近年のライトノベルのトレンドは「周辺領域の拡大」である。
関連:2012年ラノベ周辺総括 - 小説☆ワンダーランド
特に興味深いのが、「Web小説(の書籍化)」と「ボカロ小説」だ。
Web小説はArcadiaや小説家になろうといった小説投稿サイト、ボカロ小説はニコニコ動画と、どちらも大きなネットコミュニティを本拠地としている点が特徴である。
また、今年のオリコンランキングのライトノベル部門では、『アクセル・ワールド』『魔法科高校の劣等生』など、小説投稿サイト出身の作品が上位を占めた。
2012年 本ランキング特集『ヒット作の定番化――シーンをけん引するキーワードとは!?』-ORICON STYLE エンタメ
- 作者: 川原礫,HIMA
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2009/02
- メディア: 文庫
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- 作者: 佐島勤,石田可奈
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: 文庫
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Amazonのライトノベル部門では、ボカロ小説である『カゲロウデイズ』が今年最も売れた作品だったと言う。
- 作者: じん(自然の敵P),しづ
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2012/05/30
- メディア: 文庫
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『カゲロウデイズ』については以下のエントリも面白い。
本日遂に[カゲロウデイズ 第2巻]発売。……が、それはもう見事なまでに1冊も売れず。しかし「ただし本番は下校時刻以降だ」とか強がっていたら、本当に夕方からそれはもうスゴ(ry,他、新刊多数発売。 - 本屋さん戒厳令
以上のように、「Web小説」や「ボカロ小説」は、はっきりと独自のコミュニティを持ちつつ、およそ無視できないほどの一大勢力となっている。
そこで、ひとつ前のエントリで書いた「ライトノベル=コミュニティ説」が問題となってくる。
ライトノベルの定義を「コミュニティ」に求めてみる説 - WINDBIRD
はたして、既存のライトノベルとは異なるコミュニティを持つWeb小説やボカロ小説を、「ライトノベル」扱いしても良いものだろうか?
似た例として、メディアワークス文庫『ビブリア古書堂の事件手帖』の大ヒットがある。
ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
- 作者: 三上延
- 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
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メディアワークス文庫は、電撃文庫を母体とし、「一般文芸と同じようなことをやるつもりはない」と宣言しつつ、「メディアワークス文庫はライトノベルではありません」とも言っており、各種メディアでもライトノベル扱いされたりされなかったりするレーベルである。
なので、このような摩擦が生じる。
いつからエンタメ小説の事をラノベというようになったのか - 主にライトノベルを読むよ^0^/
140 イラストに騙された名無しさん [sage] 2012/11/03(土) 09:16:32.93 ID: rnF8rAh7
いつからエンタメ小説の事をラノベというようになったのか
売れてる本とか片っ端からラノベ扱いだし
なんでラノベと言い換えないと気が済まないの
141 イラストに騙された名無しさん [sage] 2012/11/03(土) 09:33:18.25 ID: V5Awg4g3
ラノベの定義なんてしなくとも、みんな分かってるだろ
言葉にしにくいだけで
とりあえず古典部やビブリアシリーズをラノベとは言わない
>>141は「言葉にしにくいだけでみんな分かってる」と言うが、実際のところ「ビブリアをラノベとは言わない」と言い切れるほどの共通認識なんて、まだどこにも存在していない。
「一般文芸」と「ライトノベル」という実に曖昧な二軸の対立が長らく続き、一般文芸コミュニティとライトノベルコミュニティが互いに境界線上の領域を押し合い圧し合いしていたら、その領域が急速に膨れ上がってどちらのコミュニティにも入りきらなくなってしまった、というのが現状であろう。
一般文芸の視座からライトノベルを拒絶したり、逆にライトノベル側が一般文芸を拒絶したりするのはもう古いです。もうそんなことをしている場合じゃないだろうと。
キャラ立ち小説とはなにか - 小説☆ワンダーランド
数年前までは冗談混じりに語られていた「ライトノベルに影響を受けた一般作家」が今では普通に出現して辻村深月のように直木賞を受賞し、ハイブリッドな作家が続々活躍し、大手出版社から挿絵の入ったソフトカバー本がガンガン売り出されている今、「ライトノベルだから〜」「一般文芸だから〜」という枕詞は通用しなくなってきているのかもしれません。
また、異なるコミュニティを基とするライトノベルといえば、「ノベライズ」を忘れてはいけない。
基本的に、漫画やアニメのノベライズを購入するのは、その漫画やアニメのファンであって、ライトノベル読者ではない。昔から、ノベライズは安定した売上を誇りつつも、人気投票などで上位に入るようなことはほとんど無かった。ライトノベルを語るときでも、ノベライズは常に「例外」という枠の中に押し込められ、どこか目を逸らされがちな扱いであった。
しかし、ここ数年でその状況は変わりつつある。メディアミックスの手法が深まる中、人気ライトノベル作家によるノベライズが増加し、既存のライトノベル読者にとってもその存在感が高まってきているのだ。岩井恭平や土屋つかさの『サマーウォーズ』、成田良悟の『BLEACH』などがその代表であろう。
- 作者: 岩井恭平
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BLEACH Spirits Are Forever With You ? (JUMP J BOOKS) (JUMP j BOOKS)
- 作者: 久保帯人,成田良悟
- 出版社/メーカー: 集英社
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ついでに書いとくけど、アニメ『K』は面白すぎるので、みんな観ればいいと思います。
七人のライトノベル作家が脚本を担当し、そのメンバーがノベライズも書いております。
テレビアニメ『K』年末年始に一挙放送を実施!! - ニュース - アニメイトTV
- 作者: 古橋秀之(GoRA),鈴木信吾(GoHands)
- 出版社/メーカー: 講談社
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- 作者: 来楽零(GoRA),鈴木信吾(GoHands)
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Web小説、ボカロ小説、メディアワークス文庫、ノベライズ。
これらをライトノベルと見なすにしろ、見なさないにしろ、今後ますます「これラノベだろ」「ラノベって言うな」的な小競り合いは増えていき、かつてSFが辿ったとされる最終戦争へと発展していく可能性も無きにしもあらずかもしれない。
ライトノベルと一般文芸のあいだの領域をどのように分類するか?
Web小説やボカロ小説のコミュニティとはどのように付き合っていくのか?
ここ何年か続いた、ライトノベルの拡大・拡散により、ライトノベル定義論は新たな局面に入ったと言える。これまではライトノベルの閉鎖的なコミュニティの中で全てが完結していた。しかし、もはや「ライトノベル」はライトノベルコミュニティだけのものではないのだ。