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ライトノベルの読者年齢を考える

はじめに

ライトノベルの読者年齢について語られるとき、近年はしばしば「高齢化した」ということが指摘されます。

しかしその多くは「現在のラノベ読者年齢が高い」ことだけをもって「高齢化した」と言っており、10年前あるいは20年前のラノベ読者年齢と比較していることはほとんどありません。なにせ資料が少ないからです。

私は2000年代からラノベ関連のニュースを観測していますが、ラノベ読者年齢の推移を表すわかりやすいデータはほとんど無かったと思います。しかも、10年前ならもっと資料が残っていたと思うのですが、いまや2000年代の多くの記事は削除されており、ネット上では遡れなくなっています。

というわけで、現在でも残っている「ラノベの読者年齢」のデータを、いまのうちに整理しておこうというのがこの記事の主旨です。

あらかじめ言っておくと、この記事を読んでも「ライトノベルの読者年齢」はわかりません。そのものズバリのライトノベル全体の読者年齢ではなく、ものすごく条件が限定されたデータだったりするからです。少なくとも「間接的に窺い知るためのもの」くらいに思ってください。

2004年ごろの「電撃文庫の特定作品」の読者年齢

http://www1.tcue.ac.jp/home1/takamatsu/104221/15.html
これは広告の媒体資料ですね。「電撃文庫は中高生の男女が中心読者層です!」との宣言が眩しい。そして当時の電撃文庫で売れ筋だった三作品の読者年齢が書かれています。

2004年がどういう時期だったかを補足しておくと、ライトノベル市場が拡大を始めつつ、『ライトノベル完全読本』や『このライトノベルがすごい!』といったラノベ解説本が刊行され、一般に「ライトノベル」というものが知られはじめた、「ライトノベル」という呼称が広まりはじめた時期となります。ラノベアニメが急増する直前でもあり、アニメ経由でどっと入ってきた読者の影響がまだ無かった頃のデータであるとも言えます。

キノの旅 イリヤの空 灼眼のシャナ
小学生 6.0% 0% 0%
中学生 46.3% 16.0% 36.0%
高校生 27.7% 39.0% 42.0%
大学生 8.8% 23.0% 11.0%
社会人 4.0% 12.0% 7.0%
その他 6.8% 9.0% 7.0%

※「その他」は主婦・フリーター・無職などの合算

キノは現在でも中高生に人気の「図書館に入っているラノベ」の定番ですね。おそらくライトノベルのなかでは(今も昔も)かなり読者年齢が低めの作品だと思います。

イリヤも今になるまで売れ続けているロングセラーですが、映像化はOVAのみ*1ですし、この中ではマニアックな印象があります。ゆえに大学生以上から支持を受けているのは納得できますね。

シャナは、2004年時点ではまだテレビアニメ放送前ですが、この三作品のなかでは「ライトノベルの平均的な読者層」に最も近いような印象です。

そして、その「シャナ」でさえ大学生以上の割合を合計すると25%、「イリヤ」にいたっては大学生以上の割合が44%にもなるということは、当時から20代・30代のラノベ読者がそれなりにいたことを示しています。

2008年ごろの「電撃文庫MAGAZINE」の読者年齢

http://web.archive.org/web/20090306075502/http://asciimw.jp/info/ad/comic/bunko-info.pdf
2009年初頭に公開されていた広告媒体資料です。データ的には2008年ごろのものでしょうか。添付されている表紙は2008年7月号ですね。

電撃文庫MAGAZINE」というものを解説すると、これは電撃文庫の旗艦雑誌だったのですが、ライトノベルは書き下ろしが中心なので、雑誌に掲載されているものは人気作品の外伝や短編が中心となっていました。漫画雑誌みたいに「自レーベル作品のショーケース」として機能していたわけではなく、むしろ各作品のファンが購入するいわば「ファンアイテム」的なものでした。「ラノベ読者ならたいてい買っていた」とは言い難く、必然的に「ラノベ読者」全体の傾向からはズレがあったであろうという点に留意せねばなりません。

棒グラフの数値を目分量で読み取って整理すると、

中学生 23%
高校生 22%
大学生 23%
それ以上 28%

くらいになりますか。ピークは15歳ですが、意外にまんべんなく広がっている印象です。平均年齢は20.3歳とあります。

2008年といえばラノベ原作アニメもすっかり定着した頃で、新しい読者が大量に流入して、「ライトノベルの黄金期」はこの時期とされることが多いのではないでしょうか*2。となると、パーセンテージに対して、それが示す読者の実人数はかなり異なっていることが予測されます。というわけで、先ほどの2004年ごろのデータと、こちらの2008年ごろのデータを、パーセンテージだけ見て単純比較するには、やはり注意が必要と思われます。

2010年の出版月報に掲載されたライトノベルの読者年齢

2015年ごろのPOSデータに基づくライトノベルの読者年齢

とりあえず表にしておきます。

10代 10〜20%
20代 20〜35%
30代 20〜35%

2015年のBOOK☆WALKERの「ライトノベルの平均読者年齢」

https://bookwalkerstaff.tumblr.com/post/128323701752/

条件としては、
BOOK☆WALKERで10冊以上書籍を所持している。
・書籍のうち50%以上がライトノベルである。
・会員登録情報として常識的におかしいものは省く。
(データは2015年8月末時点、 対象者数:企業秘密デス…m(__)m)
といった条件で対象者を抽出して、平均年齢を算出してみました。

結果・・・

平均年齢:31.8歳!

