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2014年から創刊されたライトノベルレーベルはこんなに、違う?

この世の全てはこともなし : 2014年から創刊されたレーベルがこんなに、多すぎ?

これまでにも「ラノベレーベル多すぎ」問題というのは何度も言われてきたと思うのですが、ここ一年ほどのレーベルの増加はこれまでとは状況が違うんじゃないか、ということを説明したいと思います。

第一に、Web小説系のレーベルも含め、リンク先で挙げられているほとんどが、対象年齢が高めの「ライト文芸」系のレーベルだという点。これについては以前にも書いたのでそちらを参照いただければ。→「大人向けラノベ」の誕生 - WINDBIRD

第二に、これも対象年齢が高いことと関連していますが、本のサイズが大きめでやや高価格な「ノベルス」を名乗るレーベルが多いという点。特にオーバーラップ文庫やHJ文庫などの既存のライトノベル文庫レーベルが「ノベルス」レーベルを新設しているのが興味深いです*1

以上の二点からは、書店におけるライトノベルの戦場が、これまでの「少年少女向け」から「青年向け」へ、「文庫の棚」から「四六判ソフトカバーの棚」へと移っている――「少年少女向けライトノベルレーベルの増加」が遂に飽和して止まり、「青年向けライトノベルレーベルの増加」へと転換した、ということが言えるわけです。

つまり、この「ライト文芸戦争」とでも呼ぶべき戦いは、まだ始まったばかりなのです。いまのうちからレッドオーシャンなどと言っていては生き残れません。激しい競争になっていくのはまさにこれからだと思われます。

ところで、飽和してしまった少年少女向けライトノベルレーベルはどうなっているでしょうか。長年危惧されていたとおり廃刊が多発しているのでしょうか。と言えば、実はそうでもありません。有名どころではスマッシュ文庫がヤバいというくらいじゃないでしょうか。なんだかんだで皆さん生き延びているように見えます。

だから青年向けライトノベルでも、ヤバイヤバイと言われていても二年くらいなら普通に生き残って、本当に定着するかは十年は待たないと分からないんじゃないでしょうか。


ついでに補足すると、T-LINEノベルスは公式Twitterにて電子書籍レーベルを目指すとのアナウンスがありました。実現可能性はどれほどか分かりませんが。


また、comicoは自社レーベル「comico books」の設立を発表しており、comicoノベルもこの扱いではないかと思われます。双葉社には販売委託しているだけですね。
スマホ漫画「comico」が出版事業に参入--新レーベル立ちあげ - CNET Japan
NHN PlayArt Corp. | プレスリリース

こちらからは以上です。

*1:オーバラップノベルスが2015/5/25、リンク先には書かれていませんがHJノベルスが2014/11/22に創刊されています。

「好きなライトノベルを投票しよう!! 2015年上期」投票

http://lightnovel.jp/best/2015_01-06/

【15上期ラノベ投票/9784041025734】【15上期ラノベ投票/9784063814682】
ひとつ海のパラスアテナ (2) (電撃文庫)

ひとつ海のパラスアテナ (2) (電撃文庫)

【15上期ラノベ投票/9784048650526】【15上期ラノベ投票/9784048693363】
路地裏バトルプリンセス (GA文庫)

路地裏バトルプリンセス (GA文庫)

【15上期ラノベ投票/9784797382075】
アルテミジアの嗜血礼賛 (一迅社文庫)

アルテミジアの嗜血礼賛 (一迅社文庫)

【15上期ラノベ投票/9784758046701】【15上期ラノベ投票/9784040705330】【15上期ラノベ投票/9784041013823】
あの夏、最後に見た打ち上げ花火は (ガガガ文庫)

あの夏、最後に見た打ち上げ花火は (ガガガ文庫)

【15上期ラノベ投票/9784094515497】【15上期ラノベ投票/9784040676609】

『魔法科高校』へ観光に来られる皆様へ

今回の話題はこちら。

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生〈1〉入学編(上) (電撃文庫)


