文芸
辞書的には「文学」とほぼ同義。すなわち小説や詩や随筆や戯曲などの総称である。
業界的には何故か「一般文芸」の略称にもなっている。
また書店の「文芸書コーナー」から、そこに置かれることが多い作品=大判の小説単行本のことを「文芸(書)」と呼ぶ風潮もある気がする。
一般文芸
小説や詩などの「文芸全体」のような意味であることもあるし、「同人誌」と「一般文芸誌」が対置されることもあるし、「純文学」に対する「大衆文学」のような意味で使われることもある、極めて曖昧な呼称。
何故か「文芸」と略されてしまう。
ライトノベル
1990年に神北恵太氏によって作られた造語。長くなるので詳細な説明は避ける。
「ライト文芸」や「キャラ文芸」といった言葉は出版社が打ち出したのに対し、「ライトノベル」は読者が作り出したという点で異なる。
ライト文芸がライトノベルに含まれるかについては議論があるが(個人的にはもちろん「含まれる」と思っている)、そもそも「出版社から見た分類」と「読者から見た分類」ということで次元が違うようにも思える。
キャラクター小説
「ライトノベル」と同義。
大塚英志の影響もあり「非現実的な誇張されたキャラクターを描いた小説」や「キャラクターありきで作られた物語」といったニュアンスを持つことが多い。
個人的には「キャラクター性」がライトノベルの特徴であるかは疑問に思うが、少なくともKADOKAWAはそう信じているようだ。
ライト文芸
ライトノベルの「ライト」と一般文芸の「文芸」をあわせてライト文芸。
呼称としては、集英社オレンジ文庫の創刊(2015年)のときに使われたのが最初であると思われる。
「表紙にイラストを用いた青年向けの書き下ろし文庫小説」を指すことが多い。
「ライト文芸的な領域」は以前から脈々とあったものの、やはりメディアワークス文庫の登場(2009年)と『ビブリア古書堂の事件手帖』のヒット(2011年)によって領土が確定した感がある。
刊行点数が増えすぎて書店の棚がいっぱいいっぱいになった電撃文庫が「これはライトノベルではありません」と自称して一般文芸の棚に置いてもらうように画策したのがライト文芸のはじまりである。
いったん少年向けレーベルから切り離されると「お仕事」「青春」「オカルト」「ライトミステリ」「後宮ファンタジー」などを特徴とする独自の文化が花開き、そこに少女向けラノベや一般文芸側のレーベルも相乗りしてきて、現在の「ライト文芸」というものが出来上がった。
キャラ立ち小説
「ライト文芸」と同義。
KADOKAWAの「ダ・ヴィンチ」から出てきた言葉で、「メディアワークス文庫的な小説群」の最初期の命名である。
とはいえメディアワークス文庫だけを見ていたわけではなく、当時からすでに『図書館戦争』『トッカン』『万能鑑定士Qの事件簿』なども射程におさめていた。
もはや誰も使わない呼称。
キャラクター文芸
「ライト文芸」と同義。
「キャラ文芸」と略されることが多い。
キャラ文芸を「オカルトものやミステリもの」、ライト文芸を「青春ものや感動もの」として区別する出版社もあるが、後出し独自定義なので無視してよい。
2013年にKADOKAWAが自称したのが始まりである。
kadobun.jp
やはりKADOKAWAは「キャラ」推し。ライトノベルの特徴は「キャラクター性」であり、そのキャラクター性を取り入れた一般文芸が「キャラ文芸」なのである、というKADOKAWAの強い信念がうかがえる。
新文芸
KADOKAWAによる造語。
「ネット上で発表された作品を書籍化したもの」という定義で、本来はボカロ小説なども含まれるが、現在ではほぼ「Web小説系の単行本レーベル」を指すようになっている。
何年経っても「新」文芸なのか?とか、これじゃ字面から意味が推測できないだろ?とか、いろいろツッコミどころの多い呼称であるが、徐々に広まってはいるらしい。
ただし一時期(現在も?)、出版社と書店のあいだで新文芸のことを「ライト文芸」と呼んでいたことがあり、いまでも混同されることが多い。この用法での「文芸」は、先述した「文芸=大判の小説単行本」の発想からだろうか。