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「チートが誤用されている」という誤解

現在、誤用だと言われているのは、「チートとは不正行為のことなのに褒め言葉として使われている」ということ、さらに「そういった誤用が生まれたのは『なろう』系のせいである」ということについてである。

はたして、これは誤用なのだろうか。

結論から言えば「誤用」とは言いがたいと私は思っている。それは、あるキャラの圧倒的な能力を目の当たりにして「反則だぜ…」と呟いたりするのと同じ。すなわち「チートしたみたいな強さ」という比喩的な表現にすぎないからだ。

「異常なほど」「ズルいくらい」「化物じみた」「悪魔のよう」「鬼のごとく」…

ネガティブな言葉をあえて褒め言葉として使う用例はたくさんある。ことさら「チート」だけを糾弾する理由が思いつかない。

と、話としてはここでほぼ終わりなのだが、おまけとして「比喩としてのチート」用法が広まる過程を追ってみよう。

以下、面倒なので「比喩としてのチート」用法のことを「チート比喩」と略す。


まず、英語の「cheat」には「いかさま」「ごまかし」「ずる」といった意味がある。これ自体はコンピュータやゲームに限らず使われる言葉である。

コンピュータゲームにおいては、ゲームを改造したりバグを利用したりするなどの不正行為が「チート」と呼ばれている。特にVRMMORPGやオンライン対戦ゲームにおいては、チートが使われると他のプレイヤーにも影響が及ぶため、非常に忌み嫌われている。

さらにそれが転じて、2000年代半ばからゲーマーたちのあいだで、ゲーム内で飛び抜けて強いキャラやアイテムなどが、「チートキャラ」「チート性能」などと形容されるようになる。

2007年6月19日。

ビオラ(前半で飛ばし過ぎて後半で伸び悩む典型例)
弓の使い勝手(操作が上下のみリバース、変更不能)が悪過ぎるのは評価上差し置いておきます・・・こりゃゲームシステムの方に入るだろうしね。
序盤はチートキャラ、中盤は強キャラ、後半で完全に伸び悩む、と「聖剣3のリースの成長過程を過剰にしたらこんな風になるんじゃね?」なキャラw

https://riesz.blog.so-net.ne.jp/2007-06-19-1

2007年10月22日。

実績の難易度としては楽でしたが、特定のイベントをクリアーして敵武将を倒してクリアーというのが基本パターンなので、その繰り返しによるマンネリで投げ出しそうになった事が何回もあったりしましたが、全部の本編ストーリーをクリアーして武将選択の制限が解除されてからは、チート的な強さを持つキャラを使用して一気に進め、何とか実績コンプさせましたw

http://d.hatena.ne.jp/seiba_86/20071022/1193060417

こうした用法は紛れもなく「チート比喩」と言えるだろう。


次に特筆すべきは、2008年ごろから「ハンス・ウルリッヒ・ルーデル」や「シモ・ヘイヘ」の事績が知られるようになったことである。

2008年2月24日。

各界よりコメント
「何だ?このチート属性は!?私もこんなチート人間を見たことが無いぞ!」
ハンス・ウルリッヒ・ルーデル について、オスカー・ワイルド

ハンス・ウルリッヒ・ルーデル - アンサイクロペディア

2008年7月14日。

こいつチートだろ、っていう歴史上の人物と何したか書いてけ

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/14(月) 21:59:15.52 ID zWUhfMBaO
いるのかな

2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日:2008/07/14(月) 21:59:32.25 ID NrudcwmN0
↓シモヘイヘ

46 名前:JACK ◆JACK/BJa3c [] 投稿日:2008/07/14(月) 22:13:25.80 ID b17t2NE10
>>2がチートMAXでFA?

暇人\(^o^)/速報 (旧) こいつチートだろ、っていう歴史上の人物と何したか書いてけ

2008年8月11日

スポーツ選手なんかをみていると身体能力的にチートしてね?とか思うことも多々あります。

また歴史上の偉人もチート疑惑がわきますよね。(スゴイ記録があったからこそ名が残るとも言うけど)

という事で、キング・オブ・チートっぽい人のご紹介。

狙撃手 シモ・ヘイヘ

人類チート列伝 その1: カゲッチのぶろぐ

ルーデルやシモ・ヘイヘの事績が「チート」という形容とともに広まったことで「チート比喩」もこのあたりから人口に膾炙していったものと思われる。ルーデルやシモ・ヘイヘがゲームとは無関係であることにも注目しておきたい。

ちなみに、ログ速で検索するかぎり、最初期に立てられたチート比喩と思われるスレタイはこのあたりだろうか。

B'zってチート使ってんの?(2007年12月21日)
ポケモンで一番チートな道具って(2008年4月28日)
米飯に焼肉のタレってチートじゃね?(2008年7月6日)
ガンダム世界最強のチートMSは?(2008年7月26日)


さて、もう一つ書いておかねばならないのは、なろう系における「チート」についてである。なろう系(あるいはその元となった二次創作SS)の「チート」には、実は二種類がある。すなわち「転生チート」と「知識チート」である。

