (富士見ファンタジア文庫)

スカイ・ワールド (富士見ファンタジア文庫)


そんなわけで、既存のライトノベルレーベルからの刊行が、いま以上に増えていくことは難しいのではないかと思います。

  • 一定の読者が見込める
  • ちょっと事前知識が必要
  • 弾数が少ない

といったあたり、アニメやゲームのノベライズに近い立ち位置になるのかな、と思ったりしますが。さてどうなるか。

*1:落選作品は『魔法科』ではないですが