なんと言うか、「苦手なものでも自分の目で確認するのは偉い」という称賛が散見されるけれど、地元民からすればガイドブックなしにやってきて文句ばかり言っている観光客みたいなもので、あまり気分はよろしくない。そもそも『魔法科』だけ読んで最近のラノベの傾向を理解するだなんて、『進撃の巨人』だけ読んで最近の漫画の傾向を…みたいな話だろう。まあ、自分だってそういうことをやらないこともないので、声高に非難できるわけでもないが。


しかし、「巷で流行りの俺TUEEEをちょっくら見物に」で『魔法科高校の劣等生』というのは、なかなか難しい旅行プランなのではなかろうか。Web小説自体、作者の趣味が強く現れるジャンルであるが、『魔法科』はとりわけ趣味性の高い作品である。


タイトルから勘違いされることも多いが、『魔法科』は「落ちこぼれがエリートを倒してスカッとする」というような分かりやすい話ではない。主人公は実力を隠しているわけではないし、戦闘などは淡白で、背景にある設定もかなり重い。さらに言えばスカッとするには設定解説がちょっと多すぎるだろう。


ライトノベルのライト=読みやすい」というのは先入観にすぎない(→ライトノベルの「ライト」に大した意味はない - WINDBIRD)。商品として読みやすいよう心掛けてはいるだろう。しかしそれでもなお読みづらい(それでいて人気のある)ラノベなどいくらでもあるのだ。


『魔法科』の文章は、上手い下手の前にかなり癖が強いし、本編よりも設定解説の方が多いのではないかというくらいで、なかなか気軽に読めるものではない。それはもちろん面白さと背中合わせで、その癖の強さが人気に繋がっているのだが、「気持ちいい俺TUEEEが読みやすい形で提供されて読者はお手軽に万能感を味わえるんだろ?」みたいな気持ちで読み始めれば、そりゃ跳ね返されるだろうというものだ。


作者の思想に問題があるとは各所から指摘されていることで、それについて「どうしても気になって読めない」という人がいるのは仕方がないだろう。


まあ「近視という病」のくだりについては、現実にも「眼鏡がなければ近視は障害扱いだったろう」とはよく言われることで、つまり「治療可能な障害」ということを比喩的に表現しているだけではないかとも思うが。


さらに脱線すると、この作者は別シリーズ『ドウルマスターズ』の一巻において成形炸薬弾の描写が間違っているとのツッコミを受け、二巻で無理やり「この世界では一巻の描写が正しい」ということにしてしまったくらいなので、細かいところに突っ込むのも野暮という気はする。


閑話休題、ともかく観光気分で俺TUEEEを読みたい方々には、『魔法科』は向いていないのではないか、ということを訴えたいのである。


もちろんそれで「ラノベを読むな!」などとは言わない。現地ガイドとして「爽快な俺TUEEEを読みたいならこれ!」というのを挙げておこう。それが、前掲のまとめの最後でも紹介した『火の国、風の国物語』である。



一巻の発売が2007年なので…もう8年前かよ恐ろしい…今となってはやや古い作品ということになるだろう。Web小説の書籍化が流行するさらに前に刊行された、俺TUEEEの金字塔である。


主人公のアレスには、生来の剣の才能の上に、悪魔(のような存在)から与えられた人間離れした膂力があり、さらに危機の時には未来を見通したようなアドバイスまで授けられる。本人は忠義の塊のような、生真面目で融通の利かない性格であるため、悪魔の力を借りることに反発を覚えているが、しかし敬愛する王女のためならそれを振るうことを躊躇わない。という設定である。


このアレスがとにかく強い。笑ってしまうくらい強い。智将が用意した周到な策略も、天才魔術師の大魔術も、ただの力任せで打ち破ってしまう。読書中に何度、アレスのライバルたちと同じ顔をして「んな馬鹿な」と呟いたことか。


面白さは保証する。もとより商業作品として発表されただけに、実に読みやすく分かりやすく、しかも十巻程度で綺麗に完結している。


書店には既に置いていないかもしれないが、ありがたいことに電子書籍で買える。良い時代になった。布教も捗るというものだ。観光客の皆様には是非とも買っていただきたいお勧めの特産品である。

ラノベの表紙でよく見かけるデザイン・あまり見かけないデザイン

以下の記事に触発されました。

センス良い表紙デザインを考える - 主ラノ^0^/ ライトノベル専門情報サイト

あと参考にしたサイト。

ラノベの新刊の表紙一覧
漫画の新刊の表紙一覧
この装丁がすごい!