転生チート。

主人公が神から貰った能力(チート)で無双したり原作蹂躙したり恋愛関係を築いたりとご都合主義的内容が多いため(いわゆる俺TUEEEEやニコポやナデポ、二次創作小説であればメアリー・スーなど)人によって好き嫌いが大きく分かれるジャンル。
(中略)
神様が主人公に能力(特典とも呼ばれる)を与える。(通称「チート」。桁外れに強力だったり、主人公以外の登場人物は誰も持っていない特別な能力だったり)

http://dic.nicovideo.jp/a/%E7%A5%9E%E6%A7%98%E8%BB%A2%E7%94%9F

つまり、転生チートとは「単純に強い能力」というだけではなく、誰も持っていないような能力を特別に与えてもらうから「チート」なのである。

知識チート。

内政チート
トリップや憑依、転生もののSSによく見られる、ファンタジー世界や過去の時代に現代の知識・技術を持ちこみ、主人公の支配下または所在している地域の内政面を向上させる行為を指す。
(中略)
これを用いるとき、主人公はさながらウィキペディアをリアルタイムで見ているように正確に知識を思い出し、なおかつウィキペディアに載っている程度の情報を基にして、本職顔負けの内政手腕を発揮してしまう。

http://dic.nicovideo.jp/a/ss%E7%94%A8%E8%AA%9E%E4%B8%80%E8%A6%A7

こちらも本来であれば存在しないはずの知識を特別に持ち込むから「チート」と呼ばれるものである。チートシート=カンニングペーパーに近い用法である。

いずれも「自分だけ特別に能力を高めている≒自分だけズルをしている」という認識があるからこその「チート」なのである。むしろ本来の「チート」の意味に近いとさえ言えるのではなかろうか。

二次創作SSの総本山Arcadiaを検索してみるかぎり、こういった二次創作における「チート」表記は2009年ごろから流行りはじめたようである。さらに、「小説家になろう」の作品が大々的に書籍化され、衆目にさらされるようになったのは2011年ごろからとなる。であれば2008年ごろから広まったチート比喩用法を「なろう」のせいにするのはお門違いであろう。

ちなみに、「チートの誤用はSAOのせいじゃね?」という声もあるが、SAOの書籍化は2009年、アニメ化は2012年であり、やはり時系列的にはかなり遅い。またSAO内では「チーター」は蔑称であり、褒め言葉としては使われていないという点でも、SAOのせいにはできないだろう。


以上から「チートがなろう系のせいで誤用されている」といった認識は誤解であると言いたい。「チートを褒め言葉として使う」のは誤用とは言いがたいし、百歩譲って誤用だとしても、そういった用法を最初に使いはじめたのはゲーマーたちなのである。

変な八つ当たりはやめよう!

ラノベ読みにオススメのTwitterユーザーまとめ

自分がフォローしている方の中から紹介してみます。
「この人のツイートが面白い」というよりは「Twitterラノベの情報を収集するなら」という方向性です。
ご了承ください。

mizunotori

https://twitter.com/mizunotori
俺です。
いきなりてめえかよというご批判ごもっともですが、まあ、なかなか情報収集を頑張っていると思うので、いちどフォローしてみてください。
ツイート内容は主に「ラノベ関係のニュース」「ラノベの感想」「ラノベの話題へのいっちょかみ」で構成されています。
公式のニュースだけでなく、個人ブログの記事なんかもTwitterに流しているのが特徴です。
よろしくお願いします。
「おまえのくだらんツイートなぞ見たくねえ、ニュースだけ教えろ!」という場合ははてなブックマークをチェックしてみてください。
タグ「ラノベ」を検索 - はてなブックマーク

ラノベニュースオンラインさん

https://twitter.com/lnnews
ラノベ専門ニュースサイト「ラノベニュースオンライン」(通称・ラノオン)のアカウントです。
どんな作品が発売されたとか、どんなイベントがあるとか、公式に発信されたラノベ情報をまとめて確認したいのであれば、ラノオンのチェックはマストです。
作品の人気投票が毎月開催されていたり、ときどき作家さんのインタビューが載ったりもします。
ぜひ編集長のアカウントもフォローしましょう。
https://twitter.com/suzuLnews
「ラノオン」のウェブサイトはこちら。
ライトノベル総合情報サイト ラノベニュースオンライン – ライトノベルに関するニュースを紹介

秋野ソラさん

https://twitter.com/akinosora_
ラノベ作家や読者たちの面白い会話を適度にリツイートしてくださる方です。
秋野さんさえフォローしておけば、いちいち作家さんをフォローしなくても事足りるといって過言ではないでしょう。
盛り上がった話題があればTogetterにもまとめてくださいます。
精力的、のひとことですね。

nyapoonaさん

https://twitter.com/nyapoona
少年向けラノベっぽいライト文芸を見かけると「なぜラノベで出さないのか」と言い、ライト文芸っぽい少年向けラノベを見かけると「なぜライト文芸で出さないのか」と言うbotです。違います。
ハヤカワや講談社ノベルス、あるいはメディアワークス文庫のようなライト文芸といわれる方面に強いアカウントで、秋野さんが「ラノベクラスタ」の話題を拾う人なら、nyapoonaさんは「ラノベクラスタの外縁」の話題を拾ってくださるようなイメージです。
観測範囲の狭さに悩んでいる人にオススメです。
ただし特撮とかハイローとかアメコミとかバーフバリとかそういう話題も多いので、純粋にラノベの話題だけ知りたい方は注意してください。

某書店のラノベ担当さん&関東隅のラノベ担当さん

https://twitter.com/honyasannohito
https://twitter.com/linove_sell
ラノベ担当の書店員として名を知られたお二方です。
書店員という立場からラノベをどう売り伸ばしていくかを常に考えておられる。
好きなラノベを熱くオススメしてくださいます。
誠実かつ積極的に活動されている印象です。

本山らのさん

https://twitter.com/Motoyama_Rano
5月10日から活動を開始されたラノベクラスタ待望のラノベバーチャルYouTuberです。
一同、初孫ができたように大喜びしております。
いちおうラノベ系Vtuberは他にもいるんですが、らのさんは最も精力的に活動されており、今後のブレイク間違いなし。
いまのうちにフォローしておけば、のちのち自慢できるかもしれません。
完全個人での運営で、紹介するラノベもかなりガチめ。
これからの活躍が楽しみです。
YouTubeのチャンネルはこちら。
Rano Ch.本山らのチャンネル - YouTube