BOOK☆WALKERは、KADOKAWA直営ということでラノベ読者の多い電子書籍プラットフォームであり、その点では参考にできるのですが、「電子書籍」自体がクレジットカードなどの決済手段を必要とするので、そもそも中高生の読者は少ないであろうというバイアスがかかっています。

逆に言うと、かなり高めに出るであろう数字でも30歳程度ということは、実際の平均年齢はもっと低いとは言えるのかもしれません。

2016年の「小説家になろう」の読者年齢

https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1011309.html

ユーザーは、男性55%、女性29%、未回答16%。年齢は、10代以下が18%、20代が48%、30代が21%、40代が9%。ただしこれらの情報はユーザーの登録情報をもとにしており、相当数が未入力なのと、登録せずに読んでいる人もいるので正確なところは分からない。

ライトノベルそのものの情報ではないにしても「ライトノベル的な作品」の需要をおぼろげに察する材料にはなる?

2019年の「小説家になろう」の読者年齢

https://premium.kai-you.net/article/53

年齢層は20代が44パーセントで半分近く、10代が14パーセント、30代が24パーセントと、これでほぼ8割を占める計算になります。あとは40代が12パーセント、50代以上が6パーセントくらいでしょうか。

2016年と比較するとやや高齢化しているか?

考える

以下は個人の感想です。データだけ知りたい人は読まなくていいです。

まず「ライトノベルの読者は中高生」という前提を疑うべきです。これは「週刊少年ジャンプの読者は小学生」くらいの「建前」なのですが*3ラノベをよく知らない人がこれを信じてしまったため、「ラノベには20代30代の読者もいるよ」と聞いただけで「ラノベ読者って高齢化しているんだ」と思い込んでしまう現象がしばしば観測されます。2004年のデータからも分かるように、昔からライトノベルには20代以上の読者がそれなりにいました。

その上で、ライトノベル読者が高齢化しているのは事実だと思います。いまのラノベ業界が「中高生の男女が中心読者層です!」とはお世辞にも言えないでしょう。ただ「高齢化」というより「全年齢化」と言ったほうがしっくり来るんじゃないでしょうか。いわゆるオタク文化、漫画やアニメやゲームがいまどき「子供向けのもの」と言われないのと同じく、ラノベもまた全年齢に読まれるのが当然になっているわけです。

ただし、ライトノベルの読者年齢の話は「ライトノベル」自体の定義にも左右されます。たとえば、高価格なので読者年齢が高いとされるウェブ文芸の単行本や、想定読者年齢が20代以上だと言われるライト文芸、あるいは小学生向けの児童小説などを「ライトノベル」に含めるかどうかで、「ライトノベル」の読者年齢は如実に変わってくるのですね。

さらに、中学生のお小遣いは平均2500円、高校生のお小遣いは平均5000円らしいですが、いずれにせよそれだけでは月に何十冊も新刊を買い漁れるはずもないので、中高生のラノベ読者の行動は、学校図書館で読む、中古本を買う、親の持っている作品を読む、1つ2つの好きなシリーズだけを追いかける、などといった傾向になることは明らかです。これら中高生の読書行動は、書店のPOSデータなどからは窺いづらいはずで、このあたり実態としてどうなっているのかよくわかりません*4。近年であれば「小説家になろう」などでライトノベルとして書籍化されている作品が無料で読めるので、お金のない中高生がそちらに流れているということは考えられそうです。

ついでに、しばしば「大人向けラノベ」と称されるライト文芸ですが、中高生の「朝の読書」の人気ランキングを見ると「住野よる」や「有川浩」といったライト文芸の作品が上位を占めているわけで、このあたりもまた「想定イメージ」との乖離というか、やっぱり業界が「中高生向けに書きました」とか「大人狙いです」とか言ってるのは信用なんねえな、みたいに思ったりも。

というわけで結論としては「よくわからん」ということになるわけですが、少なくとも年季の入ったラノベ読みでも「ラノベ読者がどのくらい高齢化しているかどうかはよくわからん」のだ、ということだけ覚えてくれればOKです。以上です。

*1:2004年時点では未発売

*2:市場規模で見るとこの時期が最大というわけではないのですが

*3:そもそも「想定読者」と「実際の読者」は必ずしも一致するものではない

*4:学校での「朝の読書」調査などがひとつの判断材料になるでしょうか