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ぼくのわたしのライトノベル遍歴

ラノベ遍歴を語るのが少し流行っているみたいなので自分のも書いてみることにした。


最初に出会ったライトノベルは『お嬢さまとお呼び!』だったと思う。縦ロールが自慢の高飛車なお嬢様が騒動を巻き起こす学園コメディである。新装版が出ているが、もともとの刊行時期は90年代の前半。

お嬢さまとお呼び!

お嬢さまとお呼び!


子供のころの私は、自分が欲しい漫画をなかなか買ってもらえなかったので(禁止されていたというほど厳しいものではなかったが)、親から買い与えられた児童文学・歴史小説と、姉が持っていた少女向け小説・漫画ばかりを読んでいたのだ。

流星香の『プラパ・ゼータ』『電影戦線』『天竺漫遊記』。瀬川貴次の『聖霊狩り』『闇に歌えば』。真堂樹の『四龍島』シリーズ。橘香いくのの『有閑探偵コラリーとフェリックスの冒険』。そして小野不由美の『十二国記』。このあたりが小学生から中学生にかけてよく読んでいたライトノベルか。


そうだ、ガンダムWのノベライズを買ってもらったこともあったな。あれが地味に初めてのスニーカー文庫だったはずだ。


小学校の図書室や公共図書館が行動範囲に入るようになってからは、漫画では手塚治虫ブラックジャックブッダ横山光輝史記三国志は通過せず)などの図書館によくある作品を、小説では原ゆたかやズッコケなどの定番の児童書と、あとはホームズをよく読んでいた。

ファンタジーについては、幼い頃に好きだったのは圧倒的に西遊記だった。いろんな出版社のバージョンを買い揃えていて、小学校の入学祝いが福音館版のゴツいやつだったことを覚えている。派生して水滸伝封神演義も。

西洋ファンタジーではオズシリーズが多かったか。図書館では、棚の端っこにあるようなマイナーな海外ファンタジーをいくつか読んでいて、その印象が強い。ハリポタは中学生になってからなのでだいぶ後だ。

ミステリは、先述したホームズ以外には、マガーク探偵団とかの児童書くらいで、ぜんぜん履修していなかった。ホームズの次のステップって一般的には何なんだろうな。

SFはもっと縁遠くて、父が持っていた小松左京の短編集とか、アシモフの科学エッセイとか、そのくらいしか読んでいなかった。ああ、『時をかける少女』は読んだ記憶があるな。SFのファーストステップって難しいよね。


中学に上がった頃には、ときどき漫画を買うくらいにはなっていた(るろ剣世代)のだが、ライトノベルを自分で買ったのは、確か『東京S黄尾探偵団』が初めてだったと思う。

たまたま姉が借りてきていた雑誌コバルトに、S黄尾の第一回が掲載されていて、それをいたく気に入ったからだった。姉からの少女向けラノベの流れと、図書館でのホームズの流れが交差した、我が人生の上で画期的な出来事だったと言えよう。

それぞれに陰のある社会のはみ出し者たちが通信制高校を舞台に破天荒な探偵業をやりはじめるという話で、もう思春期まっさかりの時期に多大なる影響を受けたよね…少なくとも自分が通信制高校にやたらロマンを抱いているのは確実にこの作品が原因だ。


あとは、講談社文庫版の『創竜伝』が図書室に置いてあって、それを気に入っていた頃に、同作者の『銀河英雄伝説』の新装版が徳間デュアル文庫から出るということで、司書さんに頼んで入れてもらった記憶があるから、それもほとんど同時期のはずだ。このあたりの記憶はだいぶ錯綜しているな。


で、いま刊行時期を調べてみて、おそらく同時期かその少し前と思われるのが『魔術士オーフェン』で、これもまた姉が持っていて、シリーズの最初のほうだけしか読んではいないものの、しばらくして書店に『我が夢に沈め楽園』が並んでいたのを見た記憶があるので、そのくらいの年代なのだろう。だから私は『スレイヤーズ』はノータッチなんだけど、『オーフェン』には軽く触れていたのだ。


その次が『フルメタル・パニック!』で、これは何がきっかけだったかな…買いはじめたのが『揺れるイントゥ・ザ・ブルー』の頃だったので、2000年くらいだと思うけど、そこからロボットものつながりで『ランブルフィッシュ』も買いはじめたり、『オーフェン』から『エンジェル・ハウリング』を買いはじめたりしていた。


実のところ、この頃までは「ライトノベル」というジャンルを意識することはまったくなくて、「書店に並んでいるかっこいい表紙の小説」くらいの認識しかなかった。さんざんコバルトや富士見などに触れていたにもかかわらず、それらを個々の作品という「点」でしか認識しておらず、全体を見渡しての体系的な理解というものが、不思議なほど頭の中から抜け落ちていたのだ。

しかし。いまも忘れない2003年の夏休み。私の脳裏にふと稲妻が走ったのだ。

「そういえばオーフェンフルメタのような小説は他にもたくさんあるのだろうか」と。

2003年と言えばADSLによる常時接続が普及した頃で、私もインターネットに、特に2chに入り浸りだった。それまでは専ら漫画系の板を見ていたのだが、同じように「富士見みたいな小説」の板もあるはずだと探していったところに、「ライトノベル板」があった。それが、私と「ライトノベル」との記念すべき出会いだった。