ラノベの表紙でよく見かけるデザイン

下半身まで入っている

全身か、そうでなくても太もものあたりまで見えていることが多い。漫画だと胸や腰のあたりで切れている構図も多いですが、ラノベだとそれほど多くはありません。ラノベ表紙はパンチラが多い…という偏見があるのも、つまりは下半身が見えているからなのでは、という仮説を持っています。

関連:漫画の表紙とライトノベルの表紙のデザインについて - Togetterまとめ

タイトルロゴが明朝体

漫画に比べると明朝体の割合が多い印象です。「小説といえば明朝体」というイメージがあるのかも。

魔法戦争 (MF文庫J)

魔法戦争 (MF文庫J)

タイトルがキャラを避けるように配置

真ん中にキャラを持ってきて、右上・左上の余白にロゴが配置される。漫画だと、キャラの顔にタイトルが被るのもそこまで無くはないという感じ。

王手桂香取り!  (電撃文庫)

王手桂香取り! (電撃文庫)

ラノベの表紙であまり見かけないデザイン

顔のアップ

「下半身まで~」と被りますが、やっぱり顔のアップはほとんど無いですよね。正面を見据えた主人公の顔がどーんとか。二人の顔が左右に配置されてるのとかも。

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

四月は君の嘘(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

四月は君の嘘(1) (講談社コミックス月刊マガジン)

白以外の単色背景

ラノベの表紙と言えば「白背景」が有名ですが、最近は背景が描き込まれていることも多いです。ただ「白以外の単色背景」は少ないですよね。

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)

暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)

巨大タイトルロゴ

漫画だと、ものすごく大きかったり、逆にものすごく小さかったりというのがあるけど、ラノベでそういうのは少ない感じ。

ラーメン大好き小泉さん 1 (バンブーコミックス)

ラーメン大好き小泉さん 1 (バンブーコミックス)

彼女とカメラと彼女の季節(1)

彼女とカメラと彼女の季節(1)


最近は単行本サイズのラノベも増えてきているし、大人向けラノベだとまた違った風味のデザインになっている。相乗効果で全体のバリエーションが増えていくといいですね。

そういえば、最近(でもないのか?)花とゆめコミックスが統一フォーマットをやめていたのに驚いて、そこから富士見ファンタジア文庫が統一フォーマットをやめたときのことを思い出しました。漫画もラノベもブックデザインはまだまだ発展中ということなのでしょう。

「小説家になろう」の異世界ファンタジーと『ゼロの使い魔』について簡単な整理

この記事は、小説投稿サイト「小説家になろう」において、ある種の異世界ファンタジーが流行あるいは定着しているのは何故か、という問題について、簡単に整理したものです。


アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』や『オズの魔法使い』や『火星のプリンセス』や『聖戦士ダンバイン』の話ではありませんのでご留意ください。


さて、現時点での情報を整理してみますと、


1. 最強、召喚、転生、憑依、逆行、内政といった特徴的な要素は、二次創作SSの界隈で熟成されてきたものである


2. 『ゼロの使い魔』の二次創作SSが流行し、「好きなキャラをファンタジー世界へ召喚するためのフレームワーク」として確立された


(3. このフレームワーク的な異世界ファンタジーが、その他の特徴的な要素と共に、「小説家になろう」に流入した?)


