書き起こしというほどでもない。聴きながら他の参加者の発言をメモしていたものを元に、後から動画を聴き直して自分の発言を補完したもの。詳しくは動画をお聴きください。
自己紹介(00:03:30〜)
mizunotori
ラノベを本格的に読み始めたのは2003年くらい。最近のオススメは「魔王2099」。
リイエル
なろう系Vtuber。ラノベは2003年くらいから。ここ5年ほどはラノベから離れ気味だったが、Web小説を読み始めて、なろう作品を紹介するような活動をしている。
岡田
編集者。2012年から「このライトノベルがすごい!」を担当。ラノベは2002年くらいから読んでいる。
平和
編集者。ラノベを読み始めたのはスレイヤーズのアニメくらいからで、大学の時期は離れていたが、2003年ごろからはずっとラノベを読んでいる。そのあとラノベ編集者になった。現在はストレートエッジ所属。冴えカノおもしろい。
なろう系単行本はラノベか?(00:08:40〜)
mizunotori。ある程度は合意を得られるだろうという議題。「なろう系単行本」は回りくどく言ったが「新文芸」。まあラノベだよね。
リイエル。ラノベではあるがラノベではない。狭義のラノベは若者向けに価格を抑えた文庫本であってこそ。単行本は中高生をターゲットにしていない。しかし文章・内容が軽く、挿絵が多いのがラノベであり、それはなろう系単行本と合致する。なろうから書籍化されたものの中には一般寄りの作品もある。が、概ねラノベではないか。
夏鎖。文庫かどうかは気にしていない。イラストとコラボレーションしているのがラノベ。
岡田。なろう系とは何か。「新文芸」はUGCの作品群。ボカロ小説も含まれる。ライトノベルに組み込まれたのかなと思う。このラノでも難儀している。部門を分けている。読者層が既存のレーベルと違う。本の作りはライトノベルだよね。電子で買っている人は文庫か単行本かわかない。
平和。ラノベに含む。スタンスとしては、ライトノベルレーベルから出ていればライトノベルである。レーベル派。パッケージ派。作り手(出版社)の意図を重視する。ラノベの単行本は文庫のライトノベルの方法論を踏襲している。値段が違って意図してかどうか読者層が変わっている。ただ概ねラノベに含むのではないか。
質疑応答。
mizunotori。「なろう系」とはWeb小説サイトに投稿されていた作品全般を漠然とイメージしている。なろうの流行も変わっているし内容面では判断しづらい。キミスイも横浜駅SFもラノベ。
なろうに投稿されたなろう系っぽくない作品もあるし、なろうではないけどなろう系っぽいラノベもあるし…みたいな話。
読者層で判断しているリイエルさんと岡田さん。イラストなどのパッケージで判断している夏鎖さんと平和さん。という整理。
mizunotori。ライトノベルという言葉は読者主導で作られたものであって、出版社の意図とは関係がない。という点で平和さんと対立。
ラノベ売り場って漫画売り場と隣接してる?みたいな話。
少女向け作品はラノベか?(00:36:28〜)
平和。広い意味ではラノベ。少女向けレーベルは少年向けレーベルと同じ方法論。とはいえラノベ読者は「ライトノベル」と言ったときに「ただし少年向けに限る」のような意識がある。その理由のひとつに、少女向け作品がラノベ扱いされたがっていないことがあるかもしれない。「少女小説」として定義する流れ。
夏鎖。少女向け・女性向けの作品群は「少女小説」として呼ばれたがっている気がする。
岡田。平和さんと似てはいる。ラノベだと思う。昔からあるビーンズなどはフォーマットも内容もライトノベル。オレンジ・富士見Lなどはライト文芸なんだけどラノベ。扱いが困る。混乱している。「少女小説」と呼ばれたがっているかは疑問。
リイエル。広い意味ではラノベ。狭義ではターゲットが違う。2005年前後くらいに創刊したビーズログ・ルルルあたりは少女向けライトノベルと名乗っていた。BL小説はラノベなのか。アルファポリスのレジーナブックスなどをどう捉えるか。
mizunotori。もちろんラノベ。「少女小説をラノベ扱いするな」という勢力がいると同時に「なぜ少女向けをラノベ扱いしてくれないのか」という勢力もいる。漫画で言うと、少年漫画は男性読者も女性読者も読むが、少女漫画は男性読者はあまり読まない、という非対称性がある。それと同じで、読まれていないので言及が少なくなってしまう。とはいえ、ブログ界隈でやっていた人気投票などでは、いくつかの少女向けラノベが入っていたし、昔からラノベとして扱われていたとは思う。
質疑応答。
夏鎖。オーバーラップノベルスfやKラノベブックスfなど、男性向けレーベルから女性向け作品を出している流れについてどう思うか?