ラノベ天狗さん

https://twitter.com/srpglove
Twitterの闇を抉り出す暗黒の使者。
もといラノベについて雑なことを言ってる人を探し出してRTしていく妖怪です。
天狗さんをフォローすればあなたのTLに糞みたいなラノベ批判が溢れるようになるでしょう。
あなたがまだ純真な人間であればフォローしてはいけませんが、十分にネット擦れしているならフォローしてみるのも一興だと思います。
天狗さん自身も決して正義のヒーローといった感じの人ではないのでご注意を。
まあ、いろいろなツイートを見ていると「自分も発言には気をつけよう」と思えるようにはなります。


ここから編集者のターン。
個人的には作家さんをたくさんフォローすると収拾がつかなくなるので、レーベル公式や編集さんをフォローするほうが好きですね。
レーベル公式は検索すれば探せると思うので編集さんのほうを紹介してみます。

電撃文庫土屋さん

https://twitter.com/t_tsuchiya_PR
電撃文庫では「SAO」や「86」などの担当だそうです。イケイケですね。
作品のPRも含めて、Twitterを積極的に活用されている編集さん、という印象です。

講談社ラノベ文庫シゲタさん

https://twitter.com/shigetayuu
最近、質問箱を使って読者からの質問に積極的に回答されている編集さん。
わりと率直で飾らない回答が多くて好感が持てます。だが会社から怒られたりしないのだろうか。

講談社ラノベ文庫庄司さん

https://twitter.com/ss_editor
講談社ラノベ文庫といえば忘れてはいけない名物編集者。人呼んでラノベ王子。
ええと…とにかく強烈なキャラクターの持ち主です。

GA文庫サトさん

https://twitter.com/GA_SATO
GA文庫は編集者が全員個別にTwitterアカウントを持っており、精力的に宣伝ツイートをしながらも、ときどき業界の裏話もしてくれます。
サトさんは最近だと「ゴブリンスレイヤー」などの担当で知られており、ラノベ界を代表する編集者のひとりと言ってよいでしょう。

HJ文庫あしがらさん

https://twitter.com/HJ_Ashigara
HJ文庫の名物編集者さん。
サトさんと同じく、ときどき業界について語ってくださいます。
「あしがら‐METAL」のスクリーンネームどおりヘヴィメタルの話題も多いです。

インフィニット・デンドログラム公式さん

https://twitter.com/dendro_hj
特定作品の公式アカウントとは思えないフリーダムさを見せる編集さん。
もはやデンドロとは関係のない話題のほうが多いですが…新刊発売時に見せるデンドロ愛は熱いです。


こんなところでしょうか。
あとは紹介した方々のフォローをさらに辿っていったりしてみてください。
ラノベクラスタなんて狭いもんですからね…TLを眺めているうちにだいたい目立ったアカウントは覚えちまいますよ、へっへっへ。
それでは楽しいラノベTwitterライフを!

時代はいま「サブタイトル付きラノベタイトル」なのか!?

長文タイトルだ!

いや当て字タイトルだ!

異世界タイトルだ!

君僕タイトルだ!

あやかしタイトルだ!

と盛り上がってきたラノベタイトルに新たなトレンドが!

というわけで「サブタイトル付き」、最近多くないですか?

サブタイトルというと、昔は『C3 -シーキューブ-』『SH@PPLE -しゃっぷる-』『H+P -ひめぱら-』のような読み仮名系や、『キノの旅 -the Beautiful World-』『空とタマ -Autumn Sky, Spring Fly-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』のように英題系などは散見されましたが、近年のサブタイトルはそれらとは異なる傾向にあるように思います。

  • 無職転生異世界行ったら本気だす~
  • 本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~
  • 転生賢者の異世界ライフ ~第二の職業を得て、世界最強になりました~
  • 英雄の隠し子の英雄譚 ~村人の俺に最強スキルが継承された~
  • 回復術士のやり直し ~即死魔法とスキルコピーの超越ヒール~
  • 転生者殺し ~チートを奪うチート能力で悠々自適な異世界生活!?~
  • 田中 ~年齢イコール彼女いない歴の魔法使い~
  • 異世界テニス無双 テニスプレイヤーとかいう謎の男がちょっと強すぎるんですけど!
  • ゼロの大賢者 ~若返った最強賢者は正体を隠して成り上がる~

新刊リストから適当に拾ってみました。各巻ごとの副題じゃないですよ。作品タイトルにサブタイトルがついているんです。

ラインナップから見るに、基本的には「なろう系の長文タイトル」の派生だと思われます。メインタイトルが短めでサブタイトルが長め。短いのと長いのの良いとこどりをする狙いでしょうか。

ちなみに、長文タイトルの流行には「ラノベ由来の長文タイトル」と「なろう由来の長文タイトル」の二種類があり、それぞれ流行時期もズレていると思っているのですが、そこを語ると長くなるので割愛させていただきます。

現状ではまだまだ長文タイトルの勢力が強いラノベタイトル界。サブタイトルはこのままプチブームで終わるのか、それとも一気に主流となるのか、これからもラノベタイトルから目が離せませんよ!