4. 「小説家になろう」が二次創作禁止になり、受け皿として用意された二次創作専用サイトの「にじファン」も2012年に閉鎖されてしまったので、「小説家になろう」における二次創作の影響が分かりづらくなった(「二次創作への対応」参照


という感じです。


私自身は二次創作コミュニティに参加したことがありませんので、このあたりはほとんどが他人の受け売りになります。思い違いなどありましたらツッコミ歓迎です。


それと、もちろん『ソードアート・オンライン』からのVRMMORPG物だとか、その他の類型、あるいは純粋に「小説家になろう」内で生まれた流行だとかもあるのでしょうけども、そこまでいくと手がつけられませんので、とりあえずは措かせてください。


ともかく、上記でいうところの「3」の部分がよく分からないのですね。


そのあたりのことについて我乱堂さんに語っていただいたのがこちらのTogetterになるのですが。


「小説家になろう」の異世界ファンタジーの源流は『ゼロの使い魔』? - Togetterまとめ


これでもまだ「有力」という段階であって「確定」ではない。


というわけで、当時のことをよく知る方々からのさらなる情報をお待ちしております。


余談。
Internet Archiveで昔の「小説家になろう」を確認してみると、やけに名探偵コナンの二次創作が多い。…主人公が子供に生まれ変わる…そしてチートじみた才能…なろうテンプレ=コナン起源説が爆誕する…?

最近話題の「ラノベ天狗」ってなあに?

「最近のラノベはなぜ叩かれるのか」問題の盛り上がりに伴って、にわかに「ラノベ天狗」の存在が注目されているようです。雑な「ラノベ批判」を見つけ出しては晒し上げて殴りつける神秘の存在・ラノベ天狗。いい機会ですので、その生態について解説を試みたいと思います。

ラノベ天狗の秘密その1:個人の名前です

弓道警察」みたいな曖昧な存在ではありません。Twitterでのアカウントは @srpgloveはてなでは id:srpglove です。「シミュレーションRPGラブ」という意味ですがSRPGの話はあまりしません。

ラノベ天狗の秘密その2:花の女子中学生

ラノベ天狗は中学2年生の女の子です。本人が言っているので間違いありません。

ラノベ天狗の秘密その3:あんまりラノベを読んでいない

ラノベ読者の代弁者・代表者として捉えている方も多いようですが、天狗さんはあんまりラノベを読んでいません。ラノベクラスタとのつながりも薄いです。

ラノベ天狗の秘密その4:元ネタはヤクザ天狗

ラノベ天狗って何? ヤクザ天狗の仲間?」と冗談まじりに言っているニンジャヘッズの皆さん、実は正解です。ラノベ天狗はヤクザ天狗のもじりです。ヤクザ天狗は、小説「ニンジャスレイヤー」の登場人物で、超常的な能力を持たずにニンジャを殺して回るという狂人です。主人公のニンジャスレイヤーではなくあえてヤクザ天狗の方を名乗るあたりがポイントですね。

ラノベ天狗の秘密その5:義賊ではない

建設的な議論をしたいだとか、相手を説得したいだとか、ラノベを擁護したいだとか、そんなことを目的にしているわけではありません。ムカつく奴を黙らせたいだけ、ぶん殴りたいだけだと、普段から主張しています。

ラノベ天狗の秘密その6:彼女は仲間が少ない

「仲間たちを引き連れて周囲を威嚇している」ように見えるかもしれませんが、どちらかと言うと「パトロンたちに見守られながら単身で敵に突っ込んでいく傭兵」という印象です。たまに突っ込みすぎて周囲から窘められたりしている。

ラノベ天狗の秘密その7:わりと感情派

「雑なラノベ批判に対して冷静に反論するラノベ天狗素敵!」という意見をごく稀に見かけますが、見てわかるとおりそんなに冷静ではないし、それほど理論武装しているわけでもないです。

ラノベ天狗の秘密その8:意外に普通

はてな村内で有名な狂人たちと比べるとぜんぜん人間味があるし、気弱な一面を見せることもしばしば。誰かれ構わず噛み付く狂犬というわけでもなく、10代の若い相手は見逃してやるとか、そういうこともいちおう気にしているみたいです。

ラノベ天狗の秘密その9:ガラケーユーザー

現在のところPCを持っておらず、もっぱらガラケーからネットに接続しているそうです。ガラケーでは見れないサイトを天狗さんに送りつけるのはやめたげよう。
(2016/11/18追記)
ついにスマホに買い替えたようです。おめでとうおめでとう。