そもそも「本好き」「薬屋」など女性人気の高い作品が、少女向けレーベル以外から出てきている。ラノベで女性主人公は売れないという謎の偏見をなろう系が破壊した。みたいな話。
漫画のノベライズはラノベか?(01:01:25〜)
mizunotori。もちろんラノベ。昔からノベライズは売れていて、ロードスもTRPGのノベライズと言えなくもないし、スニーカーのガンダムや、ファミ通文庫のゲームノベライズなど、レーベルの主力ともなっていたが、しかしラノベ読みのあいだではあまり話題にならない。そのあたりについて意見を聞きたい。また最近話題のYouTube漫画系のラノベをノベライズと捉えたときにどう考えられるか。
リイエル。そもそもノベライズの数が少ない。ラノベ読みは(売上的に重要度が高いはずの)ジャンプのノベライズを読んでない。YouTube漫画は異質。これまでのノベライズはゲームや漫画の内容をそのままなぞっていたが、YouTube漫画は新しく話をつくっている。ファンアイテム的でもある。メディアミックス的な売り出し方をしている。
岡田。ノベライズは狭義のライトノベルに含まれる。昔からあるが、最近は「何をもってノベライズなのか」が分からなくなっている。メディアミックスの一部になっている。リイエルさんに同意。
平和。異論の余地なくラノベ。一定のパッケージに落とし込んでいるのでラノベ。
夏鎖。ノベライズはラノベではない。ノベライズというジャンルがあると認識している。アニメなどは既にイラストとコラボレーションしている作品で、それを小説化してもラノベとは言えない。
質疑応答。
夏鎖さんの「イラストとコラボレーションしたものがラノベ」理論を掘り下げる。
で、ボカロ小説はどういう立ち位置になるのか?みたいな話。
mizunotori。ライトノベルの文体は「読みやすい」か。別に一般文芸でもわざわざ読みづらくはしないのでは。たとえば、漫画でも絵柄はリアルだったりデフォルメが強かったりいろいろあるが、西洋画と漫画の白黒のコマを並べると「漫画っぽい絵柄」というのは分かる。それと同じくらい、一般文芸とラノベの文体に違いがあるかというと、無いのではないか。
YouTube漫画のノベライズは今後どうなるか?みたいな話。
ライト文芸はラノベか?(1:36:00〜)
平和。はっきり答えられない。どちらとも言える。文庫のいわゆるライトノベルの方法論は使っている。そのわりにレーベルは分けている。出版社が分けているのだからライトノベルにしにくい。
岡田。中間のジャンルが生まれたからなんとか名前をつけてみようというもの。小説とライトノベルのあいだにできた新しい国。
リイエル。狭義のライトノベルから追い出されたものたち。メディアワークス文庫。「ミミズクと夜の王」などのようにラノベとして売り出せなかったものを隔離。ラノベとも一般文芸ともどちらともつかない。ただしライト文芸として成立したあとに出てきたものもある。
mizunotori。ライト文芸とは「キャラ文芸」や「キャラノベ」と同じもの。場合によっては「なろう系単行本」を指して新文芸と言うこともある。が、この場では一般に「ライトノベルと一般文芸の中間」と言われるような作品群を指す。ライト文芸の始まりはメディアワークス文庫。書店でライトノベルの棚が一杯になったから一般文芸の棚に置いてもらうために『ライトノベルではありません』と名乗ったのがライト文芸。なので建前では別モノと言ってるけど実質的にはラノベ。とはいえライト文芸として成立してからかなり変わっている。ライトノベルにそれまでなかったようなジャンルも新しく生えてきている。売れなかったものを隔離したという感じではない。そもそも「ミミズク」なんかはラノベとして出せているし売れている。ビブリア古書堂が売れたのを見て周りからぎゅっと寄ってきて新しい文化を形成した。
夏鎖。イラストとコラボレーションしているかが重要なので、ライト文芸はライトノベルではない。イラストが表紙にしかない。
質疑応答。
10代の意見も聞きたい。YouTube世代とかラノベの定義についてどう考えているのか気になる。
mizunotori。ラノベが10代向けの小説だというのは古いのではないか。
平和。「オタク向けの小説」としたほうがしっくりくる。そして「オタク」の範囲が広がっているから境界が曖昧になる。
mizunotori。中高生にもライト文芸は人気(ライト文芸のなかに中高生に人気のジャンルと大人に人気のジャンルがある)。読者年齢的にラノベ→ライト文芸→一般文芸という段階を踏む、というのは違う。
では「ラノベと一般文芸の中間」というのはどういう性質が中間なのか?