声優ラジオのウラオモテ
いやめっちゃ良かったな。このシリーズは基本的に「声優の話」と「声優ラジオの話」が分裂してるんですよね。たとえばラジオでトークの経験を積んでも、リスナーが増えても、別に「声優」として演技が上手くなったりするわけじゃない。逆に、声優としての成長に焦点を合わせると、今度は「声優ラジオ」との関係が薄れてしまう。で、今回はその別々の話を力技で一つのパッケージに押し込んだ感じ。でもそれが正解だったと思う。前半がラジオリスナーのあいだで主役二人のガチ不仲説が囁かれて…という「声優ラジオ」の話。後半は、頼れる先輩がワーホリで鬱っぽくなっちゃって、そこから「声優」という職業の話になっていく。これがまたどっちもてぇてぇんすよね。
【21上ラノベ投票/9784049134995】
七つの魔剣が支配する
ゴッドフレイ先輩が最上級生になって、時の経つのは早いなあ、と思ったところで、三年生となった剣花団の面々の成長が、新入生たちの視点から描かれて、彼らが「かつてのゴッドフレイ先輩」のポジションに立っているんだなあと思わされる。今回はまるまる校内一武闘会、もとい「決闘リーグ」が描かれていて面白かったですね。大勢のキャラクターにそれぞれ見せ場を用意しつつ、複雑になりすぎずテンポ良く描かれている。やはりバトルものといえばトーナメント展開なんですね。
【21上ラノベ投票/9784049135305】
楽園ノイズ
やっぱり良いっすね。構成は一巻から変わらず。バンドメンバーの家庭問題とかを取り上げて、でもそれを明快に解決するわけではなく、うじうじぐだぐだと悩み続け、最後に超エモい演奏シーンで包み込んでなんとなく良い感じにオチをつける、みたいな感じ。いかにも杉井光だなあ、とほんわかしますね。今回はちゃんとラストに女装してくれて感謝感謝ですね。真琴くんは女装してなんぼなんですよ。それを真琴くん自身がわかってない。由々しきことです。あと、「さよならピアノソナタ」とのリンクもニヤニヤでしたね。ファンサービスが良い。
【21上ラノベ投票/9784049136814】
インフルエンス・インシデント
戦闘役の女子大生と探偵役の美人教授がインターネットにまつわる様々なトラブルを解決していく青春ミステリ。いわゆる「本格」というわけではないけど、素性当ての得意な探偵とか、事件の裏で糸を引く黒幕ポジの奴とか、ホームズ的なツボは押さえてるなという感想。作品内容としても、まあ「インターネットの正しい使い方」というような説教くさい話ではなく、なんかこうカーペットの裏から悪意が滲み出てくるような感じでグッと来ますね。主人公がやべえおねショタセクハラ女だったり、ネットストーカー被害を受けた男の娘配信者もわりとストーカー気質だったり、だいたい事件の解決方法が暴力&暴力だったりと、なんだか作風自体がちょっと露悪的でもある。銀賞受賞作らしくクセが強くて「これこれ、これだよ」と嬉しくなりました。期待どおりの面白さでしたね。
【21上ラノベ投票/9784049136852】
PAY DAY
ヒーローものベースの青春異能バトル。「日傘の魔女」という謎の存在によって怪物にさせられた四人の少年少女たち。自らの寿命を削ることで異能を使い、他人の寿命を奪ってまわる。それでも魔女の要求する寿命にはとても足りない。まさに借金漬けの自転車操業。そして目立ち過ぎれば最強の「ヒーロー」が飛んできて成敗される。進むも地獄、退くも地獄。仕方なく四人は一発逆転を期してヒーローに戦いを挑むのだが…というわけで、邪悪だけど熱血、暗黒だけど痛快、ヴィランを主役にしたアクションものとしても、クライムムービー的な青春友情ものとしても、非常に楽しい作品でしたね。
【21上ラノベ投票/9784046800770】
魔王2099
