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2021年ライトノベル個人的ベスト10

1. 魔王2099

勇者に倒された不死身の魔王が五百年を経て復活したら科学と魔法が融合した世界になっていた…というサイバーパンク魔王勇者もの。個人的に「上手い」と「面白い」と「好き」はそれぞれ微妙に違う評価だと思っているんですけど、この作品は「上手くて面白くて好き」なんですよね。しっかりとした技巧で土台を造り、その上に優れたアイディアを乗せて、さらにケレン味もたっぷりと含んでいる。だがしかし刊行ペースが…遅い…どうか続刊を頼む…。

2. サイレント・ウィッチ

自己評価がめちゃくちゃ低い天才魔女と、彼女を取り巻くちょっと意地悪なイケメンたち。構図としては女性向けに近いけども、いわゆる少女向けラノベレーベルではないところから発売されて、普通に男性読者も楽しんでいる、というのは近年のラノベ業界の傾向でもありますよね。強さを隠して学園に潜入する「俺TUEEE」系のテンプレではあるんですけど、むしろ主人公が卑屈すぎて常にいじめられてる形になるのが「かわいそうなのがかわいい」というやつで、バランスが取れてるなと思います。

3. ストライクフォール

ほぼ四年ぶりの新刊! 何度も書いてますけど、現代最高の宇宙SFラノベでありスポ根ラノベでありロボットラノベなわけですよ。競技の部分だけでも、めちゃくちゃ戦略的なサッカー漫画とかの読み味に近いんですが、そこに尽きせぬSF的アイディアと、太陽系規模の政治劇も盛り込まれてくるんだから、そりゃあ面白いに決まってるんですよね。いつまでも続刊を待ち続けますよ旦那。

4. 僕は天国に行けない

親友が自殺して放心状態の主人公の前に、ヘビースモーカーでメガネっ娘で僕っ子の謎の少女が現れて、共に親友の死の真相を探ることになる暗黒青春ミステリ。「死」と「宗教」というテーマで描かれる、この世界に取り残された者たちの物語。20年くらい前の、暗くて切なくて頭でっかちで露悪的な、あの頃の懐かしい空気を感じるんですよね。これは好きな作品です。

5. オーク英雄物語

ただでさえ『無職転生』を書ける人が、その連載過程で身につけた熟練の手腕をプラスして一から書いた新作なんですから面白いに決まってるんですが、それにしたって面白すぎるんですよ。物語類型としては要するに水戸黄門のような諸国漫遊譚で、太古から人類の心を捉えて離さないシンプルでプリミティブな面白さがありつつ、さらにそれを現代的にアレンジしているというか、ぜんぜん古臭さを感じないのがすごさですよね。

6. 亡びの国の征服者

最新第四巻で描かれる緊迫した逃亡劇は、これまでとはまた違った味わいがあって良かったです。平和な学園生活を描きながらも、すぐ鼻の先に戦争が迫ってきている、どう考えても国家としては末期であり、「亡びの国」になるのが見えている…というなかで、ついに主人公たちが体験する「戦場」。スローペース&ロングスパンの物語だからこその遠大で濃密な展開を楽しむことができますよ。

7. 目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい

これも昨年から引き続きなんですけど、マジでタイトル以外は最高のスペオペなんですよ。工夫されたSF設定に、安定した物語の進行で、作者の地力は相当に高いと思うんですが、それで美女を侍らせながら傭兵として無双するという、めちゃくちゃ俗っぽい話をやるのがまさにスペオペの魅力なんですよね。私は宇宙エルフと眼鏡メイドロボが好きです。

8. 声優ラジオのウラオモテ

三巻くらいから一気に面白くなったんですよねこのシリーズ。もともとは「声優の話」というより「声優ラジオの話」で、いわゆる「お仕事もの」としての濃度は低かったんですが、それが徐々に「声優の話」のほうに軸足を移し、完成度を高めていったのは、作家がプロデビューして現場を取材できるようになったからなのかな、と思います。いやもうお仕事ものとしても、喧嘩ップル百合としても、完全に一皮剥けたと思います。題材的にもアニメ化を期待したいですね。

9. インフルエンス・インシデント

インターネットの悪意に焦点を当てた青春ミステリ。いわゆる「本格ミステリ」よりはサスペンス寄りかな。とにかく「女装して人気配信者になっている美少年」とか「キックボクシングの達人でめちゃくちゃ強いおねショタ発情女」とかキャラが良かったですね。すべては暴力が解決する。なんかこう主役サイドも含めて、わりとみんな癖が強くて露悪的な感じがして、お行儀の良い作品に収まっていないのが良いところです。

10. 我が驍勇にふるえよ天地

ここは悩んだんですけど、完結記念ということも含めてこの作品で。読み終わってあらためて巻数を見て「たった11巻なんだ」と思うほど、すごいテンポでどんどんスケールが大きくなっていったのが印象的ですね。シリーズ全体で最大の盛り上がりはぶっちゃけ七巻だったと思うんですが(三国志演義の最大の盛り上がりは赤壁の戦い的な)、この完結巻の落ち着いた雰囲気には「歴史」を感じましたね。巻末に「アレクシス二十八神将」の一覧が載ってて、彼らのその後の話なんかがちらっと紹介されてるんですよ。オタクなのでそういうのも最高でした。