ラノベサイト昔語り

‪まず個人サイト期。ブログ以前から個人サイトを持っていた人たち。特に、まいじゃー推進委員会の極楽トンボさん、ニュースサイト・モノグラフの草三井さん、いまでも「好きラノ」主催してるいちせさん、ぎをらむさん、白翁さん、安眠練炭さんなど、いわゆる「ラノベサイト御三家」(誰が三家かは諸説あり)の人たち。オフでも交流があり、ライトノベルファンパーティーとかの企画も立てていた、ウェブ黎明期のバイタリティある方々という感じ。長老。重鎮。‬

‪ブログブーム期。平和さん、でるたさん、舞風のゐんどさん、うーぱーさん、愛咲さん、REVさん、megyumiさん、hatikadukiさん、ラノベの杜のMatsu兄さん、それとmizunotori、まあ挙げるときりがない。どの時期から活動してたかとか具体的にチェックしてないんで、思ったより昔からサイトやってたんだという人もいるかもしれない。折からのラノベ本ブーム、その後のハルヒブームもあり、盛んにブログを更新しつつ、クネクネと馴れ合って、「ライトノベルサイト管理人連合」などと揶揄され、それが自称としても定着した。「ラ管連」である。

‪補足。はてなダイアリーがオタクに強かったので、なんとなくラノベブログもはてなが多かった。はてなのオタクブログって、エロゲ論壇からの流れで長文記事を投稿する評論系と、ファック文芸部あたりが代表格(ほんとにござるか?)の創作系、という漠然とした二極があり(と俺が勝手に思っており)、海燕さんとかsirouto2さんとかは評論寄りのイメージだし(いや創作もやってるけど)、sunagiさんとか魔王様(14歳)とかは創作寄りのイメージで(いや評論もやってるけど)、ラ管連をコアとするラノベ特化のブログ群からはやや離れていた印象。‬

Twitter期。ラノベに限らずオタクたちの活動の中心がTwitterに移行し、感想は読書メーターにアウトソースされ、いまさら新しくブログやろうだなんて物好きな奴だぜ気に入った、という感じの昨今。ラノベから離れた人も多いし、「ラ管連」は最早死語だ。とはいえ何だかんだで「物好き」は少なくなく、なんか今日もラノベ読みでオフ会やってるらしい。ラノベ作家や編集者のTwitterが当たり前になったのも大きな変化だ。いままで観測範囲外だった人々が可視化され、ネットで文章を書く行為は特別なことではなくなった。これもラノベに限らないけど、閉鎖的な「界隈」から、緩やかな繋がりと広がりを持つ「クラスタ」へと変化したのだろう。‬

追記。俺は昔からオフ会とかにも一切参加してない引きこもりだから、誰がいつごろからどういう活動しているとか、誰と誰が仲良いとか、ぜんぜん詳しくないからね。なにか間違いがあれば平和さんが訂正してくれる予定。というかさらに詳しいラノベサイト史を書いてくれることを期待。

「ゲームを題材にしたライトノベル」の分類

暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~ (ファンタジア文庫)

暗殺拳はチートに含まれますか? ~彼女と目指す最強ゲーマー~ (ファンタジア文庫)

という作品を読んだわけです。おもしろかったです。一子相伝暗殺拳を学んだヒロインと一芸特化でプロゲーマーやってる主人公のボーイ・ミーツ・ガール。VR格ゲーで恋人同士が手に手を取り合って強敵に挑む青春ゲーマー小説です。

さて、ラノベは昔からゲームと親和性が高く、それを題材とした作品も数多いです。ましてや昨今は「VRMMORPGもの」が流行っていて、バーチャルリアリティで再現されたゲーム世界を舞台にした作品が急激に増加しています。そんなわけで、


と書いたんですが、これだとさすがにまとまらないのでもう少し大雑把に括ってみます。

現実世界を中心に話が進んでいくが、重要なアイテムとしてゲームが登場するタイプ。

ゲーマーズ!』や『僕と彼女のゲーム戦争』など。『ゲーマーズ!』は「ゲーマー」に注目しているぶんゲームそのものの描写は薄いですが、『ゲーム戦争』は各話ごとにプレイレポートのようにゲーム描写があります。『さくら荘』や『冴えカノ』のようなゲーム制作系の話もこの分類になるでしょうか。漫画で言うと『ゲームセンターあらし』とか『東京トイボックス』とか…。

[asin:4048705547:detail]

現実世界に軸足を置きつつも、ゲームのプレイ描写がメインとなっているタイプ。

スラムオンライン』『アクセルワールド』『ソードアート・オンライン』など。最初に紹介した『暗殺拳』もこのタイプです。ゲーム描写が見せ場を占めつつ、現実世界の描写もしっかりと行っている、という感じでしょうか。『.hack』みたいに、逆にゲームの中の出来事が現実に影響を与えたりする展開とか。VRであることが重要かというとそうでもなく、『スラムオンライン』はVRではなかったですし、『ソリッドファイター』や『俺より強いあの娘を殴りに行く』のようなゲーセン小説もここに含めていいんじゃないかと思います。でもそうすると『ゲーム戦争』とかけっこう境界線上なんだよなー微妙だなー。いちおう「単一の架空のゲームを題材にしているかどうか」で感覚的には区別できるんだけど。

[asin:4047308021:detail]

ゲーム世界を中心に話が進んでいくタイプ。

『インフィニット・デンドログラム』『オーバーロード』など。さらにその中で、『デンドロ』はゲーム世界が実体化していないパターン、『オバロ』はゲーム世界が実体化したパターンとなります。『クリス・クロス』なんかもこのタイプに入るのでしょうか。たとえば『デンドロ』は、特に実体化していないしログアウト不能でもないごく普通のVRMMORPGとして描かれているんですが、ログアウトしたあとの描写が極端に薄いんですよね。そういう作品は「小説家になろう」でも意外に多かったりするので特に『デンドロ』が特殊なわけでもないとは思いますが。

<Infinite Dendrogram>-インフィニット・デンドログラム- 1.可能性の始まり (HJ文庫)

-インフィニット・デンドログラム- 1.可能性の始まり (HJ文庫)

クリス・クロス―混沌の魔王 (電撃文庫 (0152))

クリス・クロス―混沌の魔王 (電撃文庫 (0152))