素晴らしかった。天変地異により科学世界と魔法世界が融合し、「魔導工学」の力で急激な発展を遂げた2099年の新宿において、実に五百年ぶりに復活した魔王。彼はメガコーポの社長となったかつての部下のもとに赴き、しかし最新の魔導工学の下に無様な敗北を喫する。……というわけで、魔法の発動を補助する電脳「ファミリア」、霊竄士(ハッカー)が跋扈する「エーテルネット」、パワードスーツとゴーレムが融合した「魔導鎧骨格」など、それらしいガジェットがわんさか登場する近未来SFファンタジー。「サイバーパンク世界に魔王が復活する」というアイディアもさりながら、それを裏打ちする技巧があり、そしてストーリーを一気に読ませる分かりやすさ、面白さがある。これは見事な新人が出てきたなという会心の受賞作だった。
【21上ラノベ投票/9784040739588】
亡びの国の征服者
相変わらずべらぼうに面白い。前半は天測航法を実現して交易が格段に広がる話。後半は隣国キルヒナ王国への援軍へ向かう展開。順調に成長してほぼ成人に近い年齢となり、人脈も商売も手広くなってきた感じ。世界観の厚みがずっしりと感じられる。戦争がひたひたと迫り来るまでの猶予期間、まさにモラトリアムといったところの平和を謳歌しているけど、この雰囲気が好きなので延々とこういう話をやっていてほしい気もするし、しかし決定的なターニングポイントを迎えるときが楽しみな気もする。とはいえ3巻まで終わっても、未だに国は亡びていないし、魔王になってもいないのである。
【21上ラノベ投票/9784865548495】
サイレント・ウィッチ
「七賢人」のひとりにして無詠唱魔法を操る「沈黙の魔女」が、王子様を密かに護衛するために学園に潜入する話。主人公が「魔法の天才」というより「数学の天才」として描かれているのが面白いところですね。「数学の天才が異世界に生まれたら魔法の天才として扱われる」というような感じ。また、主人公のキャラクターとしても、自己評価が低く、小動物のように震える鈍臭い少女といったところで、非常に可愛らしい。自然と、他の登場人物にはクールでサドっけの強いイケメンが多くて、虐げられる主人公が引き立ちますね。ちょっとしたミステリ要素もあって読み応えがありました。面白かったですね。
【21上ラノベ投票/9784040740355】
目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい
うーん、変わらず最高。宇宙エルフに続いて宇宙ドワーフが登場。ドワーフたちが働く「造船所」で惜しみなく金を注ぎ込んだ母艦を購入することに。というわけでmy new gear...感がいいな。ワクワクする。そして新たなクルーとして整備員として働くことになるドワーフの双子姉妹も登場する。彼女らに関するエピソードはドタバタコメディめいていてすこぶる楽しかった。肩の力を抜いて楽しめるコメディ展開に、ヒロインたちとのエロティックな関係、血生臭くも爽快なバトルアクション、少年心をくすぐるSFガジェット、というバランスが本当に素晴らしい。
【21上ラノベ投票/9784040740836】
隷王戦記
東方世界を征服した若き覇王により、愛する女と親友を奪われた主人公が、群雄割拠の「世界の中央」へと逃れ、奴隷の身分から再起を志すまでを描いた戦記ファンタジー。「漆黒の狼と白亜の姫騎士」のときは異能者たちの扱いがよくわからなくてリアリティレベルで混乱していたけど、本作では最初から「超常の異能を持った英雄たち」がいることが明示されるのでだんぜん読みやすいな。全体的にチンギスハンとバイバルスがモチーフっぽくて、中央アジアや中東あたりの雰囲気が濃い。全てを奪われてから這い上がっていく展開も、権謀術数が渦巻く「世界の中央」の状況も、王道の読み応えで面白かった。
【21上ラノベ投票/9784150314774】