ラノベ天狗の秘密その10:ブギーポップが大好き

ブギーポップに比べれば最近のラノベはひどい…」などと、大好きなブギポをラノベ叩きの道具にされるのがいちばん嫌なようです。

ラノベ天狗の秘密その11:ブロック多用

Twitterのブロック機能を多用します。「ブロックしたうえでその相手を批判するなんて卑怯だ!」と思われる方もいるかもしれませんが、天狗さん自身は「別に相手をしてくれなくても構いませんよという意思表示」「スパム報告でもないんだから相手に実害はないはず」と述べており、深い意味はなく気軽にやっていることのようです。
(その11は2016/4/29に追記しました)


という感じで思いつくままに10個ほど挙げてみました。

さらに詳しい活動内容についてはご本人のブログなども見ていただいて。


ちなみに私のスタンスは、「あんまり攻撃的に振舞って、ラノベ読み全体が反感を買ったり、ラノベから読者が離れたりすると困るけど、殴りたいから殴るっていうのを止めるのは難しいし、雑なラノベ語りが雑なのも確かだしな、とりあえず静観しとこう」といったところです。別に嫌いなわけではないですし。

ただし、「ラノベ天狗の活動でラノベ読みの評判が下がるようなら適当に切断操作してくれていいよ」という言質は取ってあるので、もしも何かあったときは遠慮なく他人のふりをしていこうと思います。

ライトノベルが馬鹿にされがちな三つの理由

理由1「小説と漫画」

ライトノベルは、小説の中のサブカテゴリであると同時に、漫画・アニメ・ゲームなどと並ぶオタク向けコンテンツの一つでもあります。なので、ある時は小説の側から「低俗で幼稚な読み物である」と貶され、またある時は漫画の側から「バリエーションが少なくてつまらない」と叩かれてしまうのです。

低俗だ何だという批判の鬱陶しさについては、これまでさんざんそう言われてきた漫画の読者が、いちばんよく分かっていることと思います。

それに、考えてみてください。漫画より多様なコンテンツを抱えている業界なんて、他にどのくらいあるでしょうか。この市場規模で、バトルにファンタジーにラブコメに青春モノにSFにミステリに…各種取り揃えているラノベを、むしろ少しくらい褒めてあげても罰は当たらないと思いますよ。

理由2「ライト」

ラノベをあまり読まない人って、ライトノベルの「ライト」にこだわるんですよね。「ライトと称するからにはライトな作品が多いに違いない」。「作者もライトさを意識して作っているに違いない」。そして「ライト」という曖昧な言葉に様々な偏見が仮託されるわけです。

ほとんどのラノベ読者は「ラノベはライトでなければいけない」なんて考えていないと思います。だって普通に読んでいればいくらでも「ライト」でない作品に行き当たりますから。文字がみっちり詰まっているのも。鬱展開なのも。ページ数が多くて鈍器みたいなやつもね。

たとえて言えば、ライトノベルの「ライト」は、スマートフォンの「スマート」程度のもの、みたいな。「スマート」であることはスマホアイデンティティじゃないでしょ、という感じ。

まあ「ライト」という言葉にあまり惑わされないようにしていただければと思います。

理由3「規模感」

漫画原作アニメをいくつか観ただけで「最近の漫画は〜〜」と講釈を垂れる人はいませんよね。それは漫画全体の規模感を分かっているからです。

逆に言うと、ラノベ原作アニメをいくつか観ただけで「最近のラノベは〜〜」と言ってしまう人たちは、ライトノベルの規模感を過小に見積もっているのではないでしょうか。

ライトノベルは、月に150冊以上の新刊がコンスタントに刊行されつつも、その読者はかなり少ないです*1。そのくせ、「ライトノベル」の知名度だけが高まり、アニメなどを通して間接的にラノベに触れる人、そしてラノベに物申したい人が爆発的に増加している状況。

木を見て森を見ず、なんて言いますが、ラノベの森の中に踏み入って探索している人よりも、「アニメ」という小さな窓越しに森を眺めている人たちのほうが遥かに多い、つまり外から適当なことを言われやすい環境になっているのが、いまのライトノベルなのでしょう。なんてこったい。

追記。
アニメ化されてないけど評価の高いライトノベルを読んでみたいという人は「ライトノベルツイッター杯」や「好きなライトノベルを投票しよう!」などの結果を参考にしてね。
ライトノベル三大人気投票のランキング結果(2014年下半期) - 好きなら、言っちゃえ!! 告白しちゃえ!!

