ヨッピー:ちなみにこの辺が全盛期として、だんだん売り上げが下がってしんどくなって来るのってどれくらいからですか?
野嶋さん:うーん、2010年くらいからかな……。
ヨッピー:どういう要因で売れなくなるんですかね?
にゃるらさん:諸説あると思うんですが、「泣き」とか「物語」を求めるオタク層が、ライトノベルに流れたのが要因として大きいんじゃないかと思うんですよね。
「平成のエロゲ」を振り返ろう【令和にも伝えたい】 | オモコロ
「ラノベがエロゲに取って代わった」――というエロゲ衰退ラノベ原因説。
けっこうあちこちで見かけるんですが、個人的にはちょっと疑問に思っているんですよね。
まずエロゲが衰退しはじめたのはいつごろでしょうか?
実は市場規模のピークは2002年だそうです。
アダルトゲーム:ユーザー人口増加も、不正利用の増加や、参入事業者及びコンテンツの減少等により、2002年をピークに市場規模縮小が続く。
矢野経済研、「オタク市場」に関する調査……4人に1人がオタク、2010年成長は「オンラインゲーム」 1枚目の写真・画像 | RBB TODAY
2003年ごろにCD-ROMからDVD-ROMへの移行があって大幅に減少。
2004年には『CLANNAD』『Fate/stay night』の発売があって多少戻しますが、そこからは漸減が続いているようです。
広くとっても2000年代前半が最盛期と考えていいのではないでしょうか。
一方で、ライトノベルのアニメ化が急増したのは2006年以降。
アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』が大ヒットしたのも同じく2006年です。
2003年に6作品、2004年に3作品、2005年に8作品と推移していたのが、2006年には18作品まで膨れ上がります。
市場規模について言えば、何をラノベと見なすかで大きく変動して扱いづらいのですが、とりあえず最盛期は2010年代前半あたりになると思います。
エロゲ衰退ラノベ原因説を唱えている人って、「エロゲが衰退しはじめたのは2000年代後半」と思っているから、2000年代後半に流行したもの=ラノベをその原因として挙げているのだと思うのですが、「エロゲが衰退しはじめたのは2000年代前半」という前提を採用すると、その仮説は一気に怪しくなりませんか。
「エロゲライターからラノベ作家に転身した人が多い」というのも傍証とされていますけど、「エロゲ時代のファンを引っ張ってきて大成功!」みたいな事例って実はそれほど思い浮かばないんですよね。エロゲ時代にはあまり活躍していなかった人とか、逆にエロゲでは知られていたけどラノベでは売れなかった人とか、あるいは作風をエロゲ時代からガラリと変えている人も多くて、「ラノベさえ読んでいればエロゲに求めていたものを補給できる」という感じがしないというか。
ちなみに、エロゲ原作アニメが最も多かったのも2005〜2007年頃で、ラノベ原作アニメが増えはじめた時期と一致します。
エロゲが原作のアニメ作品の一覧とは (エロゲガゲンサクノアニメサクヒンノイチランとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
ときどき「昔はラノベアニメよりエロゲアニメのほうが多かったのにな」と言っている人がいるのですが、数字の上では「エロゲアニメのほうが多かった」という時期は無さそうです。ただし、2000年代前半のラノベアニメはWOWOWで放送されることが多かったので、体感的にはエロゲアニメのほうが多いように感じられたのでしょう。
もちろん、テレビアニメ全体からすればエロゲ原作アニメもラノベ原作アニメもごく一部にすぎない、ということは言うまでもありません。
Category:2006年のテレビアニメ - Wikipedia
なぜラノベもエロゲも2006年にアニメ化が増えたのか?
それは深夜枠が定着してテレビアニメの本数自体が増加したからです。
つまりラノベブーム自体が、極論すれば「深夜アニメブーム」に内包されるわけで、「漫画も読むしラノベも読むしアニメも観るしエロゲもやる」というオタクの生態を前提とした上で、「エロゲだけが衰退した」ことの理由を考えるのであれば、ラノベよりもアニメの影響のほうがよほど大きいのではないかと思うのですが、どうなんでしょう。
エロゲの衰退理由、誰かガチで研究してくれ。
追記。
エロゲの衰退理由について各所の意見をまとめると、
- ラノベ・深夜アニメ・ソシャゲ(あるいはスマホゲー)など他のメディアに客を奪われた。
- ファイル共有ソフトなどにより海賊版が蔓延して購入者が減った。
- CDからDVDへの移行、スマホの普及、光学ドライブのつかないノートパソコンの普及など、周辺環境の変化によりプレイヤーが減った。
- エロゲの大長編化による制作コストとプレイコストの上昇。
といったあたりに整理できるかなと。たぶんこれらの複合的な理由なんでしょうけど。
まあエロゲ衰退の理由を解き明かすのは本記事の目的ではないので詳しい人に任せます。