と、ここまで書いて「これってローファンタジー/ハイファンタジー(+往還型)と同じ構造じゃねえか…」と気付いたので、ここは「ローゲーム/ハイゲーム」でいいんじゃなかろうか。ファンタジーのほうを知っていれば初見でも意味が分かりそうだし。うん。

ここでこういう呼称を広めておけば、数十年後には「SAOのような高尚なVRMMORPG作品でなければハイゲーム小説とは名乗れない!」とか言って暴れる奴が出てくるかもしれないので楽しみにしていよう。

www.bookoffonline.co.jp

「好きなライトノベルを投票しよう!! 2017年下期」投票

lightnovel.jp

剣と炎のディアスフェルド

剣と炎のディアスフェルドIII (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルドIII (電撃文庫)

【17下期ラノベ投票/9784048934985】

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士

【17下期ラノベ投票/9784048932134】

わたしの魔術コンサルタント

【17下期ラノベ投票/9784048933209】

ウォーター&ビスケットのテーマ

【17下期ラノベ投票/9784041060308】

エイルン・ラストコード

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 7 (MF文庫J)

エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~ 7 (MF文庫J)

【17下期ラノベ投票/9784040695051】

我が驍勇にふるえよ天地

【17下期ラノベ投票/9784797393880】

いつかのレクイエム

【17下期ラノベ投票/9784797393316】

キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った

【17下期ラノベ投票/9784047347465】

ひきこもり姫を歌わせたいっ!

ひきこもり姫を歌わせたいっ! (ガガガ文庫)

ひきこもり姫を歌わせたいっ! (ガガガ文庫)

【17下期ラノベ投票/9784094516883】

ストライクフォール

ストライクフォール3 (ガガガ文庫) (ガガガ文庫 は)

ストライクフォール3 (ガガガ文庫) (ガガガ文庫 は)

【17下期ラノベ投票/9784094517040】

2017年ライトノベル個人的ベスト10

ウォーター&ビスケットのテーマ

ナイス眼鏡! 『サクラダリセット』完結のあと新潮文庫nexで『階段島』シリーズをヒットさせ、満を持しての帰還となった新作シリーズ。別世界の街でおこなわれる異能力を用いた陣取りゲーム、それに参加した幼馴染コンビの活躍が描かれる。『サクラダ』とはうってかわって「臆病者」の主人公、しかしその思考のキレは変わらない。河野裕らしい頭脳戦が見ものです。
[スニーカー文庫公式サイト]ザ・スニーカーWEB | ウォーター&ビスケットのテーマ

ストライクフォール

ストライクフォール3 (ガガガ文庫) (ガガガ文庫 は)

ストライクフォール3 (ガガガ文庫) (ガガガ文庫 は)

こちらもスニーカー文庫で『円環少女』を完結させたあと、ハヤカワなどで活躍している作者の最新作。巨大人型ロボットが宇宙空間を超音速で駆け巡りながら戦うチームスポーツ「ストライクフォール」でスターを目指すスポ根主人公の物語。特に二巻・三巻とめちゃくそ面白くなっていくのは、「慣性制御」という新技術によって、一つのスポーツの定番戦術が根底からひっくり返る様子が克明にシミュレートされているから。まさにセンス・オブ・ワンダーです。
ストライクフォール | 小学館

わたしの魔術コンサルタント

魔法が存在する現代日本、くたびれた魔術コンサルタントの青年が、若き魔女たちに振り回されながらも、彼女たちを教え導いていく現代ファンタジーコンサルタントというよりは家庭教師的な感じですが。この作品の印象って、とにかく「バランスが良い」ということなんですよね。ラブもあり、バトルもあり、でもそのどちらにも偏っていない。キャラクターの生活がそのまま描かれているというんでしょうか。雰囲気の良い、均整の取れた作品だと思います。
わたしの魔術コンサルタント | 書籍情報 | 電撃文庫公式サイト

EXMOD

仲良く暮らす少年とその幼馴染の姉妹が、突如として列車事故に巻き込まれて重傷を負う。しかしその障害を補うように、彼らには強大なる異能が宿ったのだった。というわけで、壊れた日常、思春期の苦悩、これぞ学園異能、という作品です。川原礫の『絶対ナル孤独者』や清野静『さよなら、サイキック』と並んで、近年で最も優れた現代異能ものと言っても過言ではないと思います。ファンタジーに押されてこの手の作品の数が少なくなっているというのはわりと事実なんですが、そろそろ復活を期待したいですね。
EXMOD | 小学館

かりゆしブルー・ブルー

沖縄を舞台にした可愛らしい民俗ファンタジー。いなり寿司しか食べられないという恐ろしい呪いを解いてもらおうと本土からやってきた主人公と、お婆ちゃんからシャーマン的な地位を引き継ごうとして奮闘する少女の物語。カミツキレイニーはここ数年で飛躍的な成長を遂げた注目作家のひとりですが、未読者は一巻完結のこの作品から入るのがオススメです。
[スニーカー文庫公式サイト]ザ・スニーカーWEB | かりゆしブルー・ブルー

剣と炎のディアスフェルド

剣と炎のディアスフェルドIII (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルドIII (電撃文庫)

こちらは神話なんですよね。ギリシャ神話や北欧神話の英雄たちの冒険が下敷きになっていて、作中に登場する大帝国の建国神話もローマ帝国イスラム帝国モンゴル帝国あたりを混ぜ合わせたものだったりとか。兄弟の物語なんですが、兄のほうは不死身の肉体と無類の武勇を誇る英雄の諸国漫遊譚に、弟のほうはディアスフェルドを統一する偉大な王の征服記になっています。その二つが交わるときにどうなるのか…最終巻が楽しみです。
剣と炎のディアスフェルド|作品紹介|電撃文庫公式サイト