あとこっちもついでに。
2014年ライトノベル個人的ベスト10 - WINDBIRD

*1:まあ、少ないというのも漫画やゲームの側から見た話であり、出版不況に喘ぐ小説側からすれば稼ぎ頭のひとつなのですが

「好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年下期」投票

好きなライトノベルを投票しよう!! 2014年下期
取り急ぎ投票のみ。

【14下期ラノベ投票/9784041016534】

【14下期ラノベ投票/9784906866984】

きんいろカルテット! 3 (オーバーラップ文庫)

きんいろカルテット! 3 (オーバーラップ文庫)

【14下期ラノベ投票/9784906866991】

【14下期ラノベ投票/9784048666893】

【14下期ラノベ投票/9784048666954】

【14下期ラノベ投票/9784047299764】

【14下期ラノベ投票/9784048690447】

王手桂香取り! (3) (電撃文庫)

王手桂香取り! (3) (電撃文庫)

【14下期ラノベ投票/9784048690492】

【14下期ラノベ投票/9784048690539】

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

【14下期ラノベ投票/9784061389786】

2014年ライトノベル個人的ベスト10

王手桂香取り!

王手桂香取り!  (電撃文庫)

王手桂香取り! (電撃文庫)


誤解を恐れずに言えば『ヒカルの碁』の将棋版です。『ヒカルの碁』と同じ面白さを、この作品も持っている。憧れの先輩に告白するため、将棋の駒たちから教えを受けて、ぐんぐん成長していく主人公。3巻かけて将棋も恋も大きく前進して、さてこれからもっと面白くなるぞ、というところで残念ながら「第一部完」となっております。ええ、古来どれほどの作品が「第一部完」のまま終わっていったでしょう。第二部開始のためにも、皆様には是非とも、是非とも買っていただければと思います。

四人制姉妹百合物帳

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

多くの出版社から刊行を断られ、当初は同人誌で出していたという、いわくつきの作品。なぜ出版されなかったのかと言えば、ひとえにこの作品のキーワードが「剃毛」だったからだと思われます。お嬢様学校に通う美しい少女たちが「下の毛」を剃るだの剃らないだので大騒ぎ…それなのに何故か切ない百合恋愛小説として仕上がっているという、まさに奇才・石川博品の面目躍如といった趣きの傑作であります。

サディスティックムーン

こちらもまた奇才と言うに相応しい出口きぬごしの最新作。あらすじとしては、感情の希薄な主人公が頭のおかしいヒロインに振り回されて二人であちこちの復讐に協力していくという、一種の謎部活的なコメディではあるのですが。何が狂ってるってヒロインの頭が本当におかしいんですよね。「気に入らない女を拉致監禁して尿道カテーテルを使って主人公の尿を注入する」とかやるわけです。しかも、そのあたりの描写が実に自然で、「頑張って過激なヒロインを書いてみました」という感じではないわけです。ドン引きするくらい面白い作品でした。

男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。

まさにタイトルのとおり。主人公はラノベ作家。ヒロインはアニメ声優。自作品がアニメ化されることになった主人公と、それに出演することになったヒロインが、東京に向かう電車の中で乗り合わせてラノベ作家にまつわるQ&Aを繰り広げるという作品。そのQ&Aコーナーはひたすら淡々としていて正直面白みはありません(興味深くはありますが)。しかし2巻のラスト、「主人公が首を絞められている理由」が描かれることによって、一気に強烈な「物語」に変貌を遂げる。それがすごく面白い。ジャンル的には『俺の教室にハルヒはいない』と併せて読みたい作品ですね。

