第14回スニーカー大賞《大賞》を受賞した『シュガーダーク』、第21回ファンタジア大賞《大賞》を受賞した『神さまのいない日曜日』、第16回電撃小説大賞《大賞》を受賞した『幕末魔法士』などなど、激戦となっている今年のライトノベル新人王争いですが、本日はそのなかでもとびきり面白い作品を紹介したいと思います。
第11回えんため大賞優秀賞受賞作、本田誠『空色パンデミック』です。
- 作者: 本田誠,庭
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2010/01/30
- メディア: 文庫
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語弊を恐れずにひとことで表せば、この作品は「洗練された『涼宮ハルヒの憂鬱』」だと言えます。あるいは「『涼宮ハルヒの憂鬱』の続きを描いた作品」とも言えるかもしれません。*1
『涼宮ハルヒの憂鬱』が「世界を改変する(超)能力を持った少女に主人公が振り回される話」だとすれば、『空色パンデミック』は「世界を改変する病気を持った少女に主人公が振り回される話」です。同じ構造を持っているように見える二つの作品ですが、『空パン』と『ハルヒ』には決定的な違いがいくつかあります。『空パン』における「空想病」は、涼宮ハルヒが持つ改変能力とは違い、作中で認知されている歴とした病気である点。ヒロイン・穂高結衣は、自身が空想病患者であることを自覚しているという点。そして、主人公・仲西景が、キョンとは違ってとても素直な性格をしているという点です。
ご存知のように、『涼宮ハルヒの憂鬱』のラストでは、新しい世界を作ろうとするハルヒの願いが否定され、元のままの世界を望むキョンの願いが容れられます。それにより、ハルヒは物語の中心から弾き出され、以降、『涼宮ハルヒ』シリーズは物語的にはまったく進展しなくなってしまいます。「『涼宮ハルヒ』シリーズは『憂鬱』で完結している」と言われる所以です。
この問題を、『空パン』は軽々と越えていきます。『空色パンデミック』第1巻、新しい世界を作ろうとする敵を打ち倒し、すべてが終わったあとのラスト1行に、作品を根底から覆す「最後の一撃」が込められています。この最後の仕掛けは、なんとなく読んでいたら絶対に気付けないので、そのあたり意識して読んでみてください*2。
- 作者: 本田誠,庭
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2010/04/30
- メディア: 文庫
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さあ、この驚異的な読書体験をあなたも味わってみませんか?(…怪しい通販みたいだな)