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なろう系異世界ファンタジー超長文タイトル批判

前置き

kazenotori.hatenablog.com

長文タイトルにはさまざまな種類があります。なろう系の長文タイトルと、ライト文芸の長文タイトルと、AVの長文タイトルと、ビジネス書の長文タイトルは、それぞれ異なる特徴を備えています。それらすべてを勘案したうえで語ることは困難なので、この記事では「小説家になろう」でよく見られるタイプの長文タイトルに限定して話を進めていきます。

ちなみに、「長文タイトル」ではなく「超長文タイトル」と銘打ったのは、最近になって一段と長文化が進んだように感じるからです。

「小説家になろう」へ2020年に投稿された作品・評価順
「小説家になろう」へ2019年に投稿された作品・評価順
「小説家になろう」へ2018年に投稿された作品・評価順

こうして見ると、2018年の作品タイトルは随分と短く感じるのではないでしょうか(感覚が麻痺しているだけで2018年時点でも相当に長いんですが)。

さらに今年10月以降の作品に限定すると…

「小説家になろう」へ2020年10月以降に投稿された作品・評価順

こんな感じになります。

メインタイトルにサブタイトルがつくようになり、「短いメインタイトル+長いサブタイトル」という形式が定着し、さらに「長いタイトル+長いサブタイトル」になっていく過程が見てとれますね。

前置きはこのくらいにして本題に入りましょう。

現在、長文タイトルに対する態度は、ひたすら馬鹿にするか、「これは必然的な進化なんだ」と肯定するかに二分されているように思えます。ただ、よく知らずに否定しているか、現状をただ追認しているかというだけで、どちらも具体的なメリットとデメリットを分析しているようには見えません。

というわけで、この記事では超長文タイトルの「メリット」と「デメリット」について語ろうと思います。いや、別に大した分析ではなく、誰でも思いつくような話になると思いますが。

メリット

作品の内容を知らせることができる

「必然的な進化だ」と主張する人は、この点を強調することが多いですね。つまり、スマホ版の「なろう」はランキング画面であらすじを折りたたんでしまうので、クリックしないとあらすじが見えない、だからタイトルにあらすじの役割が移ったのだ、ということです。

ここで注意すべきは、「なろう」という環境が特殊だからそうなったのであって、同じことが他の環境にも当てはまるわけではないはずだ、という点です。

たとえばTwitter漫画でも「○○が××する話」というタイトルを添えることでバズりやすくなる、ということが話題になり、「なるほどラノベのタイトルが長文化するわけだ」と納得されていました。しかし、これは「漫画にあらすじを添えている」のであって「漫画のタイトルをあらすじにしている」のではないはずです。Twitterには「タイトル欄」と「あらすじ欄」の区別などないはずですから、「○○が××する話」をタイトルだと思いこむのは単なる先入観にすぎません。

また、後述しますが「長文タイトルは意外に作品の内容を知らせていないぞ」ということもあります。

SEO的に優れている

タイトルにさまざまな単語が入っていると、たとえば「異世界」で検索したときにも「無双」で検索したときにも引っかるので、SEO的には優秀だと思います。ただし、「なろう」に限ってはデフォルト設定で「あらすじ」や「キーワード」も検索対象に入るので、必ずしもタイトルに入れる必要はないのではないかとも思います(Googleからの流入ってどんなもんなんだろ)。

表示領域が大きいので目立つ

あのシンプルな「なろう」のデザインで何行にも渡ってタイトルが表示されていたら否応なしに目立ちます。少し前にバズった「クリック領域が増える」なんてのもそれの一種ですね。要するに看板だろうがバナー広告だろうがWeb小説のタイトルだろうが大きい方が正義ということです。

デメリット

覚えづらい・言いづらい・書きづらい

これが最大のデメリットだと思います。

たとえば友人から面白そうな作品を紹介されたとき、その場でタイトルを覚えられなければ、後から検索もできません。その友人のほうも「タイトルは何だったか全部は覚えてないけど」みたいな曖昧な紹介しかできないでしょうし、メールやチャットなどで送るにしてもそこに文字を打ち込むのが面倒すぎます。私自身も、ブログやTwitterでタイトルを記述する機会が多いのですが、いちいちググってから正式タイトルをコピペしたりしています。

覚えづらい・言いづらい・書きづらいことは口コミを阻害するのです。

あと、これは要らぬお世話なのかもしれませんが、たぶん出版社や書店も大変なんじゃないでしょうか。だって電話とかで「こういうタイトルの本が発売されるので宣伝してください」とか「こういうタイトルの本が売れてるので在庫を回してください」とか言ったりするんですよね。客から「こういうタイトルの本ってありますか」とか聞かれたり。何十字もあるタイトルを毎回言ったりするのめちゃくちゃ疲れそうですよ。