夏の終わりとリセット彼女

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

夏の終わりとリセット彼女 (ガガガ文庫)

自堕落で不真面目な主人公。記憶喪失になった生真面目なヒロイン。記憶喪失になる前のヒロインは、実は主人公と恋人同士だったのだが…という話。ヒロインとしては主人公のような屑と恋人だったとは到底信じられない。主人公もまた、恋人らしいことをしないまま彼女が記憶喪失になってしまったので、ヒロインが本気だったのかさえ分からない。そんな二人が再び距離を縮めていく過程が描かれる。実に良い青春ラブストーリーです。

ルガルギガム

古代メソポタミアのような異世界に流されてきた現代日本の少年。その世界には街があり、多くの人が住み、実在の女神が崇められていて、そして主人公と同じくいろんな国いろんな時代の人々が流されてきていた。女神である少女に気に入られ、付き纏われつつ、少年は冒険者となって現代に帰る方法を探す。上下巻で非常によくまとまっている冒険ファンタジー、そしてボーイ・ミーツ・ガールなのです。

魔女は月出づるところに眠る

こちらは上中下巻。表紙から想像されるような仲良し三人組のワクワクドキドキの魔女っ子ライフなんてものではもちろん無くて、魔女となって数奇な運命に巻き込まれた少女たちが、不幸と絶望にまみれて底なし沼に沈んでいくような、それでも最後には希望が残るような、壮大な暗黒ファンタジーなのです。

最終戦争は二学期をもって終了しました

異能バトルと日常系を組み合わせた系の作品。主人公と仲間たちが悪の組織を倒したあと、遅れてやってきた戦闘ヒロイン。悪の組織が倒れたことを説明する主人公たち。それを信じないヒロイン。街を見て回ると、戦いの傷跡が色濃く残っていて、まだ何かが起こりそうではあるけれど、でもやっぱり何も起こらない。コミカルではあるがギャグではない、祭りのあとのような切なさのある作品です。

レターズ/ヴァニシング

世界の法則を規定する文字「世界言語」が発見された世界が舞台。その世界言語を操る少女が老教授を殺して逃げ出したところから物語は始まる。教授の孫である少年、少年の友人、教授を殺した少女、少女に指令を与える謎の男、それらを追う刑事たち。複数の視点から描かれるSFサスペンス。作り込まれた設定とは裏腹に、ストーリーはすっきりしていて分かりやすい。今年の電撃文庫のSF作品としてはこの『レターズ/ヴァニシング』と海羽超史郎の『バベロニカ・トライアル』が双璧でしたね。できれば併せてどうぞ。

銀河戦記の実弾兵器

冷凍睡眠装置から目覚めた主人公。そこは現代から何千年経ったか分からない遠い未来の、宇宙船の中だった。そこで出会った毒舌AIのロボットと、そのあと出会った美少女メカニックと共に、主人公は宇宙船を揃え、会社をおこし、伝説上の存在となった地球を探すために宇宙を駆け巡る。どストレートなスペース・オペラ。…まだ2巻を読んでないんですよね。読まねば。


というわけで、ギリギリ年越しまでに間に合った?
来年もよろしくお願いします!

2014年ライトノベル10大ニュース

少し前にTwitterに書いたのを膨らませてみた記事です。

KADOKAWADWANGOが統合


ラノベ業界のみならずさまざまな方面に対してインパクトのあるニュースでした。DWANGOスマホアプリのi文庫・Webサービス読書メーターを買収したことや、統合キャンペーンとして行われた電子書籍半額セールなども話題になっていましたね。

スーパーダッシュ文庫ダッシュエックス文庫に改装


しばらくはスーパーダッシュのブランドも残るそうですが、新作はダッシュエックスから出るということで、事実上のリニューアルと言えるでしょう。SDの頃はいかにも仲が悪そうだった*1漫画部門との連携を強化するための改装だということらしく、漫画界最強の「ジャンプ」ブランドをどう活かしていくのか、これからの躍進に期待です。

「キャラノベ」のレーベルが多数創刊


キャラノベについては先日も記事を書いたのでそちらをお読みいただければ。
「大人向けラノベ」の誕生 - WINDBIRD
今年創刊されたものをリストアップすると、富士見L文庫新潮文庫nex集英社オレンジ文庫朝日エアロ文庫、T-LINEノベルズといったあたりでしょうか。第1回 角川文庫キャラクター小説大賞なんてのも開催されるようです。

映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』公開


スーパーダッシュ文庫が産んだ名作『ALL YOU NEED IS KILL』がまさかのハリウッド映画化。しかも、ちゃんと面白く作ってもらえてスマッシュヒット。海外でも非常に高い評価を得ているようです。
ちなみに感想はこちらに書きました。
「All You Need Is Kill」と「オール・ユー・ニード・イズ・キル」 - WINDBIRD

映画『僕は友達が少ない』公開


不幸にも『オール・ユー・ニード・イズ・キル』と同年の公開となり何かとネタにされがちでしたが、原作と無関係に見ればそこまで言うほど酷くはないだろ…くらいの評判だったようです。個人的には観ていないので何とも言えません。

『ニンジャスレイヤー』アニメ化発表


数奇な運命を経て日本のTwitterで連載され、たちまちブレイクした海外原作のサイバーパンクニンジャ活劇がついにアニメ化ということで、多くのニンジャヘッズに歓喜をもたらしました。映像化が難しそうな作品ですし、独特なファンコミュニティにアニメ視聴者が流入することなどを考えると、いろいろと不安も多いのですがはてさて。

銀河英雄伝説』&『アルスラーン戦記』再アニメ化発表

http://www.arslan.jp
田中芳樹の名作がダブルでアニメ化。銀英伝は原作を読んだきりですが、既に決定版としてOVAがあるわけですし、再アニメ化のハードルはめちゃくちゃ高くなりそうです。アルスラーン戦記は原作も読んでないんですよね。荒川弘による漫画版のアニメ化ということで楽しみにしております。

ソードアート・オンライン』シリーズ国内累計1000万部突破


電撃文庫の中では『禁書目録』に次ぐ快挙だそうで。つい先日のニュースリリースでは「世界」での累計が1670万部を突破したとも発表されていました。なんだか中途半端な数字に見えるけれど、しかし考えてみれば「累計70万部」でも凄いわけだからなあと、どうでもいいことを考えていました。

テスタメントシュピーゲルKindleにて復活

冲方丁シュピーゲル』シリーズの最新作が、5年の時を経てなんとKindleにて連載開始。いまや押しも押されもせぬ売れっ子作家となった冲方丁、(昔からそうでしたが)小説にアニメにと大忙しなので、こういうカタチでの連載になったのでしょうか。BOOK☆WALKERでも配信してください(切実)。

石川博品、プチブレイク

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

四人制姉妹百合物帳 (星海社文庫)

近年カルト的な人気を誇り、2013年には『ヴァンパイア・サマータイム』『後宮楽園球場』という二大傑作を送り出してきた石川博品が、ついに(プチ)ブレイク。「このライトノベルがすごい!」にて5位(新作の中では1位)を獲得。打ち切りを食らっていた作品が初めて重版されて「このラノ新作1位」という帯が巻かれていたという調子の良い話も。さらにファミ通文庫森橋ビンゴ×石川博品フェアを開催したり、どこからも出版できず同人誌として出していた『四人制姉妹百合物帳』が星海社から刊行されたりするなど、まさに充実の一年でした。


というわけで2014年を振り返ってみました。こうして見ると集英社の動きが目につきますね。ダッシュエックス文庫オレンジ文庫、『ALL YOU NEED IS KILL』に『後宮楽園球場』。もしや来年は集英社が大ブレイク!?…………という気はぜんぜんしないけれども、合体怪獣カドカワンゴの動向とあわせて、2015年にどのような作品を出してくるのか楽しみです。


今年のライトノベルニュースをさらに詳しく振り返りたい方はこちらをどうぞ。
はてなブックマーク - mizunotoriのブックマーク

*1:個人の感想です