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士

このブログでも何度か説明してますが、これコメディっぽいですけど、ガチでシリアスなファンタジーですからね。邪悪な王国を倒した英雄が、しばらく後にその王国を訪れてみると、その国民は酷い迫害を受けていた…という、いわゆる勇者アフター系の話です。苦悩しながらも彼らにズルズルと肩入れしてしまう主人公がどこへ行き着くのか、その行く先を見守りたいです。
叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士|作品紹介|電撃文庫公式サイト

ドリームハッカー

ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア (電撃文庫)

ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア (電撃文庫)

出口きぬごし! 狂人を描かせたらラノベ界では右に出るものはいない出口きぬごし! その才能は本作でも遺憾なく発揮されております。電脳が普及した近未来、ナードなオタクたちがいじめっ子の電脳をクラックして復讐を企む、といったあらすじなんですが、もちろん嫌な奴を懲らしめてスカッと痛快、なんて呑気な話にはならないんですな。打ち切りになりそうだけど続きが読みたい…。
ドリームハッカーズ コミュ障たちの現実チートピア | 書籍情報 | 電撃文庫公式サイト

アイドル稼業、はじめました!

アイドル稼業、はじめました! (電撃文庫)

アイドル稼業、はじめました! (電撃文庫)

好きになったあの子は芸能人、追いかけて芸能界入りを目指したら、何故か性転換して美少女になってしまった、という導入からしてめちゃくちゃ濃いんですが、そこから不倫にパパラッチにヤクザに半グレに違法賭博に…芸能界の黒い裏側をたっぷり描いたサスペンスフルな展開に突入するのは、映像制作会社にいたという作者ならではでしょう。可愛らしい見た目からは想像できないおっそろしい作品です。
アイドル稼業、はじめました! | 書籍情報 | 電撃文庫公式サイト

キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った

多重人格の少年と多重人格の少女、二人の半生を描いた切ない青春物語。主人公には三つの人格があるんですが、この三人がめちゃくちゃ仲が良くて、幼少の頃からのエピソードの一つ一つが素晴らしく楽しそうなんですよね。他人にどう思われようがぜんぜん気にしない。そりゃそうです。こんな気の合う素敵な親友がいたらもうそれだけで満足ですよ。比嘉智康の奇才が存分に発揮されています。
『キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った』|FBonline


リンク先のページでだいたい試し読みを見られるので興味が湧いたらチェックしてみてくださいね!
それでは良いお年を!

2017年ライトノベル10大ニュース

CCCが徳間書店主婦の友社を買収

「CCC」はカルチュア・コンビニエンス・クラブの略で、あのTSUTAYAを運営している会社です。その傘下にはアース・スターがあり、ラノベレーベルとしてアース・スターノベルを持っています。

徳間書店と言えばメディアミックスの先駆者であり、かつてはアニメージュ文庫に徳間デュアル文庫トクマ・ノベルズEdgeといったラノベレーベルを抱え、銀英伝などの名作も送り出してきた出版社です。

主婦の友社は、初期の電撃文庫の販売元であり、近年ではヒーロー文庫を立ち上げてWeb小説書籍化ブームの火付け役のひとつとなった出版社です。

世間的には「TSUTAYAの会社がアニメ雑誌の会社と女性ファッション誌の会社を買収した」みたいな感じでしたが、ラノベ業界にとっても大きなニュースでしたね。

ついでに書いておくと、突然の刊行中止で話題となった「レッドライジングブックス」のリンダパブリッシャーズもCCCの子会社ですね。

Web小説系アニメラッシュ

ライトノベルのアニメ化作品一覧 - Wikipedia
幼女戦記』『ナイツ&マジック』『異世界食堂』『異世界はスマートフォンとともに。』などが新たにアニメ化されました。こうしてみると少ないですね。異世界スマホが叩かれていた印象は強いですが。

ただ、アニメ化予定も含めると『異世界居酒屋のぶ』『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』『盾の勇者の成り上がり』『賢者の孫』『ありふれた職業で世界最強』ついでに『君の膵臓をたべたい』の劇場アニメ化などが既に控えており、このあたりまで含めるとラッシュ感があるかなと思います。

去年もちょっと書きましたが、これまでのWeb小説の書籍化ブームの流れというと、

第1期 SAOが書籍化されてヒットする。アルファポリスがビジネスモデルを確立する。
第2期 既存のラノベレーベルからWeb小説が書籍化される(ログホラ・魔法科・このすば・Reゼロなど)。
第3期
(2.5期くらい?)
Web小説専門のラノベレーベルが立ち上がる(ヒーロー文庫MFブックスHJノベルスなど)。
第4期 第2期の作品がアニメ化されてヒットを飛ばす。第3期のレーベル群が拡大する。

くらいの大雑把な認識をしているんですけど、今年あたりから、

第5期 第3期の作品が大量にアニメ化される(ナイツマ・異世界食堂異世界スマホなど)。

という時期に入ったように思うんですよね。そろそろラノベ業界では「ブーム」も落ち着いて滑空期に入ったかなという感じですが、アニメ業界ではこれからということで注目したいです。

ラノベの劇場版アニメが増加

ソードアート・オンライン オーディナルスケール』『魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』と立て続けに公開されてヒットし、さらに『オーバーロード』『ビブリア古書堂の事件手帖』『冴えない彼女の育てかた』などの劇場版アニメが発表されています。