いくつかのスレを見て回っているうちに、どうやら最近は「電撃文庫」の人気が高いらしい、ということが分かってきた。聞いたことのない名前だった。いつも行っている小さな書店にはほとんど置いていなかったはずだ。

未知なる秘境を探索する冒険者モードになった私は、自分にしては珍しく行動力を発揮して、これまでは車に乗せられてしか行ったことのなかった、やや遠くにある書店まで自転車で行くことにした。

まずは三冊だけ買ってみようと思った。それも似たようなものではダメだ。傾向を知るためには異なる種類の作品が望ましい。だから「長く続いているシリーズの第一巻」「その年にデビューした新人の作品」「一冊完結の作品」をそれぞれ購入しようと考えた。

多少の事前準備と、書店での入念な吟味ののち、私はついに三作品を選びだした。

それが『悪魔のミカタ』『バッカーノ!』『ブラックナイトと薔薇の棘』だった。

悪魔のミカタ―魔法カメラ (電撃文庫)

悪魔のミカタ―魔法カメラ (電撃文庫)

ブラックナイトと薔薇の棘 (電撃文庫)

ブラックナイトと薔薇の棘 (電撃文庫)


私が「ライトノベルを買った」のは、つまり「確固たる目的意識を持ってライトノベルを選んで買った」のはこれが初めてであり、そういうわけで「初めて買ったライトノベルは?」と訊かれれば、何より先にこの三冊が思い出されるのである。

完。


としておきたいところだが、いちおうその続きを書いておく。

高校の図書館には、幸いなことにライトノベルがかなり入っていたので、ライトノベルに目覚めた私は、そこで『ブギーポップ』や『灼眼のシャナ』、『キノの旅』、『イリヤの空、UFOの夏』、『スクラップド・プリンセス』などの定番の名作を、片っ端から読み漁った。


図書館で読んだなかでいちばん好きだったのは乙一の『GOTH』かな。『S黄尾』から引き続きで、スカした主人公のダークな話がたまらなく好きだったのだ。そうした青少年の例に漏れずもちろん西尾維新にもドハマりしていた。中二病真っ盛りの頃だ。

GOTH―リストカット事件

GOTH―リストカット事件

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)


ラノベの感想ブログを書きはじめたのは2004年3月である。その頃にはかなりのペースでラノベを買っていて、そうしてインプットした情報をどこかに発散したかったのだろう。2chラノベ板によく書き込んでいたのもこの前後の時期だ。

ふと思いついたので2004年の個人的ベスト10を引っ張り出してきてみた。長く続けたブログには多大な黒歴史とともに少々の有用な記録が残っているものである。

一位 涼宮ハルヒの消失谷川流
二位 ROOM NO.1301#3:新井輝
三位 ALL YOU NEED IS KILL桜坂洋
四位 フルメタル・パニック! つづくオン・マイ・オウン:賀東招二
五位 零崎双識の人間試験:西尾維新
六位 ディバイデッド・フロントII:高瀬彼方
七位 砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない:桜庭一樹
八位 ヴぁんぷ!:成田良悟
九位 空の境界奈須きのこ
十位 とある魔術の禁書目録鎌池和馬

こういう時代であり、こういう嗜好であった。


2004年と言えば、ライトノベル史的には「ラノベ解説本ブーム」の年である。スレイヤーズ以降、世間への露出を減らしていたライトノベルが、しばしの雌伏のときを経て再び立ち上がろうとしていた頃である。

ライトノベル完全読本 (日経BPムック)

ライトノベル完全読本 (日経BPムック)


といった歴史意識は、ニワカの私にはもちろん無かったのだが、エロゲ論壇とかが盛り上がって(終わりかけて)いた頃だったし、いわゆるWeb2.0のブログブームも重なっていたし、大学でヒマだったし、とにかく色んな状況が変わりはじめている気がして、私も執筆意欲が旺盛な時期であった。若気の至りも多かった。

そんなときにやってきたドデカいムーブメント、それが『涼宮ハルヒの憂鬱』、そのアニメ化であった。2006年のことである。

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの憂鬱 (角川スニーカー文庫)

ハルヒの第一巻は2003年発売で、私のラノベ覚醒時期と重なっている。当時のネット上では毀誉褒貶の激しい作品だったが、先述のベスト10を見れば分かるように、個人的には「谷川信者」を名乗るくらいに好きな作品で、だからアニメの放送時には、自分のブログでハルヒ関連の記事を書きまくったのだった。私の中で燃え盛っていた執筆意欲はこのときに使い果たしたといっても過言ではなかった。


こうして振り返ってみると、やはり今の私を形作ったのは2000年代前期から中期にかけての作品であるなあ、と思う。富士見世代か電撃世代かといえば自己認識では後者だ。

とはいえ、それから十年以上を経てもなお、私は変わらずラノベを読み続けている。ライトノベルの面白さも変わっていない。感想はTwitterのほうに書くようになった。ブログは不定期更新です。今後ともよろしくお願いいたします。