表示領域を圧迫する

これは「目立つ」というメリットの裏返しですが。

たとえば字数制限のあるサービスだったり、タイトルを先頭10文字程度しか表示しなかったりするページでは、長文タイトルだと不便ですよね。字数制限といえばTwitterですけど、私はラノベの読了報告をTwitterに書き込んでいるので、たまに「タイトル+作者名+URL」が140字を超えないか冷や冷やしています。

あとは何と言っても書籍化されたときの表紙ですよね。いまでもデザイナーさんがいろいろ工夫して表紙に収めていますが、デザインの自由度はかなり下がっているはずです。ぜんぶ収めようとして表紙の文字が小さくなれば、サムネイル画像からタイトルを判断するのが困難になるというデメリットもあります。電子書籍がいま以上に普及していけば「書店で実物を見たときの感覚」と同じくらい「電子書籍ストアでサムネイルを見たときの感覚」も重要になってくるでしょう(この点に関しては既に「電子書籍の書影には帯がないのでアピールが弱い」みたいな重要な問題が起きています)。

イメージの平板化

内容を詳しく説明しているはずの長文タイトルですが、不思議とどれも似たような印象を受けます。これはもちろん「作品の内容が同じだから」ではなくて「内容を説明しきれていないから」だと思います。

つまり長文タイトルは「転生」「無双」「最強」「追放」「復讐」「令嬢」みたいな受けそうなワードを繋げているだけで、実は「あらすじ」といえるほど詳細なストーリーを説明できていないのです。

肝心の言葉選びが似たりよったりなのと、長文タイトルというだけで何となくシリアスな印象は受けづらい(ために気の抜けた感じのタイトルからバリバリのダークファンタジーが繰り出されたりする)という点で、受ける印象が平板化するのでしょう。

また、なろう系は大長編が多く、出発点からは想像もできないような話になっていくところが魅力ですが、逆に言うとタイトルを付ける時点では後々のことをあまり考えていないことも多いのでしょう。

というわけで

総じてメリットよりもデメリットのほうが大きいのではないか、というのが個人的な主張です。

もちろん、見比べたうえで「いや俺はメリットのほうが大きいと思うな」という人もいると思いますし、デメリットを承知しつつ状況に応じて長文タイトルを敢えて採用するということもあると思います。

私個人の経験ですが、いわゆる「当て字系タイトル」がどうにも覚えづらかったので、それほど長くない長文タイトル(ややこしい)は歓迎したいなあという気持ちもあります。過ぎたるは及ばざるが如しということで。

ではどうすればいいのか?

ガチでタイトルをあらすじにする

「なろう」って今でもアマチュアの人が多いと思うんですけど、アマチュアだと短くてオシャレなタイトルをつけるのが恥ずかしいっていうのもあると思うんですよね。あるいは逆に「タイトルをあらすじにしたほうが受ける」と言われても、どこか気後れして徹底できなかったりすると思うんです。でも一回突き詰めてみたらいいんじゃないですか。

つまり、「本当のあらすじ」を100字で書いてタイトル欄に入力し、あらすじ欄のいちばん最初に「本当のタイトル」を書けばいいんですよ。

これは「タイトルを長くするな」派の人も「タイトルをあらすじにすべき」派の人も納得の完璧な解決策だと思うんですけど、いかがでしょうか。

書籍化のときにはサブタイトルを省略する

サブタイトルは「なろう」向けのものだと割り切って、書籍化するときにはぜんぶ取っ払ってしまっていいのでは?

どうしてもサブタイトルを使いたいなら一巻の帯とかに入れておけばいいと思います。

略称をあらかじめ決めておく

これは「なろう」というよりラノベ全般に言える話なんですけど、長文タイトルは必然的に略称が求められるにもかかわらず、多くの作者・編集者は略称を考えていません。

しかし、略称は下手をすればタイトルよりも多く客の目に触れるものなので、タイトルと同じくらい気合を入れて決めておくべきなんじゃないかと思います。

理想は「特徴的で他の作品と区別がつきやすい」かつ「何となく元のタイトルがわかる」というものですね。

先ほど「転生」「無双」「最強」「追放」「復讐」「令嬢」みたいなキーワードが共通してしまうということを書きましたけど、それらの字を略称に使ってしまうと他の作品と被りがちになるわけです。

ちなみに現代ものだと「俺」「僕」「君」「彼女」「妹」「恋」「可愛い」「好き」とかが略称に使われすぎて「俺好き」とか「きみ好き」とか「僕愛」とか没個性な略称が生み出されていたりします。

むしろ「こういう略称にしたいから正式タイトルにこの単語を入れる」くらいのことを考えてもいいのでは?

なろう運営に訴える

変なノウハウを蓄積してタイトルを長くするより運営にメール送ったほうが遥かに簡単じゃないですか?

ぶっちゃけ「なろう」運営が怠慢でクソデザインを改善しようとしないからこんなことになってるわけですよ。

スマホ版のランキングを「タイトルは一行分のみ表示して以降は省略」「あらすじを折りたたまずにデフォで表示」にするだけで解決する話でしょう。

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