どうもカドカワはTVアニメだけでなく劇場版アニメでも積極的にマネタイズしようとしているようです。ライト文芸の実写映画化と合わせて要注目ですね。

ゼロの使い魔』『アルスラーン戦記』『破妖の剣』完結

著者が亡くなったことで刊行が途絶していた『ゼロの使い魔』が新しい作者のもとで完結し、代筆者が志瑞祐であったことも明かされました。

また1986年にシリーズを開始し、近年になってTVアニメ化もされた田中芳樹の『アルスラーン戦記』が驚くべきことに完結を果たし、1989年から続いていた前田珠子破妖の剣』も本編の最終巻が発売されました。

みなさまお疲れ様でした。なんかたまにこういうふうに長期シリーズの完結が重なる年がある気がしますね。

佐藤大輔、死去

皇国の守護者』などの著者・佐藤大輔が死去。多くのファンが悲しむとともに、どさくさで「佐藤大輔=豪屋大輔」が確定したりもしました。

また、アルファポリスから『ダィテス領攻防記』を刊行していた牧原のどかが事故により死去。直前まで「小説家になろう」の活動報告を更新されていて、その生々しさが強く印象に残っています。

撲殺天使ドクロちゃん』のイラストを担当していた「とりしも」、『GOSICK』のイラストを担当していた武田日向と、有名イラストレーターの訃報も重なりました。

ラグナロク小説家になろうで連載開始

https://ncode.syosetu.com/n7906ee/2000年前後のスニーカー文庫の看板を張った人気ファンタジーラグナロク』が小説家になろうでリブートされて話題になりました。

すみません、昔のも今のも読んでないのでそれ以上の感想はないのですが、プロ作家が「なろう」や「カクヨム」に投稿するのも、もはや珍しくなくなりましたね。

『JKハルは異世界で娼婦になった』発売

JKハルは異世界で娼婦になった

JKハルは異世界で娼婦になった

センセーショナルなタイトルと設定で話題となった作品。「小説家になろう」からの書籍化はハヤカワでは初だそうです。口コミで広まり→書籍化されて→政治的な観点から毀誉褒貶にさらされる、というあたり『まおゆう魔王勇者』を思い出しました。『まおゆう』は「植民地主義」「進歩史観」的な面で、『JKハル』はジェンダー/フェミニズム的な面で議論になっている感じですね。

『まおゆう』がWeb小説書籍化ブームの嚆矢となったように、『JKハル』も次なるフェーズに何かしら影響を与えるのかもしれません。

BOOK☆WALKERが「新作ラノベ総選挙2017」を開催

6月の投票締め切りから9月の結果発表まで音沙汰なしだったり、投票候補の絞り込みに納得がいかなかったりもしましたが、なんだかんだで、こういうオフィシャルな人気投票が増えるのは歓迎ですね。来年の開催も期待しております。

キリスト新聞社がライトノベルレーベルを創刊

70年以上の歴史を誇るというキリスト教新聞社が、Web小説サイト『トークメーカー』上でラノベレーベル創刊を発表、同時に『聖書ラノベ新人賞』と銘打って「聖書や教会などをモチーフにしつつ、楽しみながら理解を深められるような作品」を募集しました。

初見で「なんだその組み合わせスゲー!」と衝撃を受けたものの、よくよく考えてみると聖書をモチーフにしたラノベってむしろド定番だよなあと思ったり。だからこその「キリスト教ラノベ」なのかもしれませんね。

ノベルゼロ、やや悪目立ちする

創刊一周年を迎えたノベルゼロですが、カクヨムで開催されたコンテストで「異世界転生禁止」というレギュレーションを設定して物議を醸し、さらに『セックス・ファンタジー』というエロエロな作品を出して「ノベルゼロくんってもっと硬派な人だと思ってた!」と幻滅されたりしていました。

ただ個人的な印象を言うと、もともとノベルゼロっていわゆるライト文芸よりは既存のラノベレーベルに近いので、「硬派だったのに路線転換した」みたいなのは(ノベルゼロがそういう印象を煽っていたというのはありますが)ちょっと見当違いかなと思います。



その他

話題になったのはこのあたりかなあ?

ブックオフオンラインの10大ニュース。

去年までのニュース。

凄い面白い最近のファンタジーラノベをオススメする


こんな記事を見かけたんだけど、ひと昔前のラノベで止まってるっぽかったので、ここはひとつ最新のファンタジーラノベを紹介するぜ。

最果てのパラディン

最果てのパラディンI 死者の街の少年 (オーバーラップ文庫)

最果てのパラディンI 死者の街の少年 (オーバーラップ文庫)

人の絶えた廃墟にて骸骨の剣士・ミイラの神官・幽霊の魔法使いに育てられた主人公。やがて廃墟を旅立ち、未知なる冒険へと踏み出していく。歴戦の冒険者たちと共に戦い、伝説に謳われる邪竜を退治し、神々とも交流を持ちながら、次第に名声を高めていく。オールドファッションというと何ですが、80年代90年代あたりのファンタジーが好きだったという人にオススメの作品です。

剣と炎のディアスフェルド

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

剣と炎のディアスフェルド (電撃文庫)

ある国の王子として生まれた二人の兄弟。兄は人質として敵国へ赴きそこで英雄と見なされ、弟は即位して周辺諸国を切り従え大王と呼ばれるようになる。こちらはいわゆる指輪物語的なファンタジーよりもさらに神話的なイメージで、ヘラクレスジークフリート、あるいはトロイア戦争アーサー王物語のような、素朴な英雄譚を想起させる作品となっています。

我が驍勇にふるえよ天地

故地を敵国に奪われた剛勇無双の王子がその復讐のため軍を率いて勝利を重ねていく痛快な戦記ファンタジー。個人的にはこれ、水滸伝だと思うんですよね。主人公の旗下に集う、二つ名を持った英雄豪傑の大活躍。主人公の圧倒的な強さ、頼もしさは、身震いがするほどカッコいいです。

緋色の玉座

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

緋色の玉座 (角川スニーカー文庫)

史上屈指の名将、東ローマ帝国の将軍ベリサリウスを主人公とした歴史ファンタジー。基本的には史実に沿っていますが、適度なアレンジを加えつつ、ちょっとしたファンタジー要素もあり、エンタメとして綺麗にまとまっています。まあ史実でもすげー濃いメンツですからね。

アサシンズプライド

こちらはいわゆる教官もの。大貴族の娘ながら才能がなく「無能才女」と揶揄されるヒロインの家庭教師となる主人公――その実は、本当に才能がなければ殺せと命じられた凄腕の暗殺者。しかし速攻でヒロインに絆された主人公は、彼女を助けるために奮闘することになります。独特な世界設定、スタイリッシュな戦闘、そして美しい少女たちの仲睦まじい様子が魂こめて描かれるバトルファンタジーです。

悪逆騎士団

最盛期を迎える王国の果て、全ての悪徳と暴逆の掃き溜めとなった街で、なお畏怖され唾棄される「悪逆騎士団」、その活躍を描くピカレスク・ファンタジー。最低な連中が最低な連中と殺しあうだけの最高に痛快な作品です。主役コンビがおねショタということもあって漫画の『ヨルムンガンド』を思い出しますね。

叛逆せよ! 英雄、転じて邪神騎士

烙印の紋章』の作者です。前の記事でも紹介しましたが、タイトルの印象ほどコミカルな内容ではない。邪神を奉じて周辺諸国を征服した邪悪な王国を倒したあと、英雄となった主人公がその国を訪れてみれば、そこには迫害され苦しむ人々がいた…というあらすじ。ただ単純に正義と悪が逆転するという話ではないんですよね。「悪だったのは確かだが現状は酷すぎる」「しかし安易に助けてしまって良いのだろうか」という葛藤が描かれていくのです。

いつかの空、君との魔法

いつかの空、君との魔法 (角川スニーカー文庫)

いつかの空、君との魔法 (角川スニーカー文庫)

精霊の力をもとに文明が築かれている現代的な魔法世界、分厚い雲の上から精霊を地上に降ろしてくるための儀式をおこなう少年少女たち、その繊細な恋心が描かれる。箒に乗って踊るように飛び回る描写が美しいジュブナイル・ファンタジーです。


以上、それぞれに毛色の違ったファンタジーを挙げてみました。

知ってのとおり今のライトノベルはファンタジーブーム真っ盛りです。いわゆるなろう系から、魔王勇者もの、壮大な戦記ファンタジーに、昔ながらの冒険ファンタジーまで、それぞれのジャンルのなかでさらに工夫が凝らされ、かつてないほどに様々なファンタジーが溢れています。是非とも自分好みの作品を探してみてください。

こちらも参考にどうぞ。

ラノベのタイトルがあらすじっぽいって本当?

先日、こういうツイートを見かけたわけです。

この漫画のなかではラノベのタイトルが「中身が一発で分かる」と評されているんですが……

え、分かります??? 『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』ですよ??? 「ネットゲームでは見知らぬ他人と疑似結婚的な関係を築くことができるがゲームの中で可愛い女の子として振る舞っている奴はだいたいネカマである」という前提知識がないと意味わかんないタイトルですし、それを知っていたところでせいぜい「ネカマだと思ったら美少女だったのかな…?」というくらいですよね。明らかに、作品内容を知らせるのではなく、「謎めいた文言で客を引きつける」タイプのタイトルじゃないですか。

ラノベのタイトルって「タイトルがあらすじになってる」「タイトルにオチまで書かれてる」なんてよく言われるんですが、ぜんぜんそんなことはないですよ。『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』ってタイトルだけでは妹が隠れオタクだなんて分からないですし、『僕は友達が少ない』だって部活系ハーレムとは分からないでしょう。『魔法科高校の劣等生』なんか素直に読めば「劣等生」ですよ。どこに「最強のお兄さまが様々な陰謀と対決する学園アクション」なんて書いてあるんですか。

転生したらスライムだった件』然り。
問題児たちが異世界から来るそうですよ?』然り。
勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』然り。
俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』然り。
下ネタという概念が存在しない退屈な世界』然り。
俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』然り。

いずれも「物語の前提」「基本的な設定」の説明であって、電子書籍の試し読み部分だけでも分かるような内容にすぎません。
――スライムになってどうやって生きていくんだ?
――勇者になれなくて就職ってどういうことだ?
――下ネタが存在しない世界ってどんな世界だ?
読者の反応としては「なるほどそういう話だったら買おう」ではなく「どういう話か気になるから買おう」になるはずです。

たとえば最近のラノベアニメだったらこんなタイトルがありました。
ナイツ&マジック
異世界食堂
天使の3P!
異世界はスマートフォンとともに。
ようこそ実力至上主義の教室へ
ゲーマーズ!
無責任ギャラクシー☆タイラー
終物語
十二大戦
キノの旅
妹さえいればいい。
はたして内容が一発で分かるようなタイトルばかりでしょうか…? いちばん長い『異世界スマホ』なんか「スマホを使わない」って叩かれてたくらいだしなあ…(原作ではのちのち意味が分かってくるそうですが)。

そういう意味では、むしろタイトル詐欺に気をつけるべきですよね。最近読んで面白かったラノベに『叛逆せよ!英雄、転じて邪神騎士』という作品があったんですが、なんだかコミカルなタイトルに反して、これはシリアスなヒロイックファンタジーなんですよ。邪神を奉じて各国を侵略した邪悪な王国をうち倒したあと、その国土が他国に蹂躙されるのを目の当たりにした「英雄」が、苦悩を抱えたまま立ち上がるというあらすじでして。作者もベテランの方で実に面白く読ませてくれるんです。オススメですよ!(と、宣